洞性徐脈

【洞性頻脈とは】
洞性頻脈(sinus bradycardia)とは、心臓の脈が遅い状態です。正常の心臓では、心臓を動かす刺激伝導系は洞結節から始まります。洞結節は、心房の中で周囲に比べて若干くぼみのようになっている結節であるため洞結節(sinus node)または洞房結節(sinoatrial node)と呼びます。正常の心臓では、洞結節からのリズムで動いており、この状態のことを洞調律(sinus rhythm)または正常洞調律(normal sinus rhythm)と呼びます。洞調律の心拍数は自律神経、交感神経、副交感神経の2つによって調整されていて、脈が早くなった状態のことを洞性頻脈(sinus tachycardia)、脈が遅くなった状態のことを洞性徐脈(sinus bradycardia)と呼びます。洞性頻脈と洞性徐脈を合わせて洞性不整脈(sinus arrhythmia)と呼ぶことがあります。
【洞性徐脈の症状】
洞性徐脈の自覚症状は、文字通り、心臓の脈が遅い状態を自覚します。ふらつき、めまい、浮遊感等の自覚症状の原因になります。脈が遅くなると一回一回の脈が大きくなるので、心臓の鼓動を強く感じるようになります。洞調律の心拍数は自律神経によって調整されているので、自律神経の活動の影響を受けていることが特徴です。交感神経活動には、興奮、不安、恐怖、闘争、逃走、怒り、ストレス等の精神的影響、発熱、睡眠不足、運動等の身体的影響などが関係します。副交感神経活動はその逆で、リラックス、睡眠、食事、入浴等が関係します。洞性徐脈のみで失神を来すことは稀ですが、失神しそうな感じ、前失神症状の原因になることがあります。貧血、低血圧等、洞房ブロック、洞停止、徐脈頻脈症候群等の洞不全症候群、徐脈性心房細動、房室ブロック等の他の鑑別が必要な場合があります。
【洞性徐脈の診断】
心電図にて洞調律で、心電図50未満の場合、洞性徐脈の診断となります。人間の安静時の正常な心拍数は60-90程度です。心拍数が50-60程度場合も、徐脈傾向(bradycardia tendency)と言います。睡眠中、極度にリラックスした状態で、心拍数が40-50程度になることは稀ではありません。アスリート、マラソン選手等では安静時の心拍数が低い場合があり、スポーツマンハート、アスリートハート(Athletes heart)などと呼びます。部活動、体育会、トレーニングの習慣がある方も同様の傾向があります。症状出現時の心電図記録を目指して、24時間のホルター心電図検査を行います。別のタイプの不整脈を疑う場合には別のタイプの不整脈ではないかホルター心電図検査、採血等にて検査します。自律神経活動の変動で説明のつかない洞性徐脈の場合には、原因となる基礎疾患がないか精査します。
【洞性徐脈の原因】
洞性徐脈は原則として治療の必要のないものがほとんどです。洞性徐脈の原因として、心臓自体、心臓を動かすホルモン等に異常の疑いがあり、精密検査や治療な必要なもの、心臓には異常がなく直接命に関わらないもの、経過観察で問題ないものに分かれます。洞性徐脈だと思っていたら他のタイプの不整脈であった、洞性徐脈と他の不整脈の両方であったということも少なくはないため、他の不整脈の可能性も疑って検査をします。
直接命に関わらないもの、経過観察で問題ないもの:
・薬剤性(β遮断薬、Ca拮抗薬、ジギタリス、他)
・ストレス性(不安神経症、パニック障害、他)
・その他(低血圧症、更年期障害、呼吸性変動、他)
精密検査や治療な必要なもの:
・不整脈(発作性上室性頻拍、発作性心房細動、洞不全症候群、房室ブロック、心室頻拍、心室細動、他)
・不整脈以外の循環器疾患(心不全、狭心症、心筋梗塞、心筋炎、心筋症、弁膜症、他)
・呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患、肺塞栓症、他)
・内分泌疾患(甲状腺機能異常、副腎機能異常、低血糖症、他)
・その他(貧血、発熱、自己免疫疾患、他)
【洞性徐脈の原因疾患を認める場合】
治療が必要な原因疾患を認めた場合、原因疾患の治療を優先します。具体的には、薬剤性、甲状腺機能異常、心不全等が原因として認めた場合には、原因疾患の治療を進めます。治療が必要な原因疾患を特に認めない場合、かつ自覚症状がそれほど苦痛ではない場合、洞性頻脈自体は原則として治療の必要はありません。
【洞性徐脈で強い自覚症状を認める場合】
洞性徐脈に一致して強い動悸症状を自覚する場合があります。洞性徐脈だけであれば、心配ないものとわかれば症状もあまり気にならなくなる場合が多いのですが、症状がどうしても気になって生活に支障が出てしまうような場合は、適宜症状を和らげる治療もあります。
まず前提として、基礎心疾患が何もない場合、洞性徐脈だけでは特に命に関わらないものではあるため治療は必須ではありません。しかしながら、洞性徐脈に一致して強い動悸症状を自覚する場合があり、次のような治療法があります。
1、生活習慣の改善
ストレス、緊張、運動、過労、睡眠不足、季節の変わり目、飲酒、喫煙、カフェイン、栄養ドリンクの摂取などの何らかの刺激が関係していることが多いので、誘因となる生活習慣を改善することで症状が軽快することが少なくありません。
2、抗不整脈薬
強い自覚症状を認める場合は、抗不整脈薬があります。脈の速さを調整するβ刺激作用がある薬剤などが中心です。プロタノール(イソプレナリン)、アトロピン、プレタール(シロスタゾール)、テオドール(テオフィリン)、麻黄剤、などがあります。心拍数の上がり過ぎ、不整脈、交感神経刺激作用に注意しながら使います。洞性徐脈はある程度和らぎます。
3、心臓ペースメーカー
自覚症状のない洞性徐脈は治療の必要はありません。しかし、高度の洞性徐脈で失神、前失神を繰り返す場合の治療選択肢として心臓ペースメーカーがあります。適応に関しては専門医の判断になります。
以上、動悸症状の原因として多い洞性徐脈について説明しました。何かわからないことがあれば主治医までご相談ください。

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