動悸の診療の進め方

【動悸とは】

動悸とは胸部に感じる様々な異常感覚の総称です。一瞬脈が飛んだように感じるもの、常にドキドキ脈が早く感じるもの、突然始まって突然終わるもの、脈がゆっくりで失神や目眩を起こすもの、突然死の原因になるものまで幅広い自覚症状の総称です。脈に特に異常はなくて、安静時の正常な心拍を知覚しているだけの場合もあります。動悸と不整脈は別物で、動悸は自覚症状の呼び方であるのに対して、不整脈は心電図検査にて脈に異常を認めるものの診断名です。動悸を引き起こす原因は多岐に渡ります。動悸の診療の進め方としては特に致死的疾患を否定することが目標になります。

【動悸の診療の進め方】

動悸の原因の鑑別疾患は多岐に渡ります。具体的には下記に詳しくまとめました。動悸を引き起こす原因は、直接命に関わらないもの、経過観察で問題ないもの、と、精密検査や治療な必要なもの、の大きく2つに分けられます。特に致死的な不整脈かどうかの判断が重要で、症状出現時の心電図記録が鍵を握ります。多くの場合は24時間心電図検査が必要になります。

直接命に関わらないもの、経過観察で問題ないもの:

・不整脈(心室期外収縮、上室期外収縮、洞性頻脈、洞性徐脈、他)

・薬剤性(カフェイン、煙草、アルコール、他)

・ストレス性(不安神経症、過換気症候群、パニック障害、他)

・その他(低血圧症、更年期障害、呼吸性変動、他)

精密検査や治療な必要なもの:

・不整脈(発作性上室性頻拍、発作性心房細動、洞不全症候群、房室ブロック、心室頻拍、心室細動、他)

・不整脈以外の循環器疾患(心不全、狭心症、心筋梗塞、心筋炎、心筋症、弁膜症、他)

・呼吸器疾患(気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺塞栓症、他)

・内分泌疾患(甲状腺機能異常、副腎機能異常、低血糖症、他)

・その他(貧血、発熱、自己免疫疾患、他)

頻度としては、正常洞調律、洞性頻脈、洞性徐脈、期外収縮、貧血、低血圧症、甲状腺機能異常、カフェイン、煙草、アルコールの影響などが多いです。検査の結果、精密検査が必要な不整脈、治療が必要な不整脈が見付かることもあります。中には明らかに原因を特定出来ないものも多いですが、動悸の原因として不整脈や内科的疾患などを否定することが重要となります。動悸の診療の進め方としては特に致死的疾患を否定することが目標になります。

【動悸の検査】

動悸の診療の進め方としては、第一に動悸の原因を確定すること、第二に動悸の原因が確定出来ない場合も致死的疾患を否定することが目標になります。具体的には、主に動悸の原因として、特に不整脈によるものかどうか、動悸を引き起こす内科的疾患がないかどうか、を調べて行きます。不整脈とは症状出現時の心電図検査にて脈の異常を認めるものの総称です。目標は、症状出現時の脈の波形を記録することです。心電図検査、ホルター心電図検査にて、症状出現時の脈の波形を記録出来れば確かな診断が可能です。逆に症状出現時の脈がわからないと、症状から脈の様子をある程度推測することは出来ますが、厳密な意味で確実な診断は困難で、推測にとどまってしまいます。胸部レントゲン、採血等にて動悸を引き起こす他の疾患の可能性を調べます。循環器疾患が否定出来た場合、適切な診療科へ紹介します。

・心電図検査

・ホルター心電図検査

・胸部レントゲン

・採血(甲状腺機能、貧血、心機能、副腎機能、他)

・心エコー、心臓MRI、冠動脈CT、他

・電気生理学的検査、不整脈誘発試験

・埋込型心電図レコーダー

・循環器疾患が否定出来た場合、他の適切な診療科へ紹介

【ホルター心電図検査とは】

来院時の心電図検査で掴まらないことも少なくありません。その場合、ホルター心電図の適応になります。ホルター心電図検査は、外来で出来る不整脈の最も詳しい検査です。私たちの心臓は一日約10万回、脈を打っています。24時間全ての脈を記録して、異常がないかどうかを詳しく調べます。動悸や失神、目眩の症状の場合、まず第一に、症状の原因として心臓に異常があるかどうか、不整脈かそうでないか、が重要です。また不整脈を疑う症状であっても、発作的に症状が出たり出なかったりする場合、発作時の心電図波形の記録が確定診断のために極めて重要です。詳しくはホルター心電図検査のページをご覧ください。

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter