心臓ペースメーカー

【心臓ペースメーカーとは】

心臓ペースメーカー(Cardiac pacemaker)とは、心臓の電気刺激を人工的に補助する医療機器です。主に徐脈性不整脈の治療に使います。具体的には、心臓の電気刺激が上手く作り出せない場合、心臓の電気刺激が上手く伝わらない場合、心筋が上手いタイミングで収縮しないため心不全を起こしている場合、などです。具体的には、洞不全症候群、高度房室ブロック、高度脚ブロック、徐脈性の心房細動などです。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「ペースメーカーと植え込み型除細動器」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph47.html

【心臓ペースメーカーの適応】

「不整脈の非薬物治療ガイドライン」では、ACC/AHAガイドラインに基づき、推奨度を以下の4つに分類されています。

(1)クラスⅠ:有益であるという根拠があり,適応であることが一般に同意されている

(2)クラスⅡa:有益であるという意見が多いもの

(3)クラスⅡb:有益であるという意見が少ないもの

(4)クラスⅢ:有益でないまたは有害であり,適応でないことで意見が一致している

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

以下、各論です。

洞機能不全症候群

ClassⅠ:

1.失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感等の症状あるいは心不全があり,それが洞結節機能低下に基づく徐脈,洞房ブロック,洞停止あるいは運動時の心拍応答不全によることが確認された場合.それが長期間の必要不可欠な薬剤投与による場合を含む

ClassⅡa:

1.上記の症状があり,徐脈や心室停止を認めるが,両者の関連が明確でない場合2.徐脈頻脈症候群で,頻脈に対して必要不可欠な薬剤により徐脈を来たす場合

ClassⅡb:

1.症状のない洞房ブロックや洞停止

房室ブロック

ClassⅠ:

1.徐脈による明らかな臨床症状を有する第2度,高度または第3度房室ブロック

2.高度または第3度房室ブロックで以下のいずれかを伴う場合

(1)投与不可欠な薬剤によるもの

(2)改善の予測が不可能な術後房室ブロック

(3)房室接合部のカテーテルアブレーション後

(4)進行性の神経筋疾患に伴う房室ブロック

(5)覚醒時に著明な徐脈や長時間の心室停止を示すもの

ClassⅡa:

1.症状のない持続性の第3度房室ブロック

2.症状のない第2度または高度房室ブロックで,以下のいずれかを伴う場合

(1)ブロック部位がHis束内またはHis束下のもの

(2)徐脈による進行性の心拡大を伴うもの

(3)運動または硫酸アトロピン負荷で伝導が不変もしくは悪化するもの

3.徐脈によると思われる症状があり,他に原因のない第1度房室ブロックで,ブロック部位がHis束内またはHis束下のもの

ClassⅡb:

1.至適房室間隔設定により血行動態の改善が期待できる心不全を伴う第1度房室ブロック

2枝および3枝ブロック

ClassⅠ:

1.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,第2度MobitzⅡ型,高度もしくは第3度房室ブロックの
既往のある場合

2.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,投与不可欠な薬剤の使用が房室ブロックを誘発する可能性
の高い場合

3.慢性の2枝または3枝ブロックとWenckebach型第2度房室ブロックを認め,失神発作の原因として高度の房室ブロック発現が疑われる場合

ClassⅡa:

1.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,失神発作を伴うが原因が明らかでないもの

2.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,器質的心疾患を有し,電気生理検査によりHis束以下での伝導遅延・途絶が証明された場合

ClassⅡb:

1.慢性の2枝または3枝ブロックがあり,電気生理検査でHis束以下での伝導遅延・途絶の所見を認
めるが,器質的心疾患のないもの

徐脈性心房細動

ClassⅠ:

1.失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感等の症状あるいは心不全があり,それが徐脈や心室停止によるものであることが確認された場合.それが長期間の必要不可欠な薬剤投与による場合を含む

ClassⅡa:

1.上記の症状があり,徐脈や心室停止を認めるが,両者の関連が明確でない場合

その他のペースメーカーの適応については、「不整脈の非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

【心臓ペースメーカーが必要な場合】

心臓ペースメーカーによる治療が必要な場合、専門の専門病院を紹介します。心臓ペースメーカー埋込後は磁気や電気の影響を受ける日常生活に注意があります。

日本メドロトニック株式会社「ペースメーカガイドブック」→https://www.mri-surescan.com/cardiac/pdf/tool/ic_visual.pdf

日本不整脈デバイス工業会→https://www.jadia.or.jp

日本不整脈心電学会「デバイス治療に関するガイドライン」→https://new.jhrs.or.jp/guideline/guideline02/device-guide


【心臓ペースメーカーの歴史】

・1932年、アメリカの生理学者、Albert Hyman、体外式経胸壁人工ペースメーカーを開発、手回しハンドル発電式、胸壁穿刺による直接電気刺激、

・1958年、アメリカの工学者、Earl Bakken、商用電源式体外式ペースメーカー

・スウェーデンのRune Elmqvist、スウェーデンの外科医、Ake Senning、植込式心臓ペースメーカー、電池寿命15-20分

・1963年、日本最初のペースメーカー植込術

・1974年、リチウム電池を使用したペースメーカ 、電池寿命5-8年

電池寿命の延長、小型化、ペーシング機能プログラムの改良、ねじ込み型スクリューインリード、リードレスペースメーカーなど、次々と改良されて来ており、電池寿命は10年以上になりました。


 

洞不全症候群

【洞不全症候群とは】

洞不全症候群(Sick sinus syndrome: SSS)とは、洞房結節というところから正常に心臓の電気刺激がでなくなってしまった状態です。刺激を出すスピードが遅い状態と、刺激が出せない状態になること、刺激が早くなったり遅くなったりバランスよく調節が効かないこと、などで、失神やふらつき症状、眼前暗黒感、頻脈時には動悸症状などがあります。洞房結節不全症(sinus node dysfunction)や洞機能不全症候群とも呼びます。詳しくは日本不整脈心電学会のページをご覧ください。

https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-a-3

【洞不全症候群の診断】

洞不全症候群の診断は心電図記録によって行います。症状が発作性に出る場合はホルター心電図によって捕まえます。症状出現時の心電図記録が出来れば、特徴的な心電図所見から診断は確定します。洞不全症候群の分類としてRubenstein分類があります。

I、洞性徐脈(Sinus bradycardia):原因が明らかでない心拍数50/分以下の持続性洞性徐脈

II、洞房ブロック(Sinoatrial block: SA Block)または洞停止(Sinus arrest):洞房結節からの電気刺激が一過性に停止または洞房結節から心房に完全に伝わらないこと

心電図上は洞房結節の興奮の波形は検出出来ないため直接的な診断は難しいが、以下の3型があります。

・I型房室ブロック:洞房結節から心房への電気刺激が次第に延長し、心房収縮が脱落する

・II度房室ブロック:洞房結節から心房への電気刺激が突然停止し、心房収縮が脱落する

・III度房室ブロック:完全洞房ブロック、洞停止

III、徐脈頻脈症候群(bradycardia-tachycardia syndrome):徐脈と頻脈を繰り返すこと、心房細動や心房粗動、発作性上室頻拍の合併している場合もあります。

基礎疾患の有無の評価として、虚血性心疾患、甲状腺機能、腎機能、電解質、貧血、薬剤性、心エコー、心臓MRIなどを追加します。一番多い原因は加齢による洞房結節の機能低下です。可逆性の原因があれば治療します。

【洞不全症候群の治療】

症状の有無によってペースメーカーの適応を考慮します。症状のない洞房ブロックや洞停止症状のない洞性徐脈にはペースメーカ植込みの適応はありません。症状がある洞不全症候群に対しては原則的にペースメーカーの適応です。「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」では洞不全症候群に対するペースメーカーの適応について以下のように記載しています。

ClassⅠ:

1、失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感等の症状あるいは心不全があり,それが洞結節機能低下に基づく徐脈,洞房ブロック,洞停止あるいは運動時の心拍応答不全によることが確認された場合.それが長期間の必要不可欠な薬剤投与による場合を含む

ClassⅡa:

1.上記の症状があり,徐脈や心室停止を認めるが,両者の関連が明確でない場合

2.徐脈頻脈症候群で,頻脈に対して必要不可欠な薬剤により徐脈を来たす場合

ClassⅡb:

1.症状のない洞房ブロックや洞停止症状のない洞性徐脈にはペースメーカー植込の適応はない。

必要に応じて電気生理検査による洞結節機能評価を行って適応を決定します。詳しくは「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」をご覧ください。電気生理学的検査やペースメーカーによるが必要な場合は専門の医療機関を紹介します。

・ペースメーカーまでのつなぎとして、一次ペーシング、アトロピン、他、交感神経刺激薬副交感神経遮断薬などを使うことがありますが、根治療法はペースメーカーの埋込です。

「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawas_h.pdf

「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf


 

脚ブロック

【脚ブロックとは】

脚ブロック(Bundle branch block)とは、心臓における刺激伝導路の中で、心室内のヒス束以下の脚という部位に伝導遅延が起こった状態です。心室の左脚の伝導遅延である左脚ブロック(Left bundle branch block: LBBB)と、右脚の伝導遅延である右脚ブロック(Right bundle branch block: RBBB)があります。右脚ブロックでは、QRS幅が0.12秒以上の完全脚ブロック(Complete block)と、QRS幅が010秒以上0.12秒未満の不完全脚ブロック(Incomplete block)とがあります。左脚はさらに、左脚前肢と左脚後枝からなり、左脚前肢ブロック(Left anterior hemiblock: LAH)と左脚後枝ブロック(Left posterior hemiblock: LPH)があります。QRS幅が0.12以上で、右脚ブロックあるいは左脚ブロックの基準を満たさないものを非特異的心室内伝導障害(nonspecific intraventricular conduction disturbance)と呼びます。詳しい診断基準については「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン」をご覧ください。

「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawas_h.pdf

【脚ブロックの原因】

脚ブロックの原因は多岐に渡ります。先天性心疾患、虚血性心疾患、高血圧症、心筋症、心不全、加齢、若年性の心筋重量の増大、原因を特定出来ないもの、などです。脚ブロック自体の特異的な治療というのはありません。脚ブロックを起こした原因として基礎心疾患の存在があれば治療します。特に虚血性心疾患や心不全等の器質的心疾患の有無の評価が重要です。一般に、右脚と左脚前肢は解剖学的に繊維が細くブロックを受けやすいが、左脚後枝は繊維が太くブロックを受けにくいと言われています。右脚ブロック+左脚前枝ブロック、右脚ブロック+左脚後枝ブロックを2枝ブロックと呼びます。左脚前枝ブロック+左脚後枝ブロックは完全左脚ブロックのことで、これを2枝ブロックに含めることがあります。右脚、左脚前肢、左脚後枝、3本全てのブロックを生じると、完全房室ブロックと同じ状態になります。その一歩手前の状態、右脚ブロック+左脚前枝ブロック+I度またはII度房室ブロック、右脚ブロック+左脚後枝ブロック+I度またはII度房室ブロック、左脚ブロック+I度またはII度房室ブロックのことを、3枝ブロックと呼ぶことがあります。以上から、新規に発生した左脚ブロック、2枝ブロック、3枝ブロックは精査の対象で、それ以外はケースバイケースということになります。

【脚ブロックの管理】

脚ブロック自体の特異的な治療というのはありません。脚ブロックを起こした原因として基礎心疾患の存在があれば治療します。特に虚血性心疾患や心不全等の器質的心疾患の有無の評価が重要です。

・不完全右脚ブロック(incomplete right bundle branch block: IRBBB)

・完全右脚ブロック(complete right bundle branch block: CRBBB)

人口の0.2-2.3%程度存在、一般に右脚ブロック単独のみの場合は通常、病的意義に乏しく、加齢とともに増加することがわかっています。前壁梗塞や急性肺血栓塞栓症にて出現することもあり、基礎的心疾患の存在を疑う場合、精査の対象とします。

・左脚ブロック(Left bundle branch block: LBBB)

一般人口の0.2-1%程度存在、若年者の左脚ブロック単独のみの心電図異常は病的意義に乏しいが、中年以降に新規発症した左脚ブロックは精査の対象とします。具体的には、虚血性心疾患、高血圧性心肥大、心筋症などの背景因子に関連することがあり、ホルター心電図、心エコー、冠動脈CT、心臓MRI等へ評価を行います。また、心不全に左脚ブロックが合併すると両心室の非同期を来し、心不全を悪化させるため、ペースメーカー治療の対象となります。

・左脚前肢ブロック(Left anterior fascicular block: LAFB)

一般人口の数%に存在、左脚前肢ブロック単独のみの心電図異常は病的意義は明らかでないが、リスク因子に応じて心エコーや虚血性心疾患の有無の評価を行います。

・左脚後枝ブロック(Left posterior fascicular block: LPFB)

解剖学的に左脚後枝単独のブロックは非常に稀で、右脚ブロックを伴い、右脚ブロック+左脚後
枝ブロックの2枝ブロックとなることが多いです。

・2枝ブロック(右脚ブロック+左脚前枝ブロック、右脚ブロック+左脚後枝ブロック)

基礎的心疾患の有無の評価を必ず行います。2枝ブロックは完全房室ブロックへの移行のリスクであり、電気生理学的検査やペースメーカー植込の適応について評価を行います。

・3枝ブロック(右脚ブロック+左脚前枝ブロック+I度またはII度房室ブロック、右脚ブロック+左脚後枝ブロック+I度またはII度房室ブロック、左脚ブロック+I度またはII度房室ブロック)

右脚、左脚前肢、左脚後枝の3本とも全てブロックを生じた状態で、基礎的心疾患の有無の評価を必ず行います。ペースメーカーの適応です。

・非特異的心室内伝導障害(nonspecific intraventricular conduction disturbance)

QRS幅が0.12以上で、右脚ブロックあるいは左脚ブロックの基準を満たさないもので、病的意義は不明です。必要に応じて基礎心疾患の精査を行います。

詳しくは「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」をご覧ください。

「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawas_h.pdf

「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf


 

房室ブロック

【房室ブロックとは】

房室ブロック(Atrioventricular block: AVB)とは、心房と心室の間をつなぐ房室結節で伝導が遅くなったり、伝導がブロックされることです。特に治療の必要ないもの、経過観察で問題ないものから、ペースメーカー治療が必要なものまであり、判断が重要です。

【房室ブロックの診断】

房室ブロックの診断は心電図検査によって行います。房室伝導の遅延、脱落の程度によって、I度房室ブロック、II度房室ブロック、III度房室ブロックの3つに分類されます。II度房室ブロックは、さらにMobitz Ⅰ型(Wenckebach型)とMobitz II型の2つに分類されます。発作性房室ブロックと言って、房室ブロックが発作性に出現する場合があり、ホルター心電図によって長期の心電図記録を行います。

・I度房室ブロック:

房室伝導が遅延し、PR時間が0.2秒以上に延長した状態です。房室伝導は保たれています。房室結節における副交感神経の亢進によるものが多く、特別な治療は必要ありません。基礎疾患や症状があればそれに対して治療を行います。

・Mobitz I型房室ブロック:

Wenckebach房室ブロックとも呼びます。房室伝導が次第に遅延して行き、房室伝導が間欠的に脱落する状態です。脱落前と脱落後のPR間隔を比較することで鑑別が可能です。房室結節における副交感神経の亢進によるものが多く、特別な治療は必要ありません。基礎疾患や症状があればそれに対して治療を行います。

・Mobitz II型房室ブロック:

房室伝導の延長なく、突然脈が脱落するものです。脱落前と脱落後のPR間隔に差がないことで鑑別が可能です。房室結節下の器質的障害が原因によるものが多く、基礎疾患の検索を行います。可逆的な原因があるかどうか精査、ペースメーカーの適応を考慮します。

・III度房室ブロック:

房室伝導が完全に途絶した状態、完全房室ブロック(complete atrioventricular block: Complete AV block)、房室解離とも呼びます。P波とQRS波が無関係に出現していますが、PP間隔、RR間隔は一定であることが特徴です。心房の刺激が心室に全く伝わらない状態で、原則的にペースメーカーの適応です。可逆的な原因があれば原因に対する治療を行います。

【房室ブロックの治療】

以上のように、I度房室ブロックとMobitz I型房室ブロックは原則、特に治療の必要はありません。Mobitz II型房室ブロックとIII度房室ブロックは可逆的な原因の検索を行うとともに、ペースメーカーの適応を評価します。「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」によると、ペースメーカーの適応としては以下の通りです。

1、徐脈による明らかな臨床症状を有する第2度、高度または第3度房室ブロック

2、高度または第3度房室ブロックで以下のいずれかを伴う場合

(1)投与不可欠な薬剤によるもの

(2)改善の予測が不可能な術後房室ブロック

(3)房室接合部のカテーテルアブレーション後

(4)進行性の神経筋疾患に伴う房室ブロック

(5)覚醒時に著明な徐脈や長時間の心室停止を示すもの

ClassⅡa:

1、症状のない持続性の第3度房室ブロック

2、症状のない第2度または高度房室ブロックで、以下のいずれかを伴う場合

(1)ブロック部位がHis束内またはHis束下のもの

(2)徐脈による進行性の心拡大を伴うもの

(3)運動または硫酸アトロピン負荷で伝導が不変もし くは悪化するもの

3、徐脈によると思われる症状があり、他に原因のない第1度房室ブロックで、ブロック部位がHis束内 またはHis束下のもの

ClassⅡb:

1、至適房室間隔設定により血行動態の改善が期待できる心不全を伴う第1度房室ブロック

詳しくは「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」または「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」をご覧ください。

「不整脈薬物治療に関するガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

「不整脈の非薬物治療ガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

・ペースメーカーまでのつなぎとして、一次ペーシング、アトロピン、他、交感神経刺激薬副交感神経遮断薬、を使うことがありますが、根治療法はペースメーカーの埋込です。必要な場合は専門外来へ紹介します。


 

発作性上室頻拍

【発作性上室頻拍とは】

発作性上室頻拍(Paroxysmal supraventricular tachycardia: PSVT)とは、頻脈性不整脈の一つで、心拍数が140-200くらいの頻拍が、突然始まって、突然終わるというのが特徴です。発作性上室頻拍は心房と房室結節を含む上室に起こる頻発性不整脈の総称で、通常、心房細動と心房粗動は含みません。詳しくは日本不整脈心電学会のページをご覧ください。

https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-a-6

【発作性上室頻拍の診断】

発作性上室頻拍は心電図検査によって診断します。心電図検査で捕まらない場合は、ホルター心電図にて症状出現時の心電図記録が必要です。電気生理学的検査によって不整脈の発生源を特定、リエントリーを来している部位によって分類があります。

・房室リエントリー性頻拍(Atrioventricular reentrant tachycardia: AVRT)

・WPW症候群に伴う房室結節リエントリー性頻拍(Atrioventricular nodal reentrant tachycardia: AVNRT)

・心房頻拍(Atrial tachycardia: AT)

・洞結節リエントリー性頻拍(Sinus node reentry tachycardia)

・心房内リエントリー性頻拍

頻脈が数日以上続くと心不全を来すことがありますので、採血、心エコー等によって適宜心機能を評価します。また、冠危険因子の有無や程度によっては冠動脈まで精査を行います。

【発作性上室頻脈の治療】

カテーテルアブレーションによって根治が可能です。ただ、発作の頻度がそこまで多くない場合には、迷走神経刺激法や抗不整脈薬にて症状を和らげます。発作の頻度が年に数回の場合は診断が難しいですが、抗不整脈薬単回経口投与(Pill in the pocket)にて経過観察を行う場合もあります。

・迷走神経刺激法

副交感神経を活性化させて、洞房結節の伝導を抑制し、発作性上室頻拍の停止が出来る場合があります。息こらえ、深呼吸、冷たい水を飲む、氷水に顔を付ける、頸動脈洞マッサージ、などの方法があります。止まる場合と止まらない場合があります。

・ワソラン(ベラパミル)、ヘルベッサー(ジルチアゼム)、ジゴシン(ジゴキシン)、アリサミン(プロカインアミド)、タンボコール(フレカイニド)、他

房室伝導を抑制、または心室レートを和らげる抗不整脈薬を使います。発作予防効果は60-70%程度ですので、十分に発作予防が認められない場合は、カテーテルアブレーションへと進みます。

・抗不整脈薬単回経口投与(Pill in the pocket)

発作の頻度がそこまで多くない場合、ワソラン(ヘルベッサー)などの抗不整脈薬を症状出現時のみ頓用で内服する方法もあります。

・アデホス(アデノシン)、急速静注によって発作性上室頻脈を停止させます。救急外来または入院にて行います。

・循環動態が不安定な場合は、直流除細動、入院管理を行います。

詳しくは「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」をご覧ください。

「不整脈薬物治療に関するガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


 

