【心室頻拍とは】
心室頻拍(Ventricular tachycardia: VT)とは、特に致死的となる不整脈の一つで、心臓の心室という場所で異所性の電気刺激から頻拍となっている状態です。中には心室細動に移行し、心停止を起こすことがあります。危険度によって埋込型除細動器の適応となるものから経過観察で良いものまで幅広くあります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
「危険な不整脈とその治療」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph71.html
【心室頻拍の診断】
心室頻拍の診断は心電図検査によって行います。QRS幅が0.12秒以上のwide QRSという特徴的な心電図所見を来します。心室から心室期外収縮が、1分間に120回以上の心拍数で心室期外収縮が3連発以上出現する場合を心室頻拍と定義します。臨床症状としては、動悸、胸の苦しさ、ふらつき、前失神、失神などの血圧低下、脳虚血症状です。睡眠中などに起こる場合は自覚症状がないか心臓突然死の要因の一つになります。ホルター心電図や埋込型心電計によって診断します。
【心室頻拍の分類】
発作の持続時間が30秒未満かそれ以上かで、持続性心室頻拍(Sustained ventricular tachycardia: SVT)か、非持続性心室頻拍(Non-sustained ventricular tachycardia: NSVT)に分類します。
単形性か、多形性、多形性の派生型としてtorsade de pointesがあります。
【心室頻拍の治療】
心室頻拍を引き起こしている原疾患があれば原疾患を治療します。持続性の心室頻拍の場合、埋込型除細動器(Implantable cardioverter defibrillator: ICD)の適応を考慮します。
埋込型除細動器→https://循環器内科.com/icd
「不整脈非薬物治療ガイドライン」では、二次予防か一次予防か、冠動脈疾患の有無について、ICDの適応基準を定めています。
詳しくは「不整脈非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。
「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」 →https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_kurita_nogami.pdf
基礎心疾患がある患者に対する二次予防
冠動脈疾患にともなう持続性VT,VF に対するICD適応の推奨
・心筋梗塞の既往を有し,解除できる残存虚血や電解質異常などの可逆的な要因がないVFまたは電気ショックを要する院外心肺停止:I A
・心筋梗塞の既往を有し,解除できる残存虚血や電解質異常などの可逆的な要因がない持続性VT で,以下の条件のいずれかを満たす場合:I A
①LVEF ≦ 35%
②VT中に失神をともなう場合
③VT中の血圧が80mmHg以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合
④多形性VT
⑤血行動態の安定している持続性VTであっても薬剤治療が無効,あるいは副作用のため使用できない場合や薬効評価が不明な場合,もしくはカテーテルアブレーションが無効あるいは不可能な場合
・持続性VTがカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合:IIa B
・持続性VTを有し,臨床経過や薬効評価にて有効な薬剤がみつかっている場合:IIa B
・冠攣縮にともなう院外心肺停止を含むVT/VF既往例で,内科的治療に抵抗性の場合:IIa B
・冠攣縮にともなう院外心肺停止を含むVT/VF既往例で,内科的治療が有効の場合:IIb C
・急性の原因(冠攣縮を除く48時間以内の急性虚血,電解質異常,薬剤など)によるVT,VFの可能性が高く,十分な治療にもかかわらず再度その原因に暴露されるリスクが高いと考えられる場合:IIb C
・慢性疾患による身体機能制限:III C
・12ヵ月以上の余命が期待できない場合:III C
・精神障害などで治療に際して患者の同意や協力が得られない場合:III C
・急性の原因(冠攣縮を除く急性虚血,電解質異常,薬剤など)が明らかなVT,VFで,その原因の除去によりVT,VFが予防できると判断される場合:III C
・抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない頻回に繰り返すVT あるいはVF:III C
・心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全 :III C
非虚血性心筋症にともなう持続性VT,VFに対するICD適応の推奨
・電解質異常などの可逆的な要因によらないVFまたは電気ショックを要する院外心肺停止:I A
・電解質異常などの可逆的な要因がない持続性VTで,以下の条件のいずれかを満たす場合:I C
①VT中に失神をともなう場合
②頻拍中の血圧が80mmHg以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合
③多形性VT
④血行動態の安定している単形性VTであっても薬剤治療が無効,あるいは副作用のため使用できない場合や,薬効が不明な場合,もしくはカテーテルアブレーションが無効あるいは不可能な場合
・持続性VTがカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合:IIa B
・持続性VTを有し,臨床経過や薬効評価にて有効な薬剤がみつかっている場合:IIa B
・急性の原因(心不全,電解質異常,薬剤など)によるVT,VFの可能性が高く,十分な治療にもかかわらず再度その原因に暴露されるリスクが高いと考えられる場合:IIb C
・12ヵ月以上の余命が期待できない場合:III C
・精神障害などで治療に際し患者の同意や協力が得られない場合:III C
・急性の原因(急性虚血,電解質異常,薬剤など)が明らかなVT,VF で,その原因の除去によりVT,VFが予防できると判断される場合:III C
・抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない,頻回に繰り返すVTあるいはVF:III C
