末梢動脈疾患

【末梢動脈疾患とは】

末梢動脈疾患(Peripheral arterial disease: PAD)とは、末梢の動脈が動脈硬化によって狭窄を起こし、血流障害を起こす病気です。特に下肢の末梢動脈の狭窄や閉塞が問題になります。閉塞性動脈硬化症(Arteriosclerosis obliterans: ASO)、慢性動脈閉塞症(Chronic arterial occlusion)などを含む総称で、ほとんど同じ意味です。また、特にBuerger病は喫煙者の下肢に起こる血管閉塞で、閉塞性血栓血管炎(Thromboangiitis obliterans: TAO)と同義です。動脈硬化とは無関係で自己免疫的に起こる血管炎という病気もあります。詳しくは「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン」をご覧ください。

「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン (2015 年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2015_miyata_h.pdf

【末梢動脈疾患の診断】

末梢動脈疾患の診断は下肢の血管に狭窄や閉塞を認めるかどうかです。急性発症の場合は、視診、触診、聴診にて診断が付く場合がありますが、血管の画像検査が必要になります。

・足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index: ABI)

末梢動脈疾患のスクリーニング検査です。上腕動脈の収縮期血圧に対して足関節の収縮期血圧の比です。動脈硬化がなければ血圧は同等になり、動脈硬化が進むと上肢に比べて下肢の血圧が低値となります。0.90以上が正常で、0.90未満では主幹動脈の狭窄や閉塞を疑い、画像検査へと進みます。ただし、側副血行路が発達した例では偽陰性となることか、高度石灰化ではABI 1.40以上の偽陽性となることがあります。

・CT血管造影(CT angiography)、MR血管造影(MR angiography)、CTまたはMRIにて血管を評価します。

・血管造影(Angiography)、血管を直接造影して評価します。血行再建術を考慮する症候性の末梢動脈疾患に対して血管を評価するために行います。

【末梢動脈疾患の分類】

Fontaine分類があります。間歇性跛行を来す疾患としては、末梢動脈疾患の他に、脊柱管狭窄症や深部静脈血栓症などを適宜精査除外します。

Fontaine 1度:無症状、または下肢の冷感や色調の変化

Fontaine 2度:間歇性跛行(かんけつせいはこう)

間歇性跛行とは、週百メートル歩くと痛みのため歩行継続困難になる状態です。

Fontaine 3度 :安静時疼痛

Fontaine 4度:潰瘍、壊死

【末梢動脈疾患の治療】

末梢動脈疾患は、下肢のみの動脈硬化だけではなく、全身の動脈硬化性疾患を反映していると解釈して治療に当たります。下肢の虚血症状の改善だけではなく、心血管疾患、脳血管疾患、頸動脈疾患の評価も重要です。末梢動脈疾患の原因は動脈硬化です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の動脈硬化の危険因子があれば治療します。

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

特に、禁煙、糖尿病の管理は重要です。糖尿病は動脈硬化の原因だけでなく、糖尿病性神経障害として下肢の感覚異常の原因となります。

・理学療法、定期的な運動療法を行うことで、歩くことによって下肢のの血流が増えて、側副血行路が発達し、症状が緩和されます。

・抗血小板療法、バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、プレタール(シロスタゾール)、抗血小板薬です。症候性の末梢動脈疾患に対して、脳心血管イベント予防のために抗血小板療法を開始します。

・パナルジン(チクロピジン)、アンプラーグ(サルポグレラート)、プロサイリン(ベラプロスト)、オパルモン(リマプロスト)、エパデール(エイコサペンタエン酸)、他に末梢動脈疾患に対して、抗血小板薬、血管拡張薬などを効果を期待して使います。

・血管内治療、カテーテルで狭窄部位に対してバルーン拡張やステント留置を行います。

・血行再建術、下肢動脈バイパス術、血管外科に紹介します。

詳しくは「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン」をご覧ください。

「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン (2015 年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2015_miyata_h.pdf

「足の血管病」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph89.html