注意:このページでは、胸の痛みの鑑別疾患としての帯状疱疹について記載しています。帯状疱疹の診断がすでに着いている方を皮膚科または一般内科をご受診ください。ご来院いただいても医療機関のご案内となってしまうことを予めご了承ください。
【帯状疱疹とは】
帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus: VZV)の再活性化による抹消神経炎です。通常、皮膚のピリピリ感、チクチク感という前駆症状から始まり、その後、ポチポチと皮膚に疱疹が出現し、神経の走行に添って帯状に広がります。ズキズキ、刺すような強い痛みとともに、疱疹は1週間から2週間ほど続き、次第かさぶたとなって、3週間から4週間ほどで治癒していきます。原因は、水疱瘡(みずぼうそう)、水痘(Varicella)のウイルスで、一度水痘になると水痘が治った後も潜伏感染と言って神経にウイルスが潜んでおり、季節の変わり目、睡眠不足、疲れが溜まっている時、加齢、ストレス、風邪を引いた後、など免疫力が低下した時に、ウイルスが再活性化し、神経に添って帯状に疱疹を伴う抹消神経炎を起こし、帯状疱疹(Herpes Zoster)と呼びます。
【帯状疱疹の診断】
帯状疱疹の診断は症状と皮膚の所見から臨床的に診断します。上図のような明らかに帯状疱疹の所見を認める場合、その場で帯状疱疹と診断可能です。痛みと疱疹は神経の走行に添っていることが特徴で、胸部や腹部では、背中から脇、お腹の真ん中あたりまで、中央を超えないか中央くらいまで片側であることが特徴です。顔面の場合は三叉神経領域、下肢の場合は坐骨神経領域、いずれも神経の走行に一致していることが帯状疱疹の特徴です。帯状疱疹の前駆症状、疱疹が出現するまで数日間には皮膚にはまだ何も所見がない時期があり、最初は何らかの神経痛、その数日後に皮膚に疱疹が出現し、後から帯状疱疹とわかることも実際にはしばしばあります。眼や耳、顔面の神経まで症状が出そうな場合(Ramsay Hunt症候群)、直腸や膀胱の神経まで症状が出そうな場合、眼科や耳鼻科、神経内科などに紹介して詳しく診てもらっています。二カ所同時に帯状疱疹が起こること、両側同時に帯状疱疹が起こることは稀ですが、可能性としてはありえます。いずれも、免疫力の低下と関係しているため、帯状疱疹をあまりに繰り返す、多発する、帯状疱疹が治りが悪い場合、悪性腫瘍など免疫力低下の原因となる全身疾患がないか調べます。
【帯状疱疹の治療】
帯状疱疹の治療は、原因である水痘帯状疱疹ウイルスに対する治療、神経痛の痛みに対する治療、帯状疱疹後神経痛に対する治療があります。
・バルトレックス(バラシクロビル)、ゾビラックス(アシクロビル)、ファムビル(ファムシクロビル)、帯状疱疹の治療薬です。水痘帯状疱疹ウイルスの活動を抑えます。保険のルールで7日間までと決められています。もう少しだけ続ければさらに完璧に治るのに、という場合はしばしば多いのですが、その場合は継続は自費になります。効果は高いのですが、薬価もなかなか高いのが玉にキズです。
・ボルタレン(ジクロフェナク)、ロキソニン(ロキソプロフェン)、カロナール(アセトアミノフェン)、メチコバール(シアノコバラミン)、ノイロトロピン、プレドニン(プレドニゾロン)、痛み、炎症に対して消炎鎮痛薬を使います。帯状疱疹の最重症例には入院でステロイド治療が必要な場合もあります。
・アズノール(アズレン)、リンデロンVG(ベタメタゾン、ゲンタマイシン)、皮膚に対して、消炎鎮痛、二次感染を防ぐ目的で化膿止めなど適宜使います。
・リリカ(プレガバリン)、デュロキセチン(デュロキセチン)、トリプタノール(アミトリプチリン)、神経痛治療薬です。帯状疱疹の後に、神経痛だけが残ることがあり、帯状疱疹後神経痛と言います。夜眠れないほどの激痛、難治性の場合も多く、医療用麻薬や神経ブロック治療など専門的な治療が必要のこともあり、その場合、痛みの専門科、ペインクリニック、麻酔科などで紹介で診てもらっています。
【帯状疱疹の予防】
帯状疱疹の予防には水痘ワクチンが有効です。2016年4月から帯状疱疹予防としての水痘ワクチンが日本でも承認になりました。帯状疱疹の発症頻度を51.3%、重症な帯状疱疹を61.1%、帯状疱疹後神経痛を66.5%、それぞれ予防効果のデータがあります。予防接種は自費になりますが、帯状疱疹の予防に有効ですのでどうぞご検討ください。
また、帯状疱疹は何らかの免疫力低下をきっかけに発症することがほとんどですので、感染症予防の基本として、風邪を引かないよう、日々の体調管理、手洗い、うがい、マスク、さらに、不規則な生活、睡眠不足、ストレス、過労、を避けることが大事です。
全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。