心房粗動

【心房粗動とは】

心房粗動(Atrial flutter:AFL)とは、頻脈性不整脈の一つで、心臓の中の心房というところから一分間に300回前後(200-350回)興奮している状態です。房室結節が脈の伝導を調節しているため、300回の電気刺激が全て心室に伝わる訳ではありませんが、心拍数は150回(2回に1回伝導が伝わった場合)、100回(3回に1回伝導が伝わった場合)と早くなり、頻脈を起こします。75回(4回に1回伝導が伝わった場合)は、あまり自覚症状はないかも知れませんが、健診等の心電図で異常を指摘されて発見されることもあります。200-350回の脈が全て心室に伝わえると、激しい動悸や脈がしっかり出ないことによって失神やふらつき、目眩等の症状を来します。詳しくは日本不整脈心電学会のページをご覧ください。

https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-a-2/

【心房粗動の診断】

心房粗動は心電図検査にて診断します。発作性に起こる場合はホルター心電図が必要になります。心房粗動に特徴的な粗動波(F派)を認めれば診断になります。心房粗動の一番のリスク因子は加齢ですが、急に始まった場合は何か原因がないか、採血、心エコー、冠動脈CT、心臓MRI等にて評価して行きます。

【心房粗動の治療】

治療はカテーテルアブレーションが第一選択です。心房粗動の原因となっている心房内の電気的異常をカテーテルによって治療します。カテーテルアブレーションまでの対症療法として抗不整脈薬を、塞栓症のリスクに応じて抗凝固療法を追加します。

・カテーテルアブレーション

典型的な心房粗動では心房粗動を引き起こす電気的回路が右房内の三尖弁輪の周りにあることがある程度特定されています。三尖弁輪以外の非典型的な心房粗動の場合もあります。カテーテルアブレーションの治療成績はよく、90%以上根治が望めます。

・ワソラン(ベラパミル)、ヘルベッサー(ジルチアゼム)、ジゴシン(ジゴキシン)、メインテート(ビソプロロール)、アーチスト(カルベジロール)、他

カテーテルアブレーションまでのつなぎとして頻脈症状を抑えるように対症療法を行います。房室伝導を抑制、または心室レートを和らげる抗不整脈薬を使います。

・抗凝固療法

心房細動に比べ発生頻度は低いものの、血栓塞栓症の原因となりうることがわかっています。塞栓症リスクの高い場合は抗凝固療法を追加します。心房細動の抗凝固療法に準じて行います。

心房細動→https://循環器内科.com/af

発作性心房細動→https://循環器内科.com/paf

・循環動態が不安定な場合は、直流除細動、入院管理を行います。

詳しくは「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」をご覧ください。

「不整脈薬物治療に関するガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


 

深部静脈血栓症

【深部静脈血栓症とは】

深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis: DVT)とは、身体の中の深いところにある静脈に血栓が出来てしまった状態です。主に、下肢と骨盤内が多いです。静脈内に出来た血栓が血流に乗って肺まで到達すると、肺の血管に詰まって肺血栓塞栓症(Pulmonary Thromboembolism: PTE)を来します。深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症を一連の病態として、静脈血栓塞栓症(Venous thromboembolism: VTE)と呼びます。連続した一連の疾患ですので、肺血栓塞栓症とほとんど説明は同じになります。エコノミークラス症候群、ロングフライト症候群と呼ばれるのが飛行機に長時間乗った後に発生する深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症のことです。よくインターネット等で不安を煽るような書き方をされて心配になってしまう方が多いですが、飛行機に載った人が全員深部静脈血栓症を起こす訳ではありません。深部静脈血栓症を引き起こすリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいですが、リスク因子が少なければ少ないほど起こしにくいです。詳しく「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」をご覧ください。

「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」→https://j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf

「肺塞栓症」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph78.html

【深部静脈血栓症の危険因子】

肺血栓塞栓症は深部静脈血栓症が原因です。深部静脈血栓症の主な危険因子として、血栓形成の危険因子としては、血流停滞、血管内皮障害、血液凝固能亢進が3つが有名です。具体的には、先天性の血液凝固能異常と、下記のような後天性の因子がリスクとなります。

先天性血液凝固能亢進:アンチトロンビン欠乏症、PC欠乏症、PS欠乏症、プラスミノーゲン異常症、異常フィブリノーゲン血症、組織プラスミノーゲン活性化因子インヒビター増加、トロンボモジュリン異常、他

血流停滞:長期臥床、肥満、妊娠、心肺疾患(うっ血性心不全、慢性肺性心など) 、全身麻酔、下肢麻痺、下肢ギプス包帯固定、下肢静脈瘤、長時間座位(旅行、災害時)、他

血管内皮障害:各種手術、外傷、骨折、カテーテル検査、治療、血管炎、抗リン脂質抗体症候群、膠原病、喫煙、静脈血栓塞栓症の既往、他

血液凝固能亢進:悪性腫瘍、妊娠、産後、各種手術、外傷、骨折、熱傷、薬物(経口避妊薬,エストロゲン製剤など)、感染症、ネフローゼ症候群、炎症性腸疾患、多血症、抗リン脂質抗体症候群、脱水、他

血栓形成に至る基礎疾患が明らかでないものは、特発性静脈血栓塞栓症と呼びますが、悪性腫瘍の合併に注意です。悪性腫瘍があると凝固能異常を来すことがあり、深部静脈血栓症をきっかけに悪性腫瘍が見つかることがあります。逆に、癌患者が凝固能亢進によって脳梗塞等の血栓症を起こすことを、Trousseau症候群と言います。

【深部静脈血栓症の診断】

深部静脈血栓症の診断は、静脈内の血栓の存在の証明です。臨床症状と危険因子から検査の必要性を判断します。様々な検査がありますが、下肢造影CTは精度が高く、診断の否定も含めて有用です。胸部レントゲン、心電図検査のみで診断可能な特異的な所見がなく、診断も除外も出来ません。下肢血管エコーは明らかな血栓像がある場合には診断になるのですが、骨盤内の静脈までは検出が難しいことが多いのと、すでに肺血栓塞栓症を起こして下肢から血栓が完全に遊離してしまった場合は下肢エコーには異常がないので、いくら下肢を調べても診断にはなりません。採血検査におけるDダイマーは、感度が高いのですが特異度が低いのが問題点で、検査前臨床的確率が低い場合の否定に有用ですが、検査前確率が高い場合Dダイマーのみでは診断が出来ずに、確定診断のために追加検査が必要になります。お茶の水循環器内科のような院内に臨床検査室設備のない多くのクリニックでは採血結果が出るまでに数日間を要してしまう点が限界です。以上から、お茶の水循環器内科では、下肢造影CT検査を行うかどうかの判断が重要になります。

下肢CT→https://循環器内科.com/fct

下肢造影CTにて血栓像があれば深部静脈血栓症の診断になりますし、下肢造影CTにて血栓像がなければ深部静脈血栓症ではないという診断になります。御茶ノ水駅前のメディカルスキャニングお茶の水という画像検査専門の施設にて検査を手配します。特に何も症状はないけれどなんとなく深部静脈血栓症が心配という場合、保険適応外でドックとなり、ドックの費用が掛かります。詳しくは下肢CTのページをご覧ください。

【深部静脈血栓症の治療】

深部静脈血栓症が見つかった場合には肺血栓塞栓症を起こしているかどうかを評価します。肺血栓塞栓症を起こしている場合は循環動態と血栓の大きさから重症度分類を行います。

・心停止あるいは循環虚脱あり

・広範型(massive):血行動態不安定、 ショックあるいは低血圧(あらたに出現した不整脈、脱水、敗血症によらず、15分以上継続する収縮期血圧<90 mmHgあるいは ≧40 mmHgの血圧低下)

・亜広範型(submassive):血行動態安定、右心負荷所見あり

・非広範型(non-massive):血行動態安定、右房負荷所見なし

肺血栓塞栓症と診断した場合には原則入院後にて、抗凝固療法、血栓溶解療法を開始します。抗凝固療法には、 未分画ヘパリン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、直接経口抗凝固療薬、などがあります。血栓溶解療法にはモンテプラーゼがあります。薬物療法に加えて、下大静脈フィルター、カテーテル的血栓摘除(catheter assisted thrombus removal: CATR)、外科的血栓摘除術を選択する場合もあります。重症例では、経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support: PCPS)の補助も用意します。詳しくは入院後、主治医が判断します。

詳しく「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」をご覧ください。

「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」→https://j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf

【まとめ】

深部静脈血栓症の診療においては、危険因子、臨床症状とともに、深部静脈血栓症の診断が重要になります。お茶の水循環器内科では主に下肢造影CTの適応について評価をしています。飛行機に載った人、長距離バスに載った人全員が深部静脈血栓症を起こす訳ではありません。下肢造影CTにて異常がなければ深部静脈血栓症なしということがわかります。まずは主治医までご相談ください。

下肢CT→https://循環器内科.com/fct


 

肺血栓塞栓症

 

【肺血栓塞栓症とは】

肺血栓塞栓症(Pulmonary Thromboembolism: PTE)とは、身体の中に出来た血栓が肺の血管に詰まって塞栓症を起こすことです。血栓の由来の90%は下肢と骨盤内の深部静脈血栓症が原因と言われており、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症を一連の病態として、静脈血栓塞栓症(Venous thromboembolism: VTE)と呼びます。エコノミークラス症候群、ロングフライト症候群と呼ばれるのが飛行機に長時間乗った後に発生する深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症のことです。よくインターネット等で不安を煽るような書き方をされて心配になってしまう方が多いですが、飛行機に載った人が全員深部静脈血栓症を起こす訳ではありません。深部静脈血栓症を引き起こすリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいですが、リスク因子が少なければ少ないほど起こしにくいです。詳しく「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」をご覧ください。

「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」→https://j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf

「肺塞栓症」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph78.html

【肺血栓塞栓症の危険因子】

肺血栓塞栓症は深部静脈血栓症が原因です。深部静脈血栓症の主な危険因子として、血栓形成の危険因子としては、血流停滞、血管内皮障害、血液凝固能亢進が3つが有名です。具体的には、先天性の血液凝固能異常と、下記のような後天性の因子がリスクとなります。

先天性血液凝固能亢進:アンチトロンビン欠乏症、PC欠乏症、PS欠乏症、プラスミノーゲン異常症、異常フィブリノーゲン血症、組織プラスミノーゲン活性化因子インヒビター増加、トロンボモジュリン異常、他

血流停滞:長期臥床、肥満、妊娠、心肺疾患(うっ血性心不全、慢性肺性心など) 、全身麻酔、下肢麻痺、下肢ギプス包帯固定、下肢静脈瘤、長時間座位(旅行、災害時)、他

血管内皮障害:各種手術、外傷、骨折、カテーテル検査、治療、血管炎、抗リン脂質抗体症候群、膠原病、喫煙、静脈血栓塞栓症の既往、他

血液凝固能亢進:悪性腫瘍、妊娠、産後、各種手術、外傷、骨折、熱傷、薬物(経口避妊薬,エストロゲン製剤など)、感染症、ネフローゼ症候群、炎症性腸疾患、多血症、抗リン脂質抗体症候群、脱水、他

血栓形成に至る基礎疾患が明らかでないものは、特発性静脈血栓塞栓症と呼びますが、悪性腫瘍の合併に注意です。悪性腫瘍があると凝固能異常を来すことがあり、深部静脈血栓症をきっかけに悪性腫瘍が見つかることがあります。逆に、癌患者が凝固能亢進によって脳梗塞等の血栓症を起こすことを、Trousseau症候群と言います。

【肺血栓塞栓症の診断】

肺血栓塞栓症の診断は、肺動脈の血栓の存在の証明です。臨床症状と危険因子から検査の必要性を判断します。様々な検査がありますが、胸部造影CTは感度94.5%、特異度98.2%と報告されており、検査前臨床的確率が低い群での陰性的中率96%と診断の否定も含め、胸部造影CTは有用です。胸部レントゲン、心電図検査のみで診断可能な特異的な所見がなく、診断も除外も出来ません。採血検査におけるDダイマーは、感度が高いのですが特異度が低いのが問題点で、検査前臨床的確率が低い場合の否定に有用ですが、検査前確率が高い場合Dダイマーのみでは診断が出来ずに、確定診断のために追加検査が必要になります。お茶の水循環器内科のような院内に臨床検査室設備のない多くのクリニックでは採血結果が出るまでに数日間を要してしまう点が限界です。以上から、お茶の水循環器内科では、胸部造影CT検査を行うかどうかの判断が重要になります。

胸部CT→https://循環器内科.com/cct

胸部造影CTにて肺動脈内に血栓像があれば肺血栓塞栓症の診断になりますし、胸部造影CTにて肺動脈内に血栓像がなければ肺血栓塞栓症ではないという診断になります。御茶ノ水駅前のメディカルスキャニングお茶の水という画像検査専門の施設にて検査を手配します。特に何も症状はないけれどなんとなく肺血栓塞栓症が心配という場合、保険適応外でドックとなり、ドックの費用が掛かります。詳しくは胸部CTのページをご覧ください。

【肺血栓塞栓症の治療】

重症度分類としては、循環動態と血栓の大きさによって分類します。

・心停止あるいは循環虚脱あり

・広範型(massive):血行動態不安定、 ショックあるいは低血圧(あらたに出現した不整脈、脱水、敗血症によらず、15分以上継続する収縮期血圧<90 mmHgあるいは ≧40 mmHgの血圧低下)

・亜広範型(submassive):血行動態安定、右心負荷所見あり

・非広範型(non-massive):血行動態安定、右房負荷所見なし

肺血栓塞栓症と診断した場合には原則入院後にて、抗凝固療法、血栓溶解療法を開始します。抗凝固療法には、 未分画ヘパリン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、直接経口抗凝固療薬、などがあります。血栓溶解療法にはモンテプラーゼがあります。薬物療法に加えて、下大静脈フィルター、カテーテル的血栓摘除(catheter assisted thrombus removal: CATR)、外科的血栓摘除術を選択する場合もあります。重症例では、経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support: PCPS)の補助も用意します。詳しくは入院後、主治医が判断します。また、急性肺血栓塞栓症の多くは下肢深部静脈血栓症を塞栓源としているため、急性肺血栓塞栓症と診断した場合には、同時に下肢深部静脈血栓症の有無も評価して行きます。

詳しく「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」をご覧ください。

「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」→https://j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf

【まとめ】

肺血栓塞栓症の診療においては、危険因子、臨床症状とともに、肺血栓塞栓症の診断が重要になります。お茶の水循環器内科では主に胸部造影CTの適応について評価をしています。飛行機に載った人、長距離バスに載った人全員が肺血栓塞栓症を起こす訳ではありません。胸部造影CTにて異常がなければ肺血栓塞栓症なしということがわかります。まずは主治医までご相談ください。

胸部CT→https://循環器内科.com/cct


 

下肢CT

【下肢CTとは】

下肢CT(Foot computed tomography: Foot CT)とは、下肢の血管を評価するためのCT検査です。筋肉や骨に異常がないか、特に造影をすることで血管の狭窄や閉塞がないか、詳しく調べることが可能です。

【下肢CTの適応】

循環器内科において下肢CTは、主に下肢の血管を評価するための下肢造影CTです。下肢の血管の狭窄や閉塞を来す末梢動脈疾患、下肢の静脈に血栓が出来て、血栓が肺に飛んでしまうこと病気があり、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症などを調べる目的で使います。

末梢動脈疾患→https://循環器内科.com/pad

深部静脈血栓症→https://循環器内科.com/dvt

末梢動脈疾患、深部静脈血栓症の評価のためには、血管を詳しく映し出す必要があるため、造影が必要です。詳しくは「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン」または「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」をご覧ください。

「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン (2015 年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2015_miyata_h.pdf

「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」→https://j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf

【下肢CTの費用や時間】

保険適応の場合、3割負担で、8000円程度です。時間は検査自体は15分くらい、全体で90時間前後あれば大丈夫でしょう。造影を追加する場合は追加で3000円程度掛かります。また、特に何も症状はないけれどなんとなく肺が心配という場合、保険適応外でドックとなり、ドックの費用が掛かります。

【下肢CTの注意事項】

・CT検査ですので、少なからず放射線被爆があります。妊娠中、妊娠が疑わしい場合は検査が出来ません。放射線被曝の程度としては、毎月撮るものではありませんので、年に一回くらいは大きな問題はないというイメージでよいかと思います。

・体動や不随意運動を制御出来ない場合、息止め等の指示に従えない場合は十分な精度の検査が出来ない場合があります。

・症状、既往歴、禁忌事項、その他様々な背景因子から、胸部レントゲン、下肢血管エコー、下肢血管造影CT、採血、心電図、ホルター心電図など他の検査の適応と判断される場合もあります。

【下肢CT検査の流れ】

お茶の水循環器内科では主に「メディカルスキャニングお茶の水」さんに頭部画像検査を依頼しています。

メディカルスキャニングお茶の水→https://www.medicalscanning.net/access/ocha/index.html

1、お茶の水循環器内科から検査の予約を取ります。営業時間外の場合はご自身でご予約の取り方をご説明します。その際に検査の注意事項、前日、当日の確認事項を説明します。

2、予約当日、御茶ノ水駅前にあるメディカルスキャニングお茶の水に向かいます。お茶の水循環器内科からは徒歩で10分掛からないくらいです。駿河台の上り坂がありますので、タクシーを使っても良いでしょう。予約時間の30分前までには到着するようにしましょう。受付後の流れをざっくり言うと、問診、検査の説明、注意事項の確認、着替え、待合室で検査を待ちます。検査の順番になったら検査室に呼ばれます。頭部CT自体は15分間程度です。検査後はその日のうちに医師から検査結果の説明があります。もし緊急で対応が必要な状態であると判断された場合は、速やかに適切な医療機関へご紹介という体制です。詳しくはメディカルスキャニングお茶の水のページをご覧ください。

https://www.medicalscanning.net

3、お茶の水循環器内科に検査結果の報告書が届きますので、後日説明を聞きにいらっしゃってください。異常なしであれば異常なしという説明、治療が必要であれば適宜適切な治療、追加の検査が必要であれば適宜その手配と、それぞれ診察を進めていきます。

【まとめ】

下肢CTは外来で可能な下肢の血管の検査のうち最も詳しい検査の代表です。下肢の血管の狭窄や閉塞を来す末梢動脈疾患、下肢の静脈に血栓が出来て、血栓が肺に飛んでしまうこと病気があり、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症などを調べる目的で使います。まずは主治医までご相談ください。


 

胸部CT

【胸部CTとは】

胸部CT(Chest computed tomography: Chest CT)とは、胸部全体を精査するためのCT検査です。両肩の高さから横隔膜までを調べます。肺、気管支、気管、大動脈、縦隔、胸郭、脊椎などに異常がないかを調べます。心臓の血管、冠動脈を調べるためには、別に冠動脈CTという検査が必要です。詳しくは冠動脈CTのページをご覧ください。

冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta

【胸部CTでわかること】

・肺実質の病気:肺癌、慢性閉塞性肺疾患、気胸、肺炎、結核、肺線維症、気管支拡張症、他

・血管の病気:大動脈瘤、大動脈拡張、大動脈解離、大動脈蛇行、他

・縦隔の病気:縦隔腫瘍、他

・胸郭その他の病気:骨折、悪性腫瘍の骨転移、他

胸部CTでは様々なことがわかりますが、主に一般的には、肺癌の検査という位置付けが大きいでしょう。レントゲンにおける肺癌検診、胸部CTにおける肺癌の精査という流れですが、呼吸器内科の領域になりますので、精査が必要な場合は呼吸器内科へ紹介します。詳しくは日本呼吸器学会のページをご覧ください。

https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=25

【循環器内科における胸部CT】

心臓は常に動いているため、胸部CTでは詳しく調べられません。心臓の血管、冠動脈を調べるためには、通常の胸部CTではなく、冠動脈CTを行います。循環器内科においての胸部CTの役割は、大血管の異常の有無と程度を評価することが目的です。具体的には、大動脈と肺動脈の異常を調べるために胸部CTを使います。

急性大動脈解離→https://循環器内科.com/aad

胸部大動脈瘤→https://循環器内科.com/taa

肺血栓塞栓症→https://循環器内科.com/pte

肺血栓塞栓症の評価のためには、血管を詳しく映し出す必要があるため、造影が必要です。詳しくは「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」をご覧ください。

「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」→https://j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf

「肺塞栓症」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph78.html

【胸部CTの費用や時間】

保険適応の場合、3割負担で、8000円程度です。時間は検査自体は15分くらい、全体で90時間前後あれば大丈夫でしょう。造影を追加する場合は追加で3000円程度掛かります。また、特に何も症状はないけれどなんとなく肺が心配という場合、保険適応外でドックとなり、ドックの費用が掛かります。

【胸部CTの注意事項】

・CT検査ですので、少なからず放射線被爆があります。妊娠中、妊娠が疑わしい場合は検査が出来ません。放射線被曝の程度としては、毎月撮るものではありませんので、年に一回くらいは大きな問題はないというイメージでよいかと思います。

