脳動脈解離

【脳動脈解離とは】
脳動脈解離(Cerebral artery dissection)とは、脳の血管の壁が裂けた状態です。症状は頚部血管の解離にともなう頚部痛、さらには血管が狭窄や閉塞すれば脳梗塞に似た症状、解離した血管から出血を起こせば脳出血やくも膜下出血に似た症状と、多彩な症状を引き起こします。出血も梗塞も起こしていなければ頚部痛のみということもあります。原因はもともと高血圧症、喫煙などで血管が弱まっているところに、頸部外傷、頚部回旋などの外力刺激をきっかけにして血管が破れることで発症します。頚椎マッサージやカイロプラティック等の医原性の場合の他、明らかな誘引が特定出来ない特発性のものもあります。
【脳動脈解離の診断】
画像検査にて脳の血管の解離を証明することです。脳動脈解離を起こしやすい脳動脈には、両側の内頚動脈、両側の椎骨動脈、脳底動脈がありますが、それ以外の血管も解離を起こす可能性がありあす。頭部MRA、頸部MRA、頭部CT、頸部CT、脳血管造影などで血管に解離を認めれば診断になります。胸部大動脈の解離から解離が進展して、脳動脈解離を二次的に発症してしまう場合もあります。大動脈解離を疑った場合には、胸部造影CT、心エコー等を追加します。詳しくは脳血管の解剖のページをご覧ください。
https://funatoya.com/funatoka/anatomy/angio/av-10.html
【脳動脈解離の治療】
急性期には血圧管理をしつつ、脳梗塞と脳出血の予防を行います。脳梗塞の予防のためには抗血小板療法、抗凝固療法が必要になる場合もありますが、出血リスクがあるため脳出血の予防のためには行わないこともあります。解離の部位、程度、偽腔の開存か閉塞か、内弾性板と中膜間の解離か中膜と外膜間の解離か、神経症状の有無と程度によってケースバイケースで判断します。中膜と外膜間の解離では外側に血管が瘤状に拡大し、解離性脳動脈瘤を形成する場合があり、くも膜下出血予防のために未破裂脳動脈瘤と同様に治療します。開頭クリッピング術とコイル塞栓術があります。手術の適応を満たさない場合には定期的に画像検査にてフォローしていきます。慢性期には血圧管理と定期的な画像検査のフォローが重要です。お茶の水循環器内科では脳動脈解離の診断が着いた時点で一度脳神経外科に紹介しています。詳しくは日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン」をご覧ください。
https://www.jsts.gr.jp/jss08.html
【脳動脈解離の予防】
脳動脈解離のリスク因子は高血圧症と喫煙です。高血圧症があれば脳動脈解離を引き起こす前に治療、脳動脈解離を発症後も再発予防のため降圧します。喫煙は明らかなリスク因子ですので禁煙が必須です。解離した血管が修復されるまでの期間はおおよそ2ヶ月程度と言われており、それ以降の慢性期は高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の動脈硬化性因子のリスク管理が中心になります。また、頸部への外力は脳動脈解離の誘発因子として注意が必要で、頸部を強く操作するようなマッサージ、カイロプラティック等は注意が必要であると言われています。