抗リン脂質抗体症候群

【抗リン脂質抗体症候群とは】
抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome: APS)とは、抗リン脂質抗体という自己抗体が陽性で、全身の血栓症を来す疾患です。また、女性では習慣性流産、不育症と関わっていることが知られています。抗リン脂質抗体として、ループスアンチコグラント(LAC)、抗カルジオリピン抗体(aCL)、抗グリコプロテイン抗体等が陽性となることが特徴です。全身性エリテマトーデス(SLE)等の自己免疫疾患に続発する続発性抗リン脂質抗体症候群と、原発性抗リン脂質抗体症候群とがあります。詳しくは下記ページをご覧ください。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000730.html

【抗リン脂質抗体症候群の診断基準】
国際分類基準案(2006年札幌クライテリアシドニー改変)という診断基準があります。具体的には、臨床基準1項目以上、かつ検査基準1項目以上が存在するとき、抗リン脂質抗体症候群とします。
臨床基準
1、血栓症:画像検査や組織学的検査で確認された動脈、静脈、小血管での血栓症
2、妊娠に伴う所見:
a、妊娠第10週以降の形態学的な正常な胎児の原因不明の死亡
b、重症の子癇前症・子癇または高度の胎盤機能不全による妊娠第34週以前の形態学的な正常な児の早産
c、母体の解剖学的・内分泌学的異常、染色体異常を除外した、妊娠第10週以前の3回以上連続した自然流産
検査基準(12週間以上5年未満の間隔で2回以上陽性となる)
1、ループス抗凝固因子陽性
2、ELISAで測定したIgG/IgM抗カルジオリピン抗体中等度以上陽性(40U/ml以上)
3、ELISAで測定したIgG/IgM抗β2-グリコプロテインI抗体陽性(>99パーセンタイル)
詳しくは難病情報センターのページをご覧ください。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4102

【抗リン脂質抗体症候群の治療】
抗リン脂質抗体症候群と診断が確定した場合、または疑われる場合には専門の診療科を紹介します。抗リン脂質抗体症候群のみ陽性で、特別の臨床症状を認めない場合は経過観察することが多いです。血栓症を繰り返している場合はアスピリンまたはワルファリン等による予防療法を行います。具体的には、
A、これまで血栓症がなく、抗リン脂質抗体陽性だけの場合(一次予防):妊娠合併症の既往がない限り、抗体陽性のみでは薬物による一次予防は不要
B、血栓症の既往を有するがAPSの診断には至らない抗リン脂質抗体陽性者:低用量アスピリンなどの抗血小板薬
C、血栓症の既往を有するAPS診断例(二次予防)
1、静脈血栓症の既往を有する例:INR 2~3のワルファリンによる抗凝固療法
2、動脈血栓症の既往を有する例
脳梗塞、虚血性心疾患(塞栓症を除く)の場合:低用量アスピリンまたはプラビックス(クロピドグレル)またはワルファリン(INR 3~4)
塞栓症、脳梗塞虚血性心疾患以外の血栓症の場合:INR 2~3のワルファリン
3、治療下での血栓症の再発:INR 3~4のワルファリン、または低用量アスピリンとワルファリン(INR 2~3)の併用、または未分画もしくは低分子ヘパリン皮下注
薬物療法以外としては、喫煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満などの血栓症のリスクがあればそれぞれ介入
詳しくは下記ページをご覧ください。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000730.html