冠動脈疾患

冠動脈疾患とは?

冠動脈疾患(Coronary artery disease: CAD)とは、冠動脈の病気の総称です。冠動脈とは心臓の血管で、左冠動脈主幹部、左前下行枝、左回旋枝、右冠動脈からなります。冠動脈が詰まると急性心筋梗塞、冠動脈に狭窄がある状態が狭心症です。狭心症には不安定狭心症、労作性狭心症があります。また、冠動脈の痙攣が原因の冠攣縮性狭心症があります。循環器疾患には様々なものがありますが、まずは冠動脈疾患の有無の評価が重要です。

冠動脈はどれも重要な血管なので、「AHA分類」として#1から#15まで全て通し番号が着いています。
・右冠動脈(Right coronary artery: RCA):#1-#4
#1:右冠動脈起始部から鋭縁部までを二等分した近位部
#1から洞結節枝(sinus node branch: SN)、円錐枝(conus branch: CB)が分岐
#2:右冠動脈起始部から鋭縁部までを二等分した遠位部
#2から右室枝(right ventricular branch: RVB)、鋭縁部からは鋭角枝(acute marginal branch: AM)が分岐
#3:右冠動脈鋭縁部から後下行枝(poster descending branch: PD)まで
#4:後下行枝(poster descending branch: PD)
#4から#4AV:房室結節枝(atrioventricular node branch: AVN)が分岐
・左冠動脈(Left coronary artery: LCA):#5-#15
#5:左主幹部(Left main coronary trunk: LMT)
・左前下行枝(Left anterior descending coronary artery: LAD):#6-10
#6:左主幹部から左前下行枝の第一中隔枝(first septal branch: 1st SB)まで
#6から#9:第一対角枝(first diagonal branch: D1)が分岐
#7:第一中隔枝から#10:第ニ対角枝(second diagonal branch: D2)まで
#8:第二対角枝から左前下行枝抹消まで
#9:第一対角枝(first diagonal branch: D1)
#10:第ニ対角枝(second diagonal branch: D2)
・左回旋枝(Left circumflex coronary artery LCX):#11-#15
#11:左主幹部から左回旋枝
#12:鈍角枝(obtuse marginal branch: OM)まで
#12:鈍角枝(obtuse marginal branch: OM)
#13:後側壁枝(posterolateral branch: PL)まで
#14:後下降枝(posterior descending artery: PD

冠動脈CTとは?

冠動脈CTとは、心臓の血管、冠動脈の狭窄の有無と程度を評価する精密検査です。冠動脈疾患の最も頻度の高い検査です。冠動脈の検査には冠動脈CT、心臓MRI、冠動脈カテーテル検査の3種類がありますが、冠動脈カテーテル検査は入院が必要な検査で、心臓MRIは冠動脈の分解能が若干弱いので、冠動脈の検査が目的の場合には冠動脈CTがベストです。
・右冠動脈(Right coronary artery: RCA)
・左冠動脈主幹部(Left main coronary trunk: LMT)
・左冠動脈前下行枝(Left anterior descending coronary artery: LAD)
・左回旋枝(Left circumflex coronary artery: LCX)
検査結果は、上記の冠動脈それぞれに対し、狭窄なし、軽度狭窄、中程度狭窄、有意狭窄、完全閉塞の5段階で、有意狭窄以降は原則、冠動脈造影等の精密検査の適応です。軽度狭窄、中程度狭窄の場合は冠危険因子のコントロールが重要です。お茶の水循環器内科で最も頻度の高く、最も重要な検査です。必要な場合は飯田橋の心臓画像クリニックにて検査を実施します。冠動脈と同時に、心筋、弁の状態も評価したいので、冠動脈CT+心エコーの組み合わせの検査になることが多いです。

冠動脈造影とは?

冠動脈造影とは、心臓の血管、冠動脈の狭窄の有無と程度を最も正確に評価する精密検査です。通常、有意狭窄の診断が既に着いている場合、または有意狭窄が強く疑われる場合に、そのまま冠動脈カテーテル治療も兼ねて実施します。
狭窄度の評価は、上記の冠動脈それぞれに対し、0%(狭窄なし)、0%超25%以下狭窄、25%超50%以下狭窄、50%超75%以下狭窄、75%超90%以下狭窄、90%超99%以下狭窄、100%狭窄(完全閉塞)、7つに分類するAHA分類が重要です。狭窄病変に対しては、冠血流予備量比(Fractional flow reserve: FFR)を測定、虚血の有無の判定、通常、75%以上狭窄かつ虚血を認める場合に、有意狭窄と判定し、血行再建の適応と判断します。最短2泊3日の入院が必要です。また、冠動脈カテーテル検査では、冠動脈の狭窄ではなく、冠動脈の攣縮の有無を判定する冠攣縮誘発試験という検査もあります。適応に関しては主治医とご相談ください。