・体動や不随意運動を制御出来ない場合、息止め等の指示に従えない場合は十分な精度の検査が出来ない場合があります。

・症状、既往歴、禁忌事項、その他様々な背景因子から、胸部レントゲン、下肢血管エコー、下肢血管造影CT、採血、心電図、ホルター心電図など他の検査の適応と判断される場合もあります。

【胸部CT検査の流れ】

お茶の水循環器内科では主に「メディカルスキャニングお茶の水」さんに頭部画像検査を依頼しています。

メディカルスキャニングお茶の水→https://www.medicalscanning.net/access/ocha/index.html

1、お茶の水循環器内科から検査の予約を取ります。営業時間外の場合はご自身でご予約の取り方をご説明します。その際に検査の注意事項、前日、当日の確認事項を説明します。

2、予約当日、御茶ノ水駅前にあるメディカルスキャニングお茶の水に向かいます。お茶の水循環器内科からは徒歩で10分掛からないくらいです。駿河台の上り坂がありますので、タクシーを使っても良いでしょう。予約時間の30分前までには到着するようにしましょう。受付後の流れをざっくり言うと、問診、検査の説明、注意事項の確認、着替え、待合室で検査を待ちます。検査の順番になったら検査室に呼ばれます。頭部CT自体は15分間程度です。検査後はその日のうちに医師から検査結果の説明があります。もし緊急で対応が必要な状態であると判断された場合は、速やかに適切な医療機関へご紹介という体制です。詳しくはメディカルスキャニングお茶の水のページをご覧ください。

https://www.medicalscanning.net

3、お茶の水循環器内科に検査結果の報告書が届きますので、後日説明を聞きにいらっしゃってください。異常なしであれば異常なしという説明、治療が必要であれば適宜適切な治療、追加の検査が必要であれば適宜その手配と、それぞれ診察を進めていきます。

【まとめ】

胸部CTは外来で可能な胸部の検査のうち最も詳しい検査の代表です。肺、気管支、気管、大動脈、縦隔、胸郭、脊椎などに異常がないかを調べます。心臓の血管、冠動脈を調べるためには、別に冠動脈CTという検査が必要です。まずは主治医までご相談ください。


 

頭部CT

【頭部CTとは】

頭部CT(Head Computed Tomography: Head CT)とは、頭部、特に脳を中心としたCT検査です。CTを用いて、脳、骨、くも膜下腔、副鼻腔等を調べることが出来ます。主に出血性病変、脳出血、くも膜下出血を疑い際に必要な検査です。造影をすると脳血管まで評価が可能ですが、まずはMRAのほうを優先することが多いです。さらに脳血管の詳細な評価が可能な脳血管造影という検査もあります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「脳の画像検査で何がわかる?」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph28.html

【脳血管】

心臓から脳に血液を送っています。具体的には、心臓から出る大動脈(aorta)は、大動脈洞から冠動脈(Coronary artery)を分岐した後、上行大動脈(Ascending aorta)となり、大動脈弓部(Aortic arch)から、右腕頭動脈(Brachiocephalic Artery: BCA)、左総頚動脈(Common carotid artery: CCA)、左鎖骨下動脈(Subclavian artery)を分岐し、下降大動脈(Descending aorta)となり、胸部、腹部、下肢へと向かいます。右腕頭動脈は右総頚動脈と右鎖骨下動脈に分岐し、左右の鎖骨下動脈からは両上肢へ向かう途中で椎骨動脈(Vertebral artery)が分岐し、左右の総頚動脈は頭部へ向かいます。左右の総頚動脈はその後、内頚動脈(Internal carotid artery: ICA)と外頸動脈(External carotid artery: ECA)に分岐します。左右の内頚動脈と、左右の椎骨動脈の4本の血管が脳を栄養します。脳は非常に大事な臓器であるため、脳を支える血管は4本あると考えることも出来ます。左右の椎骨動脈は合流し、脳底動脈(Basilar artery)となります。左右の椎骨動脈からは後下小脳動脈(Posterior inferior cerebellar artery: PICA)、脳底動脈からは左右の迷路動脈、前下小脳動脈(Anterior inferior cerebellar artery: AICA)、橋動脈、上小脳動脈(Superior cerebellar artery: SCA)らが分岐します。左右の内頚動脈は眼動脈(Ophthalmic artery)を分岐した後、椎骨動脈と合流し、前交通動脈(Anterior Communicating Artery: Acom)、後交通動脈(Posterior communicating artery: Pcom)、ウイリスの大脳動脈輪(Circle of Willis)を形成します。動脈輪からは、前大脳動脈(Anterior cerebral artery: ACA)、中大脳動脈(Middle cerebral artery: MCA)、後大脳動脈(Posterior cerebral artery: PCA)が主にそれぞれ左右の大脳皮質を栄養します。中大脳動脈からは穿通枝が分岐し、主に大脳基底核を栄養します。さらに詳しくは慶應義塾大学医学部解剖学教室の脳血管アトラスがわかりやすいです。

https://www.anatomy.med.keio.ac.jp/funatoka/anatomy/angio/index.html

【頭部CTの費用や時間】

保険適応の場合、3割負担で、7000円程度です。時間は検査自体は15分くらい、全体で90時間前後あれば大丈夫でしょう。また、特に何も症状はないけれどなんとなく脳が心配という場合、保険適応外で脳ドックとなり、ドックの費用が掛かります。

【頭部CTの注意事項】

・CT検査ですので、少なからず放射線被爆があります。妊娠中、妊娠が疑わしい場合は検査が出来ません。心臓ペースメーカー、埋め込み型除細動器、脳動脈瘤クリップ、人工関節など、体内に金属や電子機器が埋め込まれている場合、検査を避けるべきか、十分な精度の検査が出来ない場合があります。放射線被曝の程度としては、毎月撮るものではありませんので、年に一回くらいは大きな問題はないというイメージでよいかと思います。

・体動や不随意運動を制御出来ない場合、指示等に従えない場合は十分な精度の検査が出来ない場合があります。

・症状、既往歴、禁忌事項、その他様々な背景因子から、頭部MRI、頸部MRI、脳波、頸動脈エコー、ホルター心電図など他の検査の適応と判断される場合もあります。

【頭部CT検査の流れ】

お茶の水循環器内科では主に「メディカルスキャニングお茶の水」さんに頭部画像検査を依頼しています。

メディカルスキャニングお茶の水→https://www.medicalscanning.net/access/ocha/index.html

1、お茶の水循環器内科から検査の予約を取ります。営業時間外の場合はご自身でご予約の取り方をご説明します。その際に検査の注意事項、前日、当日の確認事項を説明します。

2、予約当日、御茶ノ水駅前にあるメディカルスキャニングお茶の水に向かいます。お茶の水循環器内科からは徒歩で10分掛からないくらいです。駿河台の上り坂がありますので、タクシーを使っても良いでしょう。予約時間の30分前までには到着するようにしましょう。受付後の流れをざっくり言うと、問診、検査の説明、注意事項の確認、着替え、待合室で検査を待ちます。検査の順番になったら検査室に呼ばれます。頭部CT自体は15分間程度です。検査後はその日のうちに医師から検査結果の説明があります。もし緊急で対応が必要な状態であると判断された場合は、速やかに適切な医療機関へご紹介という体制です。詳しくはメディカルスキャニングお茶の水のページをご覧ください。

https://www.medicalscanning.net

3、お茶の水循環器内科に検査結果の報告書が届きますので、後日説明を聞きにいらっしゃってください。異常なしであれば異常なしという説明、治療が必要であれば適宜適切な治療、追加の検査が必要であれば適宜その手配と、それぞれ診察を進めていきます。

【まとめ】

頭部CTは外来で可能な脳の検査のうち最も詳しい検査の代表です。主に、脳出血、くも膜下出血等の出血性病変に強いです。頭部MRIか適応になることもあります。まずは主治医までご相談ください。


 

頭部MRI

【頭部MRIとは】

頭部MRI(Head Magnetic Resonance Imaging: Head MRI)とは、頭部、特に脳を中心としたMRI検査です。核磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:  MRI)を使って、脳の実質、脳梗塞の有無、脳出血の有無、腫瘍の有無、脊髄、骨、眼窩、副鼻腔などを評価出来ます。通常、MR血管造影(Magnetic Resonance Angiography: MRA)も行い、動脈瘤の有無、狭窄や閉塞の有無など、脳血管の評価を行います。お茶の水循環器内科では主に、脳血管疾患の評価目的で適宜、頭部MRIを撮影しています。

【頭部MRIの適応】

頭部MRIは主に脳に異常があるかどうかを調べる検査です。

・神経学的所見に異常を認める場合:右半身や左半身に力が入らない、呂律が回らない、言葉がいつものようにしゃべれない、顔の動きが左右で違う、ものがだぶって見える、視野が見えにくい場所がある、いつも通り歩けない、字が上手く書けない等、明らかに中枢性が疑われる場合

・症状から中枢性が疑われる場合:突然の目眩や吐気で中枢性が疑われる場合、手のしびれ、手の動きがいつもと違う

・症状から中枢性が否定出来ない場合:目眩、ふらつき、頭痛、手のしびれ、等

・既に動脈硬化性の血管疾患を認めているか、脳血管疾患のリスク因子を複数認め、脳血管の評価が必要であると主治医が判断した場合:冠動脈疾患、頸動脈疾患の既往、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、心房細動、脳卒中の既往、脳動脈瘤の家族歴、くも膜下出血の家族歴、喫煙、末梢動脈疾患の既往、等

・その他、主治医が必要と判断した場合

頭部MRIは脳神経の中枢性の原因を疑った場合や脳血管の評価が必要であると主治医が判断した場合に適応となります。また、明らかに脳出血やくも膜下出血などの出血性の病変を疑った場合は頭部CTを優先することがあります。目眩や耳鳴り等では耳自体に問題があることも多く、末梢性を疑う場合には耳鼻咽喉科に紹介します。失神やふらつき症状では頭部ではなく不整脈から診療をしていくこともあります。頭痛は多くの場合、脳卒中に伴う頭痛等の二次性頭痛を疑った場合に頭部MRIの適応を考慮します。全ての頭痛や目眩が頭部MRIの適応になる訳ではありません。逆に、ただ単に脳が心配というだけでは適応にはなりませんのでご注意ください。保険診療外、脳ドック等ではその限りではありません。

【頭部MRIの費用や時間】

保険適応の場合、3割負担で、1万程度です。時間は検査自体は45分くらい、全体で120分前後あれば大丈夫でしょう。造影が必要な場合は追加で4000円くらい掛かります。また、特に何も症状はないけれどなんとなく脳が心配という場合、保険適応外で脳ドックとなり、ドックの費用が掛かります。

【頭部MRIの注意事項】

・強力な磁場を使う検査です。MRI検査室には原則として金属や磁性体が含まれているものは持ち込めません。心臓ペースメーカー、埋め込み型除細動器、脳動脈瘤クリップ、人工関節、イレズミなど、体内に金属や電子機器が埋め込まれている場合、検査が出来ないか、MRI対応可能なものか機種の確認が必要になります。メガネ、コンタクトレンズ、下着のワイヤー、指輪、ネックレス、時計、財布、携帯電話、入れ歯、カイロ、エレキバン等、金属や磁性体の含まれるものは全て身体から外す必要があります。

・さらに詳細な評価のため造影剤を使う場合があります。造影剤アレルギーがあったり、中等度以上の腎機能障害など、造影剤を使えない理由がある場合、気管支喘息、アレルギー体質、妊娠中、妊娠の可能性がある場合も程度によっては注意です。造影剤と相性の悪い薬もありますので、必ず主治医に確認ください。

・MRI検査中は大きな音がします。閉所恐怖症の方は程度にもよりますが検査が難しい場合があります。不整脈や頻脈の場合、体動や不随意運動を制御出来ない場合、指示に従えない場合は十分な精度の検査が出来ない場合があります。

・症状、既往歴、禁忌事項、その他様々な背景因子から、頭部CT、頸部MRI、脳波、ホルター心電図など他の検査の適応と判断される場合もあります。

【頭部MRI検査の流れ】

お茶の水循環器内科では主に「メディカルスキャニングお茶の水」さんに頭部画像検査を依頼しています。

メディカルスキャニングお茶の水→https://www.medicalscanning.net/access/ocha/index.html

1、お茶の水循環器内科から検査の予約を取ります。営業時間外の場合はご自身でご予約の取り方をご説明します。その際に検査の注意事項、前日、当日の確認事項を説明します。

2、予約当日、御茶ノ水駅前にあるメディカルスキャニングお茶の水に向かいます。お茶の水循環器内科からは徒歩で10分掛からないくらいです。駿河台の上り坂がありますので、タクシーを使っても良いでしょう。予約時間の30分前までには到着するようにしましょう。受付後の流れをざっくり言うと、問診、検査の説明、注意事項の確認、着替え、待合室で検査を待ちます。検査の順番になったら検査室に呼ばれます。心臓MRI自体は45分間程度です。検査後はその日のうちに医師から検査結果の説明があります。もし緊急で対応が必要な状態であると判断された場合は、速やかに適切な医療機関へご紹介という体制です。詳しくはメディカルスキャニングお茶の水のページをご覧ください。

https://www.medicalscanning.net

3、お茶の水循環器内科に検査結果の報告書が届きますので、後日説明を聞きにいらっしゃってください。異常なしであれば異常なしという説明、治療が必要であれば適宜適切な治療、追加の検査が必要であれば適宜その手配と、それぞれ診察を進めていきます。

【まとめ】

頭部MRIは外来で可能な脳の検査のうち最も詳しい検査の代表です。脳梗塞、脳出血、脳動脈瘤、脳腫瘍などの詳細な評価が可能です。放射線を使わない検査ですので、定期的に繰り返し検査をすることも問題はありません。まずは主治医までご相談ください。


 

埋込型心電計

【埋込型心電計とは】

埋込型心電計(Insertable cardiac monitor: ICM)とは、不整脈診療のための強力なツールです。植え込み型ループ心電計、植え込み型ループレコーダーとも言います。動悸や失神の診療においては症状出現時の心電図記録が重要です。しかし、症状の頻度によっては、心電図、ホルター心電図にて十分に検出出来ない場合が少なくありません。原因不明の失神、原因不明の脳梗塞、原因不明の動悸に対して、センサーを皮下に埋め込むことによって、最長3年間、長期に渡って心電のモニタリングが可能になりました。それまで原因不明の失神や脳梗塞、動悸であったものが、埋込型心電計によって初めて診断が着いたという事例が多く報告されています。

【症状出現時の心電図記録の方法】

動悸や胸痛などの症状が発作性に出る場合、診断のためには症状出現時の心電計記録が重要になります。症状出現時の心電図記録には主に4つの方法があります。いずれかの方法で症状出現時の心電図記録を目指します。

1、来院時心電図

2、ホルター心電図

3、携帯型心電計

4、埋込型心電計

一番理想は来院時に症状出現しており、そのまま症状出現時の心電図記録が可能な場合です。症状出現時の心電図記録が出来ればその場で診断が着きます。次に、来院時に症状がない場合に適応になるのがホルター心電図です。24時間から長期のもので7日間程度まで連続して心電計記録が可能で、24時間の間に1回以上、7日間の間に1回以上、症状が出現する場合は、症状出現時の心電図記録が出来れば確実に診断をすることが出来ます。症状出現時の心電図記録のために、ホルター心電図を何回か繰り返し行う場合もあります。詳しくはホルター心電図のページをご覧ください。

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter

問題は、ホルター心電図を何度か繰り返し行っても症状出現時の心電図記録が捕まらない場合や症状の頻度によっては症状出現時の心電図記録が難しい場合があります。その場合に、携帯型心電計が有用です。日常生活の中で使える家庭用の携帯型の心電計で、動悸や胸痛などの症状が出た時のために携帯していただき、その場で記録が出来ることがメリットです。

携帯型心電計→https://循環器内科.com/hcg

上記のいずれの手段によっても診断が難しい場合、埋込型心電図の適応を考慮します。

【埋込型心電計の適応】

日本循環器学会「失神の診断・治療ガイドライン」によると、植込み型ループレコーダーの適応として、以下のように記載されています。

・クラスⅠ

1.ハイリスク所見はないが、心原性以外の原因が否定的で、デバイスの電池寿命内に再発が予想される原因不明の再発性失神患者の初期段階での評価

2.ハイリスク所見を有するが包括的な評価でも失神原因を特定できず、あるいは特定の治療法を決定できなかった場合

・クラスⅡa

1.頻回に再発あるいは外傷を伴う失神歴がある反射性(神経調節性)失神の疑いを含む患者で、徐脈に対するペースメーカ治療が考慮される場合

詳しくは日本循環器学会「失神の診断・治療ガイドライン」をご覧ください。

「失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_inoue_h.pdf

簡単に言えば、従来の検査によって十分に確定診断が出来ていない原因不明の失神、原因不明の脳梗塞、原因不明の動悸等の不整脈を疑う例など、それでも確実な診断をしなければならない場合、埋込型心電計の適応を考慮します。アメリカ心臓協会、アメリカ不整脈学会のガイドラインでも同様の記載があります。

「2017 ACC/AHA/HRS Guideline for the Evaluation and Management of Patients With Syncope: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society」

https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIR.0000000000000499

【埋込型心電計】

小型の心電計を体内に埋め込むことにより、バッテリーは最長3年間、症状出現時の心電図を確実に記録します。主に、Medtronic社の「Reveal LINQ」というデバイスが主流です。装置のサイズは60mm×20mm×8mm、小さなスティック状で、埋込部位は前胸部、局所麻酔、皮膚切開は20mm程度、10分程度の小手術です。日帰り手術で、術後当日に帰宅が可能です。日常生活に特に支障はなく、MRIも一部制限はあるものの撮影可能です。いずれにせよ、体内にセンサーを埋込むので手術の必要があること、本当に必要な方が適応となります。飛行機の操縦士、新幹線の運転、トラックの運転、高所作業などに関わる仕事の方は、一回の発作が重大な事故を引き起こす危険性があるため、確実な診断が必要ば場合があります。必要な場合は専門の診療科へ紹介します。詳しくは下記ページをご覧ください。

https://vimeo.com/92867870

東京大学医学部付属病院循環器内科不整脈チーム→https://cardiovasc.m.u-tokyo.ac.jp/clinical/arrythmia/icm

順天堂大学医学部付属順天堂医院循環器内科→https://www.juntendo.ac.jp/hospital/information/topics/detail/no90.html

聖マリアンナ医科大学東横病院「失神センター」→https://marianna-toyoko.jp/g0102002

Medtronic「失神.jp」→https://shisshin.jp


 

末梢動脈疾患

【末梢動脈疾患とは】

末梢動脈疾患(Peripheral arterial disease: PAD)とは、末梢の動脈が動脈硬化によって狭窄を起こし、血流障害を起こす病気です。特に下肢の末梢動脈の狭窄や閉塞が問題になります。閉塞性動脈硬化症(Arteriosclerosis obliterans: ASO)、慢性動脈閉塞症(Chronic arterial occlusion)などを含む総称で、ほとんど同じ意味です。また、特にBuerger病は喫煙者の下肢に起こる血管閉塞で、閉塞性血栓血管炎(Thromboangiitis obliterans: TAO)と同義です。動脈硬化とは無関係で自己免疫的に起こる血管炎という病気もあります。詳しくは「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン」をご覧ください。

「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン (2015 年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2015_miyata_h.pdf

【末梢動脈疾患の診断】

末梢動脈疾患の診断は下肢の血管に狭窄や閉塞を認めるかどうかです。急性発症の場合は、視診、触診、聴診にて診断が付く場合がありますが、血管の画像検査が必要になります。

・足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index: ABI)

末梢動脈疾患のスクリーニング検査です。上腕動脈の収縮期血圧に対して足関節の収縮期血圧の比です。動脈硬化がなければ血圧は同等になり、動脈硬化が進むと上肢に比べて下肢の血圧が低値となります。0.90以上が正常で、0.90未満では主幹動脈の狭窄や閉塞を疑い、画像検査へと進みます。ただし、側副血行路が発達した例では偽陰性となることか、高度石灰化ではABI 1.40以上の偽陽性となることがあります。

・CT血管造影(CT angiography)、MR血管造影(MR angiography)、CTまたはMRIにて血管を評価します。

・血管造影(Angiography)、血管を直接造影して評価します。血行再建術を考慮する症候性の末梢動脈疾患に対して血管を評価するために行います。

【末梢動脈疾患の分類】

Fontaine分類があります。間歇性跛行を来す疾患としては、末梢動脈疾患の他に、脊柱管狭窄症や深部静脈血栓症などを適宜精査除外します。

Fontaine 1度:無症状、または下肢の冷感や色調の変化

Fontaine 2度:間歇性跛行(かんけつせいはこう)

間歇性跛行とは、週百メートル歩くと痛みのため歩行継続困難になる状態です。

Fontaine 3度 :安静時疼痛

Fontaine 4度:潰瘍、壊死

【末梢動脈疾患の治療】

末梢動脈疾患は、下肢のみの動脈硬化だけではなく、全身の動脈硬化性疾患を反映していると解釈して治療に当たります。下肢の虚血症状の改善だけではなく、心血管疾患、脳血管疾患、頸動脈疾患の評価も重要です。末梢動脈疾患の原因は動脈硬化です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の動脈硬化の危険因子があれば治療します。

