脂質異常症

【脂質異常症とは】

第一に、脂質異常症の治療の目的は冠動脈疾患や脳卒中等の動脈硬化性疾患を予防することです。そのためには、脂質異常症だけではなく、高血圧症、糖尿病、喫煙、肥満、メタボリック症候群、慢性腎臓病等の動脈硬化性疾患の危険因子の包括的管理が重要です。脳血管疾患、心血管疾患を含む包括的なリスク評価としては、日本内科学会「脳心血管病予防のための包括的リスク管理チャート」が有用です。
https://www.naika.or.jp/info/crmcfpoccd

【脂質異常症の検査】

脂質異常症は血液検査によって診断します。採血にて、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(TG)の値を検査します。LDL 140以上、HDL 40未満、TG 150以上の場合、脂質異常症と診断します。普段の検診項目にも含まれているので検診で引っかかるのをきっかけに受診される場合も多いです。上記項目の中でも特に重要なのが、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールです。200人から500人に1人程度、家族性にコレステロールが高いという方がいますが、これは遺伝的な体質によるなので、心筋梗塞予防のためには早期から確実な脂質低下の治療が必要です。家族性高コレステロール血症かどうかはある程度原因遺伝子が特定されて来ており、遺伝子検査希望される場合は専門医療機関を紹介します。LDLが非常に高い値の場合、何年も放置している場合は既に動脈硬化を来しているリスクがありますので、必要に応じて冠動脈CTや頸動脈エコー等、動脈硬化の有無と程度を評価します。

【LDLコレステロールと冠動脈疾患の関係】

LDLコレステロール値と冠動脈イベントの発症率について、2004年の「Journal of the American College of Cardiology」にまとめた図が有名です。上図から、LDLコレステロール値と冠動脈イベント発症率はほぼ直線的に比例関係にあることがわかります。図からわかることは、一次予防、二次予防を問わず、LDLコレステロールの値が高ければ高いほど心筋梗塞のリスクは高くなり、LDLコレステロールの値が低ければ低いほど心筋梗塞を起こすリスクは低いということがわかります。検診等では便宜上、LDLコレステロールの値を120や140で基準値を設定することが多いのですが、実際はLDLコレステロールの値に適正値というのはなく、低ければ低いほど良いことがわかっています。これを「the lower the better 」と表現します。LDLは低ければ低いほど良く、これは、血圧が低過ぎれば低血圧症で倒れてしまうこと、血糖が低過ぎれば低血糖で倒れてしまうこととは対照的で、LDLは低過ぎることによる害はないことがわかっています。

【脂質異常症の治療】

脂質異常症の治療は大きく、食事療法、運動療法、脂質を下げる薬の3つに分かれます。LDLの値は低ければ低いほどいいです。どういった治療法でもよいのですが、大事なことは脂質をしっかりと下げ、それを継続することです。管理目標値としては、まず冠動脈疾患の既往の有無、冠危険因子、生活習慣、家族歴等から発症リスクを評価します。具体的には、吹田スコアという絶対リスクによって評価を行います。
http://www.j-athero.org/publications/gl2017_app.html

具体的には、LDLコレステロールの管理目標値は、低リスク群で160、中リスク群で140、高リスク群で120、二次予防群では100未満、さらにハイリスク群では70未満です。HDL、TGは管理目標値は同一です。吹田スコアは上記リンクから30秒程度で計算可能です。

脂質異常症の一番の原因は、家族性の場合を除いて、ズバリ、脂質の摂り過ぎです。脂っこいもの、揚げ物、油がいっぱいのラーメン、肉の脂身、動物脂(牛脂、ラード、バター)、乳製品など脂質摂り過ぎがないか食生活を見直してみてください。油物は食べていないと思われる方は、油っぽくない脂質に注意です。特に乳脂肪も動物性脂肪ですので、生クリーム、バター、チーズ、カスタード、菓子パン、清涼飲料水、クリーム入りのコーヒー、など、一見油ものっぽくはないですが、動物性脂肪の摂り過ぎがないか振り返って見てください。乳製品や加工食品は脂っぽい食感でないためか脂質を摂っている意識が薄いことも多いので注意です。一方で、青魚などの魚系の油、植物系の油などは善玉コレステロールを上げる作用があり、青魚を生成したEPA製剤、DHA製剤などは医薬品にもなっています。魚、大豆、野菜、海藻、きのこの摂取を増やすことも良いです。オリーブオイルは基本は良質な脂質と言われていますが、粗悪なもの、日が経ってしまったものは飽和脂肪酸や中性脂肪が多い場合もあり、注意が必要です。

