【洞不全症候群とは】
洞不全症候群(Sick sinus syndrome: SSS)とは、洞房結節というところから正常に心臓の電気刺激がでなくなってしまった状態です。刺激を出すスピードが遅い状態と、刺激が出せない状態になること、刺激が早くなったり遅くなったりバランスよく調節が効かないこと、などで、失神やふらつき症状、眼前暗黒感、頻脈時には動悸症状などがあります。洞房結節不全症(sinus node dysfunction)や洞機能不全症候群とも呼びます。詳しくは日本不整脈心電学会のページをご覧ください。
→https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-a-3
【洞不全症候群の診断】
洞不全症候群の診断は心電図記録によって行います。症状が発作性に出る場合はホルター心電図によって捕まえます。症状出現時の心電図記録が出来れば、特徴的な心電図所見から診断は確定します。洞不全症候群の分類としてRubenstein分類があります。
I、洞性徐脈(Sinus bradycardia):原因が明らかでない心拍数50/分以下の持続性洞性徐脈
II、洞房ブロック(Sinoatrial block: SA Block)または洞停止(Sinus arrest):洞房結節からの電気刺激が一過性に停止または洞房結節から心房に完全に伝わらないこと
心電図上は洞房結節の興奮の波形は検出出来ないため直接的な診断は難しいが、以下の3型があります。
・I型房室ブロック:洞房結節から心房への電気刺激が次第に延長し、心房収縮が脱落する
・II度房室ブロック:洞房結節から心房への電気刺激が突然停止し、心房収縮が脱落する
・III度房室ブロック:完全洞房ブロック、洞停止
III、徐脈頻脈症候群(bradycardia-tachycardia syndrome):徐脈と頻脈を繰り返すこと、心房細動や心房粗動、発作性上室頻拍の合併している場合もあります。
基礎疾患の有無の評価として、虚血性心疾患、甲状腺機能、腎機能、電解質、貧血、薬剤性、心エコー、心臓MRIなどを追加します。一番多い原因は加齢による洞房結節の機能低下です。可逆性の原因があれば治療します。
【洞不全症候群の治療】
症状の有無によってペースメーカーの適応を考慮します。症状のない洞房ブロックや洞停止症状のない洞性徐脈にはペースメーカ植込みの適応はありません。症状がある洞不全症候群に対しては原則的にペースメーカーの適応です。「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」では洞不全症候群に対するペースメーカーの適応について以下のように記載しています。
ClassⅠ:
1、失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感等の症状あるいは心不全があり,それが洞結節機能低下に基づく徐脈,洞房ブロック,洞停止あるいは運動時の心拍応答不全によることが確認された場合.それが長期間の必要不可欠な薬剤投与による場合を含む
ClassⅡa:
1.上記の症状があり,徐脈や心室停止を認めるが,両者の関連が明確でない場合
2.徐脈頻脈症候群で,頻脈に対して必要不可欠な薬剤により徐脈を来たす場合
ClassⅡb:
1.症状のない洞房ブロックや洞停止症状のない洞性徐脈にはペースメーカー植込の適応はない。
必要に応じて電気生理検査による洞結節機能評価を行って適応を決定します。詳しくは「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」をご覧ください。電気生理学的検査やペースメーカーによるが必要な場合は専門の医療機関を紹介します。
・ペースメーカーまでのつなぎとして、一次ペーシング、アトロピン、他、交感神経刺激薬副交感神経遮断薬などを使うことがありますが、根治療法はペースメーカーの埋込です。
「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawas_h.pdf
「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf
「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf