【咳嗽・喀痰の診療ガイドラインとは】
2019年4月、日本呼吸器学会から「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」が発行されました。日本呼吸器学会では、2015年に「咳嗽に関するガイドライン初版」、2012年に「咳嗽に関するガイドライン第2版」を発行、今回が3回目の改訂とともに咳嗽と密接に関連している喀痰についても含んだガイドライン改訂となりました。詳しくは日本呼吸器学会のページをご覧ください。
日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」→https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=121
https://www.amazon.co.jp/dp/4779222389
【咳嗽の鑑別診断】
まず、咳嗽は持続期間、喀痰の有無によって分類します。具体的には、3週間未満の急性咳嗽、3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽に分類します。喀痰の有無によって乾性咳嗽と湿性咳嗽に分類します。咳嗽はほぼ全ての呼吸器疾患が原因となる可能性があります。肺炎、肺癌、肺塞栓症などの重篤化しうる疾患の鑑別が重要です。心不全も慢性咳嗽の原因となります。「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」 では咳嗽の鑑別疾患として下記のように整理しています。また新たな概念として難治性咳嗽などにも言及されています。
・感染性咳嗽、感染後咳嗽
・急性気管支炎、肺炎、マイコプラズマ、百日咳、クラミドフィラ
・結核、非結核性抗酸菌症
・慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喫煙、受動喫煙
・副鼻腔気管支症候群(SBS)
・びまん性汎細気管支炎(DPB)
・気管支拡張症(BE)
・急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎、後鼻漏症候群(PWDS)
・気管支喘息
・咳喘息(CVA)、アトピー咳嗽、咽頭アレルギー
・胃食道逆流症(GERD)
・間質性肺炎(IP)
・腫瘍、肺癌
・異物
・睡眠時無呼吸症候群
・薬剤性咳嗽
・職業性・環境因子
・難治性咳嗽(UCC、CHS)
・真菌関連慢性咳嗽(FACC)
・Somatic Cough Syndrome、Tic Cough
・臓器特異的自己免疫疾患、心室期外収縮、外耳異物
咳嗽の鑑別疾患は多岐に渡りますが、一般的に急性咳嗽では感冒を含む気道感染症が多いのに対し、慢性咳嗽では感染症の頻度が少なく、非感染症が増加する傾向にあります。お茶の水循環器内科では慢性咳嗽の原因として心不全の精査除外に力を入れています。詳しくは日本呼吸器学会のページをご覧ください。
日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」→https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=121
【咳嗽の検査】
・バイタルサイン、体温、呼吸数、動脈血酸素飽和度、血圧
・病歴、身体所見、職業性・環境因子、喫煙歴、服薬歴
・一般血液検査、アレルギー検査、感染症血清学的検査
・喀痰検査、一般細菌、抗酸菌塗抹・培養、細胞診
・気管支鏡検査、上気道ファイバースコピー
・胸部レントゲン、副鼻腔レントゲン
・胸部CT、副鼻腔CT
・スパイロメーター
・FeNO濃度
・消化管内視鏡検査
さらに、専門的な検査として、気道可逆性検査、気道過敏性検査、咳受容体感受性気管支平滑筋収縮誘発咳嗽反応検査、呼吸抵抗測定、気道炎症の評価、24時間pHモニタリング検査、などがあります。専門的な検査が必要な場合には適宜専門の医療機関を紹介します。詳しくは日本呼吸器学会のページをご覧ください。
日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」→https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=121
【お茶の水循環器内科の診療指針】
お茶の水循環器内科の診療指針としては、慢性咳嗽の原因として心不全が原因の場合は治療方針が大きく変わって来るため、心不全の精査に力を入れています。心電図、胸部レントゲン、BNPまたはNT-proBNP、心エコー等によって心不全の有無、心不全を認めた場合は重症度の評価と原因の精査と行います。呼吸器疾患、耳鼻咽喉科疾患、アレルギー性疾患、消化器疾患が疑われる場合は適宜専門の医療機関へと紹介します。詳しくは主治医までご相談ください。