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

特に、禁煙、糖尿病の管理は重要です。糖尿病は動脈硬化の原因だけでなく、糖尿病性神経障害として下肢の感覚異常の原因となります。

・理学療法、定期的な運動療法を行うことで、歩くことによって下肢のの血流が増えて、側副血行路が発達し、症状が緩和されます。

・抗血小板療法、バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、プレタール(シロスタゾール)、抗血小板薬です。症候性の末梢動脈疾患に対して、脳心血管イベント予防のために抗血小板療法を開始します。

・パナルジン(チクロピジン)、アンプラーグ(サルポグレラート)、プロサイリン(ベラプロスト)、オパルモン(リマプロスト)、エパデール(エイコサペンタエン酸)、他に末梢動脈疾患に対して、抗血小板薬、血管拡張薬などを効果を期待して使います。

・血管内治療、カテーテルで狭窄部位に対してバルーン拡張やステント留置を行います。

・血行再建術、下肢動脈バイパス術、血管外科に紹介します。

詳しくは「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン」をご覧ください。

「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン (2015 年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2015_miyata_h.pdf

「足の血管病」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph89.html


 

胸部大動脈瘤

【胸部大動脈瘤とは】

胸部大動脈瘤(Thoracic aortic aneurysm: TAA)とは、心臓から出る一番太い血管、大動脈が膨らんだ状態です。大動脈瘤破裂を起こすと致死的です。未破裂の状態では症状がほとんどないため検診等で発見される場合があります。大動脈は心臓から出て、大動脈基部、上行大動脈、弓部大動脈、下降大動脈となり、横隔膜までを胸部大動脈、横隔膜から下を腹部大動脈と呼びます。大動脈基部から冠動脈が分岐、弓部大動脈からは腕頭動脈、右総頚動脈、右鎖骨下動脈が分岐します。腹部大動脈からは腹腔動脈、上腸間膜動脈、下腸間膜動脈、腎動脈が分岐し、左右の総腸骨動脈となります。大動脈の正常径は一般的に胸部大動脈30mm、腹部大動脈20mmとされており、正常経の1.5倍以上、胸部大動脈で45mm以上、腹部大動脈で30mm以上拡大した状態を大動脈瘤(aneurysm)と呼びます。30-45mmは瘤状拡張(aneurysmal dilatation)と呼び、経過観察します。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvs/vascular/vascular-tr-01.html

【胸部大動脈瘤の原因】

一番多い原因は動脈硬化性です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、加齢など様々な因子が関係しますが、最も影響するのは血圧と喫煙です。生まれつき結合組織が弱い病気、Marfan症候群やEhlers-Danlos症候群など、先天性の結合組織異常が見つかる場合もあります。その他、外傷性、炎症性、感染性など原因となります。大動脈瘤が見つかった場合は、大動脈瘤の部位、動脈壁の形態、瘤の形などから分類されます。大動脈の動脈壁は、内膜、中膜、外膜の3層からなり、大動脈瘤の動脈壁の形態により、真性大動脈瘤、仮性大動脈瘤、解離性大動脈瘤と分類します。

【胸部大動脈瘤の管理】

胸部CTによって胸部大動脈瘤のサイズを評価し、拡大スピードとともに経過観察を行います。具体的には、最大短径55mm以上の場合は手術適応を考慮します。最大短径45mm未満の場合は半年に一度、胸部CTにて大動脈経を評価、半年間で拡大がなければ年に一回の評価とする。半年で5mm未満の拡大の場合は経過観察の頻度を半年に一度とします。半年で5mm以上の拡大を認める場合は手術適応を考慮します。最大短径45mm-55mmはケースバイケースで、手術適応を選択する場合もあれば、半年ごとに経過観察を行う場合があります。Marfan症候群等の先天性疾患の場合は最大短径45mm-55mmでも手術を検討します。詳しくは「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)」をご覧ください。

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_takamoto_h.pdf

【胸部大動脈瘤の治療】

胸部大動脈瘤の治療の目的は胸部大動脈瘤破裂の予防です。大動脈瘤のサイズと拡大スピードから手術適応を判断します。手術適応となった場合、手術の方法として、人工血管置換術とステントグラフト内挿術の2つがあります。大動脈弁輪拡張症に対しては大動脈基部置換術があります。手術は胸部外科、心臓血管外科の領域になりますので、速やかに紹介します。詳しくは日本胸部外科学会のページをご覧ください。

https://www.jpats.org/modules/general/index.php?content_id=16

手術適応を満たさない場合は、保存的に経過観察を行います。経過観察において重要なことは、血圧管理と禁煙です。国内でエビデンスは限られますが、収縮期血圧105-120mmHgを目標とした厳格な血圧管理が求められます。少なくとも130mmHg未満を目指します。降圧薬としてはβブロッカーが第一選択で、最大量のβブロッカー投与でも十分な降圧に達しない場合、他の降圧薬を追加します。

・禁煙、喫煙は明らかに大動脈瘤拡大の悪化因子であることがわかっています。禁煙しましょう。

・βブロッカー、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、テノーミン(アテノロール)、セロケン(メトプロロール)、インデラル(プロプラノロール)、交感神経をブロックし、血圧を下げて、脈を下げて、脈圧を下げます。大動脈瘤の拡大を抑制を期待して使います。詳しくは高血圧症のページもご覧ください。

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

【胸部大動脈瘤の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

胸部大動脈瘤の予防としては、動脈硬化性の危険因子を予防が重要です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、動脈硬化のリスク因子があればそれを治療しましょう。修正可能なリスク因子をコントロールして、胸部大動脈瘤にならないようにしましょう。


心臓弁膜症

【心臓弁膜症とは】

心臓弁膜症(Valvular heart disease)とは、心臓にある弁に異常を来した状態です。人間の心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室と4つの部屋があり、左心室からは大動脈が、右心室からは肺動脈という血管が出ます。それぞれの部屋と部屋の間、部屋と血管の間には、弁(Valve)があります。具体的には、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁、の4つです。正常な心臓では、血液が流れる時に弁が開き、流れ終わると弁が閉じて逆流を防ぎ、血流がスムーズに循環する仕組みになっています。このいずれかの弁が正常に機能しなくなった状態が心臓弁膜症です。正常に開かない場合、狭窄症(Stenosis)と、正常に閉じない場合、閉鎖不全症(Regurgitation)の2種類があります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「心臓弁膜症」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/valvular-heart-disease.html

【心臓弁膜症の分類】

僧帽弁(Mitral valve)、大動脈弁(Aortic valve)、三尖弁(Tricuspid valve)、肺動脈弁(Pulmonic valve)の4つの弁にそれぞれ、狭窄症(Stenosis)と閉鎖不全症(Regurgitation)があります。

・僧帽弁狭窄症(Mitral stenosis: MS)

・僧帽弁閉鎖不全症(Mitral regurgitation: MR)

・大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)

・大動脈弁閉鎖不全症(Aortic regurgitation: MR)

・三尖弁狭窄症(Tricuspid stenosis: TS)

・三尖弁閉鎖不全症(Tricuspid regurgitation: TR)

・肺動脈弁狭窄症(Pulmonic stenosis: PS)

・肺動脈弁閉鎖不全症(Pulmonic Regurgitation: PR)

この中で、特に心臓の左心系の弁の異常、僧帽弁と大動脈弁の弁膜症が重要です。三尖弁と肺動脈弁の弁膜症については追ってまとめます。

【心臓弁膜症の治療適応】

心臓弁膜症の治療は最終的には手術をするかしないかの選択になります。また、いくつかの心臓弁膜症ではカテーテル治療という選択肢が登場しています。

・僧帽弁狭窄症→https://循環器内科.com/ms

手術:直視下交連切開術 (Open mitral commissurotomy: OMC)、僧帽弁置換術 (Mitral valve replacement: MVR)

カテーテル治療:経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(Percutaneous transvenous mitral commissurotomy: PTMC)

手術適応の目安:心房細動の出現、塞栓症の既往、僧帽弁口面積(Mitral valve area: MVA)1.5cm2未満、収縮期肺動脈圧(Systolic pulmonary artery pressure: sPAP)60mmHg以上、平均圧較差15mmHg以上、等

・僧帽弁閉鎖不全症→https://循環器内科.com/mr

手術:僧帽弁形成術(Mitral valve plasty)、僧帽弁置換術(Mitral valve replacement: MVR)

カテーテル治療:経カテーテル僧帽弁クリップ術「MitraClip」

手術適応の目安:心房細動の出現、肺高血圧症の出現、左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)60%未満、左室収縮期経(left ventricular systolic diameter: LVDs)40mm以上、等

・大動脈弁狭窄症→https://循環器内科.com/as

手術:大動脈弁置換術(Aortic valve replacement: AVR)

カテーテル治療:経カテーテル大動脈弁留置術( transcatheter aortic valveimplantation: TAVI)

手術適応の目安:狭心症、失神、心不全等の臨床症状の出現、大動脈弁口通過最高血流速度(Vmax)4.0m/s以上、収縮期平均圧較差40mmHg以上、大動脈弁口面積(Aortic valve area: AVA)1.0cm2以下、弁口面積係数0.6cm2/mm2、左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)50%未満、等

・大動脈弁閉鎖不全症→https://循環器内科.com/ar

手術:大動脈弁置換術(Aortic valve replacement: AVR)、大動脈弁形成術

カテーテル治療:なし

手術適応の目安:心不全症状の出現、運動負荷で症状出現、左室駆出率50%未満、左室収縮末期経(left ventricular diameter at end systole: LVDs)50mm以上、左室拡張末期経(left ventricular diameter at end diastole :LVDd)70mm以上、等

手術適応基準について詳しくはガイドラインをご覧ください。

「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_matsuda_h.pdf

【心臓弁膜症の管理】

手術適応を満たさない場合は経過観察をします。基本的には、症状の有無と心エコーを繰り返し行い、手術適応の時期を満たすかどうかを評価します。

・僧帽弁狭窄症:弁口面積1.5cm2以上、収縮期肺動脈圧60mmHg未満、平均圧較差15mm未満であれば、半年に一度から年に一度程度で繰り返し心エコー

・僧帽弁閉鎖不全症:左室駆出率60%以上、左室収縮末期経40mm未満であれば、半年に一度程度で繰り返し心エコー

・大動脈弁狭窄症:大動脈弁口通過最高血流速度3.0m/s未満、収縮期平均圧較差25mmHg未満、弁口面積1.5cm2以上の場合、収縮期平均圧較差が軽度であれば二年に一回から年に一回、高度であれば半年に一回から三ヶ月に一回心エコー

・大動脈弁閉鎖不全症:左室駆出率LVEF50%以上、左室収縮末期径LVDs50mm未満、左室拡張末期径LVDd70mm未満の場合、初診時では三ヶ月後、再診では半年から年に一度程度で繰り返し心エコー

また、大動脈弁狭窄症と大動脈弁閉鎖不全症では感染性心内膜炎の予防が必要です。心臓弁膜症の管理について詳しくはガイドラインをご覧ください。

「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_matsuda_h.pdf

他に、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の冠危険因子があれば治療します。

高血圧症→https://循環器内科.com/ht

脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

糖尿病→https://循環器内科.com/dm

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

心房細動→https://循環器内科.com/af

詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「弁膜症とのつきあい方」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph41.html


 

大動脈弁閉鎖不全症

【心臓弁膜症とは】

心臓弁膜症(Valvular heart disease)とは、心臓にある弁に異常を来した状態です。人間の心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室と4つの部屋があり、左心室からは大動脈が、右心室からは肺動脈という血管が出ます。それぞれの部屋と部屋の間、部屋と血管の間には、弁(Valve)があります。具体的には、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁、の4つです。正常な心臓では、血液が流れる時に弁が開き、流れ終わると弁が閉じて逆流を防ぎ、血流がスムーズに循環する仕組みになっています。このいずれかの弁が正常に機能しなくなった状態が心臓弁膜症です。正常に開かない場合、狭窄症(Stenosis)と、正常に閉じない場合、閉鎖不全症(Regurgitation)の2種類があります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「心臓弁膜症」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/valvular-heart-disease.html

【大動脈弁閉鎖不全症とは】

大動脈弁閉鎖不全症(Aortic regurgitation: MR)とは、心臓弁膜症の一つです。大動脈弁(Aortic valve)は、左心室と大動脈の間にある弁で、左室の収縮期に開いて、左室の拡張期に閉じます。大動脈弁が正常に閉じなくなった状態が大動脈弁閉鎖不全症です。大動脈弁閉鎖不全症を起こすと、心臓から出た血流が逆流し、もう一度心臓へ戻って来てしまいます。拡張期の左室への容量負荷から心臓の筋肉が弱って行き、心不全を来す病気です。急性に大動脈弁閉鎖不全症を起こすものとして大動脈解離に合併する大動脈弁閉鎖不全症があり、急速にショック状態となります。詳しくは慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」のページをご覧ください。

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000267.html

【大動脈弁閉鎖不全症の原因】

大動脈弁自体の病変による大動脈弁閉鎖不全症の原因として、リウマ チ熱、石灰化大動脈弁、感染性心内膜炎、外傷性、先天性二尖大動脈弁、先天性四尖大動脈弁、大動脈基部の異常としては、加齢による大動脈基部拡大、Marfan症候群、大動脈解離などがあります。

【大動脈弁閉鎖不全症の診断】

大動脈弁閉鎖不全症の診断は心エコーで行います。心エコー検査では、超音波によって全ての弁を観察し、弁膜症の有無と重症度の評価が可能です。大動脈弁閉鎖不全症では、症状の有無と、左室駆出率、左室経によって重症度を評価します。重症度から手術適応を判断します。術後の経過観察としても重要な検査です。検診等で心雑音を指摘された場合はまずは心エコーから精査を行って行きます。心不全を来しているかどうかを採血、心房細動の出現があるかどうかを心電図、ホルター心電図で精査します。冠危険因子の程度によっては冠動脈疾患の合併がないかどうかを冠動脈CT、心臓MRI等で評価します。詳しくは各検査のページをご覧ください。

心エコー→https://循環器内科.com/ucg

BNP→https://循環器内科.com/bloodtest

心電図→https://循環器内科.com/ecg

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter

【大動脈弁閉鎖不全症の治療】

中程度以上の大動脈弁閉鎖不全症は手術を考慮します。心不全症状の有無と、左室駆出率LVEF、左室収縮末期径LVDsの2つの指標から、手術時期を検討します。具体的には、症状がある場合は手術適応、運動負荷によって症状が出現する場合も手術適応とします。無症状の場合は、心エコーによって左室駆出率を評価します。左室駆出率50%未満では手術を考慮します。ただし、左室駆出率25%未満と高度に低下した例では手術の有益性は明らかではないため手術の適応は慎重に判断します。左室駆出率50%以上の場合は、左室収縮末期径LVDs、左室拡張末期径LVDdを評価し、LVDs50mm以上、LVDd70mm以上の場合は手術を考慮、LVDs50mm未満、LVDd70mm未満の場合は手術ではなく、3-12ヶ月ごとに、心エコーと臨床評価にて経過観察を行います。

手術には大動脈弁置換術と大動脈弁形成術と2つの術式があります。大動脈弁置換術には機械弁と生体弁があります。大動脈弁閉鎖不全症では、2019年現在、手術以外の治療法はありません。進行抑制効果を期待して血圧管理を行います。

【大動脈弁閉鎖不全症の管理】

手術適応には満たない軽度の大動脈弁閉鎖不全症は経過観察を行います。具体的には、症状のない場合、左室駆出率LVEF50%以上、左室収縮末期径LVDs50mm未満、左室拡張末期径LVDd70mm未満の場合、初診時では三ヶ月後、再診では半年から年に一度程度で繰り返し心エコーを行います。詳しくは「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)」

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_matsuda_h.pdf

大動脈弁閉鎖不全症の特有の合併症として感染性心内膜炎があります。これは狭窄部位の弁が傷つき、細菌感染を起こしてしまうという合併症です。抜歯等の歯科処置の際には感染性心内膜炎の予防のため抗菌薬投与が必要な場合があります。

他に、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の冠危険因子があれば治療します。

高血圧症→https://循環器内科.com/ht

脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

糖尿病→https://循環器内科.com/dm

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

心房細動→https://循環器内科.com/af

詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「弁膜症とのつきあい方」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph41.html


 

大動脈弁狭窄症

【心臓弁膜症とは】

心臓弁膜症(Valvular heart disease)とは、心臓にある弁に異常を来した状態です。人間の心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室と4つの部屋があり、左心室からは大動脈が、右心室からは肺動脈という血管が出ます。それぞれの部屋と部屋の間、部屋と血管の間には、弁(Valve)があります。具体的には、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁、の4つです。正常な心臓では、血液が流れる時に弁が開き、流れ終わると弁が閉じて逆流を防ぎ、血流がスムーズに循環する仕組みになっています。このいずれかの弁が正常に機能しなくなった状態が心臓弁膜症です。正常に開かない場合、狭窄症(Stenosis)と、正常に閉じない場合、閉鎖不全症(Regurgitation)の2種類があります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「心臓弁膜症」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/valvular-heart-disease.html

【大動脈弁狭窄症とは】

大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)とは、心臓弁膜症の一つです。大動脈弁(Aortic valve)は、左心室と大動脈の間にある弁で、左室の収縮期に開いて、左室の拡張期に閉じます。大動脈弁が正常に開かなくなった状態が大動脈弁狭窄症です。大動脈弁狭窄症を起こすと、左心室へは負荷が掛かり、左室肥大し、心筋酸素需要は増加する一方で、大動脈弁の狭窄から冠動脈の血流は低下するため、冠動脈に明らかな狭窄がなくても、相対的に心筋虚血になり、狭心症発作のような胸痛を引き起こします。左心室へ大動脈へ、全身に十分に血液を送れないことから、失神、目眩、ふらつき、動悸などの症状を来します。大動脈弁狭窄症が続くと、左室は次第に収縮力を失って行き、息切れ、呼吸困難、浮腫みなど、心不全という状態に至ります。この胸痛、失神、心不全が大動脈弁狭窄症の代表的な症状ですが、症状出現後は急速に進行し、一般的に狭心痛出現後5年、失神出現後3年、心不全発症後2年と言われ、急速に致死的に至ることががわかっており、早期の発見が重要です。検診にて心雑音や心電図異常をきっかけに大動脈弁狭窄症が見つかることもあります。詳しくは慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」のページをご覧ください。

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000262.html

【大動脈弁狭窄症の原因】

加齢、動脈硬化によるもの、加齢性大動脈弁狭窄症と、先天性二尖弁によるもの、リウマチ熱によるリウマチ性大動脈弁狭窄症があります。原因によらず、治療は共通です。

【大動脈弁狭窄症の診断】

大動脈弁狭窄症の診断は心エコーで行います。心エコー検査では、超音波によって全ての弁を観察し、弁膜症の有無と重症度の評価が可能です。大動脈弁口通過最高血流速度、収縮期平均圧較差、弁口面積、弁口面積係数、などから重症度を評価します。重症度から手術適応を判断します。術後の経過観察としても重要な検査です。検診等で心雑音を指摘された場合はまずは心エコーから精査を行って行きます。心不全を来しているかどうかを採血、致死的不整脈の出現があるかどうかを心電図、ホルター心電図で精査します。冠危険因子の程度によっては冠動脈疾患の合併がないかどうかを冠動脈CT、心臓MRI等で評価します。詳しくは各検査のページをご覧ください。

心エコー→https://循環器内科.com/ucg

BNP→https://循環器内科.com/bloodtest

心電図→https://循環器内科.com/ecg

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter

【大動脈弁閉鎖不全症の治療】

症状のある高度大動脈弁狭窄症は原則全例手術適応です。狭心症、失神、心不全という臨床症状の出現した時点で手術適応になります。心エコー所見にて、大動脈弁口通過最高血流速度、収縮期平均圧較差、弁口面積、弁口面積係数、などから重症度を評価します。具体的には、大動脈弁口通過最高血流速度4.0m/s以上、収縮期平均圧較差40mmHg以上、弁口面積1.0cm2以下、弁口面積係数0.6cm2/mm2の場合、重症と判断して行きます。無症候性の大動脈弁狭窄症は、左室駆出率50%未満の場合は手術適応とされています。それ以外の場合は、症状と心エコーにて注意深く経過観察を行います。治療法には手術とカテーテル治療があります。

