慢性閉塞性肺疾患

注意:このページでは、息切れ症状の鑑別疾患または喫煙の合併症としての慢性閉塞性肺疾患について記載しています。慢性閉塞性肺疾患の診断がすでに着いている方を呼吸器内科をご受診ください。ご来院いただいても呼吸器内科へのご案内となってしまうことを予めご了承ください。
【慢性閉塞性肺疾患とは】
慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)とは、主に喫煙が原因で肺や気管支が慢性的に炎症を起こして弱っていく病気です。臨床症状としての慢性気管支炎(Chronic bronchitis)、画像所見としての肺気腫(Pulmonary emphysema)などとも呼ばれますが、ほとんど同じ意味です。慢性的に進行していき、治す治療法がありません。日本では死亡原因の9位、男性では7位を占めています。40歳以上の人口の8.6%、約530万人の患者が存在すると推定されていますが、大多数が未診断、未治療の状態であると考えられます。原因は喫煙です。したがって、治療も予防も煙草を吸わないことです。厳密には、タバコの煙以外の有害な吸入物質も慢性閉塞性肺疾患を引き起こす原因にはなりますが、日本では慢性閉塞性肺疾患の原因の90%以上は喫煙であることが明らかになっています。以下、喫煙が原因の慢性閉塞性肺疾患について説明します。詳しくは日本呼吸器学会のページをご覧ください。
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=12
【慢性閉塞性肺疾患の診断】
診断は喫煙歴とともに、胸部CT、胸部レントゲン、呼吸機能検査等の検査があります。呼吸機能検査によって一秒率(forced expiratory volume 1.0 second %: FEV1.0%)70%以下の低下を認める場合、慢性閉塞性肺疾患の診断になります。胸部CTでは肺胞が破壊されて、気腫(Emphysema)という空洞が認められます。空洞の部分は呼吸器官としての機能を果たらしておらず、気腫が多ければ多いほど進行している慢性閉塞性肺疾患です。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000280.html
息苦しさ症状で受診した場合には、必要に応じて、心不全、狭心症等との除外が重要で、心電図、採血検査、心エコー検査、冠動脈CT検査を追加します。
【慢性閉塞性肺疾患の治療】
慢性閉塞性肺疾患は進行した後に元に戻す治療法がありません。予防としては第一に禁煙が必須です。慢性閉塞性肺疾患の原因は喫煙であることが既にわかっているからです。さらに、薬物療法、理学療法、酸素療法、陽圧換気療法、人工呼吸器、その他合併症に対する対処等があります。
・サルタノール(サルブタモール)、メプチン(プロテカロール)、スピリーバ(チオトロピウム)、アドエア(サルメテロール・フルチカゾン)、シムビコート(ブデソニド・ホルモテロール)、アノーロ(ウメクリジニウム・ビランテロール)、ウルティブロ(グリコピロニウム・インダカテロール)、テオドール(テオフィリン)、セレベント(サルメテロール)、ホクナリン(ツロブテロール)、ムコダイン(カルボシステイン)、ムコソルバン(アンブロキソール)、ビソルボン(ブロムヘキシン)、クリアナール(フドステイン)、他(順不同)
薬物療法としては、気管支拡張薬、吸入ステロイド薬、去痰薬当がありますが、慢性閉塞性肺疾患の進行を防いだり、肺を治す訳ではありません。禁煙が第一です。詳しくは慢性閉塞性肺疾患のグローバルな治療指針である「GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)」のページをご覧ください。
https://www.gold-jac.jp
【慢性閉塞性肺疾患の予防】
慢性閉塞性肺疾患の予防は煙草を吸わないことです。煙草を吸わなければ慢性閉塞性肺疾患になることはありません。これほどシンプルに予防法が確立している疾患も珍しいものです。