褐色細胞腫

【褐色細胞腫とは】
褐色細胞腫(Pheochromocytoma: PCC)とは、神経内分泌腫瘍の一つで、カテコラミン過剰生成による二次性高血圧症の原因疾患の一つです。二次性高血圧症とは何らかの原因があり、その症状の一つして血圧が上がっている状態であり、内分泌疾患としては原発性アルドステロン症、クッシング症候群などがあります。副腎髄質原発のものを褐色細胞腫、副腎外の傍神経節由来のものをパラガングリオーマ(Paraganglioma: PGL)と呼び、両者を包括して褐色細胞腫・パラガングリオーマ(Pheochromocytoma/Paraganglioma: PPGL)と呼びます。褐色細胞腫・パラガングリオーマのうち10-15%は転移性、浸潤性があり、WHOは2017年に全ての褐色細胞腫・パラガングリオーマは転移の可能性があるとして、悪性腫瘍と定義しました。 詳しくは日本内分泌学会「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018」をご覧ください。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000143.html

【褐色細胞腫の診断】
臨床症状としては、発作性の血圧上昇、動悸、頻脈、発汗、頭痛、胸痛、不安感など、カテコラミン過剰分泌による多彩な症状を来します。血圧の急激な上昇、高血圧クリーゼの原因になります。血圧正常例、低血圧やショックを起こすこともあるとの報告もあり、注意が必要です。スクリーニング検査としては、血中カテコラミン分画、尿中メタネフリン分画を測定します。アドレナリン、ノルアドレナリン正常上限値の3倍以上の上昇または合計2000pg/dl以上の高値で陽性です。局在診断としては、CT、MRI、MIBGシンチグラフィ、FDG-PET、他、いくつかの画像診断法があります。お茶の水循環器内科の方針としては、採血または尿検査にて褐色細胞腫を疑った場合には、内分泌内科へ紹介する方針としています。詳しくは日本内分泌学会「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018」をご覧ください。
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0365/G0001079

【褐色細胞腫の治療】
お茶の水循環器内科の方針としては、二次性高血圧症のスクリーニング検査として採血または尿検査にて褐色細胞腫を疑った場合には内分泌内科に紹介し、精査及び治療を行うようにしています。
・血圧コントロールとしては、α1遮断薬を第一選択とし、カルデナリン(ドキサゾシン)で1mgから16mgを2、3週間掛けて調整します。α1遮断薬のみで降圧不十分な場合にはCa拮抗薬を併用します。頻脈、心不全に対してはβ遮断薬を併用しますが、先にα1遮断薬を投与します。
・高血圧クリーゼに対しては、レギチーン(フェントラミン)持続静注にて管理します。
・腫瘍が特定された場合には、手術療法による腫瘍切除術が第一選択です。
妊婦における診断・治療、病理組織診断、遺伝子解析、予後および経過観察、悪性褐色細胞腫・パラガングリオーマに対しては、悪性度の評価法、化学療法、I-MIBG治療、骨転移の治療、疼痛の治療、便秘の治療、カテコラミン合成阻害薬、その他の治療、今後のPerspectivesなどの記載があります。詳しくは日本内分泌学会「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018」をご覧ください。
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0365/G0001079


原発性アルドステロン症

【原発性アルドステロン症とは】
原発性アルドステロン症(Primary aldosteronism: PA)とは、アルドステロン過剰分泌による二次性高血圧症の原因疾患の一つです。二次性高血圧症とは何らかの原因があり、その症状の一つして血圧が上がっている状態であり、内分泌疾患としては原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫などがあります。原発性アルドステロン症は二次性高血圧症の原因のうちで最も多く、高血圧症全体の3-10%と高頻度であること、適切な診断と治療によって治癒可能であることからスクリーニング、発見が重要です。
詳しくは日本内分泌学会「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」をご覧ください。
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0255/G0000916
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000143.html

【原発性アルドステロン症の診断】
原発性アルドステロン症に特徴的な自覚症状はなく、二次性高血圧症として高血圧症を来します。本態性高血圧症と比べて、脳卒中、心肥大、心房細動、冠動脈疾患、心不全などの合併症が多いとの報告があり、適切な診断と治療によって治癒可能であること、原発性アルドステロン症は二次性高血圧症の原因疾患として一番多いことから、高血圧症の中で原発性アルドステロン症を適切に診断することが重要です。スクリーニング検査として採血にてレニン活性、アルドステロンを測定します。アルドステロンレニン比(Aldosterone to Renin Ratio: ARR) 200以上または血漿アルドステロン濃度(Plasma aldosterone concentration: PAC) 120以上の場合、原発性アルドステロン症を疑います。PAC 120未満でも原発性アルドステロン症は完全には否定出来ないとされています。高血圧症患者全例でスクリーニングが望ましいが、費用対効果は未確立であることから、原発性アルドステロン症高頻度の高血圧群における積極的なスクリーニング検査が推奨されています。高頻度の高血圧群としては、低カリウム血症合併例(利尿薬誘発例も含む)、若年性の高血圧、II度以上の高血圧、治療抵抗性高血圧、副腎偶発腫合併例、40歳以下での脳血管障害発症例が挙げられています。お茶の水循環器内科の方針としては、スクリーニング検査にて原発性アルドステロン症を疑った場合には、内分泌内科へ紹介する方針としています。低カリウム血症は原発性アルドステロン症を疑う所見の一つですが、カリウム値正常の原発性アルドステロン症が60-90%もあると報告されていることからカリウムの値のみでは判断出来ないとされています。 採血は、体位や採血時間の影響を受けてしまうが、スクリーニング検査としては随時採血で良いとされています。厳格には標準化条件における採血が望ましいとされており、具体的には早朝、空腹時、安静臥床後の採血が推奨されています。降圧薬のうち、β遮断薬、利尿薬、MR拮抗薬は影響を及ぼしてしまうことから、Ca拮抗薬、α遮断薬へ切り替え、2週間の休薬が推奨されていますが、血圧管理を最優先すべきであるとも記載されています。機能確認検査として、カプトプリル試験、フロセミド立位試験、生理食塩水負荷試験、経口食塩負荷試験等があり、日本内分泌学会のガイドラインでは2種類以上の検査で陽性の場合を原発性アルドステロン症の確定診断としています。局在診断として、エコー、CT、MRI、副腎シンチグラフィ、他、いくつかの画像診断法がありますが、thin sliceの造影CTが推奨されています。さらに副腎静脈サンプリング(Adrenal Venous Sampling: AVS)という検査があり、手術を考慮する場合には推奨となっており、専門的施設で行います。 アルドステロン生成副腎癌(Aldosterone Producing Adrenocortical Carcinoma: APAC)の頻度は極めて少ないが、治療法が大きく異なるため除外診断が重要とされています。お茶の水循環器内科の方針としては、スクリーニング検査にて原発性アルドステロン症を疑った場合には、内分泌内科へ紹介する方針としています。詳しくは日本内分泌学会「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」をご覧ください。
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0255/G0000916

【原発性アルドステロン症の治療】
原発性アルドステロン症の治療としては、副腎摘出術と薬物療法の2つがあります。
・原発性アルドステロン症と確定診断がされ、片側性病変の場合には、原則、病側の副腎摘出術が推奨されています。
・両側性病変の場合、患者が手術を希望しない場合、手術不能のなどの場合には、MR拮抗薬を第一選択とする薬物療法を行います。薬物療法は原則として生涯に渡る継続が必要とされています。
いずれかの治療法の優越性を示す明確なエビデンスはなく、個々の症例ごとに判断しますが、片側性の原発性アルドステロン症であれば副腎摘出によりアルドステロン正常化、血圧正常化が期待出来ることから、原則として手術が推奨されています。腫瘍のサイズと合併症の頻度等は明確な相関がないとのことから腫瘍サイズのみで治療法選択の主たる判断基準とすべきではないことが記載されています。MR拮抗薬としては、アルダクトン(スピロノラクトン)とセララ(エプレレノン)があり、いずれかが予後に差があるというエビデンスはありません。
今後のPerspectivesとしては、病因遺伝子の解明、アルドステロン測定法、非侵襲的画像検査、分画別副腎静脈採血、片側副腎部分切除、病理学的診断などの記載があります。詳しくは日本内分泌学会「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」をご覧ください。
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0255/G0000916


冠危険因子

【冠危険因子とは】
冠危険因子(Coronary Risk Factor)とは、 狭心症や急性心筋梗塞という冠動脈疾患(Coronary artery disease)を引き起こすリスク因子のことです。冠危険因子が多ければ多いほど冠動脈疾患を起こしやすく、冠危険因子が少なければ少ないほど冠動脈疾患を起こしにくいことが知られています。具体的には、加齢、性別、家族歴のように自分の意志では修正不可能なものと、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、運動不足のように修正可能なものとがあります。冠危険因子に応じて、冠動脈CT、心臓MRI等で冠動脈を評価を進めて行きます。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph21.html

【冠動脈疾患とは】
冠動脈疾患とは心臓の血管、冠動脈(Coronary artery)に異常を来した疾患です。狭心症や急性心筋梗塞とに分けられます。どちらも命に関わりますので早期発見、予防が重要です。詳しくは下記ページをご覧ください。
・急性冠症候群→https://循環器内科.com/acs
・急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami
・不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap
・労作性狭心症→https://循環器内科.com/eap
・冠攣縮性狭心症→https://循環器内科.com/vsa
・陳旧性心筋梗塞→https://循環器内科.com/omi

【冠動脈疾患の検査】
心疾患の検査には様々なものがありますが、冠動脈疾患の精査としては冠動脈を直接見る検査が最も正確です。冠動脈CT、心臓MRI、冠動脈造影といくつか方法があります。詳しくは下記をご覧ください。それぞれ特徴がありますので主治医にご相談ください。
・心電図→https://循環器内科.com/ecg
・心筋トロポニン→https://循環器内科.com/bloodtest
・BNP→https://循環器内科.com/bloodtest
・心エコー→https://循環器内科.com/ucg
・冠動脈CT→https://循環器内科.com/cta
・心臓MRI→https://循環器内科.com/cmri
・冠動脈造影→https://循環器内科.com/cag
・冠動脈カテーテル治療→https://循環器内科.com/pci

【冠危険因子の評価】
冠危険因子が多ければ多いほど冠動脈疾患を起こしやすく、冠危険因子が少なければ少ないほど冠動脈疾患を起こしにくいことが知られています。具体的には、日本動脈硬化学会「吹田スコアによる冠動脈疾患発症確率と脂質管理目標値」 によってリスク評価が可能です。
・日本動脈硬化学会「吹田スコアによる冠動脈疾患発症確率と脂質管理目標値」 →https://www.j-athero.org/publications/gl2017_app.html
日本内科学会「脳心血管病予防のための包括的リスク管理チャート」も有用です。
・日本内科学会「脳心血管病予防のための包括的リスク管理チャート」→https://www.naika.or.jp/info/crmcfpoccd

【冠危険因子の管理】
冠危険因子とは、冠動脈疾患(狭心症や急性心筋梗塞)を引き起こすリスク因子のことです。具体的には、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、運動不足、 加齢、性別、家族歴、その他の冠危険因子にまとめられます。加齢、性別、家族歴のように自分の意志では修正不可能なものと、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、運動不足のように修正可能なものとがあります。特にこの中でも高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙は大きな危険因子であることがわかっています。
・高血圧症→https://循環器内科.com/ht
・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl
・家族性高コレステロール血症→https://循環器内科.com/fh
・糖尿病→https://循環器内科.com/dm
・禁煙外来→https://循環器内科.com/smoking
・肝機能障害→ https://循環器内科.com/ld
・腎機能障害→https://循環器内科.com/rd
・睡眠時無呼吸症候群→https://循環器内科.com/sas
冠動脈疾患は冠危険因子が多ければ多いほど起こしやすく、冠危険因子が少なければ少ないほど冠起こしにくいことが知られています。修正可能な冠危険因子を減らして、冠動脈疾患を予防しましょう。


川崎病

【川崎病とは】
川崎病(Kawasaki disease)とは、小児の全身性の血管炎症候群で、小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群とも呼びます。1967年に小児科医の川崎富作先生が発見しました。原因は不明ですが、ウイルスや細菌の感染とそれに対する自己免疫が関与しているのではないかと考えられています。川崎病の問題点はその後に後遺症として冠動脈瘤を形成することがあることです。循環器内科.comでは主に川崎病の後遺症としての冠動脈瘤について説明します。川崎病の急性期の診断や治療については小児科を受診ください。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000624.html

【川崎病の後遺症としての冠動脈瘤】
川崎病に罹患すると、川崎病自体の症状は通常1-2週間で治りますが、後遺症として心臓の血管、冠動脈に冠動脈瘤を形成することがあります。川崎病に罹患した小児の10-20%程度と言われています。川崎病の発症後30日前後で冠動脈瘤の有無を評価、その後、冠動脈瘤は1年程度で退縮することもありますが、その後も冠動脈瘤として残る場合あり、おおよそ半数程度と言われています。乳幼児の冠動脈の大きさは2mm程度ですが、7mm以上、10mm以上になると、血流が鬱滞し、血栓が出来やすくなります。血栓が遊離し、その先の冠動脈に血栓が詰まると、心筋梗塞を引き起こします。川崎病について詳しくは日本川崎病学会のページをご覧ください。
https://www.jskd.jp

【冠動脈瘤の検査】
冠動脈瘤の有無や程度の評価は、エコー、冠動脈カテーテル検査によって行います。通常、川崎病の後遺症としての冠動脈瘤は、川崎病発症後1-2年で起こり、その後退縮していく場合もありますが、10年、15年と長期間掛けて冠動脈瘤から冠動脈狭窄を来す場合があります。1980年前後から川崎病の急性期に、バイアスピリンや免疫グロブリン療法等の普及によって冠動脈瘤は減って来ているとのことですが、免疫グロブリン療法を行っても冠動脈瘤を発生する例があること、免疫グロブリン療法が普及する以前に川崎病に罹患した場合、川崎病の初期は発熱やリンパ節腫脹等で単なる風邪と見分けることは難しいため、川崎病に掛かったかどうかわからない場合等、注意が必要です。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/child/pamph31.html

【お茶の水循環器内科の方針】
川崎病の既往がある方で成人後に冠動脈瘤が見つかる例は珍しくありません。川崎病の後遺症としての冠動脈瘤や冠動脈狭窄は10年、15年という長期間後に発生することもある後遺症であるので、急性期の時期には特に異常がないと言われていてもその後に冠動脈瘤を来すことがあるということ、または、もともと川崎病の後遺症による冠動脈病変があったところに、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の冠動脈疾患の危険因子が後天的に重なり、冠動脈疾患を発症してしまう可能性など注意が必要です。また川崎病の診断基準は臨床診断であり、診断基準を完璧に満たさない非典型例も多く、ほとんどの場合ただの風邪と見分けが着かないことも大いにある点も注意です。お茶の水循環器内科の方針としては、いずれにせよ、わからない場合は冠動脈を評価しておいたほうが安全と考えています。冠動脈CTや心臓MRI等でスクリーニング検査があります。冠動脈精査の必要性についてはまずは主治医に相談ください。


抗リン脂質抗体症候群

【抗リン脂質抗体症候群とは】
抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome: APS)とは、抗リン脂質抗体という自己抗体が陽性で、全身の血栓症を来す疾患です。また、女性では習慣性流産、不育症と関わっていることが知られています。抗リン脂質抗体として、ループスアンチコグラント(LAC)、抗カルジオリピン抗体(aCL)、抗グリコプロテイン抗体等が陽性となることが特徴です。全身性エリテマトーデス(SLE)等の自己免疫疾患に続発する続発性抗リン脂質抗体症候群と、原発性抗リン脂質抗体症候群とがあります。詳しくは下記ページをご覧ください。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000730.html

【抗リン脂質抗体症候群の診断基準】
国際分類基準案(2006年札幌クライテリアシドニー改変)という診断基準があります。具体的には、臨床基準1項目以上、かつ検査基準1項目以上が存在するとき、抗リン脂質抗体症候群とします。
臨床基準
1、血栓症:画像検査や組織学的検査で確認された動脈、静脈、小血管での血栓症
2、妊娠に伴う所見:
a、妊娠第10週以降の形態学的な正常な胎児の原因不明の死亡
b、重症の子癇前症・子癇または高度の胎盤機能不全による妊娠第34週以前の形態学的な正常な児の早産
c、母体の解剖学的・内分泌学的異常、染色体異常を除外した、妊娠第10週以前の3回以上連続した自然流産
検査基準(12週間以上5年未満の間隔で2回以上陽性となる)
1、ループス抗凝固因子陽性
2、ELISAで測定したIgG/IgM抗カルジオリピン抗体中等度以上陽性(40U/ml以上)
3、ELISAで測定したIgG/IgM抗β2-グリコプロテインI抗体陽性(>99パーセンタイル)
詳しくは難病情報センターのページをご覧ください。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4102

【抗リン脂質抗体症候群の治療】
抗リン脂質抗体症候群と診断が確定した場合、または疑われる場合には専門の診療科を紹介します。抗リン脂質抗体症候群のみ陽性で、特別の臨床症状を認めない場合は経過観察することが多いです。血栓症を繰り返している場合はアスピリンまたはワルファリン等による予防療法を行います。具体的には、
A、これまで血栓症がなく、抗リン脂質抗体陽性だけの場合(一次予防):妊娠合併症の既往がない限り、抗体陽性のみでは薬物による一次予防は不要
B、血栓症の既往を有するがAPSの診断には至らない抗リン脂質抗体陽性者:低用量アスピリンなどの抗血小板薬
C、血栓症の既往を有するAPS診断例(二次予防)
1、静脈血栓症の既往を有する例:INR 2~3のワルファリンによる抗凝固療法
2、動脈血栓症の既往を有する例
脳梗塞、虚血性心疾患(塞栓症を除く)の場合:低用量アスピリンまたはプラビックス(クロピドグレル)またはワルファリン(INR 3~4)
塞栓症、脳梗塞虚血性心疾患以外の血栓症の場合:INR 2~3のワルファリン
3、治療下での血栓症の再発:INR 3~4のワルファリン、または低用量アスピリンとワルファリン(INR 2~3)の併用、または未分画もしくは低分子ヘパリン皮下注
薬物療法以外としては、喫煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満などの血栓症のリスクがあればそれぞれ介入
詳しくは下記ページをご覧ください。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000730.html


卵円孔開存

【卵円孔開存とは】
卵円孔とは出生前、胎児期に右心房と左心房をつなぐ孔で、胎児期には肺呼吸をしていないため、血液は卵円孔を通り、右心房→左心房へと流れています。出生後は肺呼吸が始まるに伴い、卵円孔は通常2、3日程度で自然閉鎖し、卵円窩となり、以後は右心房と左心房の間が血液が混ざらないようになっています。この卵円孔が自然閉鎖せずに残っている状態を卵円孔開存(patent foramen ovale: PFO)と言い、成人の20-25%に認めると言われています。

【卵円孔開存と脳塞栓症】
卵円孔開存は人口の20-25%と多いもので必ずしも全例治療が必要となる訳ではありません。しかしながら、静脈系に出来た血栓が卵円孔を通り、右心房、左心房、左心室から脳梗塞や一過性脳虚血発作の原因になることがあると言われています。これを心房細動による心原性脳塞栓症等の動脈系の脳塞栓症とは区別して、奇異性脳塞栓症(Paradoxical cerebral embolism)と呼びます。右左シャントを認める疾患では奇異性脳塞栓症を引き起こすリスクがありますが、卵円孔開存もその一つであると言われています。