・手術は大動脈弁置換術(Aortic valve replacement: AVR)で、大動脈弁を機械弁または人工弁に取り替えます。

・2003年にフランスで登場したカテーテル治療は、経カテーテル大動脈弁留置術( transcatheter aortic valveimplantation: TAVI)と呼ばれ、日本でも可能な施設が増えて来ています。適応と判断される場合には紹介します。詳しくは慶應義塾大学病院心臓血管低侵襲治療センターのページをご覧ください。

https://www.keio-minicv.com/tavi

【大動脈弁閉鎖不全症の管理】

手術適応には満たない軽度の大動脈弁狭窄症は注意深く経過観察を行います。具体的には、大動脈弁口通過最高血流速度3.0m/s未満、収縮期平均圧較差25mmHg未満、弁口面積1.5cm2以上の場合、収縮期平均圧較差が軽度であれば二年に一回から年に一回、高度であれば症状の出現に注意しながら半年に一回から三ヶ月に一回、心エコーにて評価を行います。詳しくは「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)」

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_matsuda_h.pdf

大動脈弁狭窄症の特有の合併症として感染性心内膜炎があります。これは狭窄部位の弁が傷つき、細菌感染を起こしてしまうという合併症です。抜歯等の歯科処置の際には感染性心内膜炎の予防のため抗菌薬投与が必要な場合があります。

他に、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の冠危険因子があれば治療します。

高血圧症→https://循環器内科.com/ht

脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

糖尿病→https://循環器内科.com/dm

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

心房細動→https://循環器内科.com/af

詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「弁膜症とのつきあい方」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph41.html


 

僧帽弁閉鎖不全症

【心臓弁膜症とは】

心臓弁膜症(Valvular heart disease)とは、心臓にある弁に異常を来した状態です。人間の心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室と4つの部屋があり、左心室からは大動脈が、右心室からは肺動脈という血管が出ます。それぞれの部屋と部屋の間、部屋と血管の間には、弁(Valve)があります。具体的には、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁、の4つです。正常な心臓では、血液が流れる時に弁が開き、流れ終わると弁が閉じて逆流を防ぎ、血流がスムーズに循環する仕組みになっています。このいずれかの弁が正常に機能しなくなった状態が心臓弁膜症です。正常に開かない場合、狭窄症(Stenosis)と、正常に閉じない場合、閉鎖不全症(Regurgitation)の2種類があります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「心臓弁膜症」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/valvular-heart-disease.html

【僧帽弁閉鎖不全症とは】

僧帽弁閉鎖不全症(Mitral regurgitation: MR)とは、心臓弁膜症の一つです。僧帽弁(Mitral valve)は、左心房と左心室の間にある弁で、左室の拡張期に開いて、左室の収縮期に閉じます。僧帽弁が正常に閉じなくなった状態が僧帽弁閉鎖不全症です。僧帽弁は前尖、後尖の2枚の弁からなります。僧帽弁閉鎖不全症を起こすと、左心房から左心室へ血流が、収縮期に左心室から左心房へ逆流し、左心室に高度の容量負荷が掛かりますが、代償期では左室収縮率は低下しないが、進行すると心不全を来します。左房圧の上昇から心房細動を合併することもあります。逆に、心房細動の原因精査として僧帽弁閉鎖不全症が見つかることもあります。詳しくは慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」のページをご覧ください。

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000245.html

【僧帽弁閉鎖不全症の原因】

リウマチ性と非リウマチ性のものがあります。リウマチ熱の既往が明らかでない例もありますが、小児期のリウマチ熱罹患後、数十年を経過して弁障害が進行します。非リウマチ性としては、僧帽逸脱症(Mitral valve prolapse: MVP)、虚血性心疾患、感染性心内膜炎、肥大型心筋症、拡張型心筋症などがあります。Marfan症候群やEhlers-Danlos症候群などの先天性疾患などがあります。急性心筋梗塞の合併症としての乳頭筋断に伴う急性の僧帽弁閉鎖不全症があります。

【僧帽弁閉鎖不全症の診断】

僧帽弁閉鎖不全症の診断は心エコーで行います。心エコー検査では、超音波によって全ての弁を観察し、弁膜症の有無と重症度の評価が可能です。僧帽弁閉鎖不全症では後負荷が減少するため、左室収縮率は見かけ上高くなる点が注意です。左室、左房の拡大程度、左室駆出率、左室収縮末期径、壁運動、左室の代償性壁肥厚程度を評価します。重症度から手術適応を判断します。術後の経過観察としても重要な検査です。検診等で心雑音を指摘された場合はまずは心エコーから精査を行って行きます。心不全を来しているかどうかを採血、心房細動の出現があるかどうかを心電図、ホルター心電図で精査します。冠危険因子の程度によっては冠動脈疾患の合併がないかどうかを冠動脈CT、心臓MRI等で評価します。詳しくは各検査のページをご覧ください。

心エコー→https://循環器内科.com/ucg

BNP→https://循環器内科.com/bloodtest

心電図→https://循環器内科.com/ecg

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter

【僧帽弁閉鎖不全症の治療】

中程度以上の僧帽弁閉鎖不全症は手術を考慮します。心不全症状の有無と、左室駆出率LVEF、左室収縮末期径LVDsの2つの指標から、手術時期を検討します。具体的には、左室駆出率60%未満、左室収縮末期経40mm以上であれば手術適応を考慮します。左室駆出率60%以上、左室収縮末期経40mm未満でも、心房細動の出現、肺高血圧症の出現を認める場合には弁形成術を考慮します。

・手術には僧帽弁形成術(Mitral valve plasty)と僧帽弁置換術(Mitral valve replacement: MVR)と2つの術式があります。僧帽弁置換術には自己弁を残して部分的に置換する場合と、完全置換する場合とがあります。慢性心房細動を合併している例に対しては、僧帽弁手術時にMaze術を行うこともあります。

・2018年から経カテーテル僧帽弁クリップ術「MitraClip」が保険適応となりました。現時点では、外科的に弁置換術、形成術の危険性が高い、もしくは不可能と判断された場合に適応となります。適応と判断される場合には紹介します。詳しくは慶應義塾大学病院心臓血管低侵襲治療センターのページをご覧ください。

https://www.keio-minicv.com/disease/disease2

【僧帽弁閉鎖不全症の管理】

手術適応には満たない軽度の僧帽弁閉鎖不全症は経過観察を行います。具体的には、左室駆出率60%以上、左室収縮末期経40mm未満であれば、半年に一度程度で繰り返し心エコーを行います。詳しくは「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)」

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_matsuda_h.pdf

他に、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の冠危険因子があれば治療します。心房細動の出現があるかどうかを心電図、ホルター心電図で精査、心房細動がある場合は抗凝固療法の適応を判断します。僧帽弁閉鎖不全症に伴う心房細動は弁膜症性心房細動と呼ばれ、ワルファリンによる抗凝固療法が必要になります。

高血圧症→https://循環器内科.com/ht

脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

糖尿病→https://循環器内科.com/dm

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

心房細動→https://循環器内科.com/af

詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「弁膜症とのつきあい方」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph41.html


 

 

僧帽弁狭窄症

【心臓弁膜症とは】
心臓弁膜症(Valvular heart disease)とは、心臓にある弁に異常を来した状態です。人間の心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室と4つの部屋があり、左心室からは大動脈が、右心室からは肺動脈という血管が出ます。それぞれの部屋と部屋の間、部屋と血管の間には、弁(Valve)があります。具体的には、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁、の4つです。正常な心臓では、血液が流れる時に弁が開き、流れ終わると弁が閉じて逆流を防ぎ、血流がスムーズに循環する仕組みになっています。このいずれかの弁が正常に機能しなくなった状態が心臓弁膜症です。正常に開かない場合、狭窄症(Stenosis)と、正常に閉じない場合、閉鎖不全症(Regurgitation)の2種類があります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「心臓弁膜症」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/valvular-heart-disease.html

【僧帽弁狭窄症とは】

僧帽弁狭窄症(Mitral stenosis: MS)とは、心臓弁膜症の一つです。僧帽弁(Mitral valve)は、左心房と左心室の間にある弁で、左室の拡張期に開いて、左室の収縮期に閉じます。僧帽弁が正常に開かなくなった状態が僧帽弁狭窄症です。僧帽弁は前尖、後尖の2枚の弁からなります。僧帽弁が狭窄すると、左心房から左心室へ血流の流入障害を来し、左房圧、肺静脈圧上昇から肺高血圧症、右心系への負荷、右心不全に至ります。重度になると左室への血流流入障害から左心不全、左心房への圧負荷から心房細動を合併することもあります。逆に、心房細動の原因精査として僧帽弁狭窄症が見つかることもあります。詳しくは慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」のページをご覧ください。

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000244.html

【僧帽弁狭窄症の原因】

成人の僧帽弁狭窄症の原因のほとんどがリウマチ性と言われています。リウマチ熱の既往が明らかでない例もありますが、小児期のリウマチ熱罹患後、7-8年で弁の機能障害が見られるようになり、さらに10年以上の無症状時期を経て、40-50代で症状を発現することが多いと言われています。

【僧帽弁狭窄症の診断】

僧帽弁狭窄症の診断は心エコーで行います。心エコー検査では、超音波によって全ての弁を観察し、弁膜症の有無と重症度の評価が可能です。弁口面積、収縮期肺動脈圧、平均圧較差などから重症度を評価します。重症度から手術適応を判断します。術後の経過観察としても重要な検査です。検診等で心雑音を指摘された場合はまずは心エコーから精査を行って行きます。心不全を来しているかどうかを採血、心房細動の出現があるかどうかを心電図、ホルター心電図で精査します。冠危険因子の程度によっては冠動脈疾患の合併がないかどうかを冠動脈CT、心臓MRI等で評価します。詳しくは各検査のページをご覧ください。

心エコー→https://循環器内科.com/ucg

BNP→https://循環器内科.com/bloodtest

心電図→https://循環器内科.com/ecg

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter

【僧帽弁狭窄症の治療】

中程度以上の僧帽弁狭窄症は手術を考慮します。僧帽弁狭窄症の治療はカテーテル手術と手術の2種類があります。

・カテーテル治療では「井上バルーン」というカテーテルを用いた、経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(percutaneous transvenous mitral commissurotomy: PTMC)です。カテーテル治療の適応基準としては、薬物治療を行ってもNYHA Ⅱ度以上の臨床症状があり、弁口面積1.5cm2以下という基準に準じて判断する。弁の形状が交連裂開術に適しているかどうかも重要で、弁の可動性、弁下組織の肥厚変化、弁の肥厚、石灰化の程度などを心エコーで評価します。心房内血栓、3度以上の僧帽弁閉鎖不全症、高度または両交連部の石灰沈着、高度大動脈弁閉鎖不全症、高度三尖弁狭窄症、高度三尖弁閉鎖不全症を伴う例、冠動脈バイパス術が必要な有意な冠動脈病変を有する例などでは、外科的治療を高所します。

・外科的治療には、直視下交連切開術 (open mitral commissurotomy: OMC)、僧帽弁置換術 (mitral valve replacement: MVR)があります。僧帽弁置換術には機械弁と生体弁があります。手術適応の基準としては、NYHAⅡ度以上の臨床症状、心房細動の出現、血栓塞栓症状の出現の3つから判断します。必要な場合は心臓血管外科に紹介します。

【僧帽弁狭窄症の管理】

手術適応には満たない軽度の僧帽弁狭窄症は経過観察を行います。具体的には、弁口面積1.5cm2以上、収縮期肺動脈圧60mmHg未満、平均圧較差15mm未満であれば、半年に一度から年に一度程度で繰り返し心エコーを行います。詳しくは「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン」

https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf

他に、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の冠危険因子があれば治療します。心房細動の出現があるかどうかを心電図、ホルター心電図で精査、心房細動がある場合は抗凝固療法の適応を判断します。僧帽弁狭窄症に伴う心房細動は弁膜症性心房細動と呼ばれ、ワルファリンによる抗凝固療法が必要になります。

高血圧症→https://循環器内科.com/ht

脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

糖尿病→https://循環器内科.com/dm

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

心房細動→https://循環器内科.com/af

詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「弁膜症とのつきあい方」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph41.html


携帯型心電計

【携帯型心電計とは】

携帯型心電計(Home electrocardiogram)とは、日常生活の中で使える家庭用の携帯型の心電計です。動悸や胸痛などの症状が発作性に出る場合、診断のためには症状出現時の心電計記録が重要になります。不整脈の診療において正確な診断のためには症状出現時の心電図記録が極めて重要だからです。今回は、症状出現時の心電図記録の方法の一つとして、携帯型心電計を紹介します。

【症状出現時の心電図記録の方法】

症状出現時の心電図記録には主に4つの方法があります。いずれかの方法で症状出現時の心電図記録を目指します。

1、来院時心電図

2、ホルター心電図

3、携帯型心電計

4、埋込型心電計

一番理想は来院時に症状出現しており、そのまま症状出現時の心電図記録が可能な場合です。症状出現時の心電図記録が出来ればその場で診断が着きます。次に、来院時に症状がない場合に適応になるのがホルター心電図です。24時間から長期のもので7日間程度まで連続して心電計記録が可能で、24時間の間に1回以上、7日間の間に1回以上、症状が出現する場合は、症状出現時の心電図記録が出来れば確実に診断をすることが出来ます。症状出現時の心電図記録のために、ホルター心電図を何回か繰り返し行う場合もあります。詳しくはホルター心電図のページをご覧ください。

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter

問題は、ホルター心電図を何度か繰り返し行っても症状出現時の心電図記録が捕まらない場合や症状の頻度によっては症状出現時の心電図記録が難しい場合があります。その場合に、携帯型心電計が有用です。日常生活の中で使える家庭用の携帯型の心電計で、動悸や胸痛などの症状が出た時のために携帯していただき、その場で記録が出来ることがメリットです。

【オムロン携帯型心電計 HCG-801】

携帯型心電計として、オムロンの「携帯型心電計 HCG-801」を紹介します。日本のメーカー、オムロン製で、「管理医療機器」を取得しています。症状出現時の心電図記録に成功すれば診断が可能です。実際にお茶の水循環器内科では、何年も診断が着かずに困っていた方が、このオムロンの携帯型心電計にて症状出現時の心電図記録に成功し、不整脈の確定診断が着き、治療方針が明確になった方、その後カテーテルアブレーション治療へ進み、症状が治癒した方など、何名かいます。家庭用の医療機器なので、ご自身でご購入いただく必要があります。家電量販店では取り扱っていないところも多いので、amazonが確実でしょう。解析ソフト付き、純正のSDカード付きなどがありますが、心電図記録だけであれば「携帯型心電計 HCG-801」単体のもので必要十分です。詳しくは下記リンクをご覧ください。

オムロン「携帯型心電計 HCG-801」→https://www.healthcare.omron.co.jp/medical/products/HCG-801/index.html

amazon→https://www.amazon.co.jp/dp/B0085Q0G32

他にもいくつかのメーカーから携帯型心電計がありますが、心電計記録が確実に可能なもの、管理医療機器認証を取得しているものなど精度が確かなものを選んでください。他にリストバンド式の脈拍計などもありますが、不整脈の診断においては脈拍ではなく心電の情報であることが重要なので、脈拍計ではなく心電計を選んでください。

【埋込型心電計】

最後の手段として埋込型心電計という方法があります。これは、小型の心電計を体内に埋め込むことにより、バッテリーは最長3年間、症状出現時の心電図を確実に記録します。体内にセンサーを埋込むので手術の必要があること、本当に必要な方が適応となります。飛行機の操縦士、新幹線の運転、トラックの運転、高所作業などに関わる仕事の方は、一回の発作が重大な事故を引き起こす危険性があるため、確実な診断が必要ば場合があります。必要な場合は専門の診療科へ紹介します。詳しくは下記ページをご覧ください。

東京大学医学部付属病院循環器内科不整脈チーム→https://cardiovasc.m.u-tokyo.ac.jp/clinical/arrythmia/icm

順天堂大学医学部付属順天堂医院循環器内科→https://www.juntendo.ac.jp/hospital/information/topics/detail/no90.html

聖マリアンナ医科大学東横病院「失神センター」→https://marianna-toyoko.jp/g0102002


発作性心房細動

【発作性心房細動とは】

発作性心房細動(Paroxysmal atrial fibrillation: pAf)とは、持続性ではなく発作性に起こる心房細動です。心房細動(atrial fibrillation: Af)には、発作性心房細動、持続性心房細動、慢性心房細動、永続性心房細動などの分類があります。多くの心房細動は、最初は発作性に始まり、次第に発作の頻度が増えて、持続時間が長くなり、持続性心房細動、慢性心房細動になると言われています。薬物療法等に抵抗性になると永続性心房細動と言います。発作性心房細動は心房細動の早期の段階であると考えられるので、発作性心房細動の段階で発見することが出来れば、カテーテルアブレーションの有効性がより期待しやすいと言うことが出来ます。詳しくは「心房細動治療ガイドライン」をご覧ください。

「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf

【発作性心房細動の心原性脳塞栓症の発症リスク】

国内外の研究から、発作性心房細動の心原性脳塞栓症の発症リスクは、持続性心房細動と同等であるということがわかっています。持続性心房細動のほうが脳梗塞を起こしやすいと思われがちなのですが、発作性心房細動も慢性心房細動も同様に脳梗塞のリスクとしては同等であり、両方とも予防療法が必要なのです。心房細動患者は日本で80万人程度いると言われており、潜在的に診断されていないものも含めると、100万人を超えるとも言われています。心房細動全体の約半数が発作性心房細動であると言われています。また、心房細動は自覚症状が乏しい場合があり、動悸、脈の乱れ、脈が飛ぶ感じ、息苦しさ、めまい等の何らかの自覚症状がある場合が約50%、何の自覚症状がない場合が約50%と言われており、未発見、未治療の発作性心房細動が多く存在することが課題となっています。詳しくは心房細動、心原性脳塞栓症のページ、不整脈ドットコムをご覧ください。

心房細動→https://循環器内科.com/af

心原性脳塞栓症→https://循環器内科.com/cce

不整脈ドットコム→https://fusei39.com/patient/af.shtml

【発作性心房細動の診断】

発作性心房細動の診断は、発作性の心電図を記録することです。多くの検診等の心電図検査で、非発作時の心電図記録は正常になってしまいます。発作性心房細動を見付けるためには発作時の心電図を記録する必要があり、ホルター心電図、携帯型心電計が必要になります。発作性心房細動は、発作性に出現することが特徴ですので、一回の心電図検査では見逃すことがあります。また、ホルター心電図も24時間のホルター心電図よりも、7日間の長期間のホルター心電図のほうが発作性心房細動の見逃しが少なかったという報告もあり、可能であれば長期間のホルター心電図記録が重要です。詳しくはホルター心電図のページをご覧ください。

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter

また、最近は、市販でいくつかの携帯型心電計が登場しています。医療機器ではありませんが、発作時の記録が取れれば、診断の参考になり、有用です。

【発作性心房細動の治療】

発作性心房細動の治療は心房細動の治療と共通です。心房細動の治療は、1、心房細動による脳梗塞、心原性脳塞栓症の予防療法と、2、心房細動自体に対する治療と、2種類あります。何よりも脳梗塞を起こさないことが大事ですので、第一に脳梗塞の予防療法を開始します。また、発作性心房細動は持続性心房細動よりも発症から早期であると考えられるため、カテーテルアブレーションの有効性がより期待しやすいと言うことが出来ます。

1、心原性脳塞栓症予防のための抗凝固療法

心房細動による脳梗塞を防ぐには、血栓予防の抗凝固療法という治療を開始します。血栓が出来なければ脳梗塞になることはありません。左心房内で血栓が出来ないように、血液が凝固しないように、抗凝固療療法という治療を開始します。適切な抗凝固療法を続けていれば、心原性脳塞栓症が起こるのを7割以上の効果で防ぐことが出来ます。

2、心房細動に対するカテーテルアブレーション治療

心房細動自体に対する治療はカテーテルアブレーション術と言います。カテーテルという血管内の治療で、心房細動の原因となっている電気の伝わりを焼却し、心房細動自体を起こさないようにする治療です。カテーテルアブレーションは昔は合併症や再発率の問題もあり発展途上の治療という位置付けでしたが、近年は安全性と有効率がどんどん向上して来ていますので、いくつか条件や注意事項がありますが、一度検討されてよい治療法だと考えています。都内では、心臓血管研究所附属病院、慶應義塾大学病院、東京女子医科大学病院などカテーテルアブレーションに積極的に取り組んでいる病院に紹介で治療をお願いしています。

【発作性心房細動の治療】

心房細動による脳梗塞、心原性脳塞栓症の予防は、血栓予防、血液が凝固しないようにする抗凝固薬という飲み薬による治療です。抗凝固療法は一定の出血リスクを伴いますので、血栓予防による脳梗塞予防のメリットと出血リスクによるデメリットを総合的に判断して、抗凝固療法、抗凝固薬を選択します。

・プラザキサ(ダビガトラン)、1日2回内服の直接経口抗凝固薬(DOAC: Direct Oral AntiCoagulant)です。安全性高く脳梗塞の予防が出来ます。ワルファリンと比べて出血リスクが少なく、出血しても危篤な重症出血となりにくい、などのメリットがあります。抗凝固療法の一番の副作用は出血ですが、プラザキサの特徴としては、出血時にプラザキサの薬の効果をブロックする中和薬、プリズバインド(イダルシズマブ)があることとです。