運動療法としては、中程度以上の有酸素運動を一日合計30分以上、毎日続けることが望ましい、少なくとも週3日以上を目標とします。具体的には、ウォーキング、速歩、水泳、エアロビクスダンス、スロージョギング、サイクリング、ベンチステップ運動などです。適度な運動であれば運動の種類にこだわり過ぎる必要はありません。大切なのは生活習慣として続けられることですので、普段の生活で続けられる運動を選びましょう。

【脂質異常症の薬】

脂質異常症の薬は、食事や運動で十分に脂質が下がらない場合に開始となります。脂質の薬は一度始めたら一生辞められなくなるのか?、いつまで飲めばいいのか?という質問に対しては、治療目標値をベースに考えます。LDLを140未満、心筋梗塞後の再発予防であればLDLを100未満といった値が目標です。具体的には、脂質の目標値をLDL 140未満とした場合、脂質の薬を飲み始めて、例えばLDLが180から140に下がったとします、すると、薬で下がっている効果の分は40前後と考えられますから、食事療法と運動療法でしっかりと脂質を下げ、例えば一年後にLDLが90くらいでしっかりと安定したとすれば、その後、薬を辞めたとしてもLDLは130前後に戻るだけですので、薬を辞めても大丈夫と判断します。下記にお茶の水循環器内科でよく出る薬をまとめました。

・クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、リポバス(シンバスタチン)、ローコール(フルバスタチン)、メバロチン(プラバスタチン)、悪玉コレステロールを強力に下げるスタチンと呼ばれる基本薬で、心筋梗塞を強力に抑制する効果が確立している薬です。特に飲めない理由がない限り積極的に使います。スタチンは100人中1人くらいの頻度で肝機能障害や筋障害が出ることがありますが、残り99人は問題なく内服継続出来ます。内服後最初の4週間程度で、LDLがしっかりと下がっていること、肝機能障害や筋障害等の副作用が問題ないことを採血でチェックします。

・ゼチーア(エゼチミブ)、腸からのコレステロールの吸収を抑える薬です。上記の薬で十分に下がらない場合に併用します。

・ベザトール(ベザフィブラート)、リピディル(フェノフィブラート)、パルモディア(ペマフィブラート)、主に中性脂肪を重点的に下げる作用です。主に中性脂肪だけ高い場合に使います。コレステロールと中性脂肪、両方とも正常値であることが勿論望ましいのですが、どちらか一方下げるのが大事かと言われたら、悪玉コレステロールを下げることが優先です。

・レパーサ(エボロクマブ)、プラルエント(アリロクマブ)、PCSK9阻害薬と呼ばれる注射型の治療薬です。強力にLDLコレステロールを下げて、心筋梗塞を抑制します。

・コレバイン(コレスチミド)、クエストラン(コレスチラミン)、陰イオン交換樹脂、レジンと呼ばれる薬です。上記の薬で十分に下がらない場合に併用します。

・ロレルコ(プロブコール)、家族性高コレステロール血症等で黄色腫の退縮を期待して使います。

・ユベラ(トコフェロールニコチン酸エステル)、ニコチン酸系薬です。末梢血管循環改善作用などを期待して使います。

・エパデール(イコサペンタエン酸エチル)、ロトリガ(オメガ-3脂肪酸エチル)、多価不飽和脂肪酸です。善玉コレステロールを上げる作用とともに、弱い抗血小板作用があります。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


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