【卵円孔開存の治療方針】
まず第一に、卵円孔開存は人口の20-25%と多いもので必ずしも全例治療が必要となる訳ではありません。卵円孔閉鎖術後も脳梗塞または一過性脳虚血発作の発生率に差がなかったという報告もあり、本当に卵円孔開存による奇異性脳塞栓症が原因の脳梗塞かどうかを総合的に判断する必要があります。一方で、明らかに卵円孔開存を原因とした奇異性脳塞栓症を繰り返していると考えられる場合には卵円孔閉鎖術の適応を考慮します。卵円孔閉鎖術には、外科的閉鎖術と経皮的カテーテル卵円孔閉鎖術があります。
卵円孔開存を伴う脳梗塞で深部静脈血栓症がある場合はワーファリン(ワルファリン)による抗凝固療法の適応となります。PT-INR 2.0-3.0を目安にコントロールします。
脳梗塞の既往のない卵円孔開存に対しては治療方針は定まっていません。一次予防として脳梗塞予防を行う場合は、上記の二次予防に準じた抗凝固療法を行いつつ、卵円孔閉鎖術の適当を考慮します。詳しくは日本循環器学会「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017 年改訂版)」をご覧ください。
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ichida_h.pdf


心室中隔欠損

【心室中隔欠損症とは】
心室中隔欠損症(Ventricular septal defect: VSD)とは、先天性心疾患の一つです。左心室と右心室の間には心室中隔という壁があり、血液が混ざらないようにしています。生まれつき心室中隔に孔が空いていることがあり、心室中隔欠損症と言います。先天性心疾患は人口の1%程度、心室中隔欠損症は先天性心疾患の中で最も多く、20-30%を占めます。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/cardiovascular/tr04_vsd.html

【心室中隔欠損症の診断】
診断は心エコーにて心室中隔の欠損を確認することによって行います。 幼少期に検診等で引っかかり診断が付いている場合もあれば、無症状または症状がほとんどない場合もあり、成人後に見つかる場合もあります。生後間もない場合、自然閉鎖することが多い一方で、生後2、3年以降になると自然閉鎖率は年間10%程度と言われており、手術が必要です。成人後は、息切れ、動悸、易疲労感等の心不全症状、心房細動等の不整脈をきっかけに見つかることもあります。通常は、左心房のほうが右心房よりも圧が高いので、左→右へ血液が流れています。全身へ送り出すはずの血液がもう一回肺へ循環するので、その分肺や心臓に負担が掛かります。肺の血管が固くなり、肺高血圧症を来すと、右心房と左心房の圧が同じになるか逆に右心房のほうが左心房よりも圧が高くなり、右→左へと血液が流れるようになります。アイゼンメンゲル症候群(Eisenmenger’s syndrome)といい、静脈の血液がそのまま全身へ流れるようになってしまい、チアノーゼを来します。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000077.html

【心室中隔欠損の治療】
心室中隔閉鎖術によって、心室中隔を閉鎖します。手術適応としては、
・PH を認めず,Qp/Qs > 1.5 かつ左室拡大がみられる場 合は,一般に外科的修復術を考慮する.
・Eisenmenger 症候群に至っていない PH(Qp/Qs > 1.5) を認めた場合,肺動脈に可逆性を認める場合は手術を考慮する.
・PH 合併の成人先天性 心疾患症例の経験豊富な専門施設へのコンサルトが基本で ある.
・その他,円錐部(一部膜様部)欠損による大動脈弁逸脱・逆流が顕著で,進行性の場合や,圧較差 50 mmHg 以上の右室流出路狭窄を認める場合は手術を考慮する
詳しくは日本循環器学会「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017 年改訂版)」をご覧ください。
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ichida_h.pdf

【お茶の水循環器内科の方針】
先天性心疾患の多くは子どもの頃に発見されますが、大人になってから発見されることも珍しくありません。心電図、胸部レントゲン、ホルター心電図、心エコー等で評価を行い、心不全の評価、手術が必要な場合は適切な医療機関へと紹介します。術後で安定している方は、定期的に心不全や不整脈の出現がないかをフォローしています。いずれにせよ、検診で心雑音や心電図異常を指摘された方は放置をせずに一度受診ください。


心房中隔欠損

【心房中隔欠損とは】
心房中隔欠損(Atrial septal defect: ASD)とは、先天性心疾患の一つです。右心房と左心房を隔てる心房中隔は、右心房の血液と左心房の血液が混ざらないようにしています。生まれつき心房中隔に孔が空いていることがあり、心房中隔欠損と言います。先天性心疾患は人口の1%程度、心房中隔欠損は先天性心疾患の5-10%を占めます。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/cardiovascular/tr05_asd.html

【心房中隔欠損の診断】
診断は心エコーにて心房中隔の欠損を確認することによって行います。幼少期に検診等で引っかかり診断が付いている場合もあれば、無症状または症状がほとんどない場合もあり、成人後に見つかる場合もあります。10mm未満の欠損孔は自然閉鎖することもある一方で、10mm以上のサイズの心房中隔欠損はほとんど自然閉鎖しないと言われています。成人後は、息切れ、動悸、易疲労感等の心不全症状、心房細動等の不整脈をきっかけに見つかることもあります。通常は、左心房のほうが右心房よりも圧が高いので、左→右へ血液が流れています。全身へ送り出すはずの血液がもう一回肺へ循環するので、その分肺や心臓に負担が掛かります。肺の血管が固くなり、肺高血圧症を来すと、右心房と左心房の圧が同じになるか逆に右心房のほうが左心房よりも圧が高くなり、右→左へと血液が流れるようになります。アイゼンメンゲル症候群(Eisenmenger’s syndrome)といい、静脈の血液がそのまま全身へ流れるようになってしまい、チアノーゼを来します。 →https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000078.html

【心房中隔欠損の治療】
心房中隔欠損閉鎖術で、心房中隔の欠損を閉じます。手術で直接治す外科的閉鎖術と、カテーテルによる経皮的デバイス閉鎖術とがあります。アイゼンメンゲル化を来してしまうと閉鎖してしまうことで肺高血圧症を悪化させてしまうため、手術が出来なくなってしまうため、心移植が唯一の治療法になります。そのためアイゼンメンゲル化を起こす前の発見、治療が望まれます。日本循環器学会「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017 年改訂版)」に手術適応基準が以下のようなあります。
ASDに対する閉鎖術の適応
クラス I
1. 症状の有無にかかわらず,右房・右室拡大を認めるような有意な左―右短絡(目安として Qp/Qs > 1.5)があり,PVR < 5 Wood 単位(400 dynes・秒・cm-5 )の症例
2. 一次孔欠損型,静脈洞型,冠静脈洞型に対する外科的閉鎖術
3. 経皮的デバイス閉鎖術を行う場合,施設基準を満たした施設で,術者基準を満たした医師が施行する
クラスIIa
1. 欠損孔の大きさにかかわらず,ASD による奇異性塞栓症発症例または体位変換性低酸素血症(orthodeoxia-platypnea)が 証明された症例
2. デバイス閉鎖術に適した形態(38 mm 未満で前縁以外の周囲縁が 5 mm 以上)の二次孔欠損型に対するデバイス閉鎖術
3. 同時手術を要するような合併症(中等度以上の三尖弁逆流や僧帽弁逆流,部分肺静脈還流異常など)を有する症例またはデバイス閉鎖術が適さない形態を有する症例に対する外科的閉鎖術
クラス IIb
1. PVR > 5 Wood 単位 (400 dynes・秒・cm-5 )であっても,肺動脈圧 / 体動脈圧< 2/3 または PVR / 体血管抵抗< 2/3 で左―右短絡が証明された症例
クラス III
1. 非可逆的 PH で左―右短絡のない症例
詳しくは日本循環器学会「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017 年改訂版)」をご覧ください。
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ichida_h.pdf

【お茶の水循環器内科の方針】
先天性心疾患の多くは子どもの頃に発見されますが、大人になってから発見されることも珍しくありません。心電図、胸部レントゲン、ホルター心電図、心エコー等で評価を行い、心不全の評価、手術が必要な場合は適切な医療機関へと紹介します。術後で安定している方は、定期的に心不全や不整脈の出現がないかをフォローしています。いずれにせよ、検診で心雑音や心電図異常を指摘された方は放置をせずに一度受診ください。


咳嗽・喀痰の診療ガイドライン

【咳嗽・喀痰の診療ガイドラインとは】
2019年4月、日本呼吸器学会から「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」が発行されました。日本呼吸器学会では、2015年に「咳嗽に関するガイドライン初版」、2012年に「咳嗽に関するガイドライン第2版」を発行、今回が3回目の改訂とともに咳嗽と密接に関連している喀痰についても含んだガイドライン改訂となりました。詳しくは日本呼吸器学会のページをご覧ください。
日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」→https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=121
https://www.amazon.co.jp/dp/4779222389

【咳嗽の鑑別診断】
まず、咳嗽は持続期間、喀痰の有無によって分類します。具体的には、3週間未満の急性咳嗽、3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽に分類します。喀痰の有無によって乾性咳嗽と湿性咳嗽に分類します。咳嗽はほぼ全ての呼吸器疾患が原因となる可能性があります。肺炎、肺癌、肺塞栓症などの重篤化しうる疾患の鑑別が重要です。心不全も慢性咳嗽の原因となります。「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」 では咳嗽の鑑別疾患として下記のように整理しています。また新たな概念として難治性咳嗽などにも言及されています。
・感染性咳嗽、感染後咳嗽
・急性気管支炎、肺炎、マイコプラズマ、百日咳、クラミドフィラ
・結核、非結核性抗酸菌症
・慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喫煙、受動喫煙
・副鼻腔気管支症候群(SBS)
・びまん性汎細気管支炎(DPB)
・気管支拡張症(BE)
・急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎、後鼻漏症候群(PWDS)
・気管支喘息
・咳喘息(CVA)、アトピー咳嗽、咽頭アレルギー
・胃食道逆流症(GERD)
・間質性肺炎(IP)
・腫瘍、肺癌
・異物
・睡眠時無呼吸症候群
・薬剤性咳嗽
・職業性・環境因子
・難治性咳嗽(UCC、CHS)
・真菌関連慢性咳嗽(FACC)
・Somatic Cough Syndrome、Tic Cough
・臓器特異的自己免疫疾患、心室期外収縮、外耳異物
咳嗽の鑑別疾患は多岐に渡りますが、一般的に急性咳嗽では感冒を含む気道感染症が多いのに対し、慢性咳嗽では感染症の頻度が少なく、非感染症が増加する傾向にあります。お茶の水循環器内科では慢性咳嗽の原因として心不全の精査除外に力を入れています。詳しくは日本呼吸器学会のページをご覧ください。
日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」→https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=121

【咳嗽の検査】
・バイタルサイン、体温、呼吸数、動脈血酸素飽和度、血圧
・病歴、身体所見、職業性・環境因子、喫煙歴、服薬歴
・一般血液検査、アレルギー検査、感染症血清学的検査
・喀痰検査、一般細菌、抗酸菌塗抹・培養、細胞診
・気管支鏡検査、上気道ファイバースコピー
・胸部レントゲン、副鼻腔レントゲン
・胸部CT、副鼻腔CT
・スパイロメーター
・FeNO濃度
・消化管内視鏡検査
さらに、専門的な検査として、気道可逆性検査、気道過敏性検査、咳受容体感受性気管支平滑筋収縮誘発咳嗽反応検査、呼吸抵抗測定、気道炎症の評価、24時間pHモニタリング検査、などがあります。専門的な検査が必要な場合には適宜専門の医療機関を紹介します。詳しくは日本呼吸器学会のページをご覧ください。
日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」→https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=121

【お茶の水循環器内科の診療指針】
お茶の水循環器内科の診療指針としては、慢性咳嗽の原因として心不全が原因の場合は治療方針が大きく変わって来るため、心不全の精査に力を入れています。心電図、胸部レントゲン、BNPまたはNT-proBNP、心エコー等によって心不全の有無、心不全を認めた場合は重症度の評価と原因の精査と行います。呼吸器疾患、耳鼻咽喉科疾患、アレルギー性疾患、消化器疾患が疑われる場合は適宜専門の医療機関へと紹介します。詳しくは主治医までご相談ください。


消化器内視鏡検査時の抗血栓薬の取り扱い

【消化器内視鏡検査時の抗血栓薬の取り扱いとは】
消化器内視鏡検査時の抗血栓薬の取り扱いとは、上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査時に、抗血小板薬や抗凝固薬という抗血栓薬を中止するか続行するかの判断、中止する場合はいつからどのように中止をするかをまとめたものです。2012年に、日本消化器内視鏡学会、日本循環器学会、日本神経学会、日本脳卒中学会、日本血栓止血学会、日本糖尿病学会が合同で「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」を発表しました。詳しくはガイドラインをご覧ください。ざっくり言うと抗血栓薬を続行すると出血のリスクがあり、抗血栓薬を中止すると血栓症のリスクがあります。出血の危険度と、休薬による血栓塞栓症の危険度を両面から評価し、メリット、デメリットを総合的に判断する必要があります。 本ページでは主にガイドラインの内容をまとめました。
「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」→https://minds4.jcqhc.or.jp/minds/gee/20130528_Guideline.pdf

【抗血栓薬】
抗血栓薬は抗血小板薬と抗凝固薬の総称です。下記に一覧をまとめました。
抗血小板薬
・アスピリン:バイアスピリン(アスピリン)
・チエノピリジン誘導体:プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)、パナルジン(チクロピジン)
・その他の抗血小板薬:プレタール(シロスタゾール)、エパデール(イコサペンタエン酸)、アンプラーグ(サルポグレラート)、プロサイリン(ベラプロスト)、オパルモン(リマプロスト)、ロコルナール(トラピジル)、コメリアン (ジラセプ)、ペルサンチン(ジピリダモール)、他
抗凝固薬
・ワーファリン(ワルファリン)
・ヘパリン(ヘパリン)
・プラザキサ(ダビガトラン)、エリキュース(アピキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)、イグザレルト(リバーロキサバン)
・他

【出血危険度分類】
まずは内視鏡の検査や操作によって、出血危険度による分類を行います。具体的には以下の通りです。
1.通常消化器内視鏡
上部消化管内視鏡(経鼻内視鏡を含む)
下部消化管内視鏡
超音波内視鏡
カプセル内視鏡
内視鏡的逆行性膵胆管造影
2.内視鏡的粘膜生検(超音波内視鏡下穿刺吸引術を除く)
3.出血低危険度の消化器内視鏡
バルーン内視鏡
マーキング(クリップ,高周波,点墨,など)
消化管,膵管,胆管ステント留置法(事前の切開手技を伴わない)
内視鏡的乳頭バルーン拡張術
4.出血高危険度の消化器内視鏡
ポリペクトミー(ポリープ切除術)
内視鏡的粘膜切除術
内視鏡的粘膜下層剝離術
内視鏡的乳頭括約筋切開術
内視鏡的十二指腸乳頭切除術
超音波内視鏡下穿刺吸引術
経皮内視鏡的胃瘻造設術
内視鏡的食道・胃静脈瘤治療
内視鏡的消化管拡張術
内視鏡的粘膜焼灼術
その他
【休薬による血栓塞栓症の高発症群】
さらに、休薬による血栓塞栓症の高発症群として以下のように定められました。
抗血小板薬関連
冠動脈ステント留置後2カ月
冠動脈薬剤溶出性ステント留置後12カ月
脳血行再建術(頸動脈内膜剝離術,ステント留置)後2カ月
主幹動脈に50%以上の狭窄を伴う脳梗塞または一過性脳虚血発作
最近発症した虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作
閉塞性動脈硬化症でFontaine 3度(安静時疼痛)以上
頸動脈超音波検査,頭頸部磁気共鳴血管画像で休薬の危険が高いと判断される所見を有する場合
抗凝固薬関連
心原性脳塞栓症の既往
弁膜症を合併する心房細動
弁膜症を合併していないが脳卒中高リスクの心房細動
僧帽弁の機械弁置換術後
機械弁置換術後の血栓塞栓症の既往
人工弁設置
抗リン脂質抗体症候群
深部静脈血栓症・肺塞栓症
ワルファリン等抗凝固薬療法中の休薬に伴う血栓・塞栓症のリスクは様々であるが,一度発症すると重篤であることが多 いことから,抗凝固薬療法中の症例は全例,高危険群として対応することが望ましいとされています。

【各論まとめ】
ガイドラインでは様々なケースについて具体的にステートメントがまとめられています。詳しくはガイドラインをご覧ください。
「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」→https://minds4.jcqhc.or.jp/minds/gee/20130528_Guideline.pdf
下記、日常臨床として特に重要なものをまとめました。
ステートメント1
消化器内視鏡検査・治療において,アスピリン,アスピリン以外の抗血小板薬,抗凝固薬のいずれかを休薬する可能性がある場合には,事前に処方医と相談し休薬の可否を検討する.原則として患者本 人に検査・治療を行うことの必要性・利益と出血などの不利益を説明し,明確な同意の下に消化器内視鏡を行うことを徹底する.
ステートメント2
通常の消化器内視鏡は,アスピリン,アスピリン以外の抗血小板薬,抗凝固薬のいずれも休薬なく施行可能である.
ステートメント3
内視鏡的粘膜生検は,アスピリン,アスピリン以外の抗血小板薬,抗凝固薬のいずれか 1 剤を服用し ている場合には休薬なく施行してもよい.ワルファリンの場合は,PT-INR が通常の治療域であることを確認して生検する. 2 剤以上を服用している場合には症例に応じて慎重に対応する.生検では,抗血栓薬服薬の有無にかかわらず一定の頻度で出血を合併する.生検を行った場合には,止血を確認 して内視鏡を抜去する.止血が得られない場合には,止血処置を行う.
ステートメント4
出血低危険度の消化器内視鏡は,アスピリン,アスピリン以外の抗血小板薬,抗凝固薬のいずれも休薬なく施行してもよい.ワルファリンの場合は,PT-INR が通常の治療域であることを確認する.
ステートメント5
出血高危険度の消化器内視鏡において,血栓塞栓症の発症リスクが高いアスピリン単独服用者では休薬なく施行してもよい.血栓塞栓症の発症リスクが低い場合は3~5日間の休薬を考慮する.
ステートメント6
出血高危険度の消化器内視鏡において,アスピリン以外の抗血小板薬単独内服の場合には休薬を原則とする.休薬期間はチエノピリジン誘導体が5~7日間とし,チエノピリジン誘導体以外の抗血小板薬は1日間の休薬とする.血栓塞栓症の発症リスクが高い症例ではアスピリンまたはシロスタゾールへの置換を考慮する.
ステートメント7
出血高危険度の消化器内視鏡において,ワルファリン単独投与またはダビガトラン単独投与の場合はヘパリンと置換する.
ステートメント8
出血高危険度の消化器内視鏡において,アスピリンとアスピリン以外の抗血小板薬併用の場合には,抗血小板薬の休薬が可能となるまで内視鏡の延期が好ましい.内視鏡の延期が困難な場合には,アスピリンまたはシロスタゾールの単独投与とする.休薬期間はチエノピリジン誘導体が5~7日間,チエノピリジン誘導体以外の抗血小板薬が1日間を原則とし,個々の状態に応じて適時変更する.
ステートメント11
出血高危険度の消化器内視鏡において,アスピリン,アスピリン以外の抗血小板薬,ワルファリンまたはダビガトランの3剤併用の場合には,抗血栓薬の休薬が可能となるまで内視鏡の延期が好まし い.内視鏡の延期が困難な場合には,アスピリンまたはシロスタゾール投与にして,その他の抗血小板薬は休薬する.ワルファリンまたはダビガトランはヘパリンと置換する.
ステートメント12
抗血栓薬休薬後の服薬開始は内視鏡的に止血が確認できた時点からとする.再開は,それまでに投与 していた抗血栓薬とする.再開後に出血することもあるので,出血に対する対応は継続する.
「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」→https://minds4.jcqhc.or.jp/minds/gee/20130528_Guideline.pdf