・イグザレルト(リバーロキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)、1日1回内服の直接経口抗凝固薬(DOAC: Direct Oral AntiCoagulant)です。プラザキサと同様に、安全性高く脳梗塞の予防が出来ます。新薬なので薬価が高いのと、薬が切れるのが早いので一日でも飲み忘れてはいけない点が注意です。1日1回内服です。1日2回の薬を飲み忘れなく続けるのが難しい方に向いています。

・エリキュース(アピキサバン)、1日2回内服の直接経口抗凝固薬(DOAC: Direct Oral AntiCoagulant)です。上記の3剤と同じく、安全性高く脳梗塞の予防が出来ます。1日2回内服です。

・ワーファリン(ワルファリン)、昔からある抗凝固薬です。僧帽弁狭窄症や人工弁置換術後などはワーファリンによる抗凝固療法が必要です。また、今までずっとワーファリン治療にて特に合併症も何も問題が起きていない場合は無理矢理と新薬に変える必要はないと考えています。一度出血を起こすと止まりにくい、定期的に採血で凝固能をチェックする必要がある、ビタミンK依存性凝固因子というものに作用して効果を発揮するため、ビタミンKを多く含む食べ物の食事制限があること、肝臓癌の腫瘍マーカーPIVKA-IIが肝臓癌でなくても陽性となる、などが注意です。

・アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、心房細動によって脈が速くなって、動悸や苦しさの症状が出ている、心不全を起こしている場合などに使います。高血圧症や心筋梗塞後など合併している場合にもよく使います。

・ワソラン(ベラパミル)、ヘルベッサー(ジルチアゼム)、サンリズム(ピルシカイニド)、心房細動による頻脈発作の予防や、頻脈発作時に頓服で使います。不整脈の薬は注意して使う必要があるので、主治医によく相談しましょう。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。

【発作性心房細動の情報】

心房細動は説明しなければならない情報が非常に多く、一回の説明で全て完璧に理解するのは容易ではありません。わからなければ何度もでも説明しますし、以下、国立循環器病研究センター、日本不整脈心電学会のページにかなり詳しくまとまっていますのでご参考ください。

「心房細動といわれたら – その原因と最新の治療法 -」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph111.html

「心房細動と付き合うには- 心原性脳塞栓症のリスクと新しい予防薬 -」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph99.html

日本不整脈心電学会「心房細動」→https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-a-1


 

心不全

【心不全とは】

心不全(Heart failure)とは、様々な原因で心臓の機能が弱っている状態のことです。「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」では、一般向けの説明として「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。」と説明されています。医学的には、「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義されています。簡単に言うと、心臓の機能が弱った状態のことです。詳しくは、2018年3月発表、日本循環器学会、日本心不全学会ら「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」をご覧ください。

「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf

【心不全の原因】

心不全の原因疾患は多岐に渡ります。大きく、心筋の異常による心不全、血行動態の異常による心不全、不整脈による心不全の3つに分類されます。日本におけるデータでは、入院した心不全患者の原因疾患として多いものは順に、虚血性心疾患、高血圧、弁膜症であったと報告されています。具体的には、

【心筋の異常による心不全】

・虚血性心疾患:虚血性心筋症、スタニング、ハイバネーション、微小循環障害

・心筋症(遺伝子異常を含む):肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症、不整脈原性右室心筋症、緻密化障害、たこつぼ心筋症

・心毒性物質など:習慣性物質(アルコール、コカイン、アンフェタミン、アナボリックステロイド)、重金属(銅、鉄、鉛、コバルト、水銀)、薬剤(抗癌剤、アントラサイクリンなど、免疫抑制薬、抗うつ薬、抗不整脈薬、NSAIDs、麻酔薬、放射線障害

・感染性:心筋炎(ウイルス性、細菌性、リケッチア感染など、シャーガス病など)

・免疫疾患:関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、混合性結合組織病など

・妊娠:周産期心筋症(産褥心筋症を含む)

・浸潤性疾患:サルコイドーシス、アミロイドーシス、ヘモクロマトーシス、悪性腫瘍浸潤

・内分泌疾患:甲状腺機能亢進症、クッシング病、褐色細胞腫、副腎不全、成長ホルモン分泌異常など

・代謝性疾患:糖尿病

・先天性酵素異常:ファブリー病、ポンペ病、ハーラー症候群、ハンター症候群

・筋疾患:筋ジストロフィ、ラミノパチー

【血行動態の異常による心不全】

・高血圧

・弁膜症

・心臓の構造異常

先天性:先天性弁膜症、心房中隔欠損、心室中隔欠損、その他の先天性心疾患

後天性:大動脈弁・僧帽弁疾患など心外膜などの異常収縮性心外膜炎、心タンポナーデ

心内膜の異常、好酸球性心内膜疾患、心内膜弾性線維症

高心拍出心不全:重症貧血、甲状腺機能亢進症、パジェット病、動静脈シャント、妊娠、脚気心

体液量増加:腎不全、輸液量過多

【不整脈による心不全】

・頻脈性:心房細動、心房頻拍、心室頻拍など

・徐脈性:洞不全症候群、房室ブロックなど

【心不全の分類】

心不全には様々な分類があります。一番多いのは、左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)によって分類します。具体的には、左室駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)、左室駆出率が保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)、左室駆出率が軽度低下した心不全(heart failure with midrange ejection fraction: HFmrEF)、左室駆出率が改善した心不全(heart failure with preserved ejection fraction, improved: HFpEF improved またはheart failure with recovered EF: HFrecEF)に分類します。

他の分類法には、運動耐容能を示す指標であるNYHA心機能分類、肺動脈楔入圧と心係数によるForrester分類、うっ血所見と低灌流所見によるNohria-Stevenson分類、クリニカルシナリオ(clinical scenario: CS)分類などがあります。

【心不全のステージ分類】

心不全のステージ分類として、リスク因子をもつが器質的心疾患がなく、心不全症候のない患者を「ステージA 器質的心疾患のないリスクス テージ」、器質的心疾患を有するが、心不全症候のない患者を「ステージ B 器質的心疾患のあるリスクステージ」、器質的心疾患を有し、心不全症候を有する患者を既往も含め「ステージ C 心不全ステージ」、さらに、おおむね年間2回以上の心不全入院を繰り返し、有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物治療について治療な いしは治療が考慮されたにもかかわらずニューヨーク心臓協会(New York Heart Association: NYHA)心機能分類 III度より改善しない患者は「ステージ D 治療抵抗性心不 全ステージ」と定義されました。「心不全の発症・進展を 4 つのス テージに分類しているが、ステージAとBは明らかに心不 全ではなく、心不全発症リスクのステージである。このよ うな心不全発症前のリスクであるステージにおける治療 を、心不全の治療ガイドラインにあえて含めるのは、その予防がきわめて重要であるからにほかならない。」と説明にあるように、心不全の症候を起こしていない発症リスクのステージも、心不全予防の重要性の観点から、ステージA、ステージBと定義し、介入の対象となることが明確化されました。

【心不全の診断】

心不全の診断としては、自覚症状、既往歴、家族歴、身体所見、心電図、胸部X線をまず検討、慢性心不全を疑う場合、次に行うべき検査は血中BNP/N末端プロBNP(NT-proBNP)値の測定、「NT-proBNP≧400 pg/mLまたは BNP≧100 pg/mL」を満たす場合は、心エコー、さらにはCT、MRI、核医学検査、運動/薬剤負荷試験、心臓カテーテル検査等の精査へ、「NT-proBNP≧400 pg/mLまたは BNP≧100 pg/mL」を満たさない場合は心不全は否定的と判断して行きます。ただし、「NT-proBNPが125~400 pg/mLあるいはBNPが35ないし40~100 pg/mL の場合、軽度の心不全の可能性を否定しえない。NT-proBNP/BNPの値のみ で機械的に判断するのではなく、NT-proBNP/BNPの標準値は加齢、腎機能障害、貧血に伴い上昇し、肥満があると低下することなどを念頭に入れて、症状、既往・患者背景、身体所見、心電図、胸部X線の所見とともに総合的に勘案して、心エコー図検査の必要性を判断するべきである。」と、BNPの値が、40-100程度の場合は、総合的に判断が必要であること注意が必要です。心エコーにおいて、様々な指標がありますが、特に重要なものが左室収縮能の評価として左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)であり、心不全の分類にも用いられる。左室拡張能の評価としては、平均E/e′>14 (中隔側E/e′>15 または 側壁側E/e′>13)、中隔側 e′<7 cm/秒 または 側壁側 e′<10 cm/秒、三尖弁逆流速度(tricuspid regurgitation velocity; TRV)>2.8 m/秒、左房容積係数(left atrial volume index; LAVI)>34 mL/m2、左室流入血流速波形(E/A)等によって評価します。

心臓MRIは心臓の携帯、弁の評価、駆出率、心筋の評価、特にガドリニウム遅延造影は心筋の詳細な評価に有用、心臓CTは冠動脈の評価に有用です。

【心不全の予防】

心不全予防について、心不全のステージ A/Bでは心不全の発症予防、ステージC/Dでは心不全症状の改善に加えて、心不全の進行(増悪)・再発予防、生命予後の改善を図ることに重点、心不全の予防と治療を明確に区別することは困難で、両者を含めた心不全予防が重要です。高血圧、冠動脈疾患、肥満・糖尿病、喫煙、アルコール、身体活動・運動、その他、それぞれにおいて予防的介入が重要です。各ステージにおける治療目標はステージの進行を抑制することで、すなわち、ステージA(リスクステージ)では心不全の原因となる器質的心疾患の発症予防、ステージB(器質的心疾患ステージ)では器質的心疾患の進展抑制と心不全の発症予防、そしてステージC(心不全ステージ)では予後の改善と症状を軽減することを目標、ステージD(治療抵抗性心不全ステージ)における治療目標は、基本的にはステージCと同様であるが、終末期心不全では症状の軽減が主たる目標、とステージ別の治療目標が明確化されました。

【心不全の治療】

心不全治療として、LVEFの低下した心不全(HFrEF) について、LVEFの低下した心不全(HFrEF) の原因は、非虚血性の拡張型心筋症と虚血性心筋症に大別、

薬物療法としてはACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、β遮断薬、利尿薬、抗不整脈薬、血管拡張薬、ジギタリス、経口強心薬、レニン阻害薬、ω-3脂肪酸、スタチン、抗凝固薬、その他、SGLT2阻害薬、Ifチャネル阻害薬、アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬(ARNI)などにまとめられました。具体的な用法用量としては、

ACE 阻害薬:

・エナラプリル 2.5 mg/日より開始、維持量5~10 mg/日1日1回投与

・リシノプリル 5 mg/日より開始、維持量5~10 mg/日1日1回投与

ARB:

・カンデサルタン4 mg/日より開始(重症例・腎障害では2 mg/日)維持量4~8 mg/日(最大量12 mg/日)1日1回投与

MRA:

・スピロノラクトン 12.5~25 mg/日より開始、維持量25~50mg/日1日1回投与

・エプレレノン 25 mg/日より開始、維持量50 mg/日1日1回投与

β遮断薬:

・カルベジロール 2.5 mg/日より開始、維持量5~20 mg/日1日2回投与

・ビソプロロール 0.625 mg/日より開始、維持量1.25~5mg/日1日1回投与

利尿薬:

・フロセミド 40~80 mg/日1日1回投与

・アゾセミド 60 mg/日1日1回投与

・トラセミド 4~8 mg/日1日1回投与

・トルバプタン 7.5~15 mg/日1日1回投与

・トリクロルメチアジド 2~8 mg/日1日1回投与

抗不整脈薬:

・アミオダロン 400 mg/日より開始、維持量200 mg/日1日1~2回投与

ジギタリス:

・ジゴキシン 0.125~0.25 mg/日1日1回投与

経口強心薬:

・ピモベンダン 2.5~5.0 mg/日1日1回投与

一方で、LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)に関しては「HFmrEFにおいてはβ遮断薬など HFrEF の治療薬が有効とのデータも存在する。この領域の心不全例でのデータはまだ確実なものがなく、今後の検討を要する。」とエビデンスが十分に確立していないこと、LVEFの保たれた心不全(HFpEF)に対しては、「HFpEFに対する薬物療法として、死亡率や臨床イベント発生率の低下効果が前向き介入研究で明確に示されたものはない。」と記載、現段階では原疾患に対する基本的治療を基本、心不全症状を軽減させることを目的とした負荷軽減療法、心不全増悪に結びつく併存症に対する治療を行うこととされています。

非薬物治療としては、植込み型除細動器、心臓再同期療法、呼吸補助療法、運動療法、手術療法として、左室形成術、TAVI、補助循環として、大動脈内バルーンポンプ(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)、循環補助用心内留置型ポンプカテーテル、補助人工心臓(ventricular assist device: VAD)、体外設置型VAD、植込型LVAD、心臓移植、包括的心臓リハビリテーション、緩和ケア等についてガイドラインにまとめられています。詳しくは、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」をご覧ください。

「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf


 

陳旧性心筋梗塞

【陳旧性心筋梗塞とは】

陳旧性心筋梗塞(old myocardial infarction: OMI)とは、急性心筋梗塞(Acute myocardial infarction: AMI)の発症後、病状が安定した慢性期の状態です。発症から72時間以内を急性心筋梗塞、72時間以降30日以内を亜急性心筋梗塞、30日以降を陳旧性心筋梗塞とする定義もありますが、実臨床では、今まさに急性心筋梗塞を起こしているかそうでないかが重要なので、今まさに心筋梗塞を起こしている訳ではない状態、既往歴としての心筋梗塞のことを主に陳旧性心筋梗塞と呼びます。

【陳旧性心筋梗塞の検査】

陳旧性心筋梗塞とは、30日以上前に急性心筋梗塞を起こしており、その後の病状が安定した慢性期の状態とのことです。診断は急性心筋梗塞の診断されてから発症30日以上経過していることです。その後は、急性心筋梗塞の治療としてステント留置をした場合、ステント留置をしなかった場合、いずれも冠動脈に再狭窄を起こしていないか、定期的に冠動脈の状態を評価します。心臓の血管の調べ方は、冠動脈造影、冠動脈CT、心臓MRIと3種類あります。それぞれ特徴がありますので、主治医の判断に従いましょう。明らかに冠動脈狭窄を認める場合にはそのままカテーテル治療へ進めることが可能な冠動脈造影検査、外来で冠動脈狭窄の有無を詳細に評価したい場合は冠動脈CT、放射線を使わずに心臓の弁や筋肉の情報も調べたい場合は心臓MRIとあります。運動による症状や心電図の変化を評価したい場合は運動負荷心電図検査などがあります。詳しくは各ページをご覧ください。

・冠動脈造影→https://循環器内科.com/cag

・冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta

・心臓MRI→https://循環器内科.com/cmri

【陳旧性心筋梗塞の管理】

急性心筋梗塞後に一番の問題は急性心筋梗塞の再発です。一度心筋梗塞を起こしている場合は、他の冠動脈にも同様に動脈硬化を来していることがほとんどで、心筋梗塞の再発を防ぐことが一番重要です。さらに、心筋梗塞を起こした部位は次第に線維化、希薄化し、収縮力を失います。広範囲な心筋梗塞では収縮不全による心不全を来します。また、心筋梗塞後の合併症として様々な不整脈があります。陳旧性心筋梗塞では、心筋梗塞の再発予防、心不全の管理、不整脈の管理などが中心になります。

ここでは、急性心筋梗塞の治療として一番多いケースとして、冠動脈カテーテル治療を行い、ステント留置を行ったケースとして代表的な治療法を説明します。一番の目的は急性心筋梗塞の再発予防です。冠危険因子に対して適切な治療を行うことに加えて、特にステント留置を行った場合には、ステント留置後のステント内再狭窄(ISR: Intra-Stent Restenosis)を防ぐために、抗血小板薬二剤併用療法(DAPT: Dual Anti-Platelet Therapy)が重要です。

・バイアスピリン、エフィエント(プラスグレル)

抗血小板薬二剤併用療法(Dual Anti-Platelet Therapy: DAPT)と言います。通常、バイアスピリン(アスピリン)をベースの一剤として、プラビックス(クロピドグレル)かエフィエント(プラスグレル)かもう一剤を併用します。通常、ステント留置から6ヶ月後から12ヶ月後に、再度フォローアップの冠動脈造影を行います。

・バイアスピリン

フォローアップの冠動脈造影にてステント内再狭窄を認めないことを確認後、DAPTからSAPTに切り替え可能かどうか判断します。個々の症例によってケースバイケースですが、多くの場合PCI後DAPT、9ヶ月後前後に冠動脈造影、問題なければSAPTに切り替えを行います。SAPT(Single Anti-Platelet Therapy)は原則として生涯継続が必要です。

・禁煙、喫煙は明らかに心筋梗塞、心筋梗塞の再発のリスク因子です。煙草は辞めましょう。

・硝酸薬、ニトロペン(ニトログリセリン)、ニトロール(硝酸イソソルビド)、フランドルテープ(硝酸イソソルビド貼付薬)、ニトロダーム(ニトログリセリン)、ミオコールスプレー(ニトログリセリン)、アイトロール(一硝酸イソソルビド)、硝酸薬と呼ばれる狭心症治療薬です。冠動脈拡張作用で、発作を解除します。ニトロペンは舌下錠、ニトロールやミオコールはスプレー剤、フランドルはテープ剤があります。

・スタチン、クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、脂質を下げて、動脈硬化を予防します。

・βブロッカー、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、テノーミン(アテノロール)、心臓の脈や収縮力を適度に落として心臓を休ませ、心筋梗塞の再発を防ぎます。

・PPI、タケプロン(ランソプラゾール)、ネキシウム(エソメプラゾール)、パリエット(ラベプラゾール)、抗血小板薬による胃潰瘍を防ぐため、制酸薬を併用します。

その他、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの危険因子があればそれぞれ治療を行います。下記、典型的な例として、高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の冠危険因子を複数認め、かつ、急性心筋梗塞後に慢性心不全を発症しているケースとして説明します。

・ACE阻害薬、レニベース(エナラプリル)、タナトリル(イミダプリル)、降圧薬であると同時に、心筋のリモデリングを抑制し、慢性心不全の悪化を防ぐ効果があります。拡張型心筋症、肥大型心筋症等の心筋症に対しては進行抑制効果を期待して使います。

・ARB、アジルバ(アジルサルタン)、オルメテック(オルメサルタン)、ブロプレス(カンデサルタン)、降圧薬であると同時に、心筋のリモデリングを抑制し、慢性心不全の悪化を防ぐ効果があります。拡張型心筋症、肥大型心筋症等の心筋症に対しては進行抑制効果を期待して使います。

・アルドステロン拮抗薬、ACE阻害薬、ARBと同様、心筋のリモデリングを抑制し、慢性心不全の悪化を防ぐ効果があります。アルダクトン(スピロノラクトン)、セララ(エプレレノン)があります。

・利尿薬、余分な水分を体外に排出し、心臓への負担を軽減します。肺うっ血やむくみがある場合にも使います。ラシックス(フロセミド)、フルイトラン(トリクロルメチアジド)、ナトリックス(インダパミド)、サムスカ(トルバプタン)などがあります。

・カルシウム拮抗薬、アムロジン(アムロジピン)、アダラート(ニフェジピン)、ヘルベッサー(ジルチアゼム)、ワソラン(ベラパミル)、降圧薬であると同時に、冠動脈拡張作用を期待して使います。冠攣縮性狭心症を合併している場合には冠動脈拡張作用のために使います。

・ゼチーア(エゼチミブ)、エパデール(イコサペント酸エチル)、ロトリガ(オメガ‐3脂肪酸エチル)、脂質改善薬です。スタチンで十分に脂質が改善していない場合に追加します。ゼチーアは小腸のコレステロールトランスポーターに作用し、脂質の吸収を阻害します。エパデール、ロトリガは良質な脂肪酸で、主に善玉コレステロールを改善します。

・SGLT2阻害薬、ジャディアンス(エンパグリフロジン)、カナグル(カナグリフロジン)、糖尿病治療薬です。利水効果、心不全に対してよい効果があることがわかって来ています。現在、慢性心不全に対して適応はありませんが、今後慢性心不全に対して使われる可能性があります。

・ジャヌビア(シタグリプチン)、トラゼンタ(リナグリプチン)、エクア(ビルダグリプチン)、アマリール(グリメピリド)、経口血糖降下薬です。SGLT2阻害薬で十分に血糖が改善しない場合に追加します。経口血糖降下薬には多数あるので、適宜病状に合ったものを追加します。メトグルコ(メトホルミン)は経口血糖降下薬の基本薬ですが、造影剤と相性が悪いため、急性心筋梗塞後のようにまたいつ造影検査をするかわからない状態では使わないという判断をすることもあります。

・抗不整脈薬、慢性心不全の原因として不整脈、または慢性心不全の結果、不整脈がある場合、抗不整脈薬を使います。アンカロン(アミオダロン)、シベノール(シベンゾリン)、シンビット(ニフェカラント)、他多数の抗不整脈薬があります。

