肺気胸

【肺気胸とは】

肺気胸(Lung pneumothorax)とは、肺の一部が破れて空気が漏れて、胸腔内に空気が貯まる病気です。症状は、突然の胸の痛み、息苦しさをきっかけに受診し、胸部レントゲンで見付かることが多いです。胸の痛みは深呼吸や咳、胸郭を動かすような動作で痛むことが特徴です。特に原因となる疾患がない自然気胸(Spontaneous pneumothorax)または原発性気胸(Primary pneumothorax)と、肺気腫、肺癌、肺結核、子宮内膜症などの原因となる疾患がある続発性気胸(Secondary pneumothorax)、交通事故や肋骨骨折などに伴う外傷性気胸(Traumatic pneumothorax)などがあります。自然気胸は繰り返すことも多いです。

【肺気胸の診断】

胸部レントゲンで肺の虚脱を認めれば気胸の診断となります。胸部の聴診では呼吸音減弱が認められます。気胸の診断が確定すれば、縦隔偏位の有無、酸素飽和度、血圧などチェックし、緊急の処置が必要な状態である緊張性気胸(Tension pneumothorax)を来たしていないかをチェックします。通常、胸部レントゲンのみで診断可能ですが、気胸を引き起こす何か原因疾患もないか精査も含めて胸部CTを追加することもあります。胸の痛みで受診した場合は、心疾患の鑑別除外のため心電図検査なども追加になる場合があります。

【肺気胸の原因】

ブラ(Bulla)やブレブ(Bleb)と言って肺の一部や胸膜の一部に嚢胞状に空気が溜まっているところがあり、それが破れることが原因と言われています。背が高く痩せ型の体型は気胸を起こしやすいことがわかっており、気胸体型と呼ばれます。10代から20代の成長期で、骨格の急成長に肺の成長が間に合わずに肺が引き伸ばされてブラやブレブが出来るという説がありますが、よくわかっていません。喫煙歴、気圧の変化、大声で叫んだり、いきんだり、急激な圧が掛かる動作、重いものを持ち上げる動作、楽器の演奏、飛行機、登山、ダイビングなどが関係することもあります。

【肺気胸の重症度評価】

肺気胸と診断したら、重症度評価を行います。肺の虚脱率に応じて、I度(軽度)、II度(中程度)、III度(重度)と評価します。軽度の気胸は安静にて自然治癒することも多いので経過観察します。緊張性気胸と言って、チェックバルブ機構により換気不全を引き起こしている場合は、緊急脱気を行います。中程度の場合は原則的に経過観察のために呼吸器科病棟に経過観察入院します。

【肺気胸の治療】

肺気胸の治療は程度によりますが、中程度以上の肺気胸では胸腔ドレナージ術や手術を行います。ごく軽度の自然気胸は手術をせずに安静で自然治癒を待つ場合もあります。再発予防のため、胸腔鏡下嚢胞切除術、胸膜癒着術、メッシュ術など様々な方法があります。専門医の判断になりますので割愛します。喫煙は気胸のリスクなので再発予防のためには禁煙が基本です。気胸の治療は胸腔ドレナージ等の外科的治療がメインになりますが、対症的に鎮痛薬や鎮咳薬を使います。

・ロキソニン(ロキソプロフェン)、ボルタレン(ジクロフェナク)、消炎鎮痛薬です。気胸の痛みに対して対症的に使います。

・メジコン(デキストロメトルファン)、フスコデ(ジヒドロコデイン、メチルエフェドリン、クロルフェニラミン)、鎮咳薬です。咳のし過ぎは気胸の自然治癒遅延の要因になるので、鎮咳薬を対症的に使います。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。