QT延長症候群

【QT延長症候群とは】

QT延長症候群(Long QT Syndrome: LQTS)とは、心電図上、T波の形態異常を伴うQT 延長を認め、torsade de pointes(TdP)と呼ばれる特徴的な心室頻拍(ventricular tachycardia: VT)や心室細動(ventricular fibrillation: VF)等の致死的不整脈を生じて、突然死を来すリスクのある症候群です。先天性QT延長症候群と後天性QT延長症候群があります。心電図上のQT時間とは、心臓の活動電位持続時間に相当し、様々なイオンチャネルによって制御を受けています。いくつかの原因遺伝子が特定されており、先天性QT延長症候群のうち80%は、QT延長症候群1型(LQT1)、2型(LQT2)、3型(LQT3)のいずれかに分類されます。後天性QT延長症候群は原因遺伝子の検出率は25%程度で、もともとQT延長はないか軽度であるが、外的要因(薬剤、徐脈、低カリウム血症、心不全など)によって著明なQT延長とそれに伴うtorsade de pointes(TdP)を呈する症候群と定義されています。詳しくは日本不整脈心電学会、慶應義塾大学病院のページをご覧ください。
https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-b
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000625.html

【QT延長症候群の診断】

QT延長症候群の診断基準としては、2012年の「SchwartzらのQT延長症候群の診断基準」が有名で、心電図上のQTc値、TdP、Twave alternans、3誘導以上でのnotchedT波、失神や先天性聾の有無の臨床症状、家族歴の有無から、スコアリングを行い、3.5以上を診断確実とします。1.5から3では、ホルター心電図検査、運動負荷試験、カテコラミン負荷試験、アデノシン負荷試験などでリスク評価を行い、最終的には電気生理学的検査の適応を判断します。必要に応じて遺伝子診断の適応を考慮します。

後天性QT延長症候群のうち、何らかの原因に伴うものを二次性QT延長症候群と呼び、薬剤性、徐脈性、低カリウム血症、心不全などが関係します。薬剤性QT延長症候群としては、様々な薬剤がQT延長に関与します。薬剤の投与後に初めてQT延長症候群が明らかになることも珍しくはありません。詳しくは「QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン」「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン」をご覧ください。

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_aonuma_h.pdf
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_aonuma_h.pdf

【QT延長症候群の治療】

治療は、急性期治療と、予防療法に分けられます。いずれにせよ、QT延長症候群の診断または疑いが着いた場合には遺伝子検査も含む専門病院へ紹介します。

・急性期治療
致死的不整脈が起こっている最中では、マグネシウム静注、ペーシング、βブロッカー静注、カリウム補正などが挙げられます。可逆的な原因として、急性心筋梗塞に伴うもの、急性心筋炎に伴うもの、電解質異常に伴うものなど、基礎疾患の治療を優先します。

予防療法としては、ペースメーカー、埋込型除細動器の適応を考慮します。遺伝子型によっては、β遮断薬、ナトリウムチャネル阻害薬、カルシウム拮抗薬を使うこともあります。

詳しくは「QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン」をご覧ください。 →https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_aonuma_h.pdf


急性心筋炎

【急性心筋炎とは】

急性心筋炎(acute myocarditis)とは、心臓の筋肉が炎症を起こす病気で、心不全や不整脈などを起こしやすい状態です。原因は、ウイルス性、細菌性、真菌性などの感染症によるもの、自己免疫性、薬物性、放射線被爆によるもの、原因が特定出来ない特発性のものなど多岐に渡ります。

【急性心筋炎の症状】

最も多い経過としてウイルス性の急性心筋炎の場合、最初は、発熱、咽頭痛等の感冒様症状、または嘔吐や下痢の胃腸炎症状などの前駆症状に続いて、息苦しさや浮腫み、動悸や失神等の心不全症状を発症します。明らかな前駆症状を認めないもの、急速に心不全症状や突然死を来すものもあります。経過から、急性心筋炎、慢性心筋炎に分類され、特に急性期に急速にショック状態へ陥り、体外循環補助を必要とした重症度を有する場合を、劇症型心筋炎と呼びます。詳しくは「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」をご覧ください。
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_izumi_h.pdf

【急性心筋炎の診断】

確定診断は心臓カテーテル検査による心筋生検で、心筋に炎症の所見を認めることです。また急速に心不全を引き起こす疾患、冠動脈疾患や弁膜症などの他の心疾患を除外することも重要です。まずは心電図、胸部レントゲン、心筋トロポニン検査、心機能のマーカーとしてBNPまたはNT-proBNP、心エコー等にて心機能を評価して行きます。心臓カテーテル検査の必要があるかどうか、心臓MRIにて心筋性状を評価していくこともあります。心筋生検は入院が必要な検査ですが、組織型、心機能の詳細な評価に有用です。急性心筋炎と診断された場合には、ウイルス性、細菌性、自己免疫性など、原因が特定出来ないか精査します。早期に診断が難しい病気の一つですが、風邪や胃腸炎症状の後に心不全症状を認めた場合に、急性心筋炎を疑って精査を進めることが大切です。

【急性心筋炎の治療】

急性心筋炎の治療は急性期を乗り切るための支持療法です。急性心筋炎では、1、2週間の急性期を経て、自然治癒、心機能の回復が期待出来ます。

・循環管理
中程度以上の急性心筋炎は原則入院管理が必要になります。治療の主体は、自然治癒までの循環管理です。具体的には、急性心不全の治療として利尿薬やカテコラミン薬、心原性ショックに陥 ったら場合には、大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping: IABP)、経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support: PCPS)などを検討します。

・合併症管理
房室ブロックや致死的不整脈の合併に対して、一時的ペースメーカや直流除細動などで対処します。

・細菌性や薬剤性など、原因が特定出来た場合は原因に対する治療、炎症性サイトカイン過剰状態に対して、ステロイドパルス療法、免疫グロブリン療法などが考慮されることもあります。

・ 無症状、軽微徴候例における対処としては、安静、バイタルサインのモニタリング、経過観察のみで自然軽快へ向かう例もあります。

さらに、特徴的な心筋炎として、巨細胞性心筋炎、好酸球性心筋炎、慢性心筋炎、小児心筋炎、新生児心筋炎などがありますが、 詳しくは「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」をご覧ください。
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_izumi_h.pdf

【まとめ】

急性心筋炎は致死的なものもある中で、無症状で経過するものも幅広くあります。急性心筋炎は風邪や胃腸炎の後に発症することがあるというと、大きな不安を抱く方もいますが、風邪を引いた後に全員が、急性心筋炎を発症する訳ではありません。心電図、胸部レントゲン、採血にて心機能の評価、心エコーなど低侵襲なものから心機能の評価をしていきます。詳しくは主治医までご相談ください。


気管支喘息

注意:このページでは、息切れや胸の苦しさの鑑別疾患としての気管支喘息について記載しています。気管支喘息の診断がすでに着いている方を呼吸器内科をご受診ください。ご来院いただいても呼吸器内科へのご案内となってしまうことを予めご了承ください。

【気管支喘息とは】

気管支喘息(Bronchial Asthma)とは、気管支に慢性的に炎症が起きて、気管支が様々な外的刺激に対して過敏になり、可逆的に気流狭窄を引き起こし、いわゆる喘息発作(Asthma Attack)を生じる病気です。症状は夕方、夜間、明け方に悪化しやすいことが特徴で、気管支に炎症が起きる原因は、風邪などの感染症や急な激しい運動をきっかけに悪化することもあれば、季節の変わり目や乾燥など気温、湿度、気圧などの急激な変化が関係していることもあります。小児喘息の既往があって大人になっても気管支が過敏な体質だけ残ることもあります日本呼吸器学会のページに詳しい説明がありますのでご覧ください。

https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=15

【気管支喘息の診断】

日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン」は2015年に改訂され、気管支喘息は「気道の慢性炎症を本態とし、臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」と定義されました。診断の目安として、下記の6項目が挙げられており、特に1、2、3の項目が臨床診断上重要です。

1)発作性の呼吸困難、喘鳴、咳の反復、症状は夜間、早朝に出現しやすいのが特徴
2)可逆性の気流制限
3)他の疾患の除外
4)気道過敏性の亢進、運動、気道感染症、アレルギー、気象変化、精神的ストレス、月経などで症状が悪化
5)アトピー素因
6)気道炎症の存在

以前から喘息の診断が付いており、典型的な病歴と症状を認める場合、喘息の診断は難しくありません。胸部聴診では笛声音(wheeze)やいびき音(rhonchi)などの気管支の狭窄を示唆する気管支喘鳴の聴取を認めます。臨床症状や悪化要因とともに、気道可逆性としては、吸入薬の投与に対して反応する、吸入薬にて症状が改善する、という点も非常に重要で、しばしば診断的治療を進めて行きます。初発の場合、症状に変化を認める場合、他の疾患の除外が必要な場合、COPDの合併や程度を評価する必要がある場合、必要に応じて胸部レントゲンや胸部CTで詳しく検査を進めていきます。発熱、膿性痰、マイコプラズマ、百日咳、クラミドフィラ等咳の感染症の接触の可能性を認める場合は、長引く咳症状が目立つ感染症も含め、幅広く検査が必要です。心不全による慢性咳嗽のことを心臓喘息(Heart Asthma)と言いますが、通常、身体所見、胸部レントゲンで心拡大がないことで鑑別が付きます。その他、逆流性食道炎、副鼻腔気管支症候群、など慢性咳嗽の原因は多岐に渡りますので、幅広く鑑別が必要になることもあります。

慢性咳嗽→https://ochanai.com/chroniccough

気道可逆性試験、気道過敏性試験など、呼吸機能検査にて一秒率などの数値を調べることも参考になります。診断が難しい場合は呼吸器内科や喘息の専門医にて一度精査を行ってもらっています。

【お茶の水循環器内科の診療指針】

お茶の水循環器内科では、息苦しさや胸の苦しさ等で初めて症状の場合、狭心症や心不全とともに、気管支喘息も鑑別疾患に上がります。お茶の水循環器内科としてはまずは狭心症や心不全等の心疾患を先に精査除外して行きます。院内にレントゲンと呼吸機能検査はありますので、適宜、気道に異常があるかどうかのスクリーニング検査を行うかどうか判断します。診察の結果、気管支喘息が強く疑われる場合、または明らかに気管支喘息の症状の場合には速やかに呼吸器内科をご紹介します。すでに気管支喘息の診断が着いている方を呼吸器内科をご受診ください。

【気管支喘息の治療】

気管支喘息の治療の目標は、日常生活に支障がないよう症状をコントロールすることです。詳しくは呼吸器内科を受診ください。上図のように4つの治療ステップに分けて、症状のコントロール不良であればステップアップ、安定していればステップダウンをして行きます。治療の基本は吸入薬です。気管支の慢性炎症が本態ですので、長期管理薬による抗炎症療法が重要です。一年間を通して喘息発作が出ないことが理想です。気管支喘息の治療についてはこちらにエッセンスが端的にまとまっていますのでご覧ください。

https://dl.med.or.jp/dl-med/chiiki/allergy/bronchial_asthma.pdf

・アドエア(フルチカゾン、サルメテロール)、シムビコート(ブデソニド、ホルモテロール)、レルベア(フルチカゾン、ビランテロール)、フルティフォーム(フルチカゾン、ホルモテロール)、吸入ステロイドと呼ばれる気管支喘息の基本薬です。気管支の炎症を鎮める作用で、気管支喘息の原因に対する治療です。吸入ステロイドとβ刺激薬の配合の吸入薬が効果が高いですが、フルタイド(フルチカゾン)、パルミコート(ブデソニド)、キュバール(ベクロメタゾン)、アズマネックス(モメタゾン)、オルベスコ(シクレソニド)、などの吸入ステロイド単剤もあります。飲み薬のステロイドと違って全身への副作用は大きな心配ありません。メーカーが詳しくまとめていますのでご参考ください。

https://zensoku.jp/index.html

https://naruhodo-zensoku.com

・サルタノール(サルブタモール)、メプチン(プロカテロール)、β刺激薬、気管支拡張薬と言って、気管支を広げ、呼吸を楽にします。吸入ステロイド薬のことを長期管理薬(コントローラー)、β刺激薬のことを発作治療薬(レトリーバー)と言います。発作治療薬の気管支拡張薬には気管支の炎症自体を治す作用はないので、必ずコントローラーをベースに治療することが大切です。発作治療薬は出来るだけ必要最小限、安定して来たら使わないで済むことが理想です。β刺激は心臓に作用すると頻脈になりますので、ドキドキ動悸がした場合は使わないようにしてください。気管支拡張薬の貼り薬、ホクナリンテープ(ツロブテロール)もあります。

・メジコン(デキストロメトルファン)、フスコデ等、鎮咳薬です。気管支の炎症自体を治す作用はありませんが、咳が収まるまで咳止めを併用します。

・シングレア(モンテルカスト)、他、ロイコトリエン拮抗薬です。気管支の調子を整えます。

・アレグラ(フェキソナジン)、ザイザル(レボセチリジン)、他、抗ヒスタミン薬です。喘息の背景にアレルギー性の要因の関与が考えられる場合に使います。

・テオドール(テオフィリン)、他、テオフィリン系と呼ばれる昔からある気管支拡張薬です。動悸や吐気などテオフィリン中毒に注意しながら使います。

・麦門冬湯(ばくもんどうとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、柴朴湯(さいぼくとう)、五虎湯(ごことう)、漢方薬です。相性を見ながら使います。

・プレドニン(プレドニゾロン)、咳がとにかく酷い場合、短期間限定で内服のステロイドを使うこともあります。強力に炎症を押さえます。症状が収まったら辞めていきます。

他にも、抗体医薬などの新薬がありますが、専門医の範囲になりますので割愛します。全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


気管支喘息と微妙に違いますがほとんど同じ疾患として、咳喘息、アトピー咳嗽、アスピリン喘息、喘息COPDオーバーラップ症候群、がありますので、それぞれ簡潔にご紹介します。詳しくは呼吸器内科または喘息の専門医の領域となりますので、必要があれば紹介にて詳しく診察してもらっています。

【咳喘息とは】

喘息の一型として、咳喘息(Cough Variant Asthma)があります。喘鳴や呼吸困難を伴わないこと、慢性咳嗽が特徴で、気管拡張薬、吸入ステロイド、抗ロイコトリエン薬が有効であることが特徴です。喘息と同じく、咳は就寝前、深夜、明け方に強く、冷気、暖気、喫煙、受動喫煙、会話、運動、飲酒、精神的緊張などで悪化することが特徴です。治療は喘息と基本共通です。原因は喘息も咳喘息も同じく気管支の慢性炎症と気道過敏性の亢進が原因と言われており、咳喘息の時点でちゃんと治療をしないと30%程度が典型的な気管支喘息に移行するとも言われていますので、早期からの治療が重要です。

咳喘息→https://ochanai.com/coughvariantasthma

【アトピー咳嗽とは】

アトピー咳嗽とは慢性咳嗽の原因の一つで、何らかのアレルギー性の関与が関係していると言われており、気管支拡張薬が無効、吸入ステロイド、抗ヒスタミン薬が有効であることなどが特徴です。治療は喘息と大きく変わりませんが、原因アレルギーに対する治療で症状の改善が期待出来ます。

【アスピリン喘息とは】

成人喘息の中にはアスピリン喘息と言って解熱鎮痛薬にて悪化する体質の人が一定数います。アスピリンだけではなく、ロキソニン、イブプロフェンなどの解熱鎮痛薬の成分などもアスピリン喘息の原因になる可能性があります。市販の風邪薬にも含まれているものもあるので注意です。治療は原因となった解熱鎮痛薬の中止です。アスピリン喘息があって大丈夫な解熱鎮痛薬を使うことが大切です。

【喘息COPDオーバーラップ症候群とは】

喘息とCOPDは別の疾患概念ですが、両者のオーバーラップ症候群(Asthma COPD Overlap Syndrome: ACOS)という病態も近年注目されています。治療は喘息と共通する部分も大きいですが、抗コリン配合薬などの気管支拡張薬も有効です。原因は喫煙で、禁煙で予防出来ます。そもそも煙草の煙は気管支に対して異物であり、喘息の悪化要因でもあります。いきなり禁煙とまではいかなくても少なくとも咳が収まるまでは煙草は控えましょう。


びまん性食道痙攣

注意:このページでは、胸の痛みや胸の苦しさの鑑別疾患としてのびまん性食道痙攣について記載しています。びまん性食道痙攣の診断がすでに着いている方を消化器内科をご受診ください。ご来院いただいても消化器内科へのご案内となってしまうことを予めご了承ください。

【びまん性食道痙攣とは】

びまん性食道痙攣という疾病概念があります。突然食道が痙攣を起こす病気で、胸の圧迫感、喉が詰まる感じ、食べ物が飲み込めないなどの症状を来します。労作時、ストレス時に起こることもあり、症状だけでは狭心症発作と区別が難しいことがあります。

【びまん性食道痙攣の診断】

びまん性食道痙攣の診断は、消化管内視鏡や食道造影によって痙攣を起こしている食道を直接確認するか、食道内圧測定検査によって診断します。しかし、検査時に痙攣を起こさないことも多く、その場合は診断は困難です。また、狭心症発作との鑑別が重要で、心電図、冠動脈CT、冠動脈カテーテル検査、冠攣縮性狭心症の誘発試験などの適応を考慮します。お茶の水循環器内科では主に狭心症との精査鑑別から検査を行って行きます。

【びまん性食道痙攣の治療】

びまん性食道痙攣の診断が着いた場合や、症状から強く疑う場合には、痙攣抑制効果を期待して、平滑筋弛緩作用のある薬物を投与します。診断が付く前に、効果があるかどうか治療反応性を見るために治療的診断を行う場合もあります。

・カルシウム拮抗薬
食道平滑筋に作用して、平滑筋弛緩作用によって、痙攣発作を予防します。しかし、食道と胃をつなぐ噴門括約筋にも作用してしまうので、逆流性食道炎の悪化につながってしまうこともあり、注意が必要です。

・硝酸薬
食道平滑筋に作用して、筋肉の収縮を和らげることによって、痙攣発作の予防効果を期待します。しかし、狭心症があった場合に、心臓の結果、冠動脈にも作用して狭心症発作に対して効いたのかわからなくなってしまうので、狭心症が疑われる場合にはまずは狭心症の精査除外から検査を進めます。

