心臓ペースメーカー

【心臓ペースメーカーとは】

心臓ペースメーカー(Cardiac pacemaker)とは、心臓の電気刺激を人工的に補助する医療機器です。主に徐脈性不整脈の治療に使います。具体的には、心臓の電気刺激が上手く作り出せない場合、心臓の電気刺激が上手く伝わらない場合、心筋が上手いタイミングで収縮しないため心不全を起こしている場合、などです。具体的には、洞不全症候群、高度房室ブロック、高度脚ブロック、徐脈性の心房細動などです。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「ペースメーカーと植え込み型除細動器」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph47.html

【心臓ペースメーカーの適応】

「不整脈の非薬物治療ガイドライン」では、ACC/AHAガイドラインに基づき、推奨度を以下の4つに分類されています。

(1)クラスⅠ:有益であるという根拠があり,適応であることが一般に同意されている

(2)クラスⅡa:有益であるという意見が多いもの

(3)クラスⅡb:有益であるという意見が少ないもの

(4)クラスⅢ:有益でないまたは有害であり,適応でないことで意見が一致している

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

以下、各論です。

洞機能不全症候群

ClassⅠ:

1.失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感等の症状あるいは心不全があり,それが洞結節機能低下に基づく徐脈,洞房ブロック,洞停止あるいは運動時の心拍応答不全によることが確認された場合.それが長期間の必要不可欠な薬剤投与による場合を含む

ClassⅡa:

1.上記の症状があり,徐脈や心室停止を認めるが,両者の関連が明確でない場合2.徐脈頻脈症候群で,頻脈に対して必要不可欠な薬剤により徐脈を来たす場合

ClassⅡb:

1.症状のない洞房ブロックや洞停止

房室ブロック

ClassⅠ:

1.徐脈による明らかな臨床症状を有する第2度,高度または第3度房室ブロック

2.高度または第3度房室ブロックで以下のいずれかを伴う場合

(1)投与不可欠な薬剤によるもの

(2)改善の予測が不可能な術後房室ブロック

(3)房室接合部のカテーテルアブレーション後

(4)進行性の神経筋疾患に伴う房室ブロック

(5)覚醒時に著明な徐脈や長時間の心室停止を示すもの

ClassⅡa:

1.症状のない持続性の第3度房室ブロック

2.症状のない第2度または高度房室ブロックで,以下のいずれかを伴う場合

(1)ブロック部位がHis束内またはHis束下のもの

(2)徐脈による進行性の心拡大を伴うもの

(3)運動または硫酸アトロピン負荷で伝導が不変もしくは悪化するもの

3.徐脈によると思われる症状があり,他に原因のない第1度房室ブロックで,ブロック部位がHis束内またはHis束下のもの

ClassⅡb:

1.至適房室間隔設定により血行動態の改善が期待できる心不全を伴う第1度房室ブロック

2枝および3枝ブロック

ClassⅠ:

1.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,第2度MobitzⅡ型,高度もしくは第3度房室ブロックの
既往のある場合

2.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,投与不可欠な薬剤の使用が房室ブロックを誘発する可能性
の高い場合

3.慢性の2枝または3枝ブロックとWenckebach型第2度房室ブロックを認め,失神発作の原因として高度の房室ブロック発現が疑われる場合

ClassⅡa:

1.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,失神発作を伴うが原因が明らかでないもの

2.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,器質的心疾患を有し,電気生理検査によりHis束以下での伝導遅延・途絶が証明された場合

ClassⅡb:

1.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,電気生理検査でHis束以下での伝導遅延・途絶の所見を認
めるが,器質的心疾患のないもの

徐脈性心房細動

ClassⅠ:

1.失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感等の症状あるいは心不全があり,それが徐脈や心室停止によるものであることが確認された場合.それが長期間の必要不可欠な薬剤投与による場合を含む

ClassⅡa:

1.上記の症状があり,徐脈や心室停止を認めるが,両者の関連が明確でない場合

その他のペースメーカーの適応については、「不整脈の非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

【心臓ペースメーカーが必要な場合】

心臓ペースメーカーによる治療が必要な場合、専門の専門病院を紹介します。心臓ペースメーカー埋込後は磁気や電気の影響を受ける日常生活に注意があります。

日本メドロトニック株式会社「ペースメーカガイドブック」→https://www.mri-surescan.com/cardiac/pdf/tool/ic_visual.pdf

日本不整脈デバイス工業会→https://www.jadia.or.jp

日本不整脈心電学会「デバイス治療に関するガイドライン」→https://new.jhrs.or.jp/guideline/guideline02/device-guide


【心臓ペースメーカーの歴史】

・1932年、アメリカの生理学者、Albert Hyman、体外式経胸壁人工ペースメーカーを開発、手回しハンドル発電式、胸壁穿刺による直接電気刺激、

・1958年、アメリカの工学者、Earl Bakken、商用電源式体外式ペースメーカー

・スウェーデンのRune Elmqvist、スウェーデンの外科医、Ake Senning、植込式心臓ペースメーカー、電池寿命15-20分

・1963年、日本最初のペースメーカー植込術

・1974年、リチウム電池を使用したペースメーカ 、電池寿命5-8年

電池寿命の延長、小型化、ペーシング機能プログラムの改良、ねじ込み型スクリューインリード、リードレスペースメーカーなど、次々と改良されて来ており、電池寿命は10年以上になりました。