・抗凝固薬、心機能が高度に低下している場合、慢性心不全の結果、心房細動がある場合、脳梗塞予防のため抗凝固療法が必要になります。僧帽弁狭窄症などの弁膜症が原因の弁膜症心房細動にはワーファリン(ワルファリン)、非弁膜症心房細動(Non valvular atrial fibrillation: NVAF)には、エリキュース(アピキサバン)、プラザキサ(ダビガトラン)、リクシアナ(エドキサバン)、イグザレルト(リバロキサバン)、ワーファリン(ワルファリン)を使います。

・経口強心薬、ジゴシン(ジゴキシン)、心筋収縮力を高めます。中毒域が近いため、昔ほど使われなくなりましたが、頻脈性の心房細動で心収縮力も低下している場合などにはよい適応となることもあります。

その他の治療法として、心臓リハビリテーション、静注強心薬、弁膜症に対しての外科的治療、ペースメーカー、心拍再同期療法(Cardiac resynchronization therapy: CRT)、植込型除細動器(Implantable cardioverter defibrillator: ICD)、補助人工心臓、植込型人工心臓、心移植、などがありますが、専門的になりますので割愛します。

【陳旧性心筋梗塞の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

陳旧性心筋梗塞の予防とは、すなわち急性心筋梗塞の予防です。急性心筋梗塞の原因は動脈硬化です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、動脈硬化のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。逆に、動脈硬化のリスク因子が少なければ少ないほど急性心筋梗塞にはなりにくいです。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病が自覚症状がなくても治療が必要な理由です。修正可能なリスク因子をコントロールして、急性心筋梗塞にならないようにしましょう。


 

労作性狭心症

【労作性狭心症とは】

労作性狭心症(Effort angina pectoris: EAP)とは、冠動脈に狭窄があり、階段を登る時や坂を登る時など労作時に狭心症発作を起こすことが特徴の狭心症です。単に狭心症と言った場合に多くは労作性狭心症を意味することが多いです。主に安静時に狭心症発作を起こすことが多い冠攣縮性狭心症と区別する際に労作性狭心症と言います。また、急性心筋梗塞に準じて治療が必要な狭心症を不安定狭心症と呼びますが、不安定狭心症ではない狭心症のことを、不安定狭心症に対して安定狭心症と呼ぶこともあり、それも労作性狭心症とほとんどの場合同じ意味です。

・急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

・不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

・労作性狭心症→https://循環器内科.com/eap

・冠攣縮性狭心症→https://循環器内科.com/vsa

ざっくり言うと、心臓の血管、冠動脈に起こる病変は3パターンで、血管が詰まっている状態(急性心筋梗塞)、血管が詰まってはいないが狭窄を起こしている状態(不安定狭心症、労作性狭心症)、血管が痙攣を起こしている状態(冠攣縮性狭心症)、の3パターンです。血管が詰まってはいないが狭窄を起こしている状態はさらに、急性心筋梗塞に移行するリスクが高く、緊急で治療を開始しなくてはならないかどうかを判断します。急性心筋梗塞に移行するリスクが高い状態を不安定狭心症、そうでない状態を労作性狭心症と呼びます。不安定狭心症に対して、安定しているという意味で、安定狭心症と呼ぶこともあります。重要なことは不安定狭心症かどうでないかを判断することです。

【労作性狭心症の診断】

労作性狭心症の診断は、まずは心臓の血管、冠動脈(Coronary artery)に狭窄を認めるかどうかを調べます。心臓の血管の調べ方は、冠動脈造影、冠動脈CT、心臓MRIと3種類あります。明らかに冠動脈狭窄を認める場合にはそのままカテーテル治療へ進めることが可能な冠動脈造影検査、外来で冠動脈狭窄の有無を詳細に評価したい場合は冠動脈CT、放射線を使わずに心臓の弁や筋肉の情報も調べたい場合は心臓MRIとあります。運動による症状や心電図の変化を評価したい場合は運動負荷心電図検査などがあります。詳しくは各ページをご覧ください。

・冠動脈造影→https://循環器内科.com/cag

・冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta

・心臓MRI→https://循環器内科.com/cmri

【不安定狭心症かどうかの判断】

狭心症と診断した場合は、次に急性心筋梗塞に移行するリスクの高さを評価します。つまり、不安定狭心症かそうでないかの診断です。不安定狭心症の診断にはBraunwald分類があります。新規発症、亜急性安静、急性安静の3タイプです。具体的には、

ClassⅠ:新規発症の重症または増悪型狭心症

・最近2カ月以内に発症した狭心症

・1日に3回以上発作が頻発するか、軽労作にても発作が起きる増悪型労作狭心症(安静狭心症は認めない)。

ClassⅡ:亜急性安静狭心症

・最近1カ月以内に1回以上の安静狭心症があるが、48時間以内に発作を認めない。

ClassⅢ:急性安静狭心症

・48時間以内に1回以上の安静時発作を認める。

詳しくは日本循環器学会「急性冠症候群の診療に関するガイドライン」をご覧ください。

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_yamaguchi_h.pdf

狭心症の中で上記の基準を満たすものは不安定狭心症として取り扱います。Braunwald分類は冠動脈造影所見ともよく一致していることが知られています。大事なことは、急性心筋梗塞に移行するリスクがどれくらいあるかを評価し、緊急で治療を開始しなくてはならない狭心症を見極めることです。

【労作性狭心症の治療】

労作性狭心症では、緊急カテーテルの必要性は低いですが、待機的にカテーテル検査を行う場合があります。カテーテル検査を行う場合は、カテーテル検査の所見からカテーテル治療が必要かどうかを判断します。冠動脈の狭窄や虚血の程度によってはカテーテル治療を行わないという判断をする場合もあります。その場合は、冠危険因子に対して、それぞれ適切な治療を行って行きます。目的は急性心筋梗塞の発症を防ぐことです。

・禁煙、喫煙は明らかに急性心筋梗塞発症のリスク因子です。煙草は辞めましょう。

・スタチン、クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、脂質を下げて、動脈硬化を予防します。

・βブロッカー、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、テノーミン(アテノロール)、心臓の脈や収縮力を適度に落として心臓を休ませ、心筋梗塞の再発を防ぎます。

・硝酸薬、ニトロペン(ニトログリセリン)、ニトロール(硝酸イソソルビド)、フランドルテープ(硝酸イソソルビド貼付薬)、ニトロダーム(ニトログリセリン)、ミオコールスプレー(ニトログリセリン)、アイトロール(一硝酸イソソルビド)、硝酸薬と呼ばれる狭心症治療薬です。冠動脈拡張作用で、発作を解除します。ニトロペンは舌下錠、ニトロールやミオコールはスプレー剤、フランドルはテープ剤があります。

・バイアスピリン

労作性狭心症に対して一律の抗血小板薬の投与は推奨されていませんが、冠動脈狭窄の程度によっては急性心筋梗塞への移行を抑制する作用を期待して使います。

・PPI、タケプロン(ランソプラゾール)、ネキシウム(エソメプラゾール)、パリエット(ラベプラゾール)、抗血小板薬による胃潰瘍を防ぐため、制酸薬を併用します。

その他、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの冠危険因子があればそれぞれ治療を行います。運動療法は安定狭心症では禁忌ではありませんが、不安定狭心症では原則禁忌です。冠動脈の狭窄の程度や経過によりますが、主治医の判断を仰ぎましょう。食事療法に関してはそれぞれのページをご覧ください。また、労作性狭心症と診断した後も、冠動脈狭窄の進行がないか、定期的に評価を行うことが重要です。リスクの程度に合わせて、半年に1回から二年に1回程度の頻度で、適宜、冠動脈CT、心臓MRI、冠動脈造影など、主治医の指示に従いましょう。

【労作性狭心症の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

労作性狭心症の原因は動脈硬化です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。逆に、労作性狭心症のリスク因子が少なければ少ないほど労作性狭心症にはなりにくいです。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病が自覚症状がなくても治療が必要な理由です。修正可能なリスク因子をコントロールして、労作性狭心症にならないようにしましょう。


 

冠動脈カテーテル治療

【冠動脈カテーテル治療とは】

冠動脈カテーテル治療とは、急性心筋梗塞の治療法です。経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous coronary intervention: PCI)、経皮的冠動脈形成術(Percutaneous transluminal coronary angioplasty)、再灌流療法などいくつかの呼び名がありますが、基本同じで、カテーテルを用いて、心臓の血管、冠動脈の閉塞や狭窄を治療する方法です。カテーテル治療の他に急性心筋梗塞の治療としては、外科的治療、冠動脈バイパス手術(Coronary artery bypass grafting: CABG)があります。詳しくは慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」のページをご覧ください。

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)→https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000236.html

【冠動脈カテーテル治療の適応】

冠動脈カテーテル治療の適応は、急性心筋梗塞と不安定狭心症です。急性心筋梗塞、不安定狭心症、急性冠症候群を疑った際には冠動脈造影検査を行いますが、冠動脈造影検査で診断が付き次第、そのまま冠動脈カテーテル治療へと進みます。冠動脈造影では、冠血流予備比(Fractional flow reserve: FFR)など、冠動脈狭窄所見の解剖学的評価だけではなく、機能生理的評価も行う流れになっています。冠動脈CTや心臓MRIをきっかけにカテーテル治療の必要な冠動脈狭窄が見つかる場合もあります。詳しくは下記ページをご覧ください。

・急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

・不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

・急性冠症候群→https://循環器内科.com/acs

・冠動脈造影→https://循環器内科.com/cag

・冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta

・心臓MRI→https://循環器内科.com/cmri

カテーテル治療が難しい病変や、冠動脈三枝に病変がある場合には、冠動脈バイパス手術が適応になる場合もあります。専門的な判断になりますので、主治医の判断にまかせましょう。

【冠動脈カテーテル治療の流れ】

急性心筋梗塞や不安定狭心症では速やかな血流の改善が必要です。手首か足の付根からカテーテルを挿入します。カテーテルの挿入部位は主に三種類です。撓骨動脈(Radial artery)、鼠径動脈(Femoral artery)、上腕動脈(Brachial artery)、いずれかの血管からアプローチします。消毒をし、まず局所麻酔をします。次に、血管を穿刺し、カテーテルを通していく外筒を挿入します。カテーテルは2mmほぼの細い管です。カテーテルを血管内に挿入し、大動脈基部の冠動脈の起始部までカテーテルをアプローチします。冠動脈まで到達した後は、様々な角度から造影剤を注入し、冠動脈を造影しながら何度か撮影を行います。また、必要に応じて左室造影、大動脈造影を追加します。冠攣縮性狭心症を疑う場合は、冠攣縮誘発試験を行います。カテーテル検査にて治療が必要な血管が見つかった場合は、そのままカテーテル治療に進みます。冠動脈の狭窄部位に対して、バルーンなどで拡張を行い、多くの場合はステント留置を行います。ステントとは金属の網状の筒で、狭窄部部位を確実に広げ、血流を改善します。他には、高度な石灰化病変に対してローラーブレーダー、レーザー、血栓吸引療法など様々な手技があります。ステント留置後には再度バルーンで拡張を行い、ガイドワイヤーやカテーテルを抜去し、終了です。カテーテル治療終了後は、止血を行い、十分な止血が確認出来るまで安静にします。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「入院時の治療」→https://xn--ymsx5oniia519h1i2a.com/hospitalization

「カテーテル治療の実際」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph44.html

「心筋梗塞が起こったら」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph92.html

「心筋梗塞、狭心症-その予防と治療」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph34.html

【冠動脈カテーテル治療後の治療】

冠動脈カテーテル治療後は急性心筋梗塞の再発予防が重要です。冠危険因子に対して適切な治療を行うことに加えて、特にステント留置を行った場合には、ステント留置後のステント内再狭窄(ISR: Intra-Stent Restenosis)を防ぐために、抗血小板薬二剤併用療法(DAPT: Dual Anti-Platelet Therapy)が重要です。

・バイアスピリン、エフィエント(プラスグレル)

抗血小板薬二剤併用療法(Dual Anti-Platelet Therapy: DAPT)と言います。通常、バイアスピリン(アスピリン)をベースの一剤として、プラビックス(クロピドグレル)かエフィエント(プラスグレル)かもう一剤を併用します。通常、ステント留置から6ヶ月後から12ヶ月後に、再度フォローアップの冠動脈造影を行います。

・バイアスピリン

フォローアップの冠動脈造影にてステント内再狭窄を認めないことを確認後、DAPTからSAPTに切り替え可能かどうか判断します。個々の症例によってケースバイケースですが、多くの場合PCI後DAPT、9ヶ月後前後に冠動脈造影、問題なければSAPTに切り替えを行います。SAPT(Single Anti-Platelet Therapy)は原則として生涯継続が必要です。

・禁煙、喫煙は明らかに心筋梗塞、心筋梗塞の再発のリスク因子です。煙草は辞めましょう。

・硝酸薬、ニトロペン(ニトログリセリン)、ニトロール(硝酸イソソルビド)、フランドルテープ(硝酸イソソルビド貼付薬)、ニトロダーム(ニトログリセリン)、ミオコールスプレー(ニトログリセリン)、アイトロール(一硝酸イソソルビド)、硝酸薬と呼ばれる狭心症治療薬です。冠動脈拡張作用で、発作を解除します。ニトロペンは舌下錠、ニトロールやミオコールはスプレー剤、フランドルはテープ剤があります。

・スタチン、クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、脂質を下げて、動脈硬化を予防します。

・βブロッカー、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、テノーミン(アテノロール)、心臓の脈や収縮力を適度に落として心臓を休ませ、心筋梗塞の再発を防ぎます。

・PPI、タケプロン(ランソプラゾール)、ネキシウム(エソメプラゾール)、パリエット(ラベプラゾール)、抗血小板薬による胃潰瘍を防ぐため、制酸薬を併用します。

その他、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの危険因子があればそれぞれ治療を行います。

【急性心筋梗塞の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

急性心筋梗塞は動脈硬化が原因です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。逆に、急性心筋梗塞のリスク因子が少なければ少ないほど急性心筋梗塞にはなりにくいです。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病が自覚症状がなくても治療が必要な理由です。修正可能なリスク因子をコントロールして、急性心筋梗塞にならないようにしましょう。

【冠動脈カテーテル治療の歴史】

1929年、ドイツの外科医、Werner Forssmannが自身の上腕静脈に尿道カテーテルを挿入、右心房まで造影に成功、1956年、A.F. CournandとD.W.Richardsともにノーベル生理・医学賞受賞

1958年、アメリカの放射線科医、Mason Sonesが大動脈造影検査中に冠動脈造影法を発見

1964年、アメリカの放射線科医、Charles Dotterが下肢動脈閉塞症に対してバルーン拡張術、世界初の血管内治療に成功

1977年、ドイツの循環器内科医、Andreas Gruentzig、冠動脈バルーン開発、世界初の冠動脈バルーン拡張術(Plain old balloon angioplasty: POBA)に成功

1981年、小倉記念病院の延吉正清先生が日本で初めて冠動脈カテーテル治療に成功

1992年、Palmaz-Schatzステント、ベアメタルステント(Bare metal stent: BMS)開発

2002年、日本で薬剤漏出性ステント(Drug Eluting Stent: DES)薬事承認

以降、急性心筋梗塞の治療として、経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous coronary intervention: PCI)が一般的となり現在に至る。

テルモ株式会社の「医療の挑戦者たち」というページに詳しく載っていました。 →https://challengers.terumo.co.jp/challengers/archive.html


 

冠動脈造影

【冠動脈造影とは】

冠動脈造影(Coronary angiography: CAG)とは、手首や足の付根からカテーテルと呼ばれる細い管を通して、心臓の血管、冠動脈(Coronary artery)の入り口まで挿入し、冠動脈を造影する検査です。冠動脈の狭窄の有無と程度を正確に診断し、治療の必要がある部位があればそのまま経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous coronary intervention: PCI)の治療へと進みます。

【冠動脈造影の目的】

冠動脈に有意狭窄があるとわかった場合、または強く疑われた場合に、確定診断と治療のために行います。有意狭窄とは、冠動脈カテーテル治療が必要な狭窄で、狭窄率では概ね75%狭窄以上の狭窄を有意狭窄と呼びます。有意狭窄の病変に対しては通常そのままカテーテル治療へと進みます。

【冠動脈造影の流れ】

近年は日帰りでカテーテル検査を行う病院もありますが、原則入院が必要な検査です。手首か足の付根からカテーテルを挿入します。カテーテルの挿入部位は主に三種類です。撓骨動脈(Radial artery)、鼠径動脈(Femoral artery)、上腕動脈(Brachial artery)、いずれかの血管からアプローチします。消毒をし、まず局所麻酔をします。次に、血管を穿刺し、カテーテルを通していく外筒を挿入します。カテーテルは2mmほぼの細い管です。カテーテルを血管内に挿入し、大動脈基部の冠動脈の起始部までカテーテルをアプローチします。冠動脈まで到達した後は、様々な角度から造影剤を注入し、冠動脈を造影しながら何度か撮影を行います。また、必要に応じて左室造影、大動脈造影を追加します。冠攣縮性狭心症を疑う場合は、冠攣縮誘発試験を行います。カテーテル検査終了後は、止血を行い、十分な止血が確認出来るまで安静にします。止血をより確実に行うための止血デバイスもあります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

カテーテル治療の実際→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph44.html

【冠動脈造影の結果】

冠動脈の各部位の狭窄の有無と程度が明らかになります。具体的には、冠動脈は、右冠動脈(Right Coronary Artery: RCA)と左冠動脈(Left Coronary Artery: LCA)の2本の血管からなり、左冠動脈はさらに主幹部、前下行枝、回旋枝に分岐します。各部位には、AHA分類と言って、#の通し番号で呼ばれます。具体的には、

【冠動脈のAHA分類】

・右冠動脈(Right Coronary Artery: RCA):#1-#4

#1:右冠動脈起始部から鋭縁部までを二等分した近位部、#1から洞結節枝(sinus node branch: SN)、円錐枝(conus branch: CB)が分岐する。

#2:右冠動脈起始部から鋭縁部までを二等分した遠位部、#2から右室枝(right ventricular branch: RVB)、鋭縁部からは鋭角枝(acute marginal branch: AM)が分岐する。

#3:右冠動脈鋭縁部から後下行枝(poster descending branch: PD)まで

#4:後下行枝(poster descending branch: PD)、#4から#4AV:房室結節枝(atrioventricular node branch: AVN)が分岐する。

・左冠動脈(Left Coronary Artery: LCA):#5-#15

#5:左主幹部(Left Main Trunk: LMT)

・左前下行枝(Left Anterior Descending Coronary Artery: LAD):#6-10

#6:左主幹部から左前下行枝の第一中隔枝(first septal branch: 1st SB)まで、#6から#9:第一対角枝(first diagonal branch: D1)が分岐する。

#7:第一中隔枝から#10:第ニ対角枝(second diagonal branch: D2)まで

#8:第二対角枝から左前下行枝抹消まで

#9:第一対角枝(first diagonal branch: D1)

#10:第ニ対角枝(second diagonal branch: D2)

・左回旋枝(Left Circumflex Coronary Artery LCX):#11-#15

#11:左主幹部から左回旋枝#12:鈍角枝(obtuse marginal branch: OM)まで

#12:鈍角枝(obtuse marginal branch: OM)

#13:後側壁枝(posterolateral branch: PL)まで

#14:後下降枝(posterior descending artery: PD)

さらに、冠動脈の各部位に狭窄率を判定します。狭窄度のAHA分類、7段階で評価します。具体的には、

【狭窄度のAHA分類】

・0%:狭窄なし

・25%:25%以下の狭窄

・50%:25%超から50%以下の狭窄

・75%:50%超から75%以下の狭窄

・90%:75%超から90%以下の狭窄

・99%:90%超から99%以下の狭窄

・100%:完全閉塞

と分類します。通常、75%以上の狭窄を有意狭窄と判定し、治療対象とします。

【冠動脈造影の適応判断】

急性心筋梗塞や不安定狭心症では、緊急で冠動脈造影が必要です。まずは病歴、症状の確認後、心電図、心筋トロポニン検査を行います。急性心筋梗塞の場合は速やかに緊急のカテーテル治療が必要です。冠動脈狭窄が疑われる場合に冠動脈CTを追加します。冠動脈の狭窄の有無や程度の所見から有意狭窄が認められた場合には冠動脈造影を行います。また、経験的に症状から有意狭窄が強く疑われる場合は、総合的にカテーテル治療が必要と考えた場合もカテーテル治療可能な病院へ搬送します。詳しくは下記ページをご覧ください。