・ 抗コリン薬
ブスコパン(ブチルスコポラミン)など、痙攣止めです。ブスコパンが効くかどうか反応を見つつ、頓服で使う場合があります。

・制酸薬
ガスター(ファモチジン)など、胃酸の逆流の関与を疑う場合に使います。食道や胃に異常がないか上部消化管内視鏡検査を行います。

・芍薬甘草湯、半夏厚朴湯、他
芍薬甘草湯は筋肉の急な痙攣による痛みに対して、半夏厚朴湯は喉の異物感に対して使います。

・他
その他、ストレスの関与が強い場合には精神療法、ボツリヌス毒素食道括約筋内注射、バルーン等による食道拡張術、食道平滑筋切開術などの外科的治療もありますが、割愛します。

【まとめ】

びまん性食道痙攣は症状からは狭心症と見分けが付かないことがあります。お茶の水循環器内科ではまずは狭心症が疑われる場合は狭心症の精査から検査を進めていきます。狭心症が否定された場合、びまん性食道痙攣が疑われる場合は食道内圧測定等の専門的な検査が必要になりますので、適宜消化器内科の病院へ紹介します。いずれにせよ、命に関わる心疾患との精査鑑別が重要です。


帯状疱疹

注意:このページでは、胸の痛みの鑑別疾患としての帯状疱疹について記載しています。帯状疱疹の診断がすでに着いている方を皮膚科または一般内科をご受診ください。ご来院いただいても医療機関のご案内となってしまうことを予めご了承ください。

【帯状疱疹とは】

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus: VZV)の再活性化による抹消神経炎です。通常、皮膚のピリピリ感、チクチク感という前駆症状から始まり、その後、ポチポチと皮膚に疱疹が出現し、神経の走行に添って帯状に広がります。ズキズキ、刺すような強い痛みとともに、疱疹は1週間から2週間ほど続き、次第かさぶたとなって、3週間から4週間ほどで治癒していきます。原因は、水疱瘡(みずぼうそう)、水痘(Varicella)のウイルスで、一度水痘になると水痘が治った後も潜伏感染と言って神経にウイルスが潜んでおり、季節の変わり目、睡眠不足、疲れが溜まっている時、加齢、ストレス、風邪を引いた後、など免疫力が低下した時に、ウイルスが再活性化し、神経に添って帯状に疱疹を伴う抹消神経炎を起こし、帯状疱疹(Herpes Zoster)と呼びます。

【帯状疱疹の診断】

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帯状疱疹の診断は症状と皮膚の所見から臨床的に診断します。上図のような明らかに帯状疱疹の所見を認める場合、その場で帯状疱疹と診断可能です。痛みと疱疹は神経の走行に添っていることが特徴で、胸部や腹部では、背中から脇、お腹の真ん中あたりまで、中央を超えないか中央くらいまで片側であることが特徴です。顔面の場合は三叉神経領域、下肢の場合は坐骨神経領域、いずれも神経の走行に一致していることが帯状疱疹の特徴です。帯状疱疹の前駆症状、疱疹が出現するまで数日間には皮膚にはまだ何も所見がない時期があり、最初は何らかの神経痛、その数日後に皮膚に疱疹が出現し、後から帯状疱疹とわかることも実際にはしばしばあります。眼や耳、顔面の神経まで症状が出そうな場合(Ramsay Hunt症候群)、直腸や膀胱の神経まで症状が出そうな場合、眼科や耳鼻科、神経内科などに紹介して詳しく診てもらっています。二カ所同時に帯状疱疹が起こること、両側同時に帯状疱疹が起こることは稀ですが、可能性としてはありえます。いずれも、免疫力の低下と関係しているため、帯状疱疹をあまりに繰り返す、多発する、帯状疱疹が治りが悪い場合、悪性腫瘍など免疫力低下の原因となる全身疾患がないか調べます。

【帯状疱疹の治療】

帯状疱疹の治療は、原因である水痘帯状疱疹ウイルスに対する治療、神経痛の痛みに対する治療、帯状疱疹後神経痛に対する治療があります。

・バルトレックス(バラシクロビル)、ゾビラックス(アシクロビル)、ファムビル(ファムシクロビル)、帯状疱疹の治療薬です。水痘帯状疱疹ウイルスの活動を抑えます。保険のルールで7日間までと決められています。もう少しだけ続ければさらに完璧に治るのに、という場合はしばしば多いのですが、その場合は継続は自費になります。効果は高いのですが、薬価もなかなか高いのが玉にキズです。

・ボルタレン(ジクロフェナク)、ロキソニン(ロキソプロフェン)、カロナール(アセトアミノフェン)、メチコバール(シアノコバラミン)、ノイロトロピン、プレドニン(プレドニゾロン)、痛み、炎症に対して消炎鎮痛薬を使います。帯状疱疹の最重症例には入院でステロイド治療が必要な場合もあります。

・アズノール(アズレン)、リンデロンVG(ベタメタゾン、ゲンタマイシン)、皮膚に対して、消炎鎮痛、二次感染を防ぐ目的で化膿止めなど適宜使います。

・リリカ(プレガバリン)、デュロキセチン(デュロキセチン)、トリプタノール(アミトリプチリン)、神経痛治療薬です。帯状疱疹の後に、神経痛だけが残ることがあり、帯状疱疹後神経痛と言います。夜眠れないほどの激痛、難治性の場合も多く、医療用麻薬や神経ブロック治療など専門的な治療が必要のこともあり、その場合、痛みの専門科、ペインクリニック、麻酔科などで紹介で診てもらっています。

【帯状疱疹の予防】

帯状疱疹の予防には水痘ワクチンが有効です。2016年4月から帯状疱疹予防としての水痘ワクチンが日本でも承認になりました。帯状疱疹の発症頻度を51.3%、重症な帯状疱疹を61.1%、帯状疱疹後神経痛を66.5%、それぞれ予防効果のデータがあります。予防接種は自費になりますが、帯状疱疹の予防に有効ですのでどうぞご検討ください。

また、帯状疱疹は何らかの免疫力低下をきっかけに発症することがほとんどですので、感染症予防の基本として、風邪を引かないよう、日々の体調管理、手洗い、うがい、マスク、さらに、不規則な生活、睡眠不足、ストレス、過労、を避けることが大事です。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


心室頻拍

【心室頻拍とは】

心室頻拍(Ventricular tachycardia: VT)とは、特に致死的となる不整脈の一つで、心臓の心室という場所で異所性の電気刺激から頻拍となっている状態です。中には心室細動に移行し、心停止を起こすことがあります。危険度によって埋込型除細動器の適応となるものから経過観察で良いものまで幅広くあります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「危険な不整脈とその治療」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph71.html

【心室頻拍の診断】

心室頻拍の診断は心電図検査によって行います。QRS幅が0.12秒以上のwide QRSという特徴的な心電図所見を来します。心室から心室期外収縮が、1分間に120回以上の心拍数で心室期外収縮が3連発以上出現する場合を心室頻拍と定義します。臨床症状としては、動悸、胸の苦しさ、ふらつき、前失神、失神などの血圧低下、脳虚血症状です。睡眠中などに起こる場合は自覚症状がないか心臓突然死の要因の一つになります。ホルター心電図や埋込型心電計によって診断します。

【心室頻拍の分類】

発作の持続時間が30秒未満かそれ以上かで、持続性心室頻拍(Sustained ventricular tachycardia: SVT)か、非持続性心室頻拍(Non-sustained ventricular tachycardia: NSVT)に分類します。

単形性か、多形性、多形性の派生型としてtorsade de pointesがあります。

【心室頻拍の治療】

心室頻拍を引き起こしている原疾患があれば原疾患を治療します。持続性の心室頻拍の場合、埋込型除細動器(Implantable cardioverter defibrillator: ICD)の適応を考慮します。

埋込型除細動器→https://循環器内科.com/icd

「不整脈非薬物治療ガイドライン」では、二次予防か一次予防か、冠動脈疾患の有無について、ICDの適応基準を定めています。

詳しくは「不整脈非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」 →https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_kurita_nogami.pdf

基礎心疾患がある患者に対する二次予防

冠動脈疾患にともなう持続性VT,VF に対するICD適応の推奨

・心筋梗塞の既往を有し,解除できる残存虚血や電解質異常などの可逆的な要因がないVFまたは電気ショックを要する院外心肺停止:I A

・心筋梗塞の既往を有し,解除できる残存虚血や電解質異常などの可逆的な要因がない持続性VT で,以下の条件のいずれかを満たす場合:I A

①LVEF ≦ 35%

②VT中に失神をともなう場合

③VT中の血圧が80mmHg以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合

④多形性VT

⑤血行動態の安定している持続性VTであっても薬剤治療が無効,あるいは副作用のため使用できない場合や薬効評価が不明な場合,もしくはカテーテルアブレーションが無効あるいは不可能な場合

・持続性VTがカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合:IIa B

・持続性VTを有し,臨床経過や薬効評価にて有効な薬剤がみつかっている場合:IIa B

・冠攣縮にともなう院外心肺停止を含むVT/VF既往例で,内科的治療に抵抗性の場合:IIa B

・冠攣縮にともなう院外心肺停止を含むVT/VF既往例で,内科的治療が有効の場合:IIb C

・急性の原因(冠攣縮を除く48時間以内の急性虚血,電解質異常,薬剤など)によるVT,VFの可能性が高く,十分な治療にもかかわらず再度その原因に暴露されるリスクが高いと考えられる場合:IIb C

・慢性疾患による身体機能制限:III C

・12ヵ月以上の余命が期待できない場合:III C

・精神障害などで治療に際して患者の同意や協力が得られない場合:III C

・急性の原因(冠攣縮を除く急性虚血,電解質異常,薬剤など)が明らかなVT,VFで,その原因の除去によりVT,VFが予防できると判断される場合:III C

・抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない頻回に繰り返すVT あるいはVF:III C

・心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全 :III C

非虚血性心筋症にともなう持続性VT,VFに対するICD適応の推奨

・電解質異常などの可逆的な要因によらないVFまたは電気ショックを要する院外心肺停止:I A

・電解質異常などの可逆的な要因がない持続性VTで,以下の条件のいずれかを満たす場合:I C

①VT中に失神をともなう場合

②頻拍中の血圧が80mmHg以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合

③多形性VT

④血行動態の安定している単形性VTであっても薬剤治療が無効,あるいは副作用のため使用できない場合や,薬効が不明な場合,もしくはカテーテルアブレーションが無効あるいは不可能な場合

・持続性VTがカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合:IIa B

・持続性VTを有し,臨床経過や薬効評価にて有効な薬剤がみつかっている場合:IIa B

・急性の原因(心不全,電解質異常,薬剤など)によるVT,VFの可能性が高く,十分な治療にもかかわらず再度その原因に暴露されるリスクが高いと考えられる場合:IIb C

・12ヵ月以上の余命が期待できない場合:III C

・精神障害などで治療に際し患者の同意や協力が得られない場合:III C

・急性の原因(急性虚血,電解質異常,薬剤など)が明らかなVT,VF で,その原因の除去によりVT,VFが予防できると判断される場合:III C

・抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない,頻回に繰り返すVTあるいはVF:III C

・心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C

基礎心疾患がある患者に対する一次予防

冠動脈疾患患者に対するICD一次予防適応の推奨

以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:Ⅰ A

①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)

②十分な薬物治療

③NYHA心機能分類II以上の心不全症状

④LVEF≦35%

⑤NSVT

以下のすべてを満たす患者での ICD の使用:Ⅰ B

①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)

②十分な薬物治療

③LVEF≦40%

④NSVT

⑤電気生理検査でのVT/VFの誘発

以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:IIa B

①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)

②十分な薬物治療

③NYHA心機能分類II以上の心不全症状

④LVEF≦35%

以下のいずれかを満たす患者でのICDの使用

①慢性疾患による身体機能制限

②余命が1年以上期待できない例

③心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C

非虚血性心筋症患者に対するICD一次予防適応の推奨

以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:Ⅰ A

①非虚血性心筋症

②十分な薬物治療

③NYHA心機能分類II以上の心不全症状

④LVEF≦35%

⑤NSVT

以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:IIa B

①非虚血性心筋症

②十分な薬物治療

③NYHA心機能分類II以上の心不全症状

④LVEF≦35%

以下のいずれかを満たす患者でのICDの使用

①慢性疾患による身体機能制限

②余命が1年以上期待できない例

③心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C

「不整脈非薬物治療ガイドライン」では、単形性持続性心室頻拍に対してカテーテルアブレーションの適応基準を定めています。

単形性持続性VTに対するカテーテルアブレーションの推奨

症状を有する特発性持続性VTで,薬物治療が有効または未使用でも,患者が薬物治療よりもカテーテルアブレーション治療を希望する場合:I B

無症状あるいは症状が軽微な特発性持続性VTで,薬物治療が有効または未使用でも,患者が薬物治療よりもカテーテルアブレーション治療を希望する場合:IIa B

器質的心疾患をともなうインセサント型単形性VTあるいは電気的ストームで,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:I C

症状を有する虚血性心疾患にともなう単形性持続性VTで,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:I B

虚血性心疾患にともなう単形性持続性VTで,ICDの植込み後に抗頻拍治療が頻回に作動する場合:I B

虚血性心疾患にともなう単形性持続性VTで,ICDの初回植込み術周術期:IIa B

アミオダロン内服中の虚血性心疾患における単形性持続性VTの再発:I B

非虚血性心筋症にともなう単形性持続性VTで,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:IIa B

脚間・脚枝間リエントリー性頻拍:I C

詳しくは「不整脈非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」 →https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_kurita_nogami.pdf

・抗不整脈薬

アンカロン(アミオダロン)、シンビット(ニフェラカント)、ソタコール(ソタロール)、ベプリコール(ベプリジル)、メインテート(ビソプロロール)、アーチスト(カルベジロール)、セロケン(メトプロロール)などの抗不整脈をICDまでのつなぎ、または心室頻拍の予防に使います。

詳しくは「不整脈薬物治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

【心室頻拍の原因】

心室頻拍の原因は多岐に渡ります。原因不明のものから、急性心筋梗塞の合併症として、心筋虚血による電気的な不安定性から心室頻拍が起こる場合、電解質異常、心不全、肥大型心筋症、拡張型心筋症などの心筋症、サルコイドーシス、Brugada症候群、QT延長症候群など、いくつか疾患が心室頻拍を起こしやすい疾患が知られています。詳しくは下記ページをご覧ください。

急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

Brugada症候群→https://循環器内科.com/brugada

心不全→https://循環器内科.com/hf

肥大型心筋症→https://循環器内科.com/hcm

拡張型心筋症→https://循環器内科.com/dcm

【心室頻拍の予防】

心停止は様々な原因で起こりますが、突然の院外心停止で最も多い原因の一つが急性心筋梗塞に伴う心室頻拍や心室細動などの致死的不整脈による心停止です。急性心筋梗塞は動脈硬化が原因で起こります。動脈硬化は、以下のリスク因子を管理することでコントロール可能です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙などの動脈硬化のリスク因子があれば、それぞれの治療をしっかりと行いましょう。

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld


 

心室細動

【心室細動とは】

心室細動(Ventricular fibrillation: VF)とは、致死的不整脈の一つで、心臓の心室という場所が不規則に細かく動き、全身に血液を起こることが出来ない状態です。心停止を起こす不整脈のうち、迅速な除細動で救命が期待出来るものの一つです。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

「危険な不整脈とその治療」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph71.html

【心室細動の診断】

突然意識を失って、正常な呼吸をしていない場合、心停止を疑って心肺蘇生を開始する必要があります。脈拍は触れず、呼び掛けや痛み刺激に対して反応がありません。院外の場合は、胸骨圧迫と自動体外式除細動器(Automated external defibrillator: AED)による迅速な除細動によって救命を目指します。心肺蘇生について詳しくは下記のページをご覧ください。

心肺蘇生→https://循環器内科.com/cpr

【心室細動の治療】

心室細動を引き起こしている原疾患があれば原疾患を治療します。特発性の心室細動の場合、埋込型除細動器(Implantable cardioverter defibrillator: ICD)の適応を考慮します。

埋込型除細動器→https://循環器内科.com/icd

「不整脈非薬物治療ガイドライン」では、二次予防か一次予防か、冠動脈疾患の有無について、ICDの適応基準を定めています。

詳しくは「不整脈非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」 →https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_kurita_nogami.pdf

基礎心疾患がある患者に対する二次予防

冠動脈疾患にともなう持続性VT,VF に対するICD適応の推奨

・心筋梗塞の既往を有し,解除できる残存虚血や電解質異常などの可逆的な要因がないVFまたは電気ショックを要する院外心肺停止:I A

・心筋梗塞の既往を有し,解除できる残存虚血や電解質異常などの可逆的な要因がない持続性VT で,以下の条件のいずれかを満たす場合:I A

①LVEF ≦ 35%

②VT中に失神をともなう場合

③VT中の血圧が80mmHg 以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合

④多形性VT

⑤血行動態の安定している持続性VTであっても薬剤治療が無効,あるいは副作用のため使用できない場合や薬効評価が不明な場合,もしくはカテーテルアブレーションが無効あるいは不可能な場合

・持続性VTがカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合:IIa B

・持続性VTを有し,臨床経過や薬効評価にて有効な薬剤がみつかっている場合:IIa B

・冠攣縮にともなう院外心肺停止を含むVT/VF既往例で,内科的治療に抵抗性の場合:IIa B

・冠攣縮にともなう院外心肺停止を含むVT/VF既往例で,内科的治療が有効の場合:IIb C

・急性の原因(冠攣縮を除く48時間以内の急性虚血,電解質異常,薬剤など)によるVT,VFの可能性が高く,十分な治療にもかかわらず再度その原因に暴露されるリスクが高いと考えられる場合:IIb C

・慢性疾患による身体機能制限:III C

・12ヵ月以上の余命が期待できない場合:III C

・精神障害などで治療に際して患者の同意や協力が得られない場合:III C

・急性の原因(冠攣縮を除く急性虚血,電解質異常,薬剤など)が明らかなVT,VFで,その原因の除去によりVT,VFが予防できると判断される場合:III C

・抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない頻回に繰り返すVT あるいはVF:III C

・心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全 :III C

非虚血性心筋症にともなう持続性VT,VFに対するICD適応の推奨

・電解質異常などの可逆的な要因によらないVFまたは電気ショックを要する院外心肺停止:I A

・電解質異常などの可逆的な要因がない持続性VTで,以下の条件のいずれかを満たす場合:I C

①VT中に失神をともなう場合

②頻拍中の血圧が80mmHg 以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合

③多形性VT

④血行動態の安定している単形性VTであっても薬剤治療が無効,あるいは副作用のため使用できない場合や,薬効が不明な場合,もしくはカテーテルアブレーションが無効あるいは不可能な場合

・持続性VTがカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合:IIa B

・持続性VTを有し,臨床経過や薬効評価にて有効な薬剤がみつかっている場合:IIa B

・急性の原因(心不全,電解質異常,薬剤など)によるVT,VFの可能性が高く,十分な治療にもかかわらず再度その原因に暴露されるリスクが高いと考えられる場合:IIb C

・12ヵ月以上の余命が期待できない場合:III C

・精神障害などで治療に際し患者の同意や協力が得られない場合:III C

・急性の原因(急性虚血,電解質異常,薬剤など)が明らかなVT,VF で,その原因の除去によりVT,VFが予防できると判断される場合:III C

・抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない,頻回に繰り返すVTあるいはVF:III C

・心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C

基礎心疾患がある患者に対する一次予防

冠動脈疾患患者に対するICD一次予防適応の推奨

以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:Ⅰ A

①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)

