急性心筋梗塞

【急性冠症候群とは】

急性心筋梗塞(Acute myocardial infarction: AMI)とは心臓の血管が詰まって死に至る病気です。心臓の血管は、心臓に冠(かんむり)のような形で沿って走っているので、冠動脈(Coronary artery)と言います。冠動脈が詰まってしまったのが急性心筋梗塞、詰まってはいないけど今にも詰まりそうな状態のことを狭心症と言います。急性心筋梗塞は動脈硬化が原因です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。

【典型的な急性心筋梗塞らしさ】

血圧が高い、コレステロールが高い、煙草を吸っている、糖尿病と言われている、家族に心筋梗塞が多い、運動不足、動脈硬化のリスクがいくつもある方で、階段や坂を駆け上がったりと心臓に負担が掛かる時に、急な胸の圧迫感、締め付けられる感じが出現、冷や汗や息切れを伴う場合、急性心筋梗塞や不安定狭心症といった急性冠症候群を念頭において、診療を進めて行きます。詳しくは胸痛の診療の進め方をご覧ください。

胸痛の診療の進め方→https://循環器内科.com/chestpain

【急性心筋梗塞のリスク因子】

急性心筋梗塞は冠動脈の動脈硬化が原因です。動脈硬化のリスク因子が多ければ多いほど急性心筋梗塞になりやすいですし、動脈硬化のリスク因子が少なければ少ないほど急性心筋梗塞にはなりにくいです。急性心筋梗塞のリスク因子で修正可能なものとしては以下のようなものが知られています。

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

上記の生活習慣病に加えて、年齢、性別、家族歴もリスク因子に加えることもありますが、自分の意志で変えようがないので、修正可能なリスク因子として上記が重要です。心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。

【急性心筋梗塞の検査】

急性心筋梗塞の診断は、病歴、心電図、心筋逸脱酵素の3つによって診断します。

(1)「急性心筋梗塞らしさ」:高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど急性心筋梗塞を起こしやすいです。ハイリスクなリスク因子を持つ方が、労作時に胸部圧迫感、胸部絞扼感で、顔面蒼白で、冷や汗や息切れを伴う場合は、急性心筋梗塞の可能性を念頭に置いて診療して行きます。

(2)心電図検査:冠動脈の支配領域に一致してST-T変化を代表とした虚血性変化(Ischemic changes)という心電図変化が見られます。「急性心筋梗塞らしさ」が十分に高い場合、一回の心電図検査で所見がなくても急性心筋梗塞は否定は出来ないと考え、心電図検査を繰り返し行ったり、さらに詳しい検査を進めます。

心電図→https://循環器内科.com/ecg

(3)心筋逸脱酵素、採血にてトロップT(トロポニンT)やラピチェック(H-FABP)と行った心筋逸脱酵素という急性心筋梗塞が起きた時に陽性になる迅速検査を行います。発症からの時間が早い場合、迅速検査が陰性であっても急性心筋梗塞は否定は出来ないと考え、繰り返し検査を行ったり、さらに詳しい検査を進めることがあります。

心筋トロポニン→https://循環器内科.com/bloodtest

【追加の検査】

・冠動脈カテーテル検査、急性心筋梗塞と診断に至るか、「急性心筋梗塞らしさ」が十分に高いと判断した場合、急性心筋梗塞の確定診断と同時に詰まった血管を直接治療するために冠動脈カテーテル検査を行います。カテーテル設備のある循環器の専門病院か大きな病院の循環器内科へ搬送します。

・冠動脈CT、心臓の血管、冠動脈を直接見る検査です。冠動脈に狭窄があるかどうか、狭窄がある場合は狭窄の程度がわかります。急性心筋梗塞は否定的ですが、冠動脈の狭窄は否定出来ない場合に、冠動脈の評価のために追加で行います。

冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta

・心臓MRI検査、心臓の血管、冠動脈だけでなく、心筋そのもの、心臓の弁、心臓の動き、幅広く調べることが出来ます。放射線被曝がないこと、冠動脈以外の心臓の情報も得られることから心臓MRIを追加することもあります。

