ウエアラブル心電計

【ウエアラブル心電計とは】
ウエアラブル心電計(Wearable electrocardiogram)とは、日常生活の中で身体に密着して心電図を測定、モニタリング、記録可能な心電計です。動悸や胸痛などの症状が発作性に出る場合、診断のためには症状出現時の心電計記録が重要になります。今回は、症状出現時の心電図記録の方法の一つとして、ウエアラブル心電計を紹介します。

【症状出現時の心電図記録の方法】
症状出現時の心電図記録には下記のように主に5つの方法があります。いずれかの方法で症状出現時の心電図記録を目指します。

1、来院時心電図

2、ホルター心電図

3、携帯型心電計

4、ウエアラブル心電計

5、埋込型心電計

※電気生理学的検査

症状出現時の心電図記録がどうしても難しい場合には、不整脈を誘発する電気生理学的検査という手段もあります。

【ホルター心電図】
ホルター心電図(Holter electrocardiography: Holter ECG)は、24時間または7日間の心電図検査です。24時間の間に1回以上、7日間の間に1回以上、症状が出現する場合は、症状出現時の心電図記録が出来れば診断可能であることが予測出来ます。ホルター心電図を何回か繰り返し行う場合もあります。症状の頻度が少ない場合は携帯型心電計の適応を検討します。詳しくはホルター心電図、携帯型心電計のページをご覧ください。
ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter
携帯型心電計→https://循環器内科.com/hcg
問題は、ホルター心電図を何度か繰り返し行っても症状出現時の心電図記録が捕まらない場合、症状の出方によっては症状出現時の心電図記録が難しい場合があります。携帯型心電計によっても、症状が一瞬で終わってしまい携帯型心電計では間に合わない、電車内や職場環境によっては携帯型心電計を取り出しにくい記録が難しい等、携帯型心電計で症状出現時の心電図記録が難しい場合、ウエアラブル心電計の適応を検討します。

【アップルウォッチ】(Apple Watch Series 4以降)

ウエアラブル心電計の一つとして「アップルウォッチ」を紹介します。2018/9/21発売のアップルウォッチ「Apple Watch Series 4」以降、「Apple Watch Series 5」、2020/9/18発売の「Apple Watch Series 6」には「心電図機能」が搭載されています。お茶の水循環器内科では、アップルウォッチにて症状出現時の心電図記録に成功し、不整脈の確定診断が着き、治療方針が明確になった方、その後カテーテルアブレーション治療へ進み、症状が治癒した方、カテーテルアブレーション後の再発モニタリングに活用している方など何名かいます。アップルウォッチはご自身でご用意いただく必要があります。購入した場所と「watchOSで利用できる機能」は以下の公式ページで確認可能です。下記の地域で購入、アクティベートしたアップルウォッチは心電図機能が使えます。
https://www.apple.com/jp/watchos/feature-availability/#branded-ecg
https://www.apple.com/jp/watchos/feature-availability/#branded-atrail-fib
2020/10/5現在、日本の記載はありませんが、2020/9/4、日本においてアップルウォッチは「家庭用心電計プログラム」「家庭用心拍数モニタプログラム」が医療機器承認取得、今後対応してくることが予想されます。詳しくは以下のページをご覧ください。
「2020/9/4、アップルの「家庭用心電計プログラム」「家庭用心拍数モニタプログラム」が医療機器承認を取得しました。」https://ochanomizunaika.com/19158
「お茶の水循環器内科の「アップルウォッチ外来」について具体的にまとめました。」
https://ochanomizunaika.com/19244

【アップルウォッチ以外のウエアラブル心電計】
アップルウォッチ以外にもいくつかのメーカーからウエアラブル心電計がありますが、「心電」(electrocardiogram: ECG)が測定可能であるものを確実に選んでください。「心拍」(Heart Rate: HR)、「脈拍」(Pulse Rate: PR)が測定可能なリストバンド式のウエアラブルデバイス等はたくさんありますが、不整脈の診断においては「心拍計」「脈拍計」ではなく「心電計」であることが重要です。具体的には、三栄メディシス「Checkme ECG」、ユニオンツール「MyBeat ホームECG」、東レ・NTT「hitoe」などがあります。海外のものも色々ありますが、日本における管理医療機器認証を取得しているものが望ましいでしょう。

【埋込型心電計】
来院時心電図、ホルター心電図、携帯型心電計、ウエアラブル心電計等でも症状出現時の心電図記録がどうしても捕まらない場合、埋込型心電計(Insertable cardiac monitor: ICM)という選択肢があります。最長3年間のバッテリー、症状出現時の心電図を確実に記録します。体内にセンサーを埋込むので手術の必要があること、飛行機の操縦士、新幹線の運転、トラックの運転、高所作業などに関わる仕事の方は、一回の発作が重大な事故を引き起こす危険性があるため、確実な診断が必要な場合があります。必要な場合は専門の医療機関へ紹介します。詳しくは埋込型心電計のページをご覧ください。
埋込型心電計→https://循環器内科.com/icm

【電気生理学的検査】
電気生理学的検査(Electrophysiological study: EPS)とは、カテーテルを用いて心臓の電気活動を詳しく調べる検査です。入院が必要な検査ですが、症状出現時の心電図記録がどうしても難しい場合には、不整脈を誘発して調べることが可能です。電気生理学的検査にて不整脈の誘発を認める場合には不整脈の種類によりますが、そのままカテーテル治療へ進むことが出来ることがメリットです。詳しくは電気生理学的検査のページをご覧ください。
電気生理学的検査→https://循環器内科.com/eps