②十分な薬物治療

③NYHA心機能分類II以上の心不全症状

④LVEF≦35%

⑤NSVT

以下のすべてを満たす患者での ICD の使用:Ⅰ B

①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)

②十分な薬物治療

③LVEF≦40%

④NSVT

⑤電気生理検査でのVT/VFの誘発

以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:IIa B

①冠動脈疾患(心筋梗塞発症から40日以上経過,冠血行再建術後90日以上経過)

②十分な薬物治療

③NYHA心機能分類II以上の心不全症状

④LVEF≦35%

以下のいずれかを満たす患者でのICDの使用

①慢性疾患による身体機能制限

②余命が1年以上期待できない例

③心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C

非虚血性心筋症患者に対するICD一次予防適応の推奨

以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:Ⅰ A

①非虚血性心筋症

②十分な薬物治療

③NYHA心機能分類II以上の心不全症状

④LVEF≦35%

⑤NSVT

以下のすべてを満たす患者でのICDの使用:IIa B

①非虚血性心筋症

②十分な薬物治療

③NYHA心機能分類II以上の心不全症状

④LVEF≦35%

以下のいずれかを満たす患者でのICDの使用

①慢性疾患による身体機能制限

②余命が1年以上期待できない例

③心移植,CRT,LVADの適応とならないNYHA心機能分類IVの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全:III C

「不整脈非薬物治療ガイドライン」では、多形性心室細動に対してカテーテルアブレーションの適応基準を定めています。

多形性 VT・VF に対するカテーテルアブレーションの推奨

・右室流出路あるいは末梢プルキンエ線維起源のPVCを契機とする反復性の特発性多形性VTあるいは特発性VFにおいて,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:I B

・末梢プルキンエ線維起源のPVCを契機とする反復性の虚血性多形性VTあるいはVFにおいて,心筋虚血改善治療に反応せず,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:IIa B

・ブルガダ症候群において,VF 発作が頻回で,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:IIb C

・心筋炎,アミロイドーシス,弁膜症,非虚血性心筋症,QT延長症候群,早期再分極症候群,カテコラミン誘発性多形性 VT を基礎疾患とし,右室流出路あるいは末梢プルキンエ線維起源の PVC を契機とする反復性の多形性 VT あるいは VF において,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合:IIb C

詳しくは「不整脈非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」 →https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_kurita_nogami.pdf

・抗不整脈薬

シンビット(ニフェラカント)、アンカロン(アミオダロン)、ソタコール(ソタロール)、などの抗不整脈を心室細動の予防に使います。

詳しくは「不整脈薬物治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

【心室細動の原因】

心室細動の原因は多岐に渡ります。原因不明のものから、急性心筋梗塞の合併症として、心筋虚血による電気的な不安定性から心室細動が起こる場合、電解質異常、心不全、肥大型心筋症、拡張型心筋症などの心筋症、サルコイドーシス、Brugada症候群、QT延長症候群など、いくつか疾患が心室細動を起こしやすい疾患が知られています。詳しくは下記ページをご覧ください。

急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

Brugada症候群→https://循環器内科.com/brugada

心不全→https://循環器内科.com/hf

肥大型心筋症→https://循環器内科.com/hcm

拡張型心筋症→https://循環器内科.com/dcm

【心室細動の予防】

心停止は様々な原因で起こりますが、突然の院外心停止で最も多い原因の一つが急性心筋梗塞に伴う心室細動による心停止です。急性心筋梗塞は動脈硬化が原因で起こります。動脈硬化は、以下のリスク因子を管理することでコントロール可能です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙などの動脈硬化のリスク因子があれば、それぞれの治療をしっかりと行いましょう。

・高血圧症→https://循環器内科.com/ht

・脂質異常症→https://循環器内科.com/dl

・糖尿病→https://循環器内科.com/dm

・喫煙→https://循環器内科.com/smoking

・大量飲酒→https://循環器内科.com/ld


 

感染性心内膜炎

【感染性心内膜炎とは】

感染性心内膜炎(Infective endocarditis: IE)とは、全身性敗血症性疾患の一つで、特に心臓の弁への細菌感染と、細菌感染による弁の破壊、全身塞栓症などを含む疾患です。菌の塊を、疣腫(ゆうぜい、vegetation)と呼び、疣贅が心臓から飛んで、脳に詰まれば脳梗塞、腸の血管に詰まれば腸管虚血など危篤な合併症を来します。脳の血管に脳動脈瘤を来したり、細菌感染の巣、膿瘍を来すこともあります。臨床症状が多彩であり、診断まで時間が掛かることもあります。詳しくは慶應義塾大学病院のページをご覧ください。

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000197.html

【感染性心内膜炎の診断】

修正Duke診断基準という診断基準があります。様々な項目がありますが、血液培養による原因微生物の検出が最も重要で、抗菌薬投与前の血液培養を少なくとも3セット行います。原因微生物が特定出来れば、薬剤感受性試験にて有効な抗菌薬を把握することが出来、治療上も極めて有用です。そもそも感染性心内膜炎を疑わない血液培養や心エコーの検査はしないので、感染性心内膜炎を疑うことが最も重要であると言えます。

【確診】

病理学的基準

(1) 培養,または疣腫,塞栓を起こした疣腫,心内膿瘍の組織検査により病原微生物が検出されること,または

(2) 疣腫や心内膿瘍において組織学的に活動性心内膜炎が証明されること

臨床的基準a)

(1)大基準2つ,または

(2)大基準1つおよび小基準3つ,または

(3 )小基準5つ

【可能性】

(1)大基準1つおよび小基準1つ,または

(2)小基準3つ

【否定的】

(1)IE症状を説明する別の確実な診断,または

(2)IE症状が4日以内の抗菌薬投与により消退,または

(3)4日以内の抗菌薬投与後の手術時または剖検時にIEの病理学的所見を認めない,または

(4)上記「可能性」基準にあてはまらない

a)基準の定義

[大基準]

IEを裏づける血液培養陽性

2回の血液培養でIEに典型的な以下の病原微生物のいずれかが認められた場合

・Streptococcus viridans,Streptococcus bovis(Streptococcus gallolyticus),HACEK グループ,Staphylococcus aureus,または他に感染巣がない状況での市中感染型 Enterococcus

血液培養がIEに矛盾しない病原微生物で持続的に陽性

・12時間以上間隔をあけて採取した血液検体の培養が2回以上陽性,または

・3回の血液培養のすべて,または4回以上施行した血液培養の大半が陽性(最初と最後の採血間隔が1時間以上あいていること)

1回の血液培養でもCoxiella burnetiiが検出された場合,または抗I相菌IgG抗体価800倍以上

心内膜障害所見

IEの心エコー図所見(人工弁置換術後,IE可能性例,弁輪部膿瘍合併例ではTEEが推奨される.その他の例ではまずTTEを行う.)

・弁あるいはその支持組織の上,または逆流ジェット通路,または人工物の上にみられる解剖学的に説明のできない振動性の心臓内腫瘤,または

・膿瘍,または

・人工弁の新たな部分的裂開

新規の弁逆流(既存の雑音の悪化または変化のみでは十分でない)

[小基準]

・素因:素因となる心疾患または静注薬物常用

・発熱:38.0 ˚C 以上

・血管現象:主要血管塞栓,敗血症性梗塞,感染性動脈瘤,頭蓋内出血,眼球結膜出血,Janeway発疹

・免疫学的現象:糸球体腎炎,Osler結節,Roth斑,リウマチ因子

・微生物学的所見:血液培養陽性であるが上記の大基準を満たさない場合b),または IE として矛盾のない活動性炎症の血清学的証拠

b)コアグラーゼ陰性ブドウ球菌やIEの原因菌とならない病原微生物が1回のみ検出された場合は除く

【ESCガイドラインにおけるIEの画像診断基準】

修正Duke診断基準にて確定診断となった場合は感染性心内膜炎として治療開始します。可能性となった場合には画像診断基準に準じて検査を進めます。

IEの画像診断

a.IE の心エコー図所見

• 疣腫

• 膿瘍,仮性動脈瘤,心内瘻孔

• 弁穿孔または弁瘤

• 人工弁の新たな部分的裂開

b.置換人工弁周囲における18F-FDG PET/CT(術後 3ヵ月以上経過している場合)や白血球シンチSPECT/CT の取り込み

c.CT による弁周囲膿瘍の検出

ESC ガイドラインでは,Duke の診断基準に加えて上記の画像診断基準もIE診断の大基準の1つにあげられています。詳しくは「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_nakatani_h.pdf
https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02808_04

【感染性心内膜炎の治療】

原因菌に対して最適な抗菌薬治療を行います。原因微生物が特定出来れば、薬剤感受性試験にて有効な抗菌薬を把握することが出来、薬剤感受性試験の結果に基づいて抗菌薬を投与します。原因菌判明前はエンピリックに抗菌薬治療を開始することもあります。頻度の高い分離菌としては、CNS,Staphylococcus aureus,VGS,腸球菌,Streptococcus bovis、Streptococcus pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Candida albicansなどがガイドラインでは挙げられています。48-72時間を目安に効果判定を行い、体温、白血球数、CRP、血液培養の陰性化、心エコー、など総合的に治療期間を判断します。治療期間は4-8週間など長期に及ぶ場合が多いです。

合併症の治療として、心不全、塞栓症、中枢神経合併症として感染性動脈瘤、中枢神経系以外として脾梗塞、肺梗塞、腎障害、播種性血管内凝固症候群、それぞれに対して適切な治療を行います。

急性心不全、心原性ショック、急速に進行する弁の破壊、難治性感染症、適切な抗菌薬開始後も持続する感染、真菌や高度耐性菌による感染、適切な抗菌薬開始後も1回以上の塞栓症、10mmを超える可動性の疣腫、などの場合は外科的治療の適応を考慮します。

詳しくは「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)」
https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_nakatani_h.pdf

【感染性心内膜炎の危険因子】

感染性心内膜炎は、感染性心内膜炎を起こしやすい心内膜の障害となる基礎疾患に加えて、菌血症を起こした細菌の定着によって発症します。感染性心内膜炎を起こしやすい基礎疾患としては以下の危険因子が知られています。

成人における IE の基礎心疾患別リスクと,歯科口腔外科手技に際する予防的抗菌薬投与の推奨とエビデンスレベル

1.高度リスク群(感染しやすく,重症化しやすい患者)

・生体弁,機械弁による人工弁置換術患者,弁輪リング装着例

・IEの既往を有する患者

・複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室,完全大血管転位,ファロー四徴症)

・体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者

2.中等度リスク群(必ずしも重篤とならないが,心内膜炎発症の可能性が高い患者)

・ほとんどの先天性心疾患*1単独の心房中隔欠損症(二次孔型)を除く

・後天性弁膜症*2逆流を伴わない僧帽弁狭窄症では IE のリスクは低い

・閉塞性肥大型心筋症

・弁逆流を伴う僧帽弁逸脱

・人工ペースメーカ,植込み型除細動器などのデバイス植込み患者

・長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者

【感染性心内膜炎の予防】

感染性心内膜炎の予防のために、予防的抗菌薬投与を行う場合があります。予防的抗菌薬投与を行うことを強く推奨する場合から、予防的抗菌薬投与を推奨しない場合まで、ガイドラインでは以下のように記載されています。

IE高リスク患者における,各手技と予防的抗菌薬投与に関する推奨とエビデンスレベル

予防的抗菌薬投与を行うことを強く推奨する

・ 歯科口腔外科領域:出血を伴い菌血症を誘発するすべての侵襲的な歯科処置(抜歯などの口腔外科手術・歯周外科手術・インプラント手術,スケーリング,感染根管処置など)

・ 耳鼻科領域:扁桃摘出術・アデノイド摘出術

・ 心血管領域:ペースメーカや植込み型除細動器の植込み術

抗菌薬投与を行ったほうがよいと思われる

・ 局所感染巣に対する観血的手技:膿瘍ドレナージや感染巣への内視鏡検査・治療(胆道閉塞を含む)

・ 心血管領域:人工弁や心血管内に人工物を植え込む手術

・ 経尿道的前立腺切除術:とくに人工弁症例

予防的抗菌薬投与を行ってもかまわない.ただし,IEの既往がある症例には予防的抗菌薬投与を推奨する

・ 消化管領域:食道静脈瘤硬化療法,食道狭窄拡張術,大腸鏡や直腸鏡による粘膜生検やポリープ切除術,胆道手術

・ 泌尿器・生殖器領域:尿道拡張術,経膣分娩・経膣子宮摘出術,子宮内容除去術,治療的流産・人工妊娠中絶,子宮内避妊器具の挿入や除去

・ 心血管領域:心臓カテーテル検査・経皮的血管内カテーテル治療

・ 手術に伴う皮膚切開(とくにアトピー性皮膚炎症例)

予防的抗菌薬投与を推奨しない

・ 歯科口腔外科領域:非感染部位からの局所浸潤麻酔,歯科矯正処置,抜髄処置

・ 呼吸器領域:気管支鏡・喉頭鏡検査,気管内挿管(経鼻・経口)

・ 耳鼻科領域:鼓室穿孔時のチューブ挿入

・ 消化管領域:経食道心エコー図・上部内視鏡検査(生検を含む)

・ 泌尿器・生殖器領域:尿道カテーテル挿入,経尿道的内視鏡(膀胱尿道鏡,腎盂尿管鏡)

・ 心血管領域:中心静脈カテーテル挿入

詳しくは「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」をご覧ください。

「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_nakatani_h.pdf


拡張型心筋症

【拡張型心筋症とは】

拡張型心筋症(Dilated cardiomyopathy: DCM)とは、心筋症の一つで、「左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とする疾患群」と定義され、左室の異常な拡大が特徴となる病気です。進行すると左室機能低下から心不全を引き起こします。原因は不明ですが、いくつかの遺伝性素因、ウイルス感染等に対する自己免疫異常、心筋への自己抗体が関与していることがわかって来ています。特定疾患として研究の対象となっています。詳しくは難病情報センターのページをご覧ください。

https://www.nanbyou.or.jp/entry/3986

【拡張型心筋症の症状】

初期の拡張型心筋症は無症状で、検診にて心電図異常や胸部レントゲンにおける心拡大等の指摘をきっかけに精査にて見付かります。拡張型心筋症は進行すると左室機能低下から心不全を引き起こします。進行すると、不整脈や不整脈による塞栓症が症状となることもあります。

【拡張型心筋症の診断】

診断は主に心エコーにて、左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とした所見を評価します。また、基礎疾患ないし全身性の異常に続発し類似した病態を示す「特定心筋症」を除外する必要があります。具体的には、虚血性心筋症、高血圧性心筋症、肥大型心筋症拡張相、心サルコイドーシス、アミロイドーシス、心筋炎、不整脈原性右室心筋症、アルコール性心筋症、脚気心、左室緻密化障害、筋ジストロフィーに伴う心筋疾患、ミトコンドリア心筋症、薬剤誘発性心筋症、Fabry 病、産褥心筋症(周産期心筋症)などの、他の二次性の原因を除外することが重要です。心エコーに加えて、採血、心臓MRI、冠動脈カテーテル検査、心筋生検などが必要になる場合もあります。不整脈の合併についてホルター心電図検査にて精査します。

【拡張型心筋症の治療】

拡張型心筋症の治療については、エビデンスが確立していない部分も多いのが現状ですが、ACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬、レニン拮抗薬、β遮断薬、拡張型心筋症の病態を考えた場合に抑制的に作用すると考えられています。また、拡張型心筋症の合併症に対して適宜適切な治療を行って行きます。詳しくは、「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン」をご覧ください。

「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_tomoike_h.pdf

・ACE阻害薬、ARB

アジルバ(アジルサルタン)、オルメテック(オルメサルタン)、ブロプレス(カルデサルタン)、ディオバン(バルサルタン)、ミカルディス(テルミサルタン)、イルベタン(イルベサルタン)、ニューロタン(ロサルタン)、レニベース(エナラプリル)、タナトリル(イミダプリル)、コバシル(ペリンドプリル)、ACE阻害薬、ARBと呼ばれる降圧薬です。心筋リモデリング抑制効果を期待して使います。

・アルドステロン拮抗薬、レニン拮抗薬

アルダクトン(スピロノラクトン)、セララ(エプレレノン)、ラジレス(アリスキレン)、アルドステロンまたはレニンをブロックします。拡張型心筋症の進行抑制を期待して使います。

・βブロッカー

アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、セロケン(メトプロロール)、テノーミン(アテノロール)、インデラル(プロプラノロール)、交感神経をブロックします。

・禁煙

一般的に全ての心疾患において禁煙は推奨されます。

・非薬物療法

非薬物療法としては、ペースメーカー埋込術、植込型除細動器、心室再同期療法、補助人工心臓、心移植

拡張型心筋症の根本治療は心移植です。または、心移植までの進行抑制を目指した治療がメインになります。必要に応じて大学病院等に紹介しています。また大学病院等による年一回程度の経過観察通院と、普段の定期通院と、医療機関で協力しながら組み合わせてフォローしていくケースも多いです。お気軽に主治医までご相談ください。詳しくは国立循環器病研究センター、慶應義塾大学病院のページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph104.html

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000200.html

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


β遮断薬

【β遮断薬とは】

β遮断薬(beta blocker)とは、交感神経のβ受容体への作用をブロックする薬です。交感神経は心臓への作用として、強心作用を発揮しますが、長期的には心臓への負担を増やし、心臓は疲れ果てて心不全という状態になってしまいます。βブロッカーは、心臓を適度に休めることで心機能を保護する作用があることがわかっています。具体的には、心筋の収縮力を落とす作用(陰性変力作用: negative inotropic effect)と心拍数を減らす作用(陰性変時作用: negative chronotropic effect)の2つの作用からなります。

【β遮断薬の適応】

心筋酸素需要(Myocardial oxygen demand)という概念があります。これは心臓の筋肉が必要とする酸素の量が多ければ多いほど、心臓への負担が大きいという考え方で、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、心不全、肥大型心筋症などでは心筋酸素需要を軽減することが治療における一つの共通したコンセプトです。頻脈性の心房細動等の頻脈性不整脈に対してはレートコントロール目的に使います。また、交感神経による血圧上昇作用をブロックすることで降圧作用、収縮期血圧と拡張期血圧の差、脈圧を軽減する作用から大動脈疾患の進行抑制効果を期待しても使われます。詳しくは下記ページをご覧ください。

労作性狭心症→https://循環器内科.com/eap

陳旧性心筋梗塞→https://循環器内科.com/omi

心不全→https://循環器内科.com/hf

肥大型心筋症→https://循環器内科.com/hcm

高血圧症→https://循環器内科.com/ht

胸部大動脈瘤→https://循環器内科.com/taa

急性大動脈解離→https://循環器内科.com/aad

【β遮断薬のエビデンス】

心臓の脈や収縮力を適度に落として心臓を休ませ、心筋梗塞の再発を防ぎます。事実、アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、セロケン(メトプロロール)では大規模臨床試験によって心保護作用が立証されています。

・アーチスト(カルベジロール)