・急性冠症候群→https://循環器内科.com/acs

・急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

・不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

・冠攣縮性狭心症→https://循環器内科.com/vsa

・労作性狭心症→https://循環器内科.com/eap

・心電図→https://循環器内科.com/ecg

・心筋トロポニン→https://循環器内科.com/bloodtest

・冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta

・心臓MRI→https://循環器内科.com/cmri

【冠動脈疾患の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

冠動脈疾患は動脈硬化が原因です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。逆に、動脈硬化のリスク因子が少なければ少ないほど冠動脈疾患にはなりにくいです。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病が自覚症状がなくても治療が必要な理由です。修正可能なリスク因子をコントロールして、冠動脈疾患にならないようにしましょう。


 

急性冠症候群

【急性冠症候群とは】

急性冠症候群(Acute coronary syndrome: ACS)とは、冠動脈疾患のうち緊急で対処が必要なものです。具体的には、急性心筋梗塞(Acute myocardial infarction: AMI)と不安定狭心症(Unstable angina pectoris: UAP)の2つをまとめて急性冠症候群と呼びます。急性心筋梗塞とは、心臓の血管、冠動脈が完全に詰まって死に至る状態です。不安定狭心症とは、心臓の血管、冠動脈は詰まってはいないけれど今にも詰まりそうな状態で、急性心筋梗塞の一歩手間の状態です。

・急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

・不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

詳しくは急性心筋梗塞、不安定狭心症のページをご覧ください。

【冠動脈疾患の分類】

ここでは冠動脈疾患全般について説明して行きます。

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000236.html

冠動脈疾患の分類は、慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」のページの図がわかりやすいです。心臓の血管、冠動脈に何らかの狭窄が起こることを冠動脈疾患と言います。心臓の筋肉に酸素が足りない状態、虚血を引き起こすので、虚血性心疾患とも言います。虚血性心疾患には、急性心筋梗塞、不安定狭心症、冠攣縮性狭心症、労作性狭心症の4つがあります。

・急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

・不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

・冠攣縮性狭心症→https://循環器内科.com/vsa

・労作性狭心症→https://循環器内科.com/eap

このうち、急性心筋梗塞、不安定狭心症、労作性狭心症の3つは原因は主に動脈硬化性で、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙と言った冠危険因子の積み重ねによって起こります。例外的に、冠攣縮性狭心症というタイプの狭心症があり、冠攣縮性狭心症だけは動脈硬化性の因子があまりはっきりしないで起こることもあります。急性冠症候群に対して慢性冠動脈疾患と言う呼び方が書いてありますが、重要なことは急性冠症候群か、急性冠症候群ではないか、緊急で対処が必要かそうでないかの判断です。急性心筋梗塞に至っているかどうかは、心筋が壊死に至っているかどうか、採血によって心筋逸脱酵素等を調べることで区別されます。急性心筋梗塞が緊急で対処が必要であることは言うまでもありませんが、狭心症でも急性心筋梗塞に準じて緊急で対処が必要なものとそうでないものとがあります。冠攣縮性狭心症の診断に関しては、最終的にはカテーテル検査によって冠攣縮誘発試験の所見によって診断します。冠攣縮性狭心症について詳しくは冠攣縮性狭心症のページをご覧ください。つまり、不安定狭心症と労作性狭心症の鑑別がキーとなります。

【不安定狭心症と労作性狭心症の鑑別】

不安定狭心症か労作性狭心症の鑑別において、不安定狭心症のBraunwald分類があります。新規発症、亜急性安静、急性安静の3タイプです。具体的には、

ClassⅠ:新規発症の重症または増悪型狭心症

・最近2カ月以内に発症した狭心症

・1日に3回以上発作が頻発するか、軽労作にても発作が起きる増悪型労作狭心症(安静狭心症は認めない)。

ClassⅡ:亜急性安静狭心症

・最近1カ月以内に1回以上の安静狭心症があるが、48時間以内に発作を認めない。

ClassⅢ:急性安静狭心症

・48時間以内に1回以上の安静時発作を認める。

詳しくは日本循環器学会「急性冠症候群の診療に関するガイドライン」をご覧ください。

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_yamaguchi_h.pdf

狭心症の中で上記の基準を満たすものは不安定狭心症として取り扱います。Braunwald分類は冠動脈造影所見ともよく一致していることが知られています。大事なことは、急性心筋梗塞に移行するリスクがどれくらいあるかを評価し、緊急で治療を開始しなくてはならない狭心症を見極めることです。労作性狭心症疑いと判断して実際は不安定狭心症であったことよりも、不安定狭心症疑いと判断して冠動脈カテーテル検査をした結果、労作性狭心症でわかることのほうがベターなので、患者さんと相談のもと、冠動脈CTや冠動脈カテーテル検査を行っています。

【急性冠症候群の治療】

急性冠症候群と診断した場合は、急性心筋梗塞に準じて治療を開始します。

循環器内科の大きな病院で、カテーテル検査によって詰まった血管に対し、そのままバルーン拡張、ステント留置などカテーテル治療を行います。外科的に冠動脈バイパス術が行われることがあります。急性期治療までのつなぎとして以下の初期治療を行います。

・バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)、抗血小板薬という薬です。血栓が出来て、心筋梗塞が広がることを少しでも防ぎます。急性心筋梗塞と診断し次第、バイアスピリン腸溶錠100mgを3Tから4Tを噛み砕いて舌下投与します。

・硝酸薬、ニトロペン(ニトログリセリン)、ニトロール(硝酸イソソルビド)、ミオコールスプレー(ニトログリセリン)、、硝酸薬と呼ばれる狭心症治療薬です。冠動脈拡張作用で、発作を解除します。静脈拡張作用により心臓への負荷を軽減する効果もあります。ニトロペンは舌下錠、ニトロールやミオコールはスプレーがあります。

・スタチン、クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、全身の血管から悪玉コレステロールを回収し、動脈硬化予防、心筋梗塞を強力に抑制します。背景に脂質異常症があり、カテーテルの受診までに日数がある場合使います。

スタチン→https://循環器内科.com/statin

・βブロッカー、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、インデラル(プロプラノロール)、交感神経をブロックし、心筋への過度な負担を和らげます。致死的不整脈の出現を抑制することもわかっています。

・酸素投与、低酸素血症がある例に対して酸素投与、冠攣縮性狭心症の関与を疑う場合のカルシウム拮抗薬の投与など、

・心肺蘇生、心停止例や心停止からの蘇生例に対しては心停止時には速やかに心肺蘇生が開始出来るようにモニタリングを行います。

心肺蘇生→https://循環器内科.com/cpr

・禁煙、動脈硬化の最大の悪化因子です。喫煙者には禁煙が必要です。

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・運動制限、急性心筋梗塞または不安定狭心症を疑った場合に、心筋酸素需要の増大因子、心臓への負担を掛ける動作は好ましくありません。カテーテル病院へ救急車で搬送するのはこのためです。急性心筋梗塞の治療が終わった後に好きなだけ運動しましょう。さらに詳しくは国立循環器病研究センターまたは慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」のページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph92.html

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph34.html

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000236.html

【急性冠症候群の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

急性冠症候群は動脈硬化が原因です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。逆に、動脈硬化のリスク因子が少なければ少ないほど急性冠症候群にはなりにくいです。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病が自覚症状がなくても治療が必要な理由です。修正可能なリスク因子をコントロールして、急性冠症候群にならないようにしましょう。


 

不安定狭心症

【不安定狭心症とは】

狭心症(Angina pectoris: AP)とは、心臓の血管、冠動脈(Coronary artery)が詰まってはいないけれど狭くなっている血管がある状態のことを言います。冠動脈が完全に詰まると急性心筋梗塞(Acute myocardial infarction: AMI)に至りますが、狭心症は急性心筋梗塞の一歩手前の状態です。狭心症の中でも特に急性心筋梗塞に移行するリスクの高い狭心症を不安定狭心症(Unstable angina pectoris: UAP)と呼び、急性心筋梗塞と不安定狭心症をまとめて急性冠症候群(Acute coronary syndrome: ACS)と呼び、急性心筋梗塞に準じて対処していきます。

【不安定狭心症の診断】

不安定狭心症の診断にはBraunwald分類があります。新規発症、亜急性安静、急性安静の3タイプです。具体的には、

ClassⅠ:新規発症の重症または増悪型狭心症

・最近2カ月以内に発症した狭心症

・1日に3回以上発作が頻発するか、軽労作にても発作が起きる増悪型労作狭心症(安静狭心症は認めない)。

ClassⅡ:亜急性安静狭心症

・最近1カ月以内に1回以上の安静狭心症があるが、48時間以内に発作を認めない。

ClassⅢ:急性安静狭心症

・48時間以内に1回以上の安静時発作を認める。

詳しくは日本循環器学会「急性冠症候群の診療に関するガイドライン」をご覧ください。

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_yamaguchi_h.pdf

狭心症の中で上記の基準を満たすものは不安定狭心症として取り扱います。Braunwald分類は冠動脈造影所見ともよく一致していることが知られています。大事なことは、急性心筋梗塞に移行するリスクがどれくらいあるかを評価し、緊急で治療を開始しなくてはならない狭心症を見極めることです。

【不安定狭心症の検査】

不安定狭心症の検査、まずは問診によって、冠危険因子の有無と程度から評価して行きます。家族歴、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙の5つの冠危険因子のうち、多ければ多いほど冠動脈疾患を引き起こしやすいですし、危険因子が少なければ少ないほど冠動脈疾患を引き起こしにくいです。確定診断は冠動脈カテーテル検査ですが、まずは冠動脈カテーテル検査が必要であるかどうかを評価して行きます。心電図、胸部レントゲン、採血にて心筋トロポニンやBNP、その後必要に応じて、冠動脈CTや心臓MRIを追加して行きます。狭心症発作か動悸かはっきりしない場合はホルター心電図にて症状出現時の心電図記録の情報が重要になります。

心電図→https://循環器内科.com/ecg

心筋トロポニン→https://循環器内科.com/bloodtest

冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta

心臓MRI→https://循環器内科.com/cmri

BNP→https://循環器内科.com/bloodtest

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter

冠動脈カテーテル検査→https://循環器内科.com/ami

【不安定狭心症のリスク評価】

TIMIリスクスコアは14日間以内の急性心筋梗塞の発症リスクを算出するのに有用です。

TIMIリスクスコア:

・年齢(65歳以上)

・3つ以上の冠危険因子(家族歴、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙)

・既知の冠動脈の有意狭窄(>50%)

・心電図における0.5mm以上のST偏位

・24時間以内に2回以上の狭心症状

・7日間以内のアスピリンの服用

・心筋障害マーカーの上昇

TIMIリスクスコアが当てはまるものが多ければ多いほど急性心筋梗塞に移行しやすいことがわかっています。必要に応じて、冠動脈CT、冠動脈カテーテル検査へと進めて行きます。

【不安定狭心症の治療】

不安定狭心症と診断した場合は、急性心筋梗塞に準じて治療を開始します。

循環器内科の大きな病院で、カテーテル検査によって詰まった血管に対し、そのままバルーン拡張、ステント留置などカテーテル治療を行います。外科的に冠動脈バイパス術が行われることがあります。急性期治療までのつなぎとして以下の初期治療を行います。

・バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)、抗血小板薬という薬です。血栓が出来て、心筋梗塞が広がることを少しでも防ぎます。急性心筋梗塞と診断し次第、バイアスピリン腸溶錠100mgを3Tから4Tを噛み砕いて舌下投与します。

・硝酸薬、ニトロペン(ニトログリセリン)、ニトロール(硝酸イソソルビド)、ミオコールスプレー(ニトログリセリン)、、硝酸薬と呼ばれる狭心症治療薬です。冠動脈拡張作用で、発作を解除します。静脈拡張作用により心臓への負荷を軽減する効果もあります。ニトロペンは舌下錠、ニトロールやミオコールはスプレーがあります。

・スタチン、クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、全身の血管から悪玉コレステロールを回収し、動脈硬化予防、心筋梗塞を強力に抑制します。背景に脂質異常症があり、カテーテルの受診までに日数がある場合使います。

スタチン→https://循環器内科.com/statin

・βブロッカー、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、インデラル(プロプラノロール)、交感神経をブロックし、心筋への過度な負担を和らげます。致死的不整脈の出現を抑制することもわかっています。

・酸素投与、低酸素血症がある例に対して酸素投与、冠攣縮性狭心症の関与を疑う場合のカルシウム拮抗薬の投与など、

・心肺蘇生、心停止例や心停止からの蘇生例に対しては心停止時には速やかに心肺蘇生が開始出来るようにモニタリングを行います。

心肺蘇生→https://循環器内科.com/cpr

・禁煙、動脈硬化の最大の悪化因子です。喫煙者には禁煙が必要です。

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・運動制限、急性心筋梗塞または不安定狭心症を疑った場合に、心筋酸素需要の増大因子、心臓への負担を掛ける動作は好ましくありません。カテーテル病院へ救急車で搬送するのはこのためです。急性心筋梗塞の治療が終わった後に好きなだけ運動しましょう。さらに詳しくは国立循環器病研究センターまたは慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」のページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph92.html

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph34.html

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000236.html

【不安定狭心症の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

不安定狭心症は動脈硬化が原因です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。逆に、動脈硬化のリスク因子が少なければ少ないほど不安定狭心症にはなりにくいです。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病が自覚症状がなくても治療が必要な理由です。修正可能なリスク因子をコントロールして、不安定狭心症にならないようにしましょう。


急性心筋梗塞

【急性冠症候群とは】

急性心筋梗塞(Acute myocardial infarction: AMI)とは心臓の血管が詰まって死に至る病気です。心臓の血管は、心臓に冠(かんむり)のような形で沿って走っているので、冠動脈(Coronary artery)と言います。冠動脈が詰まってしまったのが急性心筋梗塞、詰まってはいないけど今にも詰まりそうな状態のことを狭心症と言います。急性心筋梗塞は動脈硬化が原因です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。

【典型的な急性心筋梗塞らしさ】

血圧が高い、コレステロールが高い、煙草を吸っている、糖尿病と言われている、家族に心筋梗塞が多い、運動不足、動脈硬化のリスクがいくつもある方で、階段や坂を駆け上がったりと心臓に負担が掛かる時に、急な胸の圧迫感、締め付けられる感じが出現、冷や汗や息切れを伴う場合、急性心筋梗塞や不安定狭心症といった急性冠症候群を念頭において、診療を進めて行きます。詳しくは胸痛の診療の進め方をご覧ください。

胸痛の診療の進め方→https://循環器内科.com/chestpain

【急性心筋梗塞のリスク因子】

急性心筋梗塞は冠動脈の動脈硬化が原因です。動脈硬化のリスク因子が多ければ多いほど急性心筋梗塞になりやすいですし、動脈硬化のリスク因子が少なければ少ないほど急性心筋梗塞にはなりにくいです。急性心筋梗塞のリスク因子で修正可能なものとしては以下のようなものが知られています。

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

上記の生活習慣病に加えて、年齢、性別、家族歴もリスク因子に加えることもありますが、自分の意志で変えようがないので、修正可能なリスク因子として上記が重要です。心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。

【急性心筋梗塞の検査】

急性心筋梗塞の診断は、病歴、心電図、心筋逸脱酵素の3つによって診断します。

(1)「急性心筋梗塞らしさ」:高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど急性心筋梗塞を起こしやすいです。ハイリスクなリスク因子を持つ方が、労作時に胸部圧迫感、胸部絞扼感で、顔面蒼白で、冷や汗や息切れを伴う場合は、急性心筋梗塞の可能性を念頭に置いて診療して行きます。

(2)心電図検査:冠動脈の支配領域に一致してST-T変化を代表とした虚血性変化(Ischemic changes)という心電図変化が見られます。「急性心筋梗塞らしさ」が十分に高い場合、一回の心電図検査で所見がなくても急性心筋梗塞は否定は出来ないと考え、心電図検査を繰り返し行ったり、さらに詳しい検査を進めます。

心電図→https://循環器内科.com/ecg

(3)心筋逸脱酵素、採血にてトロップT(トロポニンT)やラピチェック(H-FABP)と行った心筋逸脱酵素という急性心筋梗塞が起きた時に陽性になる迅速検査を行います。発症からの時間が早い場合、迅速検査が陰性であっても急性心筋梗塞は否定は出来ないと考え、繰り返し検査を行ったり、さらに詳しい検査を進めることがあります。

心筋トロポニン→https://循環器内科.com/bloodtest

【追加の検査】

・冠動脈カテーテル検査、急性心筋梗塞と診断に至るか、「急性心筋梗塞らしさ」が十分に高いと判断した場合、急性心筋梗塞の確定診断と同時に詰まった血管を直接治療するために冠動脈カテーテル検査を行います。カテーテル設備のある循環器の専門病院か大きな病院の循環器内科へ搬送します。

・冠動脈CT、心臓の血管、冠動脈を直接見る検査です。冠動脈に狭窄があるかどうか、狭窄がある場合は狭窄の程度がわかります。急性心筋梗塞は否定的ですが、冠動脈の狭窄は否定出来ない場合に、冠動脈の評価のために追加で行います。

冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta

・心臓MRI検査、心臓の血管、冠動脈だけでなく、心筋そのもの、心臓の弁、心臓の動き、幅広く調べることが出来ます。放射線被曝がないこと、冠動脈以外の心臓の情報も得られることから心臓MRIを追加することもあります。

心臓MRI→https://循環器内科.com/cmri

・胸部レントゲン、急性心筋梗塞以外にも心胸比の評価、肺や気管支、大血管の異常、胸骨、肋骨、鎖骨、肩関節、胸椎、頚椎などが全体的に異常がないかをチェックします。

・心エコー、心臓の動きを詳しく診ます。急性心筋梗塞の場合は心筋梗塞を起こした冠動脈に一致する場所を中心に心臓の動きが悪くなっている所見、壁運動異常がないかチェックします。また、弁の異常や心機能などを評価出来ます。

心エコー→https://循環器内科.com/ucg

・ホルター心電図、急性心筋梗塞よりもむしろ不整脈を疑う場合に行います。症状が発作的で、朝の通勤電車内や、夜間、明け方など、医療機関の診療時間外で起こる場合は、症状出現時の心電図記録が診断のためのキーになります。

ホルター心電図→https://循環器内科.com/holter


【急性心筋梗塞の治療】

循環器内科の大きな病院で、カテーテル検査によって詰まった血管に対し、そのままバルーン拡張、ステント留置などカテーテル治療を行います。外科的に冠動脈バイパス術が行われることがあります。急性期治療までのつなぎとして以下の初期治療を行います。

・バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)、抗血小板薬という薬です。血栓が出来て、心筋梗塞が広がることを少しでも防ぎます。急性心筋梗塞と診断し次第、バイアスピリン腸溶錠100mgを3Tから4Tを噛み砕いて舌下投与します。

・硝酸薬、ニトロペン(ニトログリセリン)、ニトロール(硝酸イソソルビド)、ミオコールスプレー(ニトログリセリン)、、硝酸薬と呼ばれる狭心症治療薬です。冠動脈拡張作用で、発作を解除します。静脈拡張作用により心臓への負荷を軽減する効果もあります。ニトロペンは舌下錠、ニトロールやミオコールはスプレーがあります。

・スタチン、クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、全身の血管から悪玉コレステロールを回収し、動脈硬化予防、心筋梗塞を強力に抑制します。背景に脂質異常症があり、カテーテルの受診までに日数がある場合使います。

スタチン→https://循環器内科.com/statin

・βブロッカー、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、インデラル(プロプラノロール)、交感神経をブロックし、心筋への過度な負担を和らげます。致死的不整脈の出現を抑制することもわかっています。

・オリベス(リドカイン)、Ib群の抗不整脈薬です。心室性不整脈が頻発している例に対し、急性心筋梗塞時の心室性不整脈の抑制に使います。静注薬です。

・酸素投与、低酸素血症がある例に対して酸素投与、疼痛軽減のための鎮痛薬、抗血栓作用のためのヘパリン、冠攣縮性狭心症の関与を疑う場合のカルシウム拮抗薬の投与など、

・心肺蘇生、心停止例や心停止からの蘇生例に対しては心停止時には速やかに心肺蘇生が開始出来るようにモニタリングを行います。

心肺蘇生→https://循環器内科.com/cpr

・禁煙、動脈硬化の最大の悪化因子です。喫煙者には禁煙が必要です。

喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・運動制限、急性心筋梗塞または不安定狭心症を疑った場合に、心筋酸素需要の増大因子、心臓への負担を掛ける動作は好ましくありません。カテーテル病院へ救急車で搬送するのはこのためです。急性心筋梗塞の治療が終わった後に好きなだけ運動しましょう。さらに詳しくは国立循環器病研究センターまたは日本心血管インターベンション治療学会のページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph92.html

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph34.html

https://急性心筋梗塞.com

【急性心筋梗塞の予防】

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld

急性心筋梗塞は動脈硬化が原因です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、加齢、冠動脈疾患の家族歴など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。逆に、動脈硬化のリスク因子が少なければ少ないほど急性心筋梗塞にはなりにくいです。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病が自覚症状がなくても治療が必要な理由です。修正可能なリスク因子をコントロールして、急性心筋梗塞にならないようにしましょう。