息切れの診療の進め方

【息切れとは】

息切れとは、呼吸困難(dyspnea)とほぼ同義で、息苦しさ、呼吸がしにくい感じ、呼吸をする時に努力感、苦しさを伴う自覚症状の総称です。一方で、呼吸不全(Respiratory Failure)とは、呼吸の何らかの障害により、酸素と二酸化炭素のガス交換が障害されている状態のことで、動脈血酸素分圧(PaO2)60Torr以下の状態と医学的に定義されています。

【息切れの原因】

息切れの鑑別疾患は多岐に渡ります。まずは大きく、循環器疾患、呼吸器疾患、その他、に大きく分けることが出来ます。具体的には下記に詳しくまとめました。循環器疾患としては、致死的疾患、特に冠動脈疾患、心不全等を精査除外することが重要です。循環器疾患の次に可能性として考えなければならないのが呼吸器疾患です。代表は気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患です。

・循環器疾患(心不全、弁膜症、狭心症、心筋梗塞、心筋炎、心筋症、不整脈、他)

・呼吸器疾患(気管支喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患、気胸、肺炎、気管支炎、肺塞栓症、他)

・内科的疾患(貧血、低血圧症、糖尿病、肝機能障害、腎機能障害、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、副腎機能低下症、他)

・悪性腫瘍

・薬剤性、カフェイン、喫煙、アルコール、他

・ストレス性、心臓神経症、パニック障害、不安神経症

・その他、原因不明、上記にいずれも明らかな異常を認めないもの

また、息切れ、というより、疲れやすさ、だるさ、という漠然とした症状からは、貧血、低血圧症から、糖尿病、肝機能障害、腎機能障害、悪性腫瘍まで、幅広い疾患が鑑別に上がります。ストレス性、明らかな異常を認めない場合も多いです。その場合は、循環器疾患、呼吸器疾患、致死的な疾患を否定するということが目標になります。

【息切れの診療の進め方】

循環器内科の役割は、息苦しさの原因として致死的疾患、心不全や冠動脈疾患を精査することです。具体的には、まずは心電図、胸部レントゲンの2つにて息苦しさを引き起こす疾患を幅広く調べます。心不全の有無と程度の評価には採血にてBNPまたはNT-proBNP、心エコー検査が有用です。冠動脈疾患を強く疑った場合には冠動脈CT、心臓MRI、心臓カテーテル検査を追加します。心不全の精査としては、心エコー検査、心臓MRI検査を進めて行きます。

・心電図検査

・胸部レントゲン

・心筋逸脱酵素迅速検査(トロップT、ラピチェク、等)

・採血(心機能、凝固、甲状腺機能、貧血、炎症反応、他)

・冠動脈CT、心臓MRI、心エコー、心臓カテーテル検査、

・胸部CT、呼吸機能検査、上部消化管内視鏡検査、他

・循環器疾患が否定出来た場合、他の適切な診療科へ紹介

心不全を強く疑った場合には、心エコー、心臓MRIを追加します。呼吸器疾患、特に気管支喘息との鑑別として呼吸機能検査にて一秒率の計測を行うこともあります。貧血、糖尿病、肝機能障害、腎機能障害、甲状腺機能異常等を疑った場合は、幅広く採血検査が必要です。悪性腫瘍を疑った場合には各種画像検査、適切な診療科に紹介しています。

【検査の費用】

息切れの原因は問診と身体診察のみである程度特定出来ることもあれば、確定診断を付けることが難しい場合もあります。必要に応じて各種検査を進めて行きます。3割負担の場合、一般的な問診、心電図、レントゲン、心機能等の採血で、5000円程度、心臓エコー、心臓MRI、冠動脈CTなどは、それぞれ、4000円、8000円、8000円程度です。呼吸器疾患、特に気管支喘息との鑑別として呼吸機能検査にて一秒率の計測を行うこともあります。漠然とした全身症状で、幅広く調べていく場合にはさらに、追加で採血項目、各種画像検査が必要になる場合があります。受付または主治医までご相談ください。