αβブロッカーという薬です。死亡のリスクが65%有意に減少することがUS Carvedilol HF試験にて立証されています。心血管死、非致死性心筋梗塞、全死亡が有意に減少することがCAPRICORN試験によって立証されています。心不全、頻脈に対して心保護作用のために使います。β1選択性なし、α:β遮断作用1:8

https://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c1999087.html

https://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2001069.html

・メインテート(ビソプロロール)、ビソノテープ(ビソプロロール)

死亡率、心血管死、入院リスクが有意に減少することがCIBIS II試験にて立証されています。心不全、頻脈に対して心保護作用のために使います。貼付薬、ビソノテープがあります。β1選択性75:1、内因性交感神経刺激作用(Intrinsic Sympathomimetic Activity: ISA)-

https://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c1999173.html

・セロケン(メトプロロール)

全死亡、突然死、心不全悪化による死亡が有意に減少することがMERIT-HF試験にて立証されています。心不全、頻脈に対して心保護作用のために使います。

https://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2000061.html

・インデラル(プロプラノロール)

静注薬があります。β1選択性あり、内因性交感神経刺激作用なし

・アロチノール(アロチノロール塩酸塩)

αβブロッカーです。本態性振戦に適応があります。

【アドレナリン受容体とは】

アドレナリン受容体とは、アドレナリンを始めとしたカテコラミン(ドパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン)と呼ばれる交感神経刺激が臓器に影響に及ぼす際に作用する受容体です。α1、α2、β2、β3、β3の5種類があり、さらにドパミン受容体Dがあります。やや専門的になりますが、交感神経に関わる薬剤の作用はアドレナリン受容体の作用から理解が可能です。

α1:末梢血管収縮、心筋収縮力増加、腎血管収縮、散瞳

α2:末梢血管収縮、膵島分泌抑制

β1:心拍数増加、心筋収縮力増加、房室伝導促進

β2:気管支弛緩、冠動脈拡張、腎血管拡張、末梢血管拡張

β3:脂肪分解促進、膀胱平滑筋弛緩

D:腎血管拡張

循環器内科では、基本的に心保護作用を期待してβブロッカーを使います。心臓を休めたい、心筋酸素需要を減らしたいのが目標ですので、α1、α2、β1作用はブロックしつつ、β2、β3、D作用はブロックしたくないのが理想です。理想に一番近いのがアーチスト(カルベジロール)であり、特にβ2作用をブロックをしたくない時に向いているのがβ1選択性が高いメインテート(ビソプロロール)です。


 

血管拡張薬

【血管拡張薬とは】

血管拡張薬(vasodilators)とは、血管平滑筋に作用して血管を拡張させる作用のある薬です。主に冠動脈を拡張させる作用のある薬は、狭心症治療として使われます。冠攣縮性狭心症に対しては狭心症発作の予防として使われます。

【血管拡張薬の適応】

急性冠症候群→https://循環器内科.com/acs

労作性狭心症→https://循環器内科.com/eap

冠攣縮性狭心症→https://循環器内科.com/vsa

高血圧症→https://循環器内科.com/ht

血管拡張薬は主に冠動脈を拡張させたい時に使います。労作性狭心症、冠攣縮性狭心症の治療または発作予防に使います。降圧作用も持つことから狭心症があり、高血圧症がある場合には降圧作用も期待して使う場合があります。

【血管拡張薬の分類】

・硝酸薬

ニトロペン(ニトログリセリン)、ニトロール(硝酸イソソルビド)、フランドル(硝酸イソソルビド)、ニトロダーム(ニトログリセリン)、ミニトロテープ(ニトログリセリン)、ミオコールスプレー(ニトログリセリン)、アイトロール(一硝酸イソソルビド)、全身の血管と冠動脈拡張作用で、狭心症発作を解除します。ニトロペンは舌下錠、ニトロールやミオコールはスプレー、フランドルはテープがあります。

・カルシウム拮抗薬

アダラート(ニフェジピン)、アムロジン(アムロジピン)、コニール(ベニジピン)、カルブロック(アゼルニジピン)、ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬、ヘルベッサー(ジルチアゼム)、ワソラン(ベラパミル)、非ジヒドロピリミジン系カルシウム拮抗薬です。血管拡張作用で狭心症発作を防ぎます。

・シグマート(ニコランジル)

硝酸薬作用とカリウムATPチャネル開口作用という2つの特徴的な作用で、冠動脈拡張、心筋虚血耐性を高め、狭心症発作を防ぎます。シグマート5mg 3T適宜増減で投与します。

・その他の血管拡張薬

カタプレス(クロニジン)、アルドメット(メチルドパ)、べハイド(レセルピン)、アプレゾリン(ヒドララジン)、エパデール(イコサペント酸エチル)、プレタール(シロスタゾール)、アンプラーグ(サルポグレラート)、交感神経遮断作用、末梢血管の収縮をブロックすることで血管拡張作用を発揮します。また、一部の抗血小板薬には弱い血管拡張作用があります。

硝酸薬は作用時間にもよりますが、硝酸薬耐性を来すこともあります。耐性化した場合には一定の休薬期間を設けるか、耐性化しないように一日の間で休薬時間帯を設けることなどで対処が可能です。血管拡張薬の共通の副作用として、頭痛やふらつきがあります。これは、心臓の血管だけではなく、脳の血管や全身の血管を拡張してしまうからで、脳の血管が急に拡張すると片頭痛発作と似たような作用で頭痛が発生します。逆に頭痛が発生するということは血管拡張作用が効いているという証拠でもあります。ED治療薬のバイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)は血管拡張作用により危篤な低血圧症、ショック状態を来すことがあるため併用禁忌です。


 

抗凝固療法

【抗血栓療法とは】

抗血栓療法(Antithrombotic therapy)とは、血栓症の発症を予防するための治療のことです。抗血小板療法(Antiplatelet therapy)と抗凝固療法(Anticoagulant therapy)の2つがあります。さらに、血栓症の予防ではなく、すでに出来てしまった血栓に対する治療法としては、血栓溶解療法や血栓回収療法があります。「血液をサラサラにする治療」とひとまとめにして説明してしまうこともありますが、抗血小板療法、抗凝固療法、それぞれ厳密に区別する必要があります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph80.html

【抗血小板療法と抗凝固療法】

抗血小板療法と抗凝固療法は似て非なるものです。この2つの区別は重要です。なぜなら、抗凝固療法が必要なものに抗血小板療法をしても効果がないばかりか出血の副作用が増えてしまうことがわかっており、逆に、抗血小板療法が必要な場合に抗凝固療法をしても有益性はないことがわかっているからです。両者は別物なのです。「JAST試験」または「ACTIVE W試験」をご覧ください。

https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/61055.html

https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/61026.html

【抗凝固療法とは】

代表的な抗凝固薬、ワーファリン

代表的な疾患:心房細動、心原性脳塞栓症、機械弁置換後、深部静脈血栓症、他

経口抗凝固薬:ワーファリン(ワルファリン)、プラザキサ(ダビガトラン)、エリキュース(アピキサバン)、イグザレルト(リバーロキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)、他

凝固因子を主体とした血栓、フィブリン血栓の発症を予防するための治療です。静脈血栓と呼ばれることもありますが、血液の流れが遅いところ、血液の鬱滞があるところに出来る血栓のことで、心房細動では左房内に出来ます。心房細動による心原性脳塞栓症の予防には抗凝固療法が必要です。以前は、抗凝固療法を行わない場合の心房細動に対して抗血栓作用を期待してバイアスピリンの低用量処方が行われていたことがあったようですが、有益性がないばかりか、有害であることが証明されてしまい、現在は推奨されていません。

発作性心房細動→https://循環器内科.com/paf

心房細動→https://循環器内科.com/af

心臓弁膜症→https://循環器内科.com/vhd

脳卒中→https://循環器内科.com/stroke

心原性脳塞栓症→https://循環器内科.com/cce

一過性脳虚血発作→https://循環器内科.com/tia

肺血栓塞栓症→https://循環器内科.com/pte

深部静脈血栓症→https://循環器内科.com/dvt

急性心筋梗塞でステント留置後であり、かつ、心房細動による心原性脳塞栓症予防が必要な場合は、抗血小板療法と抗凝固療法と療法が必要になることがありますが、出血リスクとのバランスを考慮し、個別に判断して行きます。詳しくは「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」をご覧ください。

「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_hori_h.pdf

また、最善の抗血小板薬、抗凝固療法は、日進月歩で変化していますので、最新のエビデンスに関しましては抗血栓療法トライアルデータベースをご覧ください。

抗血栓療法トライアルデータベース→https://att.ebm-library.jp/content/guideline.html

【心房細動に対する抗凝固療法】

心房細動は心原性脳塞栓症という脳梗塞の原因となる不整脈です。心房細動が原因の脳梗塞、心原性脳塞栓症は重症な脳梗塞になることが多く予防が重要です。心房細動による脳梗塞を防ぐには、血栓予防の抗凝固療法という治療を開始します。抗凝固薬はワルファリン1種類と直接抗凝固薬4種類と、合計5種類あります。

・プラザキサ(ダビガトラン)、1日2回内服の直接経口抗凝固薬(DOAC: Direct Oral AntiCoagulant)です。安全性高く脳梗塞の予防が出来ます。ワルファリンと比べて出血リスクが少なく、出血しても危篤な重症出血となりにくい、などのメリットがあります。抗凝固療法の一番の副作用は出血ですが、プラザキサの特徴としては、出血時にプラザキサの薬の効果をブロックする中和薬、プリズバインド(イダルシズマブ)があることとです。

・イグザレルト(リバーロキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)、1日1回内服の直接経口抗凝固薬(DOAC: Direct Oral AntiCoagulant)です。プラザキサと同様に、安全性高く脳梗塞の予防が出来ます。新薬なので薬価が高いのと、薬が切れるのが早いので一日でも飲み忘れてはいけない点が注意です。1日1回内服です。1日2回の薬を飲み忘れなく続けるのが難しい方に向いています。

・エリキュース(アピキサバン)、1日2回内服の直接経口抗凝固薬(DOAC: Direct Oral AntiCoagulant)です。上記の3剤と同じく、安全性高く脳梗塞の予防が出来ます。1日2回内服です。

・ワーファリン(ワルファリン)、昔からある抗凝固薬です。僧帽弁狭窄症や人工弁置換術後などはワーファリンによる抗凝固療法が必要です。また、今までずっとワーファリン治療にて特に合併症も何も問題が起きていない場合は無理矢理と新薬に変える必要はないと考えています。一度出血を起こすと止まりにくい、定期的に採血で凝固能をチェックする必要がある、ビタミンK依存性凝固因子というものに作用して効果を発揮するため、ビタミンKを多く含む食べ物の食事制限があること、肝臓癌の腫瘍マーカーPIVKA-IIが肝臓癌でなくても陽性となる、などが注意です。詳しくは心房細動、心原性脳塞栓症のページをご覧ください。

心房細動→https://循環器内科.com/af

心原性脳塞栓症→https://循環器内科.com/cce

【血栓止血学とは】

医学の中で、血小板、凝固、線溶などを詳しく扱う学問が、血栓止血学(Thrombosis and Hemostasis)です。かなりマニアックなところまで深入りせずに、ざっくり要点のみ言うと、人間の血栓止血は一次止血、二次止血、線溶の3段階からなります。

・一次止血(Primary hemostasis)

人間が出血を起こした場合、まずは出血を起こした血管内皮の障害部位に血小板が集まり、血小板が凝集し、止血を行います。これを一次止血と言います。この時の血小板が主体となって出来た血栓を血小板血栓と言います。抗血小板薬は一次止血をブロックして効果を発揮します。

・二次止血(Secondary hemostasis)

次に、血管のずり応力や組織因子の影響から凝固因子の活性化が起こります。凝固因子には12種類あり、お互いに影響し合ながら活性化第X因子(Xa)の作用でプロトロンビンがトロンビンに、トロンビンの作用でフィブリノゲンがフィブリン変化し、最終的にはフィブリン血栓を形成します。これが二次止血です。凝固因子の活性化には、異物との接触をトリガーに活性化する内因系と、組織の損傷をトリガーに活性化する外因系と、合流して活性化第X因子(Xa)からフィブリン形成まで至る共通系と3つのプロセスがあります。抗凝固薬は二次止血をブロックして効果を発揮します。

・線溶(Fibrinolysis)

最後に、人間の身体は、余分なところに出来てしまった血栓、病的血栓は自ら取り除く仕組みが備わっています。フィブリンの線維を溶かしていくことから、これを線維素溶解、線溶と呼びます。プラスミン、プラスミノーゲンアクティベータなどが関与しています。これを治療に応用したのが、血栓溶解療法です。

詳しくは日本血栓止血学会または、金沢大学第三内科のブログ、朝倉先生の本がとんでもなくわかりやすいですので、ぜひ興味がある方はご覧ください。

日本血栓止血学会→https://www.jsth.org

「血液・呼吸器内科のお役立ち情報」→https://www.3nai.jp/weblog

「臨床に直結する血栓止血学」→https://www.amazon.co.jp/dp/4498125797


抗血小板療法

【抗血栓療法とは】

抗血栓療法(Antithrombotic therapy)とは、血栓症の発症を予防するための治療のことです。抗血小板療法(Antiplatelet therapy)と抗凝固療法(Anticoagulant therapy)の2つがあります。さらに、血栓症の予防ではなく、すでに出来てしまった血栓に対する治療法としては、血栓溶解療法や血栓回収療法があります。「血液をサラサラにする治療」とひとまとめにして説明してしまうこともありますが、抗血小板療法、抗凝固療法、それぞれ厳密に区別する必要があります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph80.html

【抗血小板療法と抗凝固療法】

抗血小板療法と抗凝固療法は似て非なるものです。この2つの区別は重要です。なぜなら、抗凝固療法が必要なものに抗血小板療法をしても効果がないばかりか出血の副作用が増えてしまうことがわかっており、逆に、抗血小板療法が必要な場合に抗凝固療法をしても有益性はないことがわかっているからです。両者は別物なのです。「JAST試験」または「ACTIVE W試験」をご覧ください。

https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/61055.html

https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/61026.html

【抗血小板療法とは】

代表的な抗血小板薬:バイアスピリン

代表的な疾患:心筋梗塞、狭心症、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、他

経口抗血小板薬:バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)、プレタール(シロスタゾール)、パナルジン(チクロピジン)、他

血小板を主体とした血栓、血小板血栓の発症を予防するための治療です。動脈血栓と呼ばれることがあり、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒等の動脈硬化性の危険因子を背景に発症します。脳梗塞の場合は、必要な抗血栓療法が違って来ますので、非心原性なのか心原性なのかの区別が重要です。詳しくは下記ページをご覧ください。

急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

脳卒中→https://循環器内科.com/stroke

ラクナ梗塞→https://循環器内科.com/li

アテローム血栓性脳梗塞→https://循環器内科.com/atbi

一過性脳虚血発作→https://循環器内科.com/tia

詳しくは「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」をご覧ください。

「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_hori_h.pdf

また、最善の抗血小板薬、抗凝固療法は、日進月歩で変化していますので、最新のエビデンスに関しましては抗血栓療法トライアルデータベースをご覧ください。

抗血栓療法トライアルデータベース→https://att.ebm-library.jp/content/guideline.html

【急性心筋梗塞に対してステント留置後の抗血小板療法】

抗血小板療法の中で特に重要なものが急性心筋梗塞の二次予防としての抗血小板療法です。急性心筋梗塞の治療として一番多いケースとして、冠動脈カテーテル治療を行い、ステント留置を行った場合、抗血小板薬二剤併用療法(DAPT: Dual Anti-Platelet Therapy)が必要になります。治療の目標は急性心筋梗塞の再発予防です。冠危険因子に対して適切な治療を行うことに加えて、特にステント留置を行った場合には、ステント留置後のステント内再狭窄(ISR: Intra-Stent Restenosis)を防ぐために、抗血小板薬二剤併用療法を行います。

・バイアスピリン、エフィエント(プラスグレル)

抗血小板薬二剤併用療法(Dual Anti-Platelet Therapy: DAPT)と言います。通常、バイアスピリン(アスピリン)をベースの一剤として、プラビックス(クロピドグレル)かエフィエント(プラスグレル)かもう一剤を併用します。通常、ステント留置から6ヶ月後から12ヶ月後に、再度フォローアップの冠動脈造影を行います。

・バイアスピリン

フォローアップの冠動脈造影にてステント内再狭窄を認めないことを確認後、DAPTからSAPTに切り替え可能かどうか判断します。個々の症例によってケースバイケースですが、多くの場合PCI後DAPT、9ヶ月後前後に冠動脈造影、問題なければSAPTに切り替えを行います。SAPT(Single Anti-Platelet Therapy)は原則として生涯継続が必要です。

詳しくは冠動脈カテーテル治療、陳旧性心筋梗塞のページをご覧ください。

冠動脈カテーテル治療→https://循環器内科.com/pci

陳旧性心筋梗塞→https://循環器内科.com/omi

【血栓止血学とは】

医学の中で、血小板、凝固、線溶などを詳しく扱う学問が、血栓止血学(Thrombosis and Hemostasis)です。かなりマニアックなところまで深入りせずに、ざっくり要点のみ言うと、人間の血栓止血は一次止血、二次止血、線溶の3段階からなります。

・一次止血(Primary hemostasis)

人間が出血を起こした場合、まずは出血を起こした血管内皮の障害部位に血小板が集まり、血小板が凝集し、止血を行います。これを一次止血と言います。この時の血小板が主体となって出来た血栓を血小板血栓と言います。抗血小板薬は一次止血をブロックして効果を発揮します。

・二次止血(Secondary hemostasis)

次に、血管のずり応力や組織因子の影響から凝固因子の活性化が起こります。凝固因子には12種類あり、お互いに影響し合ながら活性化第X因子(Xa)の作用でプロトロンビンがトロンビンに、トロンビンの作用でフィブリノゲンがフィブリン変化し、最終的にはフィブリン血栓を形成します。これが二次止血です。凝固因子の活性化には、異物との接触をトリガーに活性化する内因系と、組織の損傷をトリガーに活性化する外因系と、合流して活性化第X因子(Xa)からフィブリン形成まで至る共通系と3つのプロセスがあります。抗凝固薬は二次止血をブロックして効果を発揮します。

・線溶(Fibrinolysis)

最後に、人間の身体は、余分なところに出来てしまった血栓、病的血栓は自ら取り除く仕組みが備わっています。フィブリンの線維を溶かしていくことから、これを線維素溶解、線溶と呼びます。プラスミン、プラスミノーゲンアクティベータなどが関与しています。これを治療に応用したのが、血栓溶解療法です。

詳しくは日本血栓止血学会または、金沢大学第三内科のブログ、朝倉先生の本がとんでもなくわかりやすいですので、ぜひ興味がある方はご覧ください。

日本血栓止血学会→https://www.jsth.org

「血液・呼吸器内科のお役立ち情報」→https://www.3nai.jp/weblog

「臨床に直結する血栓止血学」→https://www.amazon.co.jp/dp/4498125797


抗血栓療法

【抗血栓療法とは】

抗血栓療法(Antithrombotic therapy)とは、血栓症の発症を予防するための治療のことです。抗血小板療法(Antiplatelet therapy)と抗凝固療法(Anticoagulant therapy)の2つがあります。さらに、血栓症の予防ではなく、すでに出来てしまった血栓に対する治療法としては、血栓溶解療法や血栓回収療法があります。「血液をサラサラにする治療」とひとまとめにして説明してしまうこともありますが、抗血小板療法、抗凝固療法、それぞれ厳密に区別する必要があります。詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph80.html

