【QT延長症候群とは】
QT延長症候群(Long QT Syndrome: LQTS)とは、心電図上、T波の形態異常を伴うQT 延長を認め、torsade de pointes(TdP)と呼ばれる特徴的な心室頻拍(ventricular tachycardia: VT)や心室細動(ventricular fibrillation: VF)等の致死的不整脈を生じて、突然死を来すリスクのある症候群です。先天性QT延長症候群と後天性QT延長症候群があります。心電図上のQT時間とは、心臓の活動電位持続時間に相当し、様々なイオンチャネルによって制御を受けています。いくつかの原因遺伝子が特定されており、先天性QT延長症候群のうち80%は、QT延長症候群1型(LQT1)、2型(LQT2)、3型(LQT3)のいずれかに分類されます。後天性QT延長症候群は原因遺伝子の検出率は25%程度で、もともとQT延長はないか軽度であるが、外的要因(薬剤、徐脈、低カリウム血症、心不全など)によって著明なQT延長とそれに伴うtorsade de pointes(TdP)を呈する症候群と定義されています。詳しくは日本不整脈心電学会、慶應義塾大学病院のページをご覧ください。
→https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-b
→https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000625.html
【QT延長症候群の診断】
QT延長症候群の診断基準としては、2012年の「SchwartzらのQT延長症候群の診断基準」が有名で、心電図上のQTc値、TdP、Twave alternans、3誘導以上でのnotchedT波、失神や先天性聾の有無の臨床症状、家族歴の有無から、スコアリングを行い、3.5以上を診断確実とします。1.5から3では、ホルター心電図検査、運動負荷試験、カテコラミン負荷試験、アデノシン負荷試験などでリスク評価を行い、最終的には電気生理学的検査の適応を判断します。必要に応じて遺伝子診断の適応を考慮します。
後天性QT延長症候群のうち、何らかの原因に伴うものを二次性QT延長症候群と呼び、薬剤性、徐脈性、低カリウム血症、心不全などが関係します。薬剤性QT延長症候群としては、様々な薬剤がQT延長に関与します。薬剤の投与後に初めてQT延長症候群が明らかになることも珍しくはありません。詳しくは「QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン」「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン」をご覧ください。
→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_aonuma_h.pdf
→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_aonuma_h.pdf
【QT延長症候群の治療】
治療は、急性期治療と、予防療法に分けられます。いずれにせよ、QT延長症候群の診断または疑いが着いた場合には遺伝子検査も含む専門病院へ紹介します。
・急性期治療
致死的不整脈が起こっている最中では、マグネシウム静注、ペーシング、βブロッカー静注、カリウム補正などが挙げられます。可逆的な原因として、急性心筋梗塞に伴うもの、急性心筋炎に伴うもの、電解質異常に伴うものなど、基礎疾患の治療を優先します。
予防療法としては、ペースメーカー、埋込型除細動器の適応を考慮します。遺伝子型によっては、β遮断薬、ナトリウムチャネル阻害薬、カルシウム拮抗薬を使うこともあります。
詳しくは「QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン」をご覧ください。 →https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_aonuma_h.pdf