注意:このページでは、胸痛の鑑別疾患としての肋間神経痛について記載しています。肋間神経痛の診断がすでに着いている方はペインクリニックや麻酔科等痛み専門の医療機関をご受診ください。ご来院いただいてもペインクリニックや麻酔科等痛み専門の医療機関へのご案内となってしまうことを予めご了承ください。
【肋間神経痛とは】
環境の変化や何らかのストレス性の要因で、急に胸が痛くなることは珍しくはありません。痛みの性状としては、刺さるような痛み、ズキズキ、チクチク、ピリピリとした痛み、ぎゅっと掴まれるような痛み、などと感じることが多いですが、症状は多彩です。症状が出る時ははっきりしなく、仕事中、パソコン作業中、寝る前の安静時、寝返りや姿勢を変えた時、息を大きく吸った時に、咳のし過ぎなど、など特定の特徴はありません。原因を特定出来ないことも多いですが、過労、睡眠不足、季節の変わり目、寒冷刺激、何らかのストレスが関係していることが多いです。受験勉強、資格勉強、新学期、仕事が忙しい、異動、昇進、転職、恋人との関係の変化、婚約、結婚、同居、引っ越しなど、本人は明らかなストレスだとあまり自覚していなくても何らかの生活の変化が関連していることが少なくありません。
【肋間神経痛の診断】
肋間神経痛の診断は除外診断です。つまり、胸痛の原因として、心疾患等の明らかな原因がないことを確認する必要があります。まずは、狭心症や心筋梗塞の原因となる動脈硬化のリスク因子がないこと、具体的には、高血圧症なし、脂質異常症なし、糖尿病なし、喫煙なし、などを確認し、
(1)心臓の痛みではないこと:労作によって症状が変わらないこと、必要に応じて心電図、採血
(2)肺や気管支の痛みではないこと:呼吸によって症状が変わらないこと、必要に応じて胸部レントゲン
(3)胃や食道の痛みではないこと:食事によって症状が変わらないこと
(4)筋肉や骨の痛みではないこと:姿勢によって症状が変わらないこと、外傷がないこと、必要に応じて胸部レントゲン
(5)皮膚の痛みではないこと:外傷がないこと、帯状疱疹などの痛みではないこと
上記に一つも当てはまる項目がないことを確認します。かつ、肋骨に沿って、チクチク、ズキズキ、ビリビリとした痛みである場合に臨床的に肋間神経痛などと呼びます。つまり、心臓の病気、肺や気管支の病気、胃や食道の病気、筋肉や骨の痛み、皮膚の病気、全て考えにくいことを確認することが大事です。これを除外診断と言います。似たような呼び方として、心臓に問題がないことを強調する意味で「非心臓性胸痛」、ストレス性の関与が強い場合に「心臓神経症」、特別に明らかな原因となる疾患が検査で見付からないことを「非定型胸痛」などいくつか異なる呼び方があったりしますが、いずれも大きな意味の違いはありません。重要なことは、心臓、肺、食道や胃、骨、皮膚などの疾患のいずれでもないことです。
【肋間神経痛の治療】
お茶の水循環器内科では、心疾患が否定された場合は、ペインクリニックや麻酔科等痛みの専門医療機関へ紹介しています。肋間神経痛の治療は、明らかに誘因となるストレス性の誘因があればそれを避けること、そして神経痛に対する対症療法です。参考までに治療の一例を紹介します。完全に症状が消失するまでは二週間から一ヶ月程度様子を見てください。
・ロキソニン(ロキソプロフェン)、ボルタレン(ジクロフェナク)、カロナール(アセトアミノフェン)、他
消炎鎮痛薬です。痛み止めとしての作用とともに神経の炎症を治す作用を期待して使います。内服薬の場合は胃が荒れるのを防ぐため、ムコスタ(レバミピド)などの胃の粘膜を保護する胃薬と一緒に使います。
・メチコバール(B12)
神経の調子を整えるビタミン剤です。主にビタミンB12の成分を使うことが多いです。劇的な効果がある訳ではないですが、特に副作用がなく安く安全なお薬です。
・リリカ(ピレガバリン)、サインバルタ(デュロキセチン)、他
痛みの神経の過剰な興奮を押さえる薬です。神経障害性疼痛と言って、通常の痛み止めで効かない、ピチピチ、チクチクとした痛みが特徴です。眠気やふらつきに注意しながら使います。色々な漢方薬、神経の過剰な興奮を押さえる作用を持つ抗うつ薬、抗てんかん薬、麻酔薬、医療用麻薬、トリガーポイント治療などを組み合わせて使うこともあります。
・デパス(エチゾラム)、ソラナックス(アルプラゾラム)、リーゼ(クロチアゼパム)、等
明らかにストレス性の要因が強い場合は、不安、緊張を和らげる作用の抗不安薬を少量適宜使うこともあります。
お茶の水循環器内科の方針としては、心疾患が否定された場合は、ペインクリニックや麻酔科等痛みの専門医療機関へ紹介しています。