心臓MRI→https://循環器内科.com/cmri

・胸部レントゲン、急性心筋梗塞以外にも心胸比の評価、肺や気管支、大血管の異常、胸骨、肋骨、鎖骨、肩関節、胸椎、頚椎などが全体的に異常がないかをチェックします。

・心エコー、心臓の動きを詳しく診ます。急性心筋梗塞の場合は心筋梗塞を起こした冠動脈に一致する場所を中心に心臓の動きが悪くなっている所見、壁運動異常がないかチェックします。また、弁の異常や心機能などを評価出来ます。

心エコー→https://循環器内科.com/ucg

・ホルター心電図、急性心筋梗塞よりもむしろ不整脈を疑う場合に行います。症状が発作的で、朝の通勤電車内や、夜間、明け方など、医療機関の診療時間外で起こる場合は、症状出現時の心電図記録が診断のためのキーになります。

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter


【急性心筋梗塞の治療】

循環器内科の大きな病院で、カテーテル検査によって詰まった血管に対し、そのままバルーン拡張、ステント留置などカテーテル治療を行います。外科的に冠動脈バイパス術が行われることがあります。急性期治療までのつなぎとして以下の初期治療を行います。

・バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)、抗血小板薬という薬です。血栓が出来て、心筋梗塞が広がることを少しでも防ぎます。急性心筋梗塞と診断し次第、バイアスピリン腸溶錠100mgを3Tから4Tを噛み砕いて舌下投与します。

・硝酸薬、ニトロペン(ニトログリセリン)、ニトロール(硝酸イソソルビド)、ミオコールスプレー(ニトログリセリン)、、硝酸薬と呼ばれる狭心症治療薬です。冠動脈拡張作用で、発作を解除します。静脈拡張作用により心臓への負荷を軽減する効果もあります。ニトロペンは舌下錠、ニトロールやミオコールはスプレーがあります。

・スタチン、クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、全身の血管から悪玉コレステロールを回収し、動脈硬化予防、心筋梗塞を強力に抑制します。背景に脂質異常症があり、カテーテルの受診までに日数がある場合使います。

スタチン→https://循環器内科.com/statin

・βブロッカー、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、インデラル(プロプラノロール)、交感神経をブロックし、心筋への過度な負担を和らげます。致死的不整脈の出現を抑制することもわかっています。

・オリベス(リドカイン)、Ib群の抗不整脈薬です。心室性不整脈が頻発している例に対し、急性心筋梗塞時の心室性不整脈の抑制に使います。静注薬です。

・酸素投与、低酸素血症がある例に対して酸素投与、疼痛軽減のための鎮痛薬、抗血栓作用のためのヘパリン、冠攣縮性狭心症の関与を疑う場合のカルシウム拮抗薬の投与など、

・心肺蘇生、心停止例や心停止からの蘇生例に対しては心停止時には速やかに心肺蘇生が開始出来るようにモニタリングを行います。

心肺蘇生→https://循環器内科.com/cpr

・禁煙、動脈硬化の最大の悪化因子です。喫煙者には禁煙が必要です。

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・運動制限、急性心筋梗塞または不安定狭心症を疑った場合に、心筋酸素需要の増大因子、心臓への負担を掛ける動作は好ましくありません。カテーテル病院へ救急車で搬送するのはこのためです。急性心筋梗塞の治療が終わった後に好きなだけ運動しましょう。さらに詳しくは国立循環器病研究センターまたは日本心血管インターベンション治療学会のページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph92.html

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph34.html

https://急性心筋梗塞.com

【急性心筋梗塞の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

急性心筋梗塞は動脈硬化が原因です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。逆に、動脈硬化のリスク因子が少なければ少ないほど急性心筋梗塞にはなりにくいです。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病が自覚症状がなくても治療が必要な理由です。修正可能なリスク因子をコントロールして、急性心筋梗塞にならないようにしましょう。