・心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C
基礎心疾患がある患者に対する一次予防
冠動脈疾患患者に対するICD一次予防適応の推奨
以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:Ⅰ A
①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)
②十分な薬物治療
③NYHA心機能分類II以上の心不全症状
④LVEF≦35%
⑤NSVT
以下のすべてを満たす患者での ICD の使用:Ⅰ B
①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)
②十分な薬物治療
③LVEF≦40%
④NSVT
⑤電気生理検査でのVT/VFの誘発
以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:IIa B
①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)
②十分な薬物治療
③NYHA心機能分類II以上の心不全症状
④LVEF≦35%
以下のいずれかを満たす患者でのICDの使用
①慢性疾患による身体機能制限
②余命が1年以上期待できない例
③心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C
非虚血性心筋症患者に対するICD一次予防適応の推奨
以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:Ⅰ A
①非虚血性心筋症
②十分な薬物治療
③NYHA心機能分類II以上の心不全症状
④LVEF≦35%
⑤NSVT
以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:IIa B
①非虚血性心筋症
②十分な薬物治療
③NYHA心機能分類II以上の心不全症状
④LVEF≦35%
以下のいずれかを満たす患者でのICDの使用
①慢性疾患による身体機能制限
②余命が1年以上期待できない例
③心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C
「不整脈非薬物治療ガイドライン」では、単形性持続性心室頻拍に対してカテーテルアブレーションの適応基準を定めています。
単形性持続性VTに対するカテーテルアブレーションの推奨
症状を有する特発性持続性VTで,薬物治療が有効または未使用でも,患者が薬物治療よりもカテーテルアブレーション治療を希望する場合:I B
無症状あるいは症状が軽微な特発性持続性VTで,薬物治療が有効または未使用でも,患者が薬物治療よりもカテーテルアブレーション治療を希望する場合:IIa B
器質的心疾患をともなうインセサント型単形性VTあるいは電気的ストームで,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:I C
症状を有する虚血性心疾患にともなう単形性持続性VTで,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:I B
虚血性心疾患にともなう単形性持続性VTで,ICDの植込み後に抗頻拍治療が頻回に作動する場合:I B
虚血性心疾患にともなう単形性持続性VTで,ICDの初回植込み術周術期:IIa B
アミオダロン内服中の虚血性心疾患における単形性持続性VTの再発:I B
非虚血性心筋症にともなう単形性持続性VTで,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:IIa B
脚間・脚枝間リエントリー性頻拍:I C
詳しくは「不整脈非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。
「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」 →https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_kurita_nogami.pdf
・抗不整脈薬
アンカロン(アミオダロン)、シンビット(ニフェラカント)、ソタコール(ソタロール)、ベプリコール(ベプリジル)、メインテート(ビソプロロール)、アーチスト(カルベジロール)、セロケン(メトプロロール)などの抗不整脈をICDまでのつなぎ、または心室頻拍の予防に使います。
詳しくは「不整脈薬物治療に関するガイドライン」をご覧ください。
「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf
【心室頻拍の原因】
心室頻拍の原因は多岐に渡ります。原因不明のものから、急性心筋梗塞の合併症として、心筋虚血による電気的な不安定性から心室頻拍が起こる場合、電解質異常、心不全、肥大型心筋症、拡張型心筋症などの心筋症、サルコイドーシス、Brugada症候群、QT延長症候群など、いくつか疾患が心室頻拍を起こしやすい疾患が知られています。詳しくは下記ページをご覧ください。
急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami
不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap
Brugada症候群→https://循環器内科.com/brugada
肥大型心筋症→https://循環器内科.com/hcm
拡張型心筋症→https://循環器内科.com/dcm
【心室頻拍の予防】
心停止は様々な原因で起こりますが、突然の院外心停止で最も多い原因の一つが急性心筋梗塞に伴う心室頻拍や心室細動などの致死的不整脈による心停止です。急性心筋梗塞は動脈硬化が原因で起こります。動脈硬化は、以下のリスク因子を管理することでコントロール可能です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙などの動脈硬化のリスク因子があれば、それぞれの治療をしっかりと行いましょう。
・高血圧症→https://循環器内科.com/ht
・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl
・糖尿病→https://循環器内科.com/dm
・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld