脂質異常症

【脂質異常症とは】

脂質異常症は心筋梗塞や狭心症の最大のリスク因子です。脂質の摂り過ぎ、運動不足、脂質の高い家系、肥満、甲状腺機能低下症などが関わっています。脂質異常症は特に自覚症状がありません。脂質が高い状態が何年も続くと動脈硬化が進行し、狭心症、心筋梗塞を引き起こします。脂質異常症による動脈硬化の進行は、後になってから元に戻すことが難しいため、脂質が高い状態を放置しないことが重要です。

【脂質異常症の検査】

脂質異常症は血液検査によって診断します。採血にて、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(TG)の値を検査します。LDL 140以上、HDL 40未満、TG 150以上の場合、脂質異常症と診断します。普段の検診項目にも含まれているので検診で脂質が高いと指摘されたのをきっかけに受診されることも多いです。上記項目の中でも特に重要なのが、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールです。100人中に1人程度、家族性にコレステロールが高いという方がいますが、これは遺伝的な体質によるなので、心筋梗塞予防のためには早期から確実な脂質低下の治療が必要です。家族性高コレステロール血症かどうかは原因遺伝子が特定されて来ており、遺伝子検査希望される場合は専門医療機関を紹介します。LDLが非常に高い値の場合、何年も放置している場合は既に動脈硬化を来しているリスクがありますので、必要に応じて冠動脈CTや頸動脈エコー等、動脈硬化の有無と程度を評価します。

【LDLコレステロールと冠動脈疾患の関係】

LDLコレステロール値と冠動脈イベントの発症率について、2004年の「Journal of the American College of Cardiology」にまとめた図が有名です。上図から、LDLコレステロール値と冠動脈イベント発症率はほぼ直線的に比例関係にあることがわかります。図からわかることは、一次予防、二次予防を問わず、LDLコレステロールの値が高ければ高いほど心筋梗塞のリスクは高くなり、LDLコレステロールの値が低ければ低いほど心筋梗塞を起こすリスクは低いということがわかります。検診等では便宜上、LDLコレステロールの値を120や140で基準値を設定することが多いのですが、実際はLDLコレステロールの値に適正値というのはなく、低ければ低いほど良いことがわかっています。これを「the lower the better 」と表現します。LDLは低ければ低いほど良く、これは、血圧が低過ぎれば低血圧症で倒れてしまうこと、血糖が低過ぎれば低血糖で倒れてしまうこととは対照的で、LDLは低過ぎることによる害はないことがわかっています。

【脂質異常症の治療】

脂質異常症の治療は大きく、食事療法、運動療法、脂質を下げる薬の3つに分かれます。LDLの値は低ければ低いほどいいです。どういった治療法でもよいのですが、大事なことは脂質をしっかりと下げ、それを継続することです。

脂質異常症の一番の原因は、家族性の場合を除いて、ズバリ、脂質の摂り過ぎです。脂っこいもの、揚げ物、油がいっぱいのラーメン、など脂質摂り過ぎがないか食生活を見直してみてください。油物は食べていないと思われる方は、油っぽくない脂質に注意です。特に乳脂肪も動物性脂肪ですので、生クリーム、バター、チーズ、カスタード、菓子パン、清涼飲料水、クリーム入りのコーヒー、など、一見油ものっぽくはないですが、動物性脂肪の摂り過ぎがないか振り返って見てください。ヨーグルトが健康にいいと聞いて毎日ヨーグルトを大量に食べているという人がいて、脂質の値が極めて高く、ヨーグルトを適量に控えてみたところ、正常範囲に治ったという例があります。乳製品や加工食品は脂っぽい食感でないためか脂質を摂っている意識が薄いことも多いので注意です。一方で、青魚などの魚系の油、植物系の油などは善玉コレステロールを上げる作用があり、青魚を生成したEPA製剤、DHA製剤などは医薬品にもなっています。色々な健康食品がありますが、いずれも摂り過ぎには注意です。オリーブオイルは基本は良質な脂質と言われていますが、粗悪なもの、日が経ってしまったものは飽和脂肪酸や中性脂肪が多い場合もあり、注意が必要です。

運動は、全身を使った有酸素運動が大事です。適度な運動であれば運動の種類にこだわり過ぎる必要はありません。大切なのは生活習慣として続けられることですので、ウォーキングでも何でもいいので、普段の生活で続けられる運動を選びましょう。理想の週の半分以上、天気がよい日は二駅くらいは歩く、休憩時間にオフィスの近辺を一周歩く、など日常生活の中で取り入れられる運動がよいでしょう。

【脂質異常症の薬】

脂質異常症の薬は、食事や運動で十分に脂質が下がらない場合に開始となります。脂質の薬は一度始めたら一生辞められなくなるのか?、いつまで飲めばいいのか?という質問に対しては、治療目標値をベースに考えます。LDLを140未満、心筋梗塞後の再発予防であればLDLを100未満といった値が目標です。具体的には、脂質の目標値をLDL 140未満とした場合、脂質の薬を飲み始めて、例えばLDLが180から140に下がったとします、すると、薬で下がっている効果の分は40前後と考えられますから、食事療法と運動療法でしっかりと脂質を下げ、例えば一年後にLDLが90くらいでしっかりと安定したとすれば、その後、薬を辞めたとしてもLDLは130前後に戻るだけですので、薬を辞めても大丈夫と判断します。下記にお茶の水循環器内科でよく出る薬をまとめました。

・クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、リポバス(シンバスタチン)、ローコール(フルバスタチン)、メバロチン(プラバスタチン)、悪玉コレステロールを強力に下げるスタチンと呼ばれる基本薬で、心筋梗塞を強力に抑制する効果が確立している薬です。特に飲めない理由がない限り積極的に使います。スタチンは100人中1人くらいの頻度で肝機能障害や筋障害が出ることがありますが、残り99人は問題なく内服継続出来ます。内服後最初の4週間程度で、LDLがしっかりと下がっていること、肝機能障害や筋障害等の副作用が問題ないことを採血チェックします。

・ゼチーア(エゼチミブ)、腸からのコレステロールの吸収を抑える薬です。コレステロールも中性脂肪も高い方で、上記の薬で十分に下がらない方に併用します。コレステロールの吸収を抑える薬というと抵抗感が少ない方が多く、ゼチーアを最初に使う場合もあります。

・ベザトール(ベザフィブラート)、リピディル(フェノフィブラート)、パルモディア(ペマフィブラート)、主に中性脂肪を重点的に下げる作用です。主に中性脂肪だけ高い場合に使います。コレステロールと中性脂肪、両方とも正常値であることが勿論望ましいのですが、どちらか一方下げるのが大事かと言われたら、悪玉コレステロールを下げることが優先です。

・防風通聖散、脂肪の吸収を抑える漢方です。直接LDLを下げる効果はありませんが、脂肪の吸収を抑え、脂肪の燃焼を助ける効果を期待して、月に一キロ程度のゆるやかな減量補助作用を期待して使います。運動せずに薬だけで痩せられる薬は世の中にありません。必ず適切な食事療法、運動療法が基本です。吸収されなかった脂肪が便として出ますので、脂肪便という少しベタっとした感じの便が見られますが、脂肪便が見られる人ほどより脂肪分を摂取している証拠になりますから、長期に続けていただくとより減量効果が期待出来る傾向があります。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


 

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