【高血圧緊急症とは】
高血圧緊急症(Hypertensive emergency)とは、血圧が急激に上昇してしまうことによって、心臓、脳、腎臓、網膜、大血管など臓器障害の急速な進行を来している状態です。血圧は、180/120mmHgを超える重症高血圧で、200を超えることもあります。重度の高血圧であっても臓器障害を来していない場合は、高血圧切迫症(hypertensive urgency)として扱います。
【高血圧緊急症の臓器障害】
高血圧性脳症、脳血管障害
急性心不全、急性心筋梗塞、不安定狭心症
急性大動脈解離、大動脈瘤切迫破裂
急性肺水腫
急性腎不全
子癇
【高血圧緊急症の治療】
速やかに降圧をします。ニカルジピン、ジルチアゼム、ニトログリセリン、ニトロプルシド、ヒドララジン、フェントラミン、プロプラノロール、など、短時間作動型で静脈注射で調整可能なものが望ましいです。急性心不全や急性肺水腫を伴っている場合は、フロセミド、カルペリチドなどのも追加します。
一般的に、初めの1時間以内では平均血圧で25%以上は降圧せず、次の2-6時間では160/100-110mmHgを目標とし、初期降圧目標に達したら内服薬を開始し、注射薬は用量を漸減しながら中止していき、経口の降圧薬へ切り替えて行きます。
臓器障害の進行を認めない場合、高血圧切迫症の場合は、急速な降圧が予後を改善するというエビデンスは特にないため、通常の高血圧と同様に血圧を下げて行きます。
詳しくはMindsのページをご覧ください。
→https://minds.jcqhc.or.jp/n/cq/D0000238
【二次性高血圧症の鑑別】
何かの明らかな病気があって、その病気の症状の一つとして血圧が上昇している場合に、二次性高血圧症と言います。高血圧症患者さん全体の10%程度と言われています。
二次性高血圧症を疑う場合:
・初診時
・若年性の高血圧症
・急性に増悪する高血圧症
・高度の高血圧症
・血圧変動の激しい高血圧症
・薬剤抵抗性の高血圧症
・腎機能障害を伴う場合
・電解質異常を伴う場合
・その他、二次性高血圧症を疑う臨床症状を認める場合
二次性高血圧症の原因:
二次性高血圧症の原因は、ホルモンの異常、血管の異常、腎臓病など、多岐に渡ります。この中でも頻度が高いのが、原発性アルドステロン症、睡眠時無呼吸症候群と言われています。それぞれ専門医の担当領域になりますが、簡潔に説明します。
・原発性アルドステロン症
血圧を上げるアルドステロンというホルモンが過剰で血圧が上がる病気です。血液検査でカリウム低値を示すことがあります。まずは採血にてレニン活性、アルドステロン、腹部CTなどで調べて行きます。
・褐色細胞腫
血圧を上げるカテコラミンというホルモンが過剰で血圧が上がる病気です。採血、血中カテコラミンの値を調べて行きます。
・甲状腺機能異常
血圧にも関わる甲状腺ホルモンというホルモンが異常で血圧が上がる病気です。採血にてTSH、fT3、fT4などの甲状腺機能を調べて行きます。
・睡眠時無呼吸症候群
睡眠中の呼吸停止が原因で血圧を上げる交感神経の緊張が過剰になって血圧が上がります。まずは睡眠時無呼吸検査で調べて行きます。
・クッシング症候群
血圧を上げるステロイドというホルモンが過剰で血圧が上がる病気です。まずは採血にてACTH、コルチゾールなどを調べて行きます。
・末端肥大症
血圧を上げる成長ホルモンというホルモンが過剰で血圧が上がる病気です。採血にてGH、IGF-I、頭部MRIなどで調べて行きます。
・腎血管性高血圧
腎臓へ血液を送る血管に異常があって血圧が上がる病気です。まずは採血、腹部血管検査にて調べて行きます。
・腎実質性高血圧症
糖尿病性腎症や糸球体腎炎などの慢性腎臓病が原因で血圧が上がる状態です。まずは腎疾患の既往歴を確認します。
・薬剤性高血圧症
血圧を上げる作用のある薬剤の影響で血圧が上がる状態です。まずは服薬歴を確認します。処方薬だけではなく、一般薬、サプリメント、漢方、健康食品なども関係していることもあります。薬剤ではありませんが、喫煙は明らかに血圧を上げる原因になります。
他、専門的になってしまうため割愛しますが、稀な遺伝疾患など、適切な専門医へ紹介などし、血圧が上がる稀な病気をさらに詳しく調べることがあります。
高血圧症→https://循環器内科.com/ht
二次性高血圧症→https://循環器内科.com/sht
詳しくは主治医までご相談ください。