【原発性アルドステロン症とは】
原発性アルドステロン症(Primary aldosteronism: PA)とは、アルドステロン過剰分泌による二次性高血圧症の原因疾患の一つです。二次性高血圧症とは何らかの原因があり、その症状の一つして血圧が上がっている状態であり、内分泌疾患としては原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫などがあります。原発性アルドステロン症は二次性高血圧症の原因のうちで最も多く、高血圧症全体の3-10%と高頻度であること、適切な診断と治療によって治癒可能であることからスクリーニング、発見が重要です。
詳しくは日本内分泌学会「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」をご覧ください。
→https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0255/G0000916
→https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000143.html
【原発性アルドステロン症の診断】
原発性アルドステロン症に特徴的な自覚症状はなく、二次性高血圧症として高血圧症を来します。本態性高血圧症と比べて、脳卒中、心肥大、心房細動、冠動脈疾患、心不全などの合併症が多いとの報告があり、適切な診断と治療によって治癒可能であること、原発性アルドステロン症は二次性高血圧症の原因疾患として一番多いことから、高血圧症の中で原発性アルドステロン症を適切に診断することが重要です。スクリーニング検査として採血にてレニン活性、アルドステロンを測定します。アルドステロンレニン比(Aldosterone to Renin Ratio: ARR) 200以上または血漿アルドステロン濃度(Plasma aldosterone concentration: PAC) 120以上の場合、原発性アルドステロン症を疑います。PAC 120未満でも原発性アルドステロン症は完全には否定出来ないとされています。高血圧症患者全例でスクリーニングが望ましいが、費用対効果は未確立であることから、原発性アルドステロン症高頻度の高血圧群における積極的なスクリーニング検査が推奨されています。高頻度の高血圧群としては、低カリウム血症合併例(利尿薬誘発例も含む)、若年性の高血圧、II度以上の高血圧、治療抵抗性高血圧、副腎偶発腫合併例、40歳以下での脳血管障害発症例が挙げられています。お茶の水循環器内科の方針としては、スクリーニング検査にて原発性アルドステロン症を疑った場合には、内分泌内科へ紹介する方針としています。低カリウム血症は原発性アルドステロン症を疑う所見の一つですが、カリウム値正常の原発性アルドステロン症が60-90%もあると報告されていることからカリウムの値のみでは判断出来ないとされています。 採血は、体位や採血時間の影響を受けてしまうが、スクリーニング検査としては随時採血で良いとされています。厳格には標準化条件における採血が望ましいとされており、具体的には早朝、空腹時、安静臥床後の採血が推奨されています。降圧薬のうち、β遮断薬、利尿薬、MR拮抗薬は影響を及ぼしてしまうことから、Ca拮抗薬、α遮断薬へ切り替え、2週間の休薬が推奨されていますが、血圧管理を最優先すべきであるとも記載されています。機能確認検査として、カプトプリル試験、フロセミド立位試験、生理食塩水負荷試験、経口食塩負荷試験等があり、日本内分泌学会のガイドラインでは2種類以上の検査で陽性の場合を原発性アルドステロン症の確定診断としています。局在診断として、エコー、CT、MRI、副腎シンチグラフィ、他、いくつかの画像診断法がありますが、thin sliceの造影CTが推奨されています。さらに副腎静脈サンプリング(Adrenal Venous Sampling: AVS)という検査があり、手術を考慮する場合には推奨となっており、専門的施設で行います。 アルドステロン生成副腎癌(Aldosterone Producing Adrenocortical Carcinoma: APAC)の頻度は極めて少ないが、治療法が大きく異なるため除外診断が重要とされています。お茶の水循環器内科の方針としては、スクリーニング検査にて原発性アルドステロン症を疑った場合には、内分泌内科へ紹介する方針としています。詳しくは日本内分泌学会「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」をご覧ください。
→https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0255/G0000916
【原発性アルドステロン症の治療】
原発性アルドステロン症の治療としては、副腎摘出術と薬物療法の2つがあります。
・原発性アルドステロン症と確定診断がされ、片側性病変の場合には、原則、病側の副腎摘出術が推奨されています。
・両側性病変の場合、患者が手術を希望しない場合、手術不能のなどの場合には、MR拮抗薬を第一選択とする薬物療法を行います。薬物療法は原則として生涯に渡る継続が必要とされています。
いずれかの治療法の優越性を示す明確なエビデンスはなく、個々の症例ごとに判断しますが、片側性の原発性アルドステロン症であれば副腎摘出によりアルドステロン正常化、血圧正常化が期待出来ることから、原則として手術が推奨されています。腫瘍のサイズと合併症の頻度等は明確な相関がないとのことから腫瘍サイズのみで治療法選択の主たる判断基準とすべきではないことが記載されています。MR拮抗薬としては、アルダクトン(スピロノラクトン)とセララ(エプレレノン)があり、いずれかが予後に差があるというエビデンスはありません。
今後のPerspectivesとしては、病因遺伝子の解明、アルドステロン測定法、非侵襲的画像検査、分画別副腎静脈採血、片側副腎部分切除、病理学的診断などの記載があります。詳しくは日本内分泌学会「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」をご覧ください。
→https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0255/G0000916