カテーテルアブレーション

【カテーテルアブレーションとは】

カテーテルアブレーション(Catheter ablation)とは、カテーテルを用いて不整脈を引き起こす心臓の異常な心筋を熱で焼灼して治すという不整脈の治療法です。心臓は刺激伝導系という一定の電気刺激で正常な動きをコントロールしています。不整脈とは刺激伝導系に何らかの異常があって正常な脈ではなくなることです。特に頻脈性不整脈では、正常な刺激伝導系以外に、異常自動能やリエントリーが原因ということがわかって来ています。不整脈を起こしている原因を特定して、そこを熱で異常が電気刺激を起こさないようにする治療法です。カテーテルアブレーション治療は、心房細動、心房粗動、WPW症候群、房室結節リエントリー性頻拍、心房頻拍、上室性頻脈性不整脈に対する房室ブロック作成術、心室期外収縮、心室頻拍などに対して有効です。詳しくは日本不整脈心電学会、国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-3/lecture-3-b

「電気生理学的検査・カテーテルアブレーション」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/arrhythmia/d1.html

【カテーテルアブレーションの適応】

カテーテルアブレーション査の適応について「不整脈の非薬物療法ガイドライン」に目安が記載されています。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン」では、ACC/AHAガイドラインに基づき、推奨度を以下の4つに分類されています。

(1)クラスⅠ:有益であるという根拠があり,適応であることが一般に同意されている

(2)クラスⅡa:有益であるという意見が多いもの

(3)クラスⅡb:有益であるという意見が少ないもの

(4)クラスⅢ:有益でないまたは有害であり,適応でないことで意見が一致している

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

以下、各論です。

心房細動

ClassⅠ:

1.高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認めず,かつ重症肺疾患のない薬物治療抵抗性の有症候性の発作性心房細動で,年間50例以上の心房細動アブレーションを実施している施設で行われる場合

ClassⅡa:

1.薬物治療抵抗性の有症候性の発作性および持続性心房細動

2.パイロットや公共交通機関の運転手等職業上制限となる場合

3.薬物治療が有効であるが心房細動アブレーション治療を希望する場合

ClassⅡb:

1.高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認める薬物治療抵抗性の有症候の発作性および持続性心房細動

2.無症状あるいはQOLの著しい低下を伴わない発作性および持続性心房細動

ClassⅢ:

1.左房内血栓が疑われる場合

2.抗凝固療法が禁忌の場合

心房粗動

ClassⅠ:

1.頻拍や失神,心不全等の症状,QOLの低下を伴う心房粗動

2.心房細動に対する薬物治療中に出現した通常型心房粗動

3.心房細動アブレーション中に出現するか以前に記録されている通常型心房粗動

ClassⅡa:

1.他の頻拍に対するカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された通常型心房粗動

2.薬物治療抵抗性の非通常型心房粗動

3.パイロットや公共交通機関の運転手等職業上制限となる場合

ClassⅡb:

1.他の頻拍に対するカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された非通常型心房粗動

WPW症候群

ClassⅠ:

1.生命の危険がある心房細動発作または失神等の重篤な症状や,軽症状でもQOLの著しい低下を伴う頻拍発作の既往がある場合

2.早期興奮の有無にかかわらず,頻拍発作があり患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

3.早期興奮があり,頻拍発作はないがパイロットや公共交通機関の運転手等,発作により多くの人命に関わる可能性がある場合

ClassⅡa:

1.早期興奮があり,頻拍発作はないが説明を受けた上で患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

房室結節リエントリー性頻拍

ClassⅠ:

1.失神等の重篤な症状やQOLの著しい低下を伴う頻拍発作の既往がある場合

2.頻拍発作があり,薬物治療の有無にかかわらず患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

ClassⅡa:

1.頻拍発作の心電図が確認されている患者で,電気生理検査で頻拍が誘発されず二重房室結節伝導路のみが認められた場合

2.他の頻拍に対する電気生理検査またはカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された房室結節リエントリー性頻拍

ClassⅡb:
1.頻拍発作の心電図が確認されていない患者で,電 気生理検査で頻拍が誘発されず二重房室結節伝導路のみが認められた場合

ClassⅢ:

1.頻拍発作の既往のない患者において,電気生理検査中に二重房室結節伝導路が認められるが,頻拍は誘発されない場合

心房頻拍

ClassⅠ:

1.症状を有する頻拍起源の限局した再発性の心房頻拍で薬物治療が無効な場合

2.インセサント型心房頻拍

ClassⅡa:

1.症状を有する頻拍起源の限局した心房頻拍で薬物治療が有効な場合

2.症状のない心房頻拍で心室機能低下を伴う場合

上室性頻脈性不整脈に対する房室ブロック作成術

ClassⅠ:

1.重篤な症状あるいは頻拍による高度の心機能低下を伴う,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な上室性頻脈性不整脈で,上室性不整脈に対するカテーテルアブレーションが不成功または施行できない場合

ClassⅡa:

1.QOLの著しい低下を伴う,薬物治療が無効または使用困難な上室性頻脈性不整脈で,上室性不整脈に対するカテーテルアブレーションが不成功または施行できない場合

ClassⅢ:

1.房室伝導を温存した方が有益だと考えられる場合

心室期外収縮

ClassⅠ:

1.心室期外収縮が多形性心室頻拍あるいは心室細動の契機になり,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

2.QOLの著しい低下または心不全を有する頻発性心室期外収縮で,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

3.頻発性心室期外収縮が原因で心臓再同期療法の両室ペーシング率が低下して十分な効果が得られず,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

ClassⅡa:

1.心機能低下を伴うか,または器質的心疾患に伴う流出路起源の頻発性心室期外収縮

2.流出路起源の頻発性心室期外収縮で,薬物治療が有効または未使用でも患者がカテーテルアブレー
ション治療を希望する場合

心室頻拍

Class Ⅰ:

1.心機能低下または心不全に伴う単形性心室頻拍で,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

2.植込み型除細動器が頻回に作動し,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

3.単形性心室頻拍が原因で心臓再同期療法の両室ペーシング率が低下して十分な効果が得られず,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

4.症状がありQOL低下を有する特発性心室頻拍で,薬物治療が有効または未使用でも患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

ClassⅡa:

1.無症状の流出路起源の特発性心室頻拍で,心拍数が著しく速い場合

2.流出路起源の特発性心室頻拍で,薬物治療が有効または未使用でも患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

その他、カテーテルアブレーションの適応については、「不整脈の非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_okumura_h.pdf

【カテーテルアブレーションが必要な場合】

カテーテルアブレーション専門の医療機関に紹介します。都内であれば、心臓血管研究所付属病院、慶應義塾大学病院、東京女子医科大学病院、東京慈恵会医科大学附属病院、東京ハートリズムクリニックなどに紹介することが多いです。詳しくは主治医までご相談ください。

心臓血管研究所付属病院循環器内科(不整脈)→https://www.cvi.or.jp/shinryouka/jynkan-fuseimyaku.html

「不整脈とアブレーション治療」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/treatment/ablation.html