【急性心筋炎とは】
急性心筋炎(acute myocarditis)とは、心臓の筋肉が炎症を起こす病気で、心不全や不整脈などを起こしやすい状態です。原因は、ウイルス性、細菌性、真菌性などの感染症によるもの、自己免疫性、薬物性、放射線被爆によるもの、原因が特定出来ない特発性のものなど多岐に渡ります。
【急性心筋炎の症状】
最も多い経過としてウイルス性の急性心筋炎の場合、最初は、発熱、咽頭痛等の感冒様症状、または嘔吐や下痢の胃腸炎症状などの前駆症状に続いて、息苦しさや浮腫み、動悸や失神等の心不全症状を発症します。明らかな前駆症状を認めないもの、急速に心不全症状や突然死を来すものもあります。経過から、急性心筋炎、慢性心筋炎に分類され、特に急性期に急速にショック状態へ陥り、体外循環補助を必要とした重症度を有する場合を、劇症型心筋炎と呼びます。詳しくは「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」をご覧ください。
→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_izumi_h.pdf
【急性心筋炎の診断】
確定診断は心臓カテーテル検査による心筋生検で、心筋に炎症の所見を認めることです。また急速に心不全を引き起こす疾患、冠動脈疾患や弁膜症などの他の心疾患を除外することも重要です。まずは心電図、胸部レントゲン、心筋トロポニン検査、心機能のマーカーとしてBNPまたはNT-proBNP、心エコー等にて心機能を評価して行きます。心臓カテーテル検査の必要があるかどうか、心臓MRIにて心筋性状を評価していくこともあります。心筋生検は入院が必要な検査ですが、組織型、心機能の詳細な評価に有用です。急性心筋炎と診断された場合には、ウイルス性、細菌性、自己免疫性など、原因が特定出来ないか精査します。早期に診断が難しい病気の一つですが、風邪や胃腸炎症状の後に心不全症状を認めた場合に、急性心筋炎を疑って精査を進めることが大切です。
【急性心筋炎の治療】
急性心筋炎の治療は急性期を乗り切るための支持療法です。急性心筋炎では、1、2週間の急性期を経て、自然治癒、心機能の回復が期待出来ます。
・循環管理
中程度以上の急性心筋炎は原則入院管理が必要になります。治療の主体は、自然治癒までの循環管理です。具体的には、急性心不全の治療として利尿薬やカテコラミン薬、心原性ショックに陥 ったら場合には、大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping: IABP)、経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support: PCPS)などを検討します。
・合併症管理
房室ブロックや致死的不整脈の合併に対して、一時的ペースメーカや直流除細動などで対処します。
・細菌性や薬剤性など、原因が特定出来た場合は原因に対する治療、炎症性サイトカイン過剰状態に対して、ステロイドパルス療法、免疫グロブリン療法などが考慮されることもあります。
・ 無症状、軽微徴候例における対処としては、安静、バイタルサインのモニタリング、経過観察のみで自然軽快へ向かう例もあります。
さらに、特徴的な心筋炎として、巨細胞性心筋炎、好酸球性心筋炎、慢性心筋炎、小児心筋炎、新生児心筋炎などがありますが、 詳しくは「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」をご覧ください。
→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_izumi_h.pdf
【まとめ】
急性心筋炎は致死的なものもある中で、無症状で経過するものも幅広くあります。急性心筋炎は風邪や胃腸炎の後に発症することがあるというと、大きな不安を抱く方もいますが、風邪を引いた後に全員が、急性心筋炎を発症する訳ではありません。心電図、胸部レントゲン、採血にて心機能の評価、心エコーなど低侵襲なものから心機能の評価をしていきます。詳しくは主治医までご相談ください。