感染性心内膜炎の予防

【感染性心内膜炎の予防】
感染性心内膜炎(Infective endocarditis: IE)とは、心臓の内側の膜、心内膜というところに細菌が感染することで発症する感染症です。発症してしまうと治療は難航することがあり、ハイリスク例では予防が重要です。感染性心内膜炎の危険因子としては細菌が付着しやすいような弁の異常がリスクとなることがわかっています。心臓弁膜症の患者さんは予防的抗菌薬投与が必要になることがあります。詳しくは感染性心内膜炎のページまたは日本循環器学会「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」をご覧ください。
感染性心内膜炎→https://循環器内科.com/ie
「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_nakatani_h.pdf
【感染性心内膜炎の危険因子と予防的抗菌薬投与】

感染性心内膜炎の危険因子としては、菌が付着しやすい弁の異常、機械弁等の人工異物が知られています。実は、感染性心内膜炎予防のための予防的抗菌薬投与の有効性は科学的には証明されていないため、欧米では一律の予防的抗菌薬投与に消極的ですが、日本のガイドラインではリスクに応じて予防的抗菌薬投与が推奨されています。具体的には以下のように整理されています。
「成人におけるIEの基礎心疾患別リスクと,歯科口腔外科手技に際する予防的抗菌薬投与の推奨とエビデンスレベル」
推奨の強さ
「1」:強く推奨する
「2」:弱く推奨する(提案する)
エビデンス総体の強さ
A(強):効果の推定値に強く確信がある
B(中):効果の推定値に中程度の確信がある
C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である
D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない
1.高度リスク群(感染しやすく、重症化しやすい患者):推奨の強さI:強く推奨する
・生体弁、機械弁による人工弁置換術患者、弁輪リング装着例
・IEの既往を有する患者
・複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室、完全大血管転位、ファロー四徴症)
・体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者
2.中等度リスク群(必ずしも重篤とならないが、心内膜炎発症の可能性が高い患者):推奨の強さII:弱く推奨する(提案する)
・ほとんどの先天性心疾患(※単独の心房中隔欠損症(二次孔型)を除く)
・後天性弁膜症(※逆流を伴わない僧帽弁狭窄症ではIEのリスクは低い)
・閉塞性肥大型心筋症
・弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
・人工ペースメーカ、植込み型除細動器などのデバイス植込み患者
・長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者
全ての心疾患が一律に予防的抗菌薬投与が必要という訳ではなく、あえて予防をする必要がない(低リスク群)としたものとして、ガイドラインでは以下のように記載されています。
・心房中隔欠損症(二次孔型)
・心室中隔欠損症、動脈管開存症、心房中隔欠損症根治術後6ヵ月以上経過した残存短絡がないもの
・冠動脈バイパス術後
・逆流のない僧帽弁逸脱
・生理的または機能的心雑音
・弁機能不全を伴わない川崎病の既往
・弁機能不全を伴わないリウマチ熱の既往
詳しくは日本循環器学会「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」をご覧ください。
「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_nakatani_h.pdf

【歯科処置前の抗菌薬の標準的予防投与法(成人)】

歯科処置前の抗菌薬の標準的予防投与法(成人)としては、経口投与可能かどうか、ペニシリンアレルギーの有無について、以上のように推奨されています。基本的には、処置前一時間の単回投与です。抜歯時などで歯科医師から予防的抗菌薬投与の必要性と具体的処方について診療情報提供書を求められることがあります。お気軽にご相談ください。