【拡張型心筋症とは】
拡張型心筋症(Dilated cardiomyopathy: DCM)とは、心筋症の一つで、「左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とする疾患群」と定義され、左室の異常な拡大が特徴となる病気です。進行すると左室機能低下から心不全を引き起こします。原因は不明ですが、いくつかの遺伝性素因、ウイルス感染等に対する自己免疫異常、心筋への自己抗体が関与していることがわかって来ています。特定疾患として研究の対象となっています。詳しくは難病情報センターのページをご覧ください。
→https://www.nanbyou.or.jp/entry/3986
【拡張型心筋症の症状】
初期の拡張型心筋症は無症状で、検診にて心電図異常や胸部レントゲンにおける心拡大等の指摘をきっかけに精査にて見付かります。拡張型心筋症は進行すると左室機能低下から心不全を引き起こします。進行すると、不整脈や不整脈による塞栓症が症状となることもあります。
【拡張型心筋症の診断】
診断は主に心エコーにて、左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とした所見を評価します。また、基礎疾患ないし全身性の異常に続発し類似した病態を示す「特定心筋症」を除外する必要があります。具体的には、虚血性心筋症、高血圧性心筋症、肥大型心筋症拡張相、心サルコイドーシス、アミロイドーシス、心筋炎、不整脈原性右室心筋症、アルコール性心筋症、脚気心、左室緻密化障害、筋ジストロフィーに伴う心筋疾患、ミトコンドリア心筋症、薬剤誘発性心筋症、Fabry 病、産褥心筋症(周産期心筋症)などの、他の二次性の原因を除外することが重要です。心エコーに加えて、採血、心臓MRI、冠動脈カテーテル検査、心筋生検などが必要になる場合もあります。不整脈の合併についてホルター心電図検査にて精査します。
【拡張型心筋症の治療】
拡張型心筋症の治療については、エビデンスが確立していない部分も多いのが現状ですが、ACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬、レニン拮抗薬、β遮断薬、拡張型心筋症の病態を考えた場合に抑制的に作用すると考えられています。また、拡張型心筋症の合併症に対して適宜適切な治療を行って行きます。詳しくは、「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン」をご覧ください。
「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_tomoike_h.pdf
・ACE阻害薬、ARB
アジルバ(アジルサルタン)、オルメテック(オルメサルタン)、ブロプレス(カルデサルタン)、ディオバン(バルサルタン)、ミカルディス(テルミサルタン)、イルベタン(イルベサルタン)、ニューロタン(ロサルタン)、レニベース(エナラプリル)、タナトリル(イミダプリル)、コバシル(ペリンドプリル)、ACE阻害薬、ARBと呼ばれる降圧薬です。心筋リモデリング抑制効果を期待して使います。
・アルドステロン拮抗薬、レニン拮抗薬
アルダクトン(スピロノラクトン)、セララ(エプレレノン)、ラジレス(アリスキレン)、アルドステロンまたはレニンをブロックします。拡張型心筋症の進行抑制を期待して使います。
・βブロッカー
アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、セロケン(メトプロロール)、テノーミン(アテノロール)、インデラル(プロプラノロール)、交感神経をブロックします。
・禁煙
一般的に全ての心疾患において禁煙は推奨されます。
・非薬物療法
非薬物療法としては、ペースメーカー埋込術、植込型除細動器、心室再同期療法、補助人工心臓、心移植
拡張型心筋症の根本治療は心移植です。または、心移植までの進行抑制を目指した治療がメインになります。必要に応じて大学病院等に紹介しています。また大学病院等による年一回程度の経過観察通院と、普段の定期通院と、医療機関で協力しながら組み合わせてフォローしていくケースも多いです。お気軽に主治医までご相談ください。詳しくは国立循環器病研究センター、慶應義塾大学病院のページをご覧ください。
→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph104.html
→https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000200.html
全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。