心室中隔欠損

【心室中隔欠損症とは】
心室中隔欠損症(Ventricular septal defect: VSD)とは、先天性心疾患の一つです。左心室と右心室の間には心室中隔という壁があり、血液が混ざらないようにしています。生まれつき心室中隔に孔が空いていることがあり、心室中隔欠損症と言います。先天性心疾患は人口の1%程度、心室中隔欠損症は先天性心疾患の中で最も多く、20-30%を占めます。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/cardiovascular/tr04_vsd.html

【心室中隔欠損症の診断】
診断は心エコーにて心室中隔の欠損を確認することによって行います。 幼少期に検診等で引っかかり診断が付いている場合もあれば、無症状または症状がほとんどない場合もあり、成人後に見つかる場合もあります。生後間もない場合、自然閉鎖することが多い一方で、生後2、3年以降になると自然閉鎖率は年間10%程度と言われており、手術が必要です。成人後は、息切れ、動悸、易疲労感等の心不全症状、心房細動等の不整脈をきっかけに見つかることもあります。通常は、左心房のほうが右心房よりも圧が高いので、左→右へ血液が流れています。全身へ送り出すはずの血液がもう一回肺へ循環するので、その分肺や心臓に負担が掛かります。肺の血管が固くなり、肺高血圧症を来すと、右心房と左心房の圧が同じになるか逆に右心房のほうが左心房よりも圧が高くなり、右→左へと血液が流れるようになります。アイゼンメンゲル症候群(Eisenmenger’s syndrome)といい、静脈の血液がそのまま全身へ流れるようになってしまい、チアノーゼを来します。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000077.html

【心室中隔欠損の治療】
心室中隔閉鎖術によって、心室中隔を閉鎖します。手術適応としては、
・PH を認めず,Qp/Qs > 1.5 かつ左室拡大がみられる場 合は,一般に外科的修復術を考慮する.
・Eisenmenger 症候群に至っていない PH(Qp/Qs > 1.5) を認めた場合,肺動脈に可逆性を認める場合は手術を考慮する.
・PH 合併の成人先天性 心疾患症例の経験豊富な専門施設へのコンサルトが基本で ある.
・その他,円錐部(一部膜様部)欠損による大動脈弁逸脱・逆流が顕著で,進行性の場合や,圧較差 50 mmHg 以上の右室流出路狭窄を認める場合は手術を考慮する
詳しくは日本循環器学会「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017 年改訂版)」をご覧ください。
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ichida_h.pdf

【お茶の水循環器内科の方針】
先天性心疾患の多くは子どもの頃に発見されますが、大人になってから発見されることも珍しくありません。心電図、胸部レントゲン、ホルター心電図、心エコー等で評価を行い、心不全の評価、手術が必要な場合は適切な医療機関へと紹介します。術後で安定している方は、定期的に心不全や不整脈の出現がないかをフォローしています。いずれにせよ、検診で心雑音や心電図異常を指摘された方は放置をせずに一度受診ください。