心房粗動

【心房粗動とは】

心房粗動(Atrial flutter:AFL)とは、頻脈性不整脈の一つで、心臓の中の心房というところから一分間に300回前後(200-350回)興奮している状態です。房室結節が脈の伝導を調節しているため、300回の電気刺激が全て心室に伝わる訳ではありませんが、心拍数は150回(2回に1回伝導が伝わった場合)、100回(3回に1回伝導が伝わった場合)と早くなり、頻脈を起こします。75回(4回に1回伝導が伝わった場合)は、あまり自覚症状はないかも知れませんが、健診等の心電図で異常を指摘されて発見されることもあります。200-350回の脈が全て心室に伝わえると、激しい動悸や脈がしっかり出ないことによって失神やふらつき、目眩等の症状を来します。詳しくは日本不整脈心電学会のページをご覧ください。

https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-a-2/

【心房粗動の診断】

心房粗動は心電図検査にて診断します。発作性に起こる場合はホルター心電図が必要になります。心房粗動に特徴的な粗動波(F派)を認めれば診断になります。心房粗動の一番のリスク因子は加齢ですが、急に始まった場合は何か原因がないか、採血、心エコー、冠動脈CT、心臓MRI等にて評価して行きます。

【心房粗動の治療】

治療はカテーテルアブレーションが第一選択です。心房粗動の原因となっている心房内の電気的異常をカテーテルによって治療します。カテーテルアブレーションまでの対症療法として抗不整脈薬を、塞栓症のリスクに応じて抗凝固療法を追加します。

・カテーテルアブレーション

典型的な心房粗動では心房粗動を引き起こす電気的回路が右房内の三尖弁輪の周りにあることがある程度特定されています。三尖弁輪以外の非典型的な心房粗動の場合もあります。カテーテルアブレーションの治療成績はよく、90%以上根治が望めます。

・ワソラン(ベラパミル)、ヘルベッサー(ジルチアゼム)、ジゴシン(ジゴキシン)、メインテート(ビソプロロール)、アーチスト(カルベジロール)、他

カテーテルアブレーションまでのつなぎとして頻脈症状を抑えるように対症療法を行います。房室伝導を抑制、または心室レートを和らげる抗不整脈薬を使います。

・抗凝固療法

心房細動に比べ発生頻度は低いものの、血栓塞栓症の原因となりうることがわかっています。塞栓症リスクの高い場合は抗凝固療法を追加します。心房細動の抗凝固療法に準じて行います。

心房細動→https://循環器内科.com/af

発作性心房細動→https://循環器内科.com/paf

・循環動態が不安定な場合は、直流除細動、入院管理を行います。

詳しくは「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」をご覧ください。

「不整脈薬物治療に関するガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。