鉄欠乏性貧血

注意:このページでは、動悸や息切れの鑑別疾患としての鉄欠乏性貧血について記載しています。鉄欠乏性貧血の診断がすでに着いている方を一般内科をご受診ください。ご来院いただいても一般内科へのご案内となってしまうことを予めご了承ください。

【鉄欠乏性貧血とは】

鉄欠乏性貧血とは、文字通り、鉄分不足による貧血で、最も多い貧血の原因です。ふらつき、疲れやすさ、だるさ、立ちくらみ、朝起きるのが辛い、顔色が白い、などの貧血症状で受診し、検査で見付かることもあれば、職場や学校の検診で貧血を指摘されて受診される場合も多いです。頭痛、肩こり、目眩、吐気、動悸、息切れ、胸の苦しさ、などの症状で受診される場合もあります。貧血の程度が酷い場合、転びやすくなる、冷え性、眠気、肌がカサカサ、抜け毛、爪がもろくなる、匙状爪と言って爪がスプーンのように反り返る、不妊、味覚障害、氷食症と言って異様に氷などの硬いものを食べたくなる、などの症状のこともありますが、全ての例で認められる訳ではありません。

【鉄欠乏性貧血の診断】

採血検査にて、ヘモグロビンや貯蔵鉄フェリチンなどの値を調べます。ヘモグロビン値で男性13.0g/dL以下、女性12.0g/dL以下の場合、貧血と診断されます。明らかな出血症状がないこと、悪性腫瘍の存在を疑う随伴症状がないこと、などを確認し、フェリチン低下、血清鉄低値、小球性、低色素性などの鉄欠乏性貧血に矛盾しない検査結果を認めた場合に鉄欠乏性貧血と診断し、治療していきます。鉄欠乏性貧血意外の貧血を疑った場合は、適宜検査を追加したり、血液内科の専門医にて詳しく調べてもらったりしています。年齢にもよりますが、40代、50代以降の貧血では悪性腫瘍による消化管出血を鑑別に入れて、必要に応じて内視鏡検査を行います。鉄欠乏性貧血の要因の一つとしてピロリ菌感染が関係していることが最近報告されて来ており、慢性的な胃炎症状を認める場合はピロリ菌感染の有無をチェックします。貧血と症状は似ているものに、低血圧症があります。血液検査では異常はなく、血圧低値を認める場合、特に収縮期血圧が100や90を下回ると、多くの場合ふらつきやたちくらみ等の低血圧症の症状が出ることが多いので、その場合は低血圧症の治療をしていきます。

【鉄欠乏性貧血の治療】

鉄欠乏性貧血の治療は第一に鉄分の補充です。鉄分は食べ物から摂取しても、内服薬で基本は同じです。鉄分のサプリメントでも問題ありません。貧血の程度が酷い場合、食事療法やサプリメントで十分に改善しない場合、鉄剤にて治療を開始します。鉄剤と言っても中身はただの鉄ですので、お好きな方法で鉄分を摂取していただければそれで構いません。

・鉄分の多い食事、鉄分は食事から摂取することも重要です。レバー、ほうれん草、小松菜、菜の花、パセリ、ひじき、アサリ、しじみ、カツオ、イワシ、マグロ、穴子、サケ、カキ、煮干し、ワカメ、卵黄、大豆製品、など、鉄分の多く含まれる食物の摂取は重要です。食物中に含まれる鉄には、吸収されやすいヘム鉄と、やや吸収されにくい非ヘム鉄と二種類がありますが、必要以上に厳密に区別しなくても、第一に鉄分が多く含まれる食品を意識的に摂るということを意識しておくことが大事です。

・フェロミア(クエン酸第一鉄)、フェルム(フマル酸第一鉄)、スローフィー(硫酸鉄)、鉄剤です。鉄欠乏性貧血の治療薬です。鉄分を補給し、貧血を改善します。貧血の程度に応じて、1日1回から1日3回くらいまで調整します。飲み始め、便秘や気持ち悪くなるなどの消化器症状が出る方もいますのでその場合は適宜量を減らせば大丈夫です。鉄分は100%吸収される訳ではなく、吸収されなかった鉄分は便として排出されるため、黒っぽい便となりますが、そのまま飲み続けて心配ありません。治療は身体の中の鉄分が十分に貯蔵されるまで、指標としては貯蔵鉄フェリチンという値が正常化するまで続けます。薬を飲まなくなるとまた貧血になってしまう人も多く、その場合は本人とも相談しつつ、隔日や3日に1錠などのペースで維持療法として鉄剤を継続します。鉄剤も一錠2円くらい、一日一錠で一ヶ月続けても60円くらいの薬価自己負担ですのでコスパ的にも悪くはありません。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。