【抗血小板療法と抗凝固療法】

抗血小板療法と抗凝固療法は似て非なるものです。この2つの区別は重要です。なぜなら、抗凝固療法が必要なものに抗血小板療法をしても効果がないばかりか出血の副作用が増えてしまうことがわかっており、逆に、抗血小板療法が必要な場合に抗凝固療法をしても有益性はないことがわかっているからです。両者は別物なのです。「JAST試験」または「ACTIVE W試験」をご覧ください。

https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/61055.html

https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/61026.html

【抗血小板療法とは】

代表的な抗血小板薬:バイアスピリン

代表的な疾患:心筋梗塞、狭心症、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、他

経口抗血小板薬:バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)、プレタール(シロスタゾール)、パナルジン(チクロピジン)、他

血小板を主体とした血栓、血小板血栓の発症を予防するための治療です。動脈血栓と呼ばれることがあり、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒等の動脈硬化性の危険因子を背景に発症します。脳梗塞の場合は、必要な抗血栓療法が違って来ますので、非心原性なのか心原性なのかの区別が重要です。詳しくは下記ページをご覧ください。

急性心筋梗塞→https://循環器内科.com/ami

不安定狭心症→https://循環器内科.com/uap

陳旧性心筋梗塞→https://循環器内科.com/omi

脳卒中→https://循環器内科.com/stroke

ラクナ梗塞→https://循環器内科.com/li

アテローム血栓性脳梗塞→https://循環器内科.com/atbi

一過性脳虚血発作→https://循環器内科.com/tia

【抗凝固療法とは】

代表的な抗凝固薬、ワーファリン

代表的な疾患:心房細動、心原性脳塞栓症、機械弁置換後、深部静脈血栓症、他

経口抗凝固薬:ワーファリン(ワルファリン)、プラザキサ(ダビガトラン)、エリキュース(アピキサバン)、イグザレルト(リバーロキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)、他

凝固因子を主体とした血栓、フィブリン血栓の発症を予防するための治療です。静脈血栓と呼ばれることもありますが、血液の流れが遅いところ、血液の鬱滞があるところに出来る血栓のことで、心房細動では左房内に出来ます。心房細動による心原性脳塞栓症の予防には抗凝固療法が必要です。以前は、抗凝固療法を行わない場合の心房細動に対して抗血栓作用を期待してバイアスピリンの低用量処方が行われていたことがあったようですが、有益性がないばかりか、有害であることが証明されてしまい、現在は推奨されていません。

発作性心房細動→https://循環器内科.com/paf

心房細動→https://循環器内科.com/af

心臓弁膜症→https://循環器内科.com/vhd

脳卒中→https://循環器内科.com/stroke

心原性脳塞栓症→https://循環器内科.com/cce

一過性脳虚血発作→https://循環器内科.com/tia

肺血栓塞栓症→https://循環器内科.com/pte

深部静脈血栓症→https://循環器内科.com/dvt

急性心筋梗塞でステント留置後であり、かつ、心房細動による心原性脳塞栓症予防が必要な場合は、抗血小板療法と抗凝固療法と療法が必要になることがありますが、出血リスクとのバランスを考慮し、個別に判断して行きます。詳しくは「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」をご覧ください。

「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_hori_h.pdf

また、最善の抗血小板薬、抗凝固療法は、日進月歩で変化していますので、最新のエビデンスに関しましては抗血栓療法トライアルデータベースをご覧ください。

抗血栓療法トライアルデータベース→https://att.ebm-library.jp/content/guideline.html

【血栓止血学とは】

医学の中で、血小板、凝固、線溶などを詳しく扱う学問が、血栓止血学(Thrombosis and Hemostasis)です。かなりマニアックなところまで深入りせずに、ざっくり要点のみ言うと、人間の血栓止血は一次止血、二次止血、線溶の3段階からなります。

・一次止血(Primary hemostasis)

人間が出血を起こした場合、まずは出血を起こした血管内皮の障害部位に血小板が集まり、血小板が凝集し、止血を行います。これを一次止血と言います。この時の血小板が主体となって出来た血栓を血小板血栓と言います。抗血小板薬は一次止血をブロックして効果を発揮します。

・二次止血(Secondary hemostasis)

次に、血管のずり応力や組織因子の影響から凝固因子の活性化が起こります。凝固因子には12種類あり、お互いに影響し合ながら活性化第X因子(Xa)の作用でプロトロンビンがトロンビンに、トロンビンの作用でフィブリノゲンがフィブリン変化し、最終的にはフィブリン血栓を形成します。これが二次止血です。凝固因子の活性化には、異物との接触をトリガーに活性化する内因系と、組織の損傷をトリガーに活性化する外因系と、合流して活性化第X因子(Xa)からフィブリン形成まで至る共通系と3つのプロセスがあります。抗凝固薬は二次止血をブロックして効果を発揮します。

・線溶(Fibrinolysis)

最後に、人間の身体は、余分なところに出来てしまった血栓、病的血栓は自ら取り除く仕組みが備わっています。フィブリンの線維を溶かしていくことから、これを線維素溶解、線溶と呼びます。プラスミン、プラスミノーゲンアクティベータなどが関与しています。これを治療に応用したのが、血栓溶解療法です。

詳しくは日本血栓止血学会または、金沢大学第三内科のブログ、朝倉先生の本がとんでもなくわかりやすいですので、ぜひ興味がある方はご覧ください。

日本血栓止血学会→https://www.jsth.org

「血液・呼吸器内科のお役立ち情報」→https://www.3nai.jp/weblog

「臨床に直結する血栓止血学」→https://www.amazon.co.jp/dp/4498125797


高血圧緊急症

【高血圧緊急症とは】

高血圧緊急症(Hypertensive emergency)とは、血圧が急激に上昇してしまうことによって、心臓、脳、腎臓、網膜、大血管など臓器障害の急速な進行を来している状態です。血圧は、180/120mmHgを超える重症高血圧で、200を超えることもあります。重度の高血圧であっても臓器障害を来していない場合は、高血圧切迫症(hypertensive urgency)として扱います。

【高血圧緊急症の臓器障害】

高血圧性脳症、脳血管障害

急性心不全、急性心筋梗塞、不安定狭心症

急性大動脈解離、大動脈瘤切迫破裂

急性肺水腫

急性腎不全

子癇

【高血圧緊急症の治療】

速やかに降圧をします。ニカルジピン、ジルチアゼム、ニトログリセリン、ニトロプルシド、ヒドララジン、フェントラミン、プロプラノロール、など、短時間作動型で静脈注射で調整可能なものが望ましいです。急性心不全や急性肺水腫を伴っている場合は、フロセミド、カルペリチドなどのも追加します。

一般的に、初めの1時間以内では平均血圧で25%以上は降圧せず、次の2-6時間では160/100-110mmHgを目標とし、初期降圧目標に達したら内服薬を開始し、注射薬は用量を漸減しながら中止していき、経口の降圧薬へ切り替えて行きます。

臓器障害の進行を認めない場合、高血圧切迫症の場合は、急速な降圧が予後を改善するというエビデンスは特にないため、通常の高血圧と同様に血圧を下げて行きます。

詳しくはMindsのページをご覧ください。

https://minds.jcqhc.or.jp/n/cq/D0000238

【二次性高血圧症の鑑別】

何かの明らかな病気があって、その病気の症状の一つとして血圧が上昇している場合に、二次性高血圧症と言います。高血圧症患者さん全体の10%程度と言われています。

二次性高血圧症を疑う場合:

・初診時

・若年性の高血圧症

・急性に増悪する高血圧症

・高度の高血圧症

・血圧変動の激しい高血圧症

・薬剤抵抗性の高血圧症

・腎機能障害を伴う場合

・電解質異常を伴う場合

・その他、二次性高血圧症を疑う臨床症状を認める場合

二次性高血圧症の原因:

二次性高血圧症の原因は、ホルモンの異常、血管の異常、腎臓病など、多岐に渡ります。この中でも頻度が高いのが、原発性アルドステロン症、睡眠時無呼吸症候群と言われています。それぞれ専門医の担当領域になりますが、簡潔に説明します。

・原発性アルドステロン症

血圧を上げるアルドステロンというホルモンが過剰で血圧が上がる病気です。血液検査でカリウム低値を示すことがあります。まずは採血にてレニン活性、アルドステロン、腹部CTなどで調べて行きます。

・褐色細胞腫

血圧を上げるカテコラミンというホルモンが過剰で血圧が上がる病気です。採血、血中カテコラミンの値を調べて行きます。

・甲状腺機能異常

血圧にも関わる甲状腺ホルモンというホルモンが異常で血圧が上がる病気です。採血にてTSH、fT3、fT4などの甲状腺機能を調べて行きます。

・睡眠時無呼吸症候群

睡眠中の呼吸停止が原因で血圧を上げる交感神経の緊張が過剰になって血圧が上がります。まずは睡眠時無呼吸検査で調べて行きます。

・クッシング症候群

血圧を上げるステロイドというホルモンが過剰で血圧が上がる病気です。まずは採血にてACTH、コルチゾールなどを調べて行きます。

・末端肥大症

血圧を上げる成長ホルモンというホルモンが過剰で血圧が上がる病気です。採血にてGH、IGF-I、頭部MRIなどで調べて行きます。

・腎血管性高血圧

腎臓へ血液を送る血管に異常があって血圧が上がる病気です。まずは採血、腹部血管検査にて調べて行きます。

・腎実質性高血圧症

糖尿病性腎症や糸球体腎炎などの慢性腎臓病が原因で血圧が上がる状態です。まずは腎疾患の既往歴を確認します。

・薬剤性高血圧症

血圧を上げる作用のある薬剤の影響で血圧が上がる状態です。まずは服薬歴を確認します。処方薬だけではなく、一般薬、サプリメント、漢方、健康食品なども関係していることもあります。薬剤ではありませんが、喫煙は明らかに血圧を上げる原因になります。

他、専門的になってしまうため割愛しますが、稀な遺伝疾患など、適切な専門医へ紹介などし、血圧が上がる稀な病気をさらに詳しく調べることがあります。

高血圧症→https://循環器内科.com/ht

二次性高血圧症→https://循環器内科.com/sht

詳しくは主治医までご相談ください。


 

1型糖尿病

【1型糖尿病とは】

1型糖尿病(type 1 diabetes)とは、膵臓のβ細胞というインスリンを分泌する細胞が壊れてしまう病気です。同じ糖尿病でも、主に暴飲暴食や運動不足などの生活習慣が原因で発症する2型糖尿病とは別の病気です。血糖を下げるインスリンというホルモンが足りなくなったり、全く出なくなるので高血糖になります。高血糖状態が続くと、太い血管や細い血管がだんだんと傷んで行き、糖尿病合併症を発症します。治療の目的は糖尿病合併症を防ぐことです。詳しくは国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターのページをご覧ください。

https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/050/index.html

【1型糖尿病の原因】

1型糖尿病の原因は全て解明されている訳ではありませんが、自分の身体の細胞を間違って攻撃してしまう自己免疫性であると言われています。実際、1型糖尿病の患者さんの血液を調べると、抗GAD抗体、IA-2抗体、抗インスリン抗体などの自己抗体が見付かることがあります。インスリン分泌量が減少し、最終的にはインスリンが必須の状態、インスリン依存状態へと至ります。発症と進行のスピードから次の3つの分類があります。

・劇症1型糖尿病

急激に発症し、1週間前後でインスリン依存状態に至るもの

・急性発症1型糖尿病

発症から数ヶ月間でインスリン依存状態に至るもの

・緩徐進行1型糖尿病(slowly progressive insulin-dependent diabetes mellitus: SPIDDM)

発症から半年から数年かけて緩徐にインスリン分泌が低下していくもの、発症初期は2型糖尿病と見分けが付かないことがありますが、進行状態を見ていくことや自己抗体を測定することで緩徐進行1型糖尿病だったと分かる場合があります。逆に急激な血糖状態の悪化した場合に、1型糖尿病の抗体をチェックすることがあります。

【1型糖尿病の合併症】

糖尿病の合併症に関しては、1型糖尿病、2型糖尿病、大きな違いはありません。糖尿病合併症は、まずは大きく大血管障害と微小血管障害の2つに分けられます。大血管障害とは、文字通り太い血管が動脈硬化を起こすことが原因です。具体的には、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患です。心臓の血管、脳の血管が詰まると命に関わります。微小血管障害は、細い血管の障害です。微小血管障害は主に3つあり、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症、これを糖尿病の3大合併症と呼ばれます。

・糖尿病性網膜症:眼の網膜というところにある血管が障害を受けます。視力障害、進行すると失明に至ります。失明、視力障害に起こした後に元に戻す治療法がありません。予防が第一です。

・糖尿病性腎症:腎臓は細い血管の集まりです。腎臓の機能がだんだんと低下して行き、慢性腎臓病、進行すると人工透析に至ります。人工透析、慢性腎臓病が悪化してから後から元に戻す治療法がありません。予防が第一です。

・糖尿病性神経症:心臓から一番遠い下肢の神経が障害を受けます。末梢動脈疾患と合わせて進行すると糖尿病性足病変、下肢壊疽、下肢切断に至ります。予防が第一です。

他に糖尿病の関連疾患として、易感染性、白内障、緑内障、顔面神経麻痺、歯周病、胆石、脂肪肝、勃起障害、自律神経障害などが関連していると言われています。

【1型糖尿病の治療】

1型糖尿病の治療はインスリン療法です。1型糖尿病は、2型糖尿病とは違い、インスリンが出ないことが原因ですので、インスリンの補充が必須です。病状にも寄りますが、食事に関係なく一日ずっと分泌されている「基礎インスリン」と、食事ごとに分泌される「追加インスリン」の2つがあります。

・持効型インスリン

持続的に効果が持続するインスリンです。基礎インスリンを補充する目的で使います。一日一回皮下注射、作用発現時間は1-2時間、明らかなピークがなく、24時間効果を発揮します。ランタス(インスリングラルギン)、トレシーバ(インスリンデグルデク)、レベミル(インスリンデテミル)などがあります。

・超速効型インスリン

すぐに効いてすぐに効き目が切れるインスリンです。追加インスリンを補充する目的で使います。食後高血糖に対し、毎食後皮下注射します。作用発現時間は10-20分、作用のピークは薬剤によりますが30分から3時間ほど、作用持続時間は3-5時間です。ノボラピッド(インスリンアスパルト)、ヒューマログ(インスリンリスプロ)、アピドラ(インスリングルリジン)などがあります。

1型糖尿病のインスリン療法は、基礎インスリンと追加インスリンを上手く組み合わせて行います。基本インスリン一日一回と、食事ごとに追加インスリンを投与していく、頻回注射法が基本です。

・インスリン治療に加えて、インスリン治療をサポートするように、経口血糖降下薬も併用することがあります。

他に、持続皮下インスリン注入法、インスリンポンプなどの治療法があります。研究中の治療法としては、膵臓移植、膵臓移植、再生医療などがあります。

お茶の水循環器内科では糖尿病外来を行っています。1型糖尿病の検査、1型糖尿病の診断、糖尿病の経口血糖降下薬、インスリン療法の導入、教育入院の相談、インスリン治療の継続など、様々な糖尿病の診療を行っています。お気軽に主治医までご相談ください。


 

冠動脈バイパス術

【冠動脈バイパス術とは】

冠動脈バイパス術(Coronary artery bypass grafting: CABG)とは、虚血性心疾患の治療法の一つで、冠動脈の血流が悪いところに、大動脈から新しく血管をつなぐことで血流を改善させる治療法です。狭心症の症状の改善と心筋梗塞の発症を予防します。人工心肺装置を使用する方法(On-pump CABG)と、人工心肺装置を使用しない方法(Off-pump CABG: OPCAB)があります。

「冠動脈バイパス術(Coronary artery bypass grafting: CABG)

https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvs/hcs/coronary.html

「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ochi_h.pdf

【冠動脈バイパス術の適応】

「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン」によると、安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術(PCI/CABG)の適応として、

(1)安定冠動脈疾患に対しては,まず生活習慣の管理と薬物療法が必須であり,症状や予後改善効果があると考えられる病変に対しては冠血行再建術を施行する.

(2)LAD近位部病変を含まない1枝あるいは2枝病変はPCIの適応である.

LAD近位部病変を含む1枝あるいは2枝病変についてはPCI/CABGともに考慮す
る.

ただしLAD入口部病変ではCABGを考慮する.

(3)3枝疾患は原則としてCABGの適応である.

ただしCABGのリスクが高い場合や,LAD近位部病変を含まないなどPCIが安全に施行されると判断される場合はPCIも選択可能である.

(4)非保護左主幹部病変は原則としてCABGの適応である.

ただしCABGのリスクが高いと判断される場合や,LMT入口部,体部などPCIが安全に施行できると判断される場合はPCIも選択可能である.その場合でも緊急CABGが迅速に行える体制が必須である.

以上の適応はあくまで基本原則であり,個々の患者の治療方針は,その臨床的背景や解剖学的条件,各施設の成績や体制,長期的課題などすべてを勘案し,特に重症冠動脈疾患では内科医と外科医が共同で討議して,患者に提案する

と記載されてています。

グラフト血管は、左内胸動脈(LITA)、右内胸動脈(RITA)、右胃大網動脈(GEA)、下腹壁動脈(IEA)、橈骨動脈(RA)、大伏在静脈(SVG)などが選ばれます。

詳しくは「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン」をご覧ください。

「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ochi_h.pdf

【冠動脈バイパス術が必要な場合】

冠動脈バイパス術が必要な場合、心臓血管外科がある医療機関に紹介します。都内であれば、榊原記念病院、東京大学医学部附属病院、慶應義塾大学病院、東京女子医科大学病院などに紹介することが多いです。詳しくは主治医までご相談ください。

「冠動脈バイパス術(Coronary artery bypass grafting: CABG)

https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvs/hcs/coronary.html


 

カテーテルアブレーション

【カテーテルアブレーションとは】

カテーテルアブレーション(Catheter ablation)とは、カテーテルを用いて不整脈を引き起こす心臓の異常な心筋を熱で焼灼して治すという不整脈の治療法です。心臓は刺激伝導系という一定の電気刺激で正常な動きをコントロールしています。不整脈とは刺激伝導系に何らかの異常があって正常な脈ではなくなることです。特に頻脈性不整脈では、正常な刺激伝導系以外に、異常自動能やリエントリーが原因ということがわかって来ています。不整脈を起こしている原因を特定して、そこを熱で異常が電気刺激を起こさないようにする治療法です。カテーテルアブレーション治療は、心房細動、心房粗動、WPW症候群、房室結節リエントリー性頻拍、心房頻拍、上室性頻脈性不整脈に対する房室ブロック作成術、心室期外収縮、心室頻拍などに対して有効です。詳しくは日本不整脈心電学会、国立循環器病研究センターのページをご覧ください。

https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-3/lecture-3-b

「電気生理学的検査・カテーテルアブレーション」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/arrhythmia/d1.html

【カテーテルアブレーションの適応】

カテーテルアブレーション査の適応について「不整脈の非薬物療法ガイドライン」に目安が記載されています。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン」では、ACC/AHAガイドラインに基づき、推奨度を以下の4つに分類されています。

(1)クラスⅠ:有益であるという根拠があり,適応であることが一般に同意されている

(2)クラスⅡa:有益であるという意見が多いもの

(3)クラスⅡb:有益であるという意見が少ないもの

(4)クラスⅢ:有益でないまたは有害であり,適応でないことで意見が一致している

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

以下、各論です。

心房細動

ClassⅠ:

1.高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認めず,かつ重症肺疾患のない薬物治療抵抗性の有症候性の発作性心房細動で,年間50例以上の心房細動アブレーションを実施している施設で行われる場合

ClassⅡa:

1.薬物治療抵抗性の有症候性の発作性および持続性心房細動

2.パイロットや公共交通機関の運転手等職業上制限となる場合

3.薬物治療が有効であるが心房細動アブレーション治療を希望する場合

ClassⅡb:

1.高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認める薬物治療抵抗性の有症候の発作性および持続性心房細動

2.無症状あるいはQOLの著しい低下を伴わない発作性および持続性心房細動

ClassⅢ:

1.左房内血栓が疑われる場合

2.抗凝固療法が禁忌の場合

心房粗動

ClassⅠ:

1.頻拍や失神,心不全等の症状,QOLの低下を伴う心房粗動

2.心房細動に対する薬物治療中に出現した通常型心房粗動

3.心房細動アブレーション中に出現するか以前に記録されている通常型心房粗動

ClassⅡa:

1.他の頻拍に対するカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された通常型心房粗動

2.薬物治療抵抗性の非通常型心房粗動

3.パイロットや公共交通機関の運転手等職業上制限となる場合

ClassⅡb:

1.他の頻拍に対するカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された非通常型心房粗動

WPW症候群

ClassⅠ:

1.生命の危険がある心房細動発作または失神等の重篤な症状や,軽症状でもQOLの著しい低下を伴う頻拍発作の既往がある場合

2.早期興奮の有無にかかわらず,頻拍発作があり患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

3.早期興奮があり,頻拍発作はないがパイロットや公共交通機関の運転手等,発作により多くの人命に関わる可能性がある場合

ClassⅡa:

1.早期興奮があり,頻拍発作はないが説明を受けた上で患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

房室結節リエントリー性頻拍

ClassⅠ:

1.失神等の重篤な症状やQOLの著しい低下を伴う頻拍発作の既往がある場合

2.頻拍発作があり,薬物治療の有無にかかわらず患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

ClassⅡa:

1.頻拍発作の心電図が確認されている患者で,電気生理検査で頻拍が誘発されず二重房室結節伝導路のみが認められた場合

2.他の頻拍に対する電気生理検査またはカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された房室結節リエントリー性頻拍

ClassⅡb:
1.頻拍発作の心電図が確認されていない患者で,電 気生理検査で頻拍が誘発されず二重房室結節伝導路のみが認められた場合

ClassⅢ:

1.頻拍発作の既往のない患者において,電気生理検査中に二重房室結節伝導路が認められるが,頻拍は誘発されない場合

心房頻拍

ClassⅠ:

1.症状を有する頻拍起源の限局した再発性の心房頻拍で薬物治療が無効な場合

2.インセサント型心房頻拍

ClassⅡa:

1.症状を有する頻拍起源の限局した心房頻拍で薬物治療が有効な場合

2.症状のない心房頻拍で心室機能低下を伴う場合

上室性頻脈性不整脈に対する房室ブロック作成術

ClassⅠ:

1.重篤な症状あるいは頻拍による高度の心機能低下を伴う,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な上室性頻脈性不整脈で,上室性不整脈に対するカテーテルアブレーションが不成功または施行できない場合

ClassⅡa:

1.QOLの著しい低下を伴う,薬物治療が無効または使用困難な上室性頻脈性不整脈で,上室性不整脈に対するカテーテルアブレーションが不成功または施行できない場合

ClassⅢ:

1.房室伝導を温存した方が有益だと考えられる場合

心室期外収縮

ClassⅠ:

1.心室期外収縮が多形性心室頻拍あるいは心室細動の契機になり,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

2.QOLの著しい低下または心不全を有する頻発性心室期外収縮で,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

3.頻発性心室期外収縮が原因で心臓再同期療法の両室ペーシング率が低下して十分な効果が得られず,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

ClassⅡa:

1.心機能低下を伴うか,または器質的心疾患に伴う流出路起源の頻発性心室期外収縮

2.流出路起源の頻発性心室期外収縮で,薬物治療が有効または未使用でも患者がカテーテルアブレー
ション治療を希望する場合

心室頻拍

Class Ⅰ:

1.心機能低下または心不全に伴う単形性心室頻拍で,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

2.植込み型除細動器が頻回に作動し,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

3.単形性心室頻拍が原因で心臓再同期療法の両室ペーシング率が低下して十分な効果が得られず,薬物治療が無効または副作用のため使用不能な場合

4.症状がありQOL低下を有する特発性心室頻拍で,薬物治療が有効または未使用でも患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

ClassⅡa:

1.無症状の流出路起源の特発性心室頻拍で,心拍数が著しく速い場合

2.流出路起源の特発性心室頻拍で,薬物治療が有効または未使用でも患者がカテーテルアブレーションを希望する場合

その他、カテーテルアブレーションの適応については、「不整脈の非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」

https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_okumura_h.pdf

【カテーテルアブレーションが必要な場合】

カテーテルアブレーション専門の医療機関に紹介します。都内であれば、心臓血管研究所付属病院、慶應義塾大学病院、東京女子医科大学病院、東京慈恵会医科大学附属病院、東京ハートリズムクリニックなどに紹介することが多いです。詳しくは主治医までご相談ください。

心臓血管研究所付属病院循環器内科(不整脈)→https://www.cvi.or.jp/shinryouka/jynkan-fuseimyaku.html

「不整脈とアブレーション治療」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/treatment/ablation.html


 

電気生理学的検査

【電気生理学的検査とは】

電気生理学的検査(Electrophysiological study: EPS)とは、カテーテルを用いて心臓の電気活動を詳しく調べる検査です。入院が必要な検査ですが、普段の体表からの心電図検査、ホルター心電図ではわからない心臓内の電気活動を調べる不整脈の最も詳しく検査です。不整脈の機序を明らかにすること、カテーテルアブレーションの治療計画、不整脈の誘発、致死的不整脈の評価、治療方針決定、薬物治療の薬効性判定、などがわかります。不整脈の原因部位が特定出来れば、通常そのままカテーテルアブレーション治療へ進みます。詳しくは国立循環器病研究センターまたは慶應義塾大学病院のページをご覧ください。

「電気生理学的検査・カテーテルアブレーション」→https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/arrhythmia/d1.html

「心臓電気生理学的検査(Electrophysiological study:EPS)」→https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000434.html

【電気生理学的検査でわかること】

不整脈の機序はいくつか特定されています。具体的には、

・異所性自動中枢(Ectopic focus)

・撃発活動(Triggered activity)

・旋回(Reentry)

リエントリーには、解剖学的に旋回路が特定されているマクロリエントリ(macro reentry)、解剖学的に微小な旋回路マイクロリエントリー(micro reentry)、解剖学的旋回路ではなく旋回路が一定でない機能的リエントリー(random reentry)などがあります。電気生理学的検査では主に、不整脈の機序を特定し、リエントリー回路のうちアブレーション治療にてターゲットとする狭部(isthmus)の特定します。心房細動、発作性上室頻拍、WPW症候群のように、アブレーションのターゲットがほぼ特定されているものから、陳旧性心筋梗塞、上室期外収縮、心室期外収縮、心室頻拍のように個々にアブレーションのターゲットを探していく必要のあるものまで幅広くあります。詳しくは「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン」をご覧ください。

「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawas_h.pdf

【電気生理学的検査の適応】

電気生理学的検査の適応について「不整脈の非薬物療法ガイドライン」に目安が記載されています。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン」では、ACC/AHAガイドラインに基づき、推奨度を以下の4つに分類されています。

(1)クラスⅠ:有益であるという根拠があり,適応であることが一般に同意されている

(2)クラスⅡa:有益であるという意見が多いもの

(3)クラスⅡb:有益であるという意見が少ないもの

(4)クラスⅢ:有益でないまたは有害であり,適応でないことで意見が一致している

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

以下、各論です。

徐脈性不整脈

◆診断を目的とした心臓電気生理検査

ClassⅠ:

1.失神,めまい等の症状と徐脈との因果関係が不明な場合

2.失神,めまいを有し,原因として徐脈が疑われる場合

ClassⅡa:

1.ペースメーカの適応のある洞機能不全または房室ブロックで,洞結節機能や房室伝導障害の評価が必要な場合

2.症状のないMobitzⅡ型第2度房室ブロック,第3度房室ブロックおよび2枝または3枝ブロックでブロック部位の同定および洞結節機能評価が必要な場合

ClassⅡb:

1.症状のない慢性2枝ブロック

ClassⅢ:

1.症状のない洞徐脈, 第1度房室ブロック,Wenckebach型第2度房室ブロック

◆薬効評価を目的とした心臓電気生理検査

ClassⅠ:なし

ClassⅡa:

1.洞機能不全で徐脈が内因性か自律神経機能不全かあるいは薬剤によるかの判定が必要な場合

2.徐脈頻脈症候群で頻脈に対する必要不可欠な薬剤により徐脈の悪化を来たす場合

3.無症状の洞機能不全症例で洞機能不全を増悪させるおそれのある薬剤の投与が必要な場合

4.無症状の房室ブロック,心室内伝導障害例で伝導障害を増悪させるおそれのある薬剤の投与が必要な場合

◆ペーシング治療の有効性確認を目的とした心臓電気生理検査

ClassⅠ:

1.神経調節性失神,閉塞性肥大型心筋症におけるペーシング治療の有効性を一時的ペーシングによって確認する場合

ClassⅡa:

1.徐脈性心房細動に対するペーシング治療の有効性を一時的ペーシングによって評価し,ペースメーカ植込みの適応を決定する場合

2.心不全症例における両室ペーシング(心臓再同期療法,CRT)の有効性を一時的ペーシングによって確認する場合

頻脈性不整脈

◆診断を目的とした心臓電気生理検査

ClassⅠ:

1.症状のあるnarrow QRS頻拍

2.wide QRS頻拍

3.失神,めまいを伴う動悸発作を有するWPW症候群

4.失神,めまいを有し,原因として頻拍が疑われる場合

ClassⅡa:

1.動悸発作の原因として頻脈性不整脈が疑われるが,心電図等により確認できない場合

2.症状のないnarrow QRS頻拍

◆治療効果判定を目的とした心臓電気生理検査

ClassⅠ:なし

ClassⅡa:

1.持続性単形性心室頻拍に対する薬効および催不整脈作用の評価

2.心室頻拍に対するカテーテルアブレーション後の慢性期評価が必要な場合

ClassⅡb:

1.房室結節リエントリー性頻拍または房室回帰頻拍の薬効判定

2.洞結節リエントリー性頻拍,心房頻拍,心房粗動の薬効判定

3.上室性頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーション後の慢性期評価が必要な場合

◆リスク評価を目的とした心臓電気生理検査

ClassⅠ:

1.心停止蘇生例

2.原因不明の失神発作または左室機能低下を有する器質的心疾患に伴う非持続性心室頻拍

3.症状のないWPW症候群で,突然死の家族歴があるか,危険度の高い職業に従事している場合

ClassⅡa:

1.非持続性心室頻拍あるいは心室期外収縮頻発例で,器質的心疾患を有し,加算平均心電図にて心室遅延電位が陽性の場合

2.失神の既往あるいは突然死の家族歴のあるBrugada症候群

ClassⅡb:

1.非持続性心室頻拍で,心機能低下を伴わない器質的心疾患を有する場合

2.心室期外収縮頻発あるいは非持続性心室頻拍で,加算平均心電図にて心室遅延電位が陽性で,器質
的心疾患を認めない場合

3.失神,めまいを伴う動悸発作の既往あるいは家族歴のあるQT延長症候群

その他、電気生理学的検査の適応については、「不整脈の非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

「臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawas_h.pdf

【電気生理学的検査が必要な場合】

電気生理学的検査が必要な場合は専門の病院へ紹介します。二泊三日の入院が必要な検査です。詳しくは心臓血管研究所付属病院のページをご覧ください。

https://www.cvi.or.jp/kensa/shinzoudenki.html


 

埋込型除細動器

【埋込型除細動器とは】

埋込型除細動器(Implantable cardioverter defibrillator: ICD)とは、致死的不整脈に対して除細動器を体内に埋め込む治療法です。心室細動や心室頻拍などの致死的不整脈は以前はほとんど救命が難しかったのですが、日本では1996年の保険承認以降、速やかに除細動を行うことで救命率が向上して来ました。公共施設等に設置されており体外から除細動を行うものを自動体外式除細動器(Automated external defibrillator: AED)と言います。AEDをご存知の方は小型のAEDの埋込版と言ったほうがわかりやすいかも知れないです。洞不全症候群や高度の房室ブロックなどの重度の徐脈性不整脈に対しては心臓ペースメーカーが適応になります。詳しくは国立循環器病研究センター、日本不整脈心電学会のページをご覧ください。

「ペースメーカーと植え込み型除細動器」→https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph47.html

https://new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-3/lecture-3-d

【埋込型除細動器の適応】

埋込型除細動器の適応について「不整脈の非薬物療法ガイドライン」に目安が記載されていますが、個々の患者に対しては、最終的な判断は患者の臨床的、社会的背景を考慮して決定するようにとガイドラインにも記載されています。具体的には、冠動脈疾患、心不全、拡張型心筋症、原因不明の失神、肥大型心筋症、Brugada症候群、先天性QT延長症候群、などで、埋込型除細動器の適応を定めています。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン」では、ACC/AHAガイドラインに基づき、推奨度を以下の4つに分類されています。

(1)クラスⅠ:有益であるという根拠があり,適応であることが一般に同意されている

(2)クラスⅡa:有益であるという意見が多いもの

(3)クラスⅡb:有益であるという意見が少ないもの

(4)クラスⅢ:有益でないまたは有害であり,適応でないことで意見が一致している

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

以下、各論です。

まずは、致死的不整脈の既往があるかどうかで区別して議論します。具体的には、

二次予防:過去に心肺停止、持続性心室頻拍、心室細動の心電図が記録されている場合

一次予防:心室頻拍が非持続性である場合、失神を認めるが心電図で不整脈が記録されていない場合,あるいは低心機能のために突然死、不整脈死のリスクが高い場合等

ICDによる二次予防

Class Ⅰ:

1.心室細動が臨床的に確認されている場合

2.器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍を有し,以下の条件を満たすもの

(1)心室頻拍中に失神を伴う場合

(2)頻拍中の血圧が80mmHg以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合

(3)多形性心室頻拍

(4)血行動態の安定している単形性心室頻拍であっても,薬物治療が無効または副作用のため使用できない場合や薬効評価が不可能な場合,あるいはカテーテルアブレーションが無効あるいは不可能な場合

ClassⅡa:

1.器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍がカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合

2.器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍を有し,臨床経過や薬効評価にて有効な薬剤が見つかっている場合

ClassⅡb:

1.急性の原因(急性虚血,電解質異常,薬剤等)による心室頻拍,心室細動の可能性が高く,十分な治療にもかかわらず再度その原因に暴露されるリスクが高いと考えられる場合

ClassⅢ:

1.カテーテルアブレーションや外科的手術により根治可能な原因による心室細動,心室頻拍(WPW症候群における頻脈性心房細動・粗動や特発性持続性心室頻拍)

2.12か月以上の余命が期待できない場合

3.精神障害等で治療に際して患者の同意や協力が得られない場合

4.急性の原因(急性虚血,電解質異常,薬剤等)が明らかな心室頻拍,心室細動で,その原因の除去により心室頻拍,心室細動が予防できると判断される場合

5.抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない頻回に繰り返す心室頻拍あるいは心室細動

6.心移植,心臓再同期療法(CRT),左室補助装置(LVAD)の適応とならないNYHAクラスⅣの薬物
治療抵抗性の重度うっ血性心不全

器質的心疾患を有する患者に対する一次予防

ClassⅠ:

1.冠動脈疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全で,十分な薬物治療を行ってもNYHAクラスⅡ またはクラスⅢの心不全症状を有し,かつ左室駆出率35%以下で,非持続性心室頻拍を有する場合

2.NYHAクラスⅠで冠動脈疾患,拡張型心筋症に基づく左室機能低下(左室駆出率35%以下)と非持続性心室頻拍を有し,電気生理検査によって持続性心室頻拍または心室細動が誘発される場合

Class Ⅱa:

1.冠動脈疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全で,十分な薬物治療を行ってもNYHAクラスⅡまたはクラスⅢの心不全症状を有し,左室駆出率35%以下の場合

ClassⅢ:

1.器質的心疾患を伴わない特発性の非持続性心室頻拍

原因不明の失神

ClassⅠ:

1.冠動脈疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全で,十分な薬物治療を行ってもNYHAクラスⅡまたはクラスⅢの心不全症状を有し,かつ左室駆出率35%以下の場合

Class Ⅱa:

1.冠動脈疾患あるいは拡張型心筋症に伴う中等度の心機能低下(左室駆出率36~50%かつNYHAクラスⅠ)があり,電気生理検査にて心室頻拍または心室細動が誘発される場合

Class Ⅲ:

1.心機能低下を認めず,肥大型心筋症,Brugada症候群(薬剤誘発性を含む),早期興奮症候群,QT短縮症候群等の致死的不整脈の原因が否定され,かつ電気生理検査にて心室頻拍または心室細動が誘発されない場合

肥大型心筋症

Class Ⅰ:

1.過去に持続性心室頻拍,心室細動,心肺停止の既往を有する場合

Class Ⅱa:

1.非持続性心室頻拍,突然死の家族歴,失神,左室壁厚30mm以上,運動時の血圧反応異常のいずれかを認める場合

Brugada症候群

Class Ⅰ:

1.心停止蘇生例

2.自然停止する心室細動,多形性心室頻拍が確認されている場合

ClassⅡa:

1.Brugada型心電図(coved型)を有する例で,以下の3項目のうち,2項目以上を満たす場合

(1)失神の既往

(2)突然死の家族歴

(3)電気生理検査で心室細動が誘発される場合

ClassⅡb:

1.Brugada型心電図(coved型)を有する例で,上記の3項目のうち,1項目のみを満たす場合

先天性QT延長症候群

ClassⅠ:

1.心室細動または心停止の既往を有する患者

ClassⅡa:

1.torsade de pointesまたは失神の既往を有し,β遮断薬が無効の場合

2.突然死の家族歴を認め,β遮断薬が無効の場合

ClassⅡb:

1.torsade de pointesまたは失神の既往を有するが,β遮断薬が有効な場合

2.突然死の家族歴を認めるが,β遮断薬が有効な場合

その他の埋込型除細動器の適応については、「不整脈の非薬物療法ガイドライン」をご覧ください。

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」→https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf

【埋込型除細動器が必要な場合】

埋込型除細動器による治療は「ICD認定施設」という病院にて行う必要があります。埋込型除細動器による治療が必要な場合、専門の専門病院を紹介します。首都圏であれば多くの大学病院、総合病院があります。詳しくは日本不整脈デバイス工業会の認定施設一覧をご覧ください。

https://www.jadia.or.jp/citizens/icd-nintei.html#tokyo

日本不整脈心電学会「デバイス治療に関するガイドライン」→https://new.jhrs.or.jp/guideline/guideline02/device-guide