卵円孔開存

【卵円孔開存とは】
卵円孔とは出生前、胎児期に右心房と左心房をつなぐ孔で、胎児期には肺呼吸をしていないため、血液は卵円孔を通り、右心房→左心房へと流れています。出生後は肺呼吸が始まるに伴い、卵円孔は通常2、3日程度で自然閉鎖し、卵円窩となり、以後は右心房と左心房の間が血液が混ざらないようになっています。この卵円孔が自然閉鎖せずに残っている状態を卵円孔開存(patent foramen ovale: PFO)と言い、成人の20-25%に認めると言われています。

【卵円孔開存と脳塞栓症】
卵円孔開存は人口の20-25%と多いもので必ずしも全例治療が必要となる訳ではありません。しかしながら、静脈系に出来た血栓が卵円孔を通り、右心房、左心房、左心室から脳梗塞や一過性脳虚血発作の原因になることがあると言われています。これを心房細動による心原性脳塞栓症等の動脈系の脳塞栓症とは区別して、奇異性脳塞栓症(Paradoxical cerebral embolism)と呼びます。右左シャントを認める疾患では奇異性脳塞栓症を引き起こすリスクがありますが、卵円孔開存もその一つであると言われています。

【卵円孔開存の治療方針】
まず第一に、卵円孔開存は人口の20-25%と多いもので必ずしも全例治療が必要となる訳ではありません。卵円孔閉鎖術後も脳梗塞または一過性脳虚血発作の発生率に差がなかったという報告もあり、本当に卵円孔開存による奇異性脳塞栓症が原因の脳梗塞かどうかを総合的に判断する必要があります。一方で、明らかに卵円孔開存を原因とした奇異性脳塞栓症を繰り返していると考えられる場合には卵円孔閉鎖術の適応を考慮します。卵円孔閉鎖術には、外科的閉鎖術と経皮的カテーテル卵円孔閉鎖術があります。
卵円孔開存を伴う脳梗塞で深部静脈血栓症がある場合はワーファリン(ワルファリン)による抗凝固療法の適応となります。PT-INR 2.0-3.0を目安にコントロールします。
脳梗塞の既往のない卵円孔開存に対しては治療方針は定まっていません。一次予防として脳梗塞予防を行う場合は、上記の二次予防に準じた抗凝固療法を行いつつ、卵円孔閉鎖術の適当を考慮します。詳しくは日本循環器学会「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017 年改訂版)」をご覧ください。
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ichida_h.pdf