【アミロイドーシスとは】
アミロイドーシス(Amyloidosis)とは、 アミロイド(Amyloid) という折りたたみ異常を起こした前駆蛋白質が、アミロイド線維を形成し、全身のさまざまな臓器に沈着することで機能障害を起こす疾患の総称です。アミロイドーシスの中で、特に心臓に限局してアミロイドが沈着した状態、または全身性アミロイドーシスのうちの心臓病変のことを心臓アミロイドーシス(Cardiac Amyloidosis)と言います。詳しくは日本循環器学会「2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン」をご覧ください。
日本循環器学会「2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2020_Kitaoka.pdf
【心臓アミロイドーシスの診断】
アミロイド前駆蛋白は現在30種類以上特定されていますが、心臓アミロイドーシスを来すものは主に以下の4つがあります。
・ALアミロイドーシス
・ATTRwtアミロイドーシス(旧病名:老人性全身性アミロイドーシス)
・ATTRvアミロイドーシス(旧病名:家族性アミロイドポリニューロパチー)
・AAアミロイドーシス
原因は、それぞれ、免疫グロブリン自由軽鎖、野生型TTR、変異型TTR、血清アミロイドA蛋白です。循環器内科として重要なのは、心不全の原因疾患の一つとして心臓アミロイドーシスがあること、特に左室駆出率が保たれた心不全( heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)の基礎疾患の一つとして心臓アミロイドーシスの存在があるからです。
【心臓アミロイドーシスの検査】
アミロイドーシスの診断は、アミロイドの沈着の証明とアミロイド沈着による臓器障害の2つです。心臓アミロイドーシスの臓器特異的症状として、臨床症状としては息切れ、浮腫、眩暈、失神等の心不全症状があります。検査所見としては、心房細動、刺激伝導障害(房室ブロック、脚ブロック、心室内伝導障害)、心室性不整脈、低電位、 心室壁肥厚、心房中隔肥厚、心室拡張障害、心膜液貯留、弁肥厚、血中BNP/NT-proBNP高値、心臓MRIにおける左室心内膜下のびまん性遅延造影等があります。
いずれも非特異的所見なので、原因不明の心不全を見た場合に心臓アミロイドーシスの可能性を鑑別に入れることが大切です。 心臓アミロイドーシス以外の全身症状としては、腎機能障害、肝機能障害、神経症状、手根管症候群、脊柱菅狭窄症等、多岐に渡ります。症状、心電図、採血、心エコー等の所見から心臓アミロイドーシスを疑った場合は、心臓MRIを追加することが多いです。心臓MRIでは下記のような特徴的な所見が報告されています。
さらに専門的検査としては、ピロリン酸シンチグラフィ、I-MIBGシンチグラフィ、アミロイドPET、 確定診断のための検査としては心筋生検も含む組織生検、病理組織検査、タンパク質分析、遺伝子検査等があります。専門的な精密検査になりますので、必要があれば紹介します。
詳しくは日本循環器学会「2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン」をご覧ください。
日本循環器学会「2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2020_Kitaoka.pdf
【心臓アミロイドーシスの治療】
心臓アミロイドーシスの臓器障害としては、心不全と不整脈の2つがあります。
心不全を来した心臓アミロイドーシスに対しては、心不全の治療に準じますが、いくつか注意点があります。
・ジギタリス製剤は禁忌
・ベラパミル、ジルチアゼム、非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は心機能低下例には注意
・ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド阻害薬、利尿薬は心不全の標準治療に準して使用
・心房細動等の不整脈に対しては血栓症のリスクに応じて抗凝固療法、カテーテルアブレーションも選択肢として考慮
・洞不全症候群、高度房室ブロックに対してペースメーカー、致死的不整脈に対して埋込み型除細動器
・アミロイドーシスに対する専門的治療、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー、ATTR心臓アミロイドーシス(野生型および変異型) に対してタファミジス、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに対してパチシラン、ALアミロイドーシスに対する自家末梢血幹細胞移植併用大量メルファラン療法、ATTRvアミロイドーシスに対する肝移植等がありますが、高度に専門的な治療になりますので、紹介します。
詳しくは日本循環器学会「2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン」をご覧ください。
日本循環器学会「2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2020_Kitaoka.pdf