【低血圧症とは】
低血圧症とは、十分な血圧が保てないことが原因で、立ちくらみ、ふらつき、めまい、長時間立っているのが辛い、急に起き上がるのが辛い、横になると楽になる、などの低血圧症の症状を来して、日常生活に支障を来たしている状態です。重症の低血圧症の場合、動悸、頻脈、冷汗、失神、転倒、などの症状を来すこともあります。全身のだるさ、朝起きられない、やる気が出ない、などの漠然とした症状のこともあります。
【低血圧症の診断】
厳密な定義はありませんが、一般的に収縮期血圧100mmHg未満を低血圧と呼びます。血圧が低めであっても特に日常生活に支障を来たしていない場合は特別に治療も必要ありません。低血圧で、低血圧症の症状を来しており、日常生活に支障を来している場合、低血圧症と診断し、治療して行きます。収縮期血圧が90mmHgを切ると、何らかの低血圧症の症状を来している場合が多いです。低血圧症と似た疾患として、起立性低血圧症(Orthostatic hypotension)があります。ヘッドアップティルト試験(Head up tilt test)と言い、横になった姿勢から起立し、3分間で収縮期血圧で20~30mmHg以上の低下が認められた場合、起立性低血圧症と診断し、低血圧症に準じて治療して行きます。よく混同されますが、貧血(Anemia)と低血圧症(Hypotension)は別の病気ですが、低血圧症に貧血、貧血に低血圧症を合併することもしばしばあります。心不全、肝機能障害、腎機能障害、甲状腺機能低下症、睡眠時無呼吸症候群など、似た症状を引き起こす他の疾患が疑われる場合は適宜検査を進めていきます。
【低血圧症の治療】
低血圧症の治療は通常まずは生活改善から行います。食事療法、運動療法、十分な睡眠、規則正しい生活リズム、ストレス管理などが大切です。血圧は低過ぎず、高過ぎず、ちょうどよい具合に、収縮期血圧100~120mmHgくらいを目標にします。なかなか改善しない場合、早く症状を改善したい場合、低血圧症治療薬があります。
・食事療法、規則正しく毎日三食しっかりと食べます。特に朝食を抜くことが多い人は、朝食をしっかりと摂ることが重要です。偏食や好き嫌いをせずに、水分、ミネラル、ビタミン、たんぱく質、炭水化物、脂質、バランスよく食べましょう。塩分は適度に、一日8gを超えない範囲で、摂り過ぎないように注意しましょう。朝食時の適度なカフェイン摂取もよいようです。
・運動療法、全身を使った有酸素運動が重要です。運動不足であれば、毎日少しづつでもいいので生活に運動を取り入れましょう。ウォーキング、軽めのジョギング、水泳、何でも構いません。定期的に継続可能な運動を選びましょう。
・十分な睡眠、規則正しい生活、ストレス管理、長期間の立位を避ける、急に立ち上がらないでゆっくりと起き上がる、等、睡眠不足、生活リズムの乱れ、ストレスなども自律神経のバランスの悪化要因です。改善出来るところがないか生活習慣を見直しましょう。
・メトリジン(ミドドリン)、リズミック(アメジニウム)、エホチ-ル(エチレフリン)、低血圧症治療薬です。血管収縮作用、交感神経刺激作用などで血圧を適度に保ちます。
・フロリネフ(フルドロコルチゾン)、重症の低血圧症に対して、鉱質コルチコイド作用の強いステロイド薬を使う場合もあります。副作用も多いので、上記のメトリジンで十分に症状改善しない場合の選択肢となります。
・補中益気湯(ほちゅうえきとう)、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、四君子湯(しくんしとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)、苓桂朮甘湯(りゅうけいじゅつかんとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、気力、体力を補う漢方です。
全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。