WPW症候群

【WPW症候群とは】

WPW症候群とは、不整脈の一種です。Wolff-Parkinson-White syndromeの略で、発見者の3名の名前から名付けられました。心臓の電気の伝わり、電気伝導路には通常1本ですが、もう1本kent束と呼ばれる副伝導路という通り道があるという病気です。通常の伝導路は、洞房結節、心房、房室結節、His束、脚、プルキンエ線維、心室と伝わりますが、WPW症候群では、kent束と呼ばれる副伝導路から電気的興奮が伝わり、早期興奮波、心電図所見でδ波という波形が認められるのが特徴です。原因は生まれつき、先天性であると言われています。

【WPW症候群による頻脈発作】

WPW症候群は非発作時には何の症状もありません。WPW症候群の方の中で一定数、WPW症候群による頻脈発作、上室頻拍を引き起こします。これは、通常の伝導路とkent束の副伝導路とで、リエントリー回路という電気回路を形成してしまい、電気的興奮が心房と心室の間をクルクルとして回る回路を形成してしまうことによって起こります。WPW症候群の頻拍発作は、脈拍数が150-300回にも達し、自覚症状としては激しい動悸、頻脈を感じます。WPW症候群による頻脈発作は、突然始まり、突然停止するのが特徴です。心電図、ホルター心電図によって確定診断します。

【WPW症候群の治療】

WPW症候群の治療は、頻脈発作をどの程度起こしているかに寄ります。実は、WPW症候群であっても、一生一回も頻脈発作を起こさない人がおり、一回も頻脈発作を起こしていない場合は特別治療の必要はありません。一方で、中には頻繁にWPW症候群による頻脈発作を起こる方がいます。明確なルールはありませんが、一年に1回程度や年に1回未満であれば経過観察、一年に数回頻脈発作を起こす場合はカテーテルアブレーションという治療を行います。毎月、毎週のように頻脈発作を起こしている場合は、頻脈自体が心臓の筋肉に影響を与えてしまうことがあるため、カテーテルアブレーション治療を行います。頻脈発作の頻度が少なくても、著しい苦痛を感じている場合も、カテーテルアブレーションにって治療可能です。また、WPW症候群に心房細動という不整脈を合併すると、頻脈発作から心室細動という致死的不整脈を来してしまうリスクがあるため、カテーテルアブレーション治療を行います。カテーテルアブレーション治療とは、カテーテルという細いワイヤーを手首や足の付け根から挿入し、心臓までアプローチしていき、問題となっている副伝導路、kent束を見つけて、電気的に焼き切ることで、異常な伝導路を治療します。治療成績は非常によく、90%以上の成功率でWPW症候群は治癒します。治療成績がよい治療であるため、本人とよく相談し、希望される場合はカテーテルアブレーション専門の病院へ紹介します。経過観察の場合は、年に1回程度は心電図またはホルター心電図を取り、頻脈発作が起きていないかどうかをチェックします。動悸症状が変わった場合には、その都度受診するようにします。

【WPW症候群による頻脈発作時の治療】

WPW症候群による頻脈発作を今起こしている場合は発作時の治療を行います。サンリズム(ピルシカイニド)、ワソラン(ベラパミル)、シべノール(シベンゾリン)、アデホス(アデノシン三リン酸)、迷走神経刺激法、